風竜胆の書評

コミックスから専門書まで、あらゆる本を読みます。元エネルギー企業の専任部長。現在は、ライター・書評家を標榜する自由人w 時に書評が過激になるのは、長州人の血? 現在「シミルボン」と「本が好き!」でも活動中。 執筆依頼、献本等歓迎します。右欄のメッセージ機能にてご連絡ください。 旧ブログ名:本の宇宙(そら)

ビジネス書

分断した世界 逆転するグローバリズムの行方4


・分断した世界 逆転するグローバリズムの行方
・高城剛
・集英社

 本書によれば、現在は再び分断の時代を迎えたという。書かれているのは、持てる者と持たざる者の分断。そして、アメリカファーストやイギリスのEU離脱という国の分断。深刻化する移民問題。これと対応するように台頭する極右政党のことなど。

 本書は前後編に分けられ、今回は前編に当たるという。時間のレンジとしては1989年から2019年まで。後編は今後30年後の再び一つになる世界が描かれるようだ。

 しかし、ここにひとつ疑問がある。国の分断だが、世界から孤立して、果たしてやっていけるのだろうか。いま世界は好むと好まざるに関わらず、グローバル化が進んでいる。

 アメリカのトランプ大統領は日本からの自動車や部品に対して、25%の関税をかけると息巻いているが、グローバルな部品調達が当たり前となっている現代で果たしてそれがうまくいくのかは疑問である。おまけに目新しいものは、たいてい特許で守られているのではないだろうか。

 関税を大幅に上げれば、コストプッシュによるインフレを呼び、製品は古臭くなり、アメリカ経済を混乱させるだけの結果に終わるだけのような気がしないでもないのだが。

 面白かったのは、トランプ旋風の原因は、よく言われているようにラストベルト(Rust Belt)の人々ではなく、本質はアメリカにおける「百姓一揆」であるという指摘だ。

 この他にも興味深い話題が満載。実際の現場を見てきた著者による渾身のルポだろう。

 なお、本書は「オトバンク」さまからの頂き物です。ありがとうございました。
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Wait, What?(ウェイト、ホワット?) ハーバード発、成功を導く「5つの質問」3


・Wait, What?(ウェイト、ホワット?) ハーバード発、成功を導く「5つの質問」
・ジェイムズ・E・ライアン、(訳)新井ひろみ
・ハーパーコリンズ・ジャパン

 本書はハーバード大学教育大学院長の著者が卒業式に行ったスピーチを基にしたものだという。卒業式のスピーチが動画でインターネットに公開され、それがハーパーコリンズの編集者の目に留まり、本として出版されたとのことだ。それは「良い質問」をするための5つの鍵。言い換えれば、何か質問をしようとする時に、効果的な質問をするための5つの問いである。

 語られるのは次の5つ。

1.Wait,What?(待って、それ何?)
2.I Wonder・・・?(どうして〜なんだろう?)
3.Couldn't We at Least・・・?(少なくとも〜はできるんじゃないか?)
4.How Can I Help You?(何かできることある?)
5.What Truly Matters?(何が本当に大事?)

 これらについて各一章を割いて、例を交えながら詳しく語っている。通常の質問をするような場面のみならず、交渉のときなどにも使えるものも多い。

 私はよく講演会を聴きに行くが、最後に質問の時間があることが多い。質問される内容で、これはいい質問だと思ったことはほとんどない。質問のための質問のようなものも結構多く、中には質問と言いながら、自分の意見を長々と述べる人間もいる。いい質問をするというのは本当に難しい。本書を一読すれば、効果的な質問を行うためのフレームワークのようなものが形作られるのではないかと思う。

 なお、本書は「(株)フロンティア・エンタープライズ」さまを通じての頂き物です。ありがとうございました。
 
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人工知能時代に生き残る会社は、ここが違う! リーダーの発想と情熱がデータをチャンスに変える4


・人工知能時代に生き残る会社は、ここが違う! リーダーの発想と情熱がデータをチャンスに変える
・ジョシュ・サリヴァン、 アンジェラ・ズタヴァーン、(訳) 尼丁 千津子
・集英社

 本書によれば、人工知能時代を生き残るのは、マセマティカル・コーポレーションであるという。ここで、マセマティカル・コーポレーションというのは、企業活動にマシンインテリジェンス(MI)を活用している組織のことを言う。そしてその活動の源泉はデータ活用にある。我々の周りには天文学的な量のデータが存在している。

 人間は、主に目と耳で外界の情報をインプットしている。しかしその処理速度には限界があるのは言うまでもない。ところがこれがコンピュータになると、無数のセンサーからの入力を短時間で処理することができる。そして、その処理速度は年々上がっているのだ。コンピュータの優位性というのは、人間には処理が不可能な大量のデータを迅速に扱えるところだろう。

 しかし、その一方で、コンピュータは与えられたアルゴリズムに従って、データ処理をしているに過ぎない。どのようなアルゴリズムを与えるのかについては、人間様の出番ということになる。また、コンピュータにどのような問題を与えるかについても人間様の領分なのである。

 本書を読んで思ったのは、これから生き残れる会社の条件は、ビッグデータを活用できることのようだ。今後は、人間とコンピュータがうまく役割分担をしていくことが重要になるだろう。その一方では、これまでコンピュータの得意な領分で仕事をしていた人間はその役割を奪われていくのだろう。考えてみれば、文明の発展とともに、多くの職業が無くなっていった例はいくらでもある。人間様も新たな変化に適応していかなくてはならないのである。

 ところで、帯に、「ビッグデータを生かせるリーダーの共通点は文系力だった」とあるが、ここで文系力とはいったいなんのことを言っているのだろう。本書中に何か明確な定義があるかと気をつけて読んではいたが、それらしいものは見当たらなかったのだが。

