「神の家の災い」(ポール・ドハティー/古賀 弥生:東京創元社)は、修道士アセルスタンと検死官ジョン・クランストン卿のコンビが、難事件を解決していくという、中世英国を舞台にしたミステリーである。ポール・ドハティーの作品は始めて読んだが、修道士アセルスタンが活躍する作品は、シリーズになっており、この作品は、「毒杯の囀り」、「赤き死の訪れ」に続く第3弾になっている。たぶん前の2作品を読んでおいた方が、細かい部分に対しては合点がいくのであろうが、この作品だけを独立して読んでも、十分面白いと思う。


神の家の災い
  • ポールドハティー
  • 東京創元社
  • 987円
Amazonで購入
書評



 この作品で提示される謎は、なんと3つもある。一つ目はクランストンが、国王リチャード2世の摂政であるランカスター公ゴーントの宴で酔ったはずみに引き受けた賭け。イタリアのクレモナ領主ジャン・ガレアッツオの提示した、四人の人間が不審な死を遂げた「緋色の部屋」の謎である。二つ目は、修道士アセルスタンが赴任していた教会の改修中に発見された、軌跡を起こす人骨の謎。三つ目は、アセルスタンが所属していたブラックフライアーズ修道院で起こった連続殺人事件の謎。おまけに2週間以内に最初の謎を解けないと、クラントンはガレアッツオに千クラウンもの賭け金を払わなくてはならないのだ。愛妻と双子の乳飲み子を抱えたクラントン、絶体絶命のピンチである。

 ところで、このアセルスタンとクランスタンとのコンビがなかなか面白い。例えばシャーロックホームズとの比較でいえば、ホームズが、クランスタンでワトソンがアセルスタンと言った役割なのだが、クランストンは、肝心の推理を助手のアセルスタンに丸投げ状態なのである。このクランストン、いつも何か飲み食いしているか寝ているかで、しょっちゅうげっぷはするわおならはするわ、おまけに女房に頭が上がらないわといった具合で、本当に3つも謎を解けるのかと思って読んでいたが、決めるべきところではちゃんと決めていた。クラントンの役職の検死官というのは、どうも検事と判事を合わせたような職で、かなりの権限を持っているようだ。肝心なところでは、大岡裁きといった名裁きぶりを見せている。アセルスタンのクランスタン評、「腹がでかく、言うこともでかく、心もでかい」というのが、まさにぴったりの表現で笑えた。 


○応援クリックよろしく
人気ブログ


●当ブログ本館「読書と時折の旅」はこちら