スウェーデンの超ベストセラー小説「ミレニアム」3部作の第2弾がこの「ミレニアム2 火と戯れる女」(スティーグ・ラーソン/ヘレンハルメ美穂、山田美明:早川書房)である。以前紹介した「ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女」の続編に当たる。今回は、前作で、ものすごい存在感を見せた強烈な個性の女性調査員・リスベット・サランデルの過去に関係する物語が中心であり、面白さは前作を超えている。


 前作でリスベット・サランデルジャーナリストで月刊誌「ミレニアム」の発行責任者であるミカエル・ブルムクヴィストが、この作品の中で取り扱うのは「人身売買・強制売春」に関する事件。フリージャーナリストのダグ・スヴェンソンはスウェーデンで行われている少女や若い女性の人身売買や・強制売春を告発すべく本を書いていた。彼がこのテーマに関わったのは、恋人の犯罪学やジェンダー学の研究者であるミア・ベイルマンの影響だった。彼女もこのテーマで博士論文を執筆中であった。そして、ダグが、そのネタを売り込んだ先が「ミレニアム」なのである。

 ところが、ミカエルが、資料を受け取りに、ダグとミアの住んでいるアパートを訪れると二人は殺されていた。そして、前作でリスベットに酷い振る舞いをして、手痛いしっぺ返しを受けていた彼女の後見人の変態弁護士・ビュルマンまで殺されていたのである。凶器の拳銃からはリスベットの指紋が見つかった。警察はリスベットを犯人と断定し、指名手配する。一方マスコミは、リスベットの過去をほじくり返し、ゆがんだ報道が過熱していく。

 ミカエルは、リスベットの無実を信じ、独自の調査を始まる。一方リスベット自身も、真犯人を追い求める。手掛かりは、「人身売買・強制売春」組織のボスと思われるザラと言う謎の人物。リスベットの壮絶な過去とこの殺人事件が、やがて一本の糸に収束していき、国家的な謀略にまで発展していく。この過程は、まさに手に汗を握るという表現がぴったりであり、ページをめくるたびにどんどん作品世界に引き込まれていくようだ。エキセントリックな性格ながら、天才的な頭脳を持っているのに、なぜか読み書きもままならない無能力者とされて後見人もつけられていたリスベットの謎もこの作品で明らかにされていく。

  前作でミカエルが不倫相手(それも相手の夫公認の)であるエリカと会っているのを見て、プレゼントをゴミ箱に捨てて、ミカエルの前から姿を消したリスベットだが、前作でのミカエルとの係わりで、彼女もどこか変わったようだ。ピアスの数も減らし、首筋の特徴的なスズメバチのタトゥを消し、豊胸手術まで受けている。しかし、リスベットのコンピュータのハッキング技術を駆使して必要な情報に接近していく能力は、相変わらず健在であるし、この作品では小柄な体ながら、かなりの武闘派の一面も明らかになる。

 とにかく面白い作品であるが、上下巻合わせて約900ページにも及ぶ長編のため、よほど時間のある時でないと一気読みは難しい。読みだすと、途中で止めるのがとても辛いので、次の日に仕事があるような場合には寝るタイミングを逃しそうだというのが唯一の欠点か。読むのは、次の日が休日といったような、時間の余裕のある時がいいだろう。

 ただ、本筋にはあまり関係ない小さな苦言を一つ言いいたい。リスベットがスタンガンについて説明するときに7万5千ボルトの「電流」という表現が、気がついただけで2箇所あった(下巻p196,282)。ボルトは「電圧」の単位である。原作がそうなっているのか翻訳の間違いかは分からないが、中学校の理科のレベルの話である。リスベットは、コンピュータや数学の天才という設定だけに、科学知識の基本的な間違いは残念であった。


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