「素数は1とそれ自身でしか割り切ることができない。自然数の無限の連なりの中の自分の位置で素数はじっと動かず、他の数と同じくふたつの数の間で押しつぶされてこそいるが、その実、みんなよりも一歩前にいる。彼らは疑い深い孤独な数たちなのだ。」(素数たちの孤独より引用)
タイトルに惹かれて、「本が好き!プロジェクト」を通じて献本していただいたのがこの「素数たちの孤独」(パオロ・ジョルダーノ/飯田亮介:早川書房)である。まずはお礼を申しあげる。著者であるパオロ・ジョルダーノはイタリアの素粒子物理学を専門とする物理学者。この作品は、イタリア文学を代表する文学賞であるストレーガ賞を受賞し、120万部を超える売り上げを記録した超ベストセラー小説である。我が国では7月25日発売予定であるが、「本が好き!プロジェクト」のおかげで、一足早く読むことができた。
さて、作品の方であるが、二人の男女を主人公とした、ちょっと変わった、そして色々な意味で痛いラブストーリーと言うところだろうか。主人公の一人マッティアは天才的な頭脳を持つ青年である。彼は、子供のころ、クラスメートのパーティに双子の妹ミケーラといっしょに招かれたが、知的障害のある妹を公園のベンチに待たせておいたままパーティに出席した。その間に妹は行方不明になってしまい、それが彼の心に大きな傷となっている。精神的に不安定な彼は、自傷行為を繰り返していたらしい。掌は傷跡だらけである。クラスメートの前で、メスで手を切ったこともある。
もう一方の主人公アリーチェは、子供のころのスキーの事故で片足が不自由である。このときの様子が悲惨すぎる。なにしろ、パンツの中に大小便を垂れ流したまま滑って事故を起こしたのだから。だから発見された時には、パンツはうんこまみれという状態である。ヒロインにここまでの恥をかかせる作品も珍しい。しかし、彼女が本当に痛いのは、実は足のことより、拒食症を患っていることだ。食べ物は、ナプキンに隠してトイレに流してしまう。拒食症の影響で、生理も止まってしまっている。結婚はしたものの、食事をしろという夫に反発し、ついには破局が訪れてしまう。
そんな心に傷を持った同士の二人は、ハイスクール時代に出会い惹かれあう。しかし、結局は、二人は素数同士なのだ。1から3までは例外であるが、二つの素数の間には、少なくとも一つ以上の数が入る。二つの素数の間はある時は近づき、ある時は離れながらもどれだけ経っても決して隣同士となることはないのだ。二人は別れ、9年もの時を経て再開する。しかし、やはり二人は隣り合わせの人生を送ることはない。二人はそれぞれの人生を生きていくのだ。しかし、年月は人を変えるのか。痛々しさが目立っていた二人の将来にこれからの希望と生きていくことへの意思が見えるようなラストであった。
素数たちの孤独
書評/海外純文学

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タイトルに惹かれて、「本が好き!プロジェクト」を通じて献本していただいたのがこの「素数たちの孤独」(パオロ・ジョルダーノ/飯田亮介:早川書房)である。まずはお礼を申しあげる。著者であるパオロ・ジョルダーノはイタリアの素粒子物理学を専門とする物理学者。この作品は、イタリア文学を代表する文学賞であるストレーガ賞を受賞し、120万部を超える売り上げを記録した超ベストセラー小説である。我が国では7月25日発売予定であるが、「本が好き!プロジェクト」のおかげで、一足早く読むことができた。
さて、作品の方であるが、二人の男女を主人公とした、ちょっと変わった、そして色々な意味で痛いラブストーリーと言うところだろうか。主人公の一人マッティアは天才的な頭脳を持つ青年である。彼は、子供のころ、クラスメートのパーティに双子の妹ミケーラといっしょに招かれたが、知的障害のある妹を公園のベンチに待たせておいたままパーティに出席した。その間に妹は行方不明になってしまい、それが彼の心に大きな傷となっている。精神的に不安定な彼は、自傷行為を繰り返していたらしい。掌は傷跡だらけである。クラスメートの前で、メスで手を切ったこともある。
もう一方の主人公アリーチェは、子供のころのスキーの事故で片足が不自由である。このときの様子が悲惨すぎる。なにしろ、パンツの中に大小便を垂れ流したまま滑って事故を起こしたのだから。だから発見された時には、パンツはうんこまみれという状態である。ヒロインにここまでの恥をかかせる作品も珍しい。しかし、彼女が本当に痛いのは、実は足のことより、拒食症を患っていることだ。食べ物は、ナプキンに隠してトイレに流してしまう。拒食症の影響で、生理も止まってしまっている。結婚はしたものの、食事をしろという夫に反発し、ついには破局が訪れてしまう。
そんな心に傷を持った同士の二人は、ハイスクール時代に出会い惹かれあう。しかし、結局は、二人は素数同士なのだ。1から3までは例外であるが、二つの素数の間には、少なくとも一つ以上の数が入る。二つの素数の間はある時は近づき、ある時は離れながらもどれだけ経っても決して隣同士となることはないのだ。二人は別れ、9年もの時を経て再開する。しかし、やはり二人は隣り合わせの人生を送ることはない。二人はそれぞれの人生を生きていくのだ。しかし、年月は人を変えるのか。痛々しさが目立っていた二人の将来にこれからの希望と生きていくことへの意思が見えるようなラストであった。
素数たちの孤独
- パオロ・ジョルダーノ
- 早川書房
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