 なお、本書は「オトバンク」さまからの頂き物です。ありがとうございました。



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小説ヤマト運輸4


・小説ヤマト運輸
・高杉良
・新潮文庫

 高杉良と言えば経済小説の巨匠として知られる存在だ。昔は時折読んでいたが、この作品を目にして、そういえば最近読んでいないなあと思い買ってきたという訳である

 本書の主人公はそのタイトルの通り、ヤマト運輸二代目で宅急便というサービスを作り出した小倉昌男だ。その父である創業者小倉康臣の物語もかなりのスペースを割かれている。この二人は実名で登場するが、昌男の後を継いだ彼の懐刀のような人物の名は鈴木となっている。

 しかしヤマト運輸の歴代社長を調べてみると3代目社長は都築幹彦氏になっているので、音の類似性だけを残して仮名で登場させているようだ。しかし、ちょっと調べれば誰がモデルになっているのかはわかるので、あまり仮名にしている意味はないと思うが、この辺りは、タイトルに「小説」と入れていることから、フィクションの部分が大分入っているのだろうか。

 面白いのは、運輸省(当時)や郵政省(当時)との闘いだ。国民主権の世である。本来国の役目とは、国民に不利益が生じないように利害の調整を図ることではないのか。しかし、昔ながらの御上意識を持っていてはとても国民主権の世にマッチしているとは思えない。

 例えば、この作品の中の運輸官僚の次のようなセリフだ。

<小倉さんっていう人もいい度胸していますねぇ。御上に盾突いて、喧嘩を売るんですから>(p313)

 これは小説の中のセリフであるが、本当にこんな意識を持っているのなら、公務員を辞めた方がいいし、省庁全体にこんな意識が蔓延しているのなら、そんな省庁は解体した方がいいだろう。一番問題なのは、国民からお役所がそんなところだと思われているところではないかと思う。

 許認可事項ひとつとっても、お役人は平気で年単位で審査を遅らす。企業は監督官庁に逆らうとしっぺ返しが怖いからと、少々の無理難題はご無理ごもっとものような対応になってしまうのではないか。一応行政不服審査法というものがあるが、どこまで機能しているのだろう。企業はヤマト運輸の闘い方を参考に、お役所に不要な権力を持たせないように、もっと裁判などを活用すればいいような気がする。

 この他、宅急便のシンボルマークであるあのネコの絵をデザインした斎藤武志(砂上)のあまりにもドラマチックなエピソードも描かれている。元々あのマークは、米国最大のトラック会社であるアライド・ヴァン・ラインズ社のマークを参考に、斎藤がデザインしたもののようだ。

 高杉作品のすごいところは、まるで見てきたように、生き生きと企業に関するドラマが描かれるといったところだろう。その裏には、かなり綿密な取材活動などがあったのだろうと推測する。最後に、あとがきに書かれている次の言葉を紹介して終わろう。これは、作者が複数の人から聞いたという小倉昌男氏の言葉だということだ。なお、高杉氏は、この作品を小倉氏には一度も会わず書いたとのことである。

<高杉良も、俺に会わないであそこまで書けるなんて、大したタマだよなあ>(p379)

この一冊で面白いほど人が集まるSNS文章術3


・この一冊で面白いほど人が集まるSNS文章術
・前田めぐる
・青春文庫

 本書は、表題にSNSとはあるが、正確にはソーシャルメディア(SNS+ブログ)の文章術として書かれたということである。

 書かれている内容を一言で表せば、読む人が分かりやすいような文章を、読む人の立場に立って書くための方法である。これは、ソーシャルメディアのみならず、色々な場面で約に立つのではないだろうか。例えばPTAの会報などを書くときにも参考になるだろう。

  本書で特筆すべきは、著作権について注意をしていることがあげられるだろう。世間では著作権についてあまり理解されておらず、ソーシャルメディアなどでも「これ著作権大丈夫かいな?」と思うようなものをよく目にする。一般に著作権の内容は、結構複雑であり、気にしすぎるくらいでちょうどいいのだ。

 ただ、ちょっと気になることがある。このように書かれているからだ。

<ただし、著作権には、著作者人格権と財産権があります。著作権が財産として第三者に渡った場合には、著作者の死後50年を経ても権利者以外の他人が自由に使うことはできません。>(p199)

 実は私は「ビジネス著作権 上級」の検定試験に合格している。私の理解では、著作権というのは多少の例外はあるものの、原則著者の死後50年保護される。著作権が譲渡された場合にそれが中断されるかどうかについて色々調べたのだが、それらしいものは見当たらなかった。元となる著作権法も調べたのだがそれらしい規定は見当たらない。もし根拠があるのなら、示してほしいと思う。

 なお、本書は著者さまからのいただきものです。ありがとうございました。

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文理両道
時空の流離人
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こじらせママ 子育てしながらココナッツオイルで年商7億円。3


・こじらせママ 子育てしながらココナッツオイルで年商7億円。
・荻野みどり
・集英社

 本書は一言でいえば、著者がこれまで歩んできた道とでも行っていいだろうか。著者の荻野みどりさんは、まだ男尊女卑の文化が残る九州で生まれ育ち、地元の短大に進んだが、退学して地元の会社に就職し、もっと大きな世界が見たいと家出同然に東京に出る。そこで転職に次ぐ転職。学歴も放送大学、駒澤大学、慶応の通信といずれも退学。結婚して娘を設けるも離婚。しかし、ブラウンシュガーファーストというお菓子屋さんを創設し、ココナッツオイルの魅力に行き着く。

 私は、ココナッツミルクについてはよく知らないし、オーガニックというものにもあまり興味はないので、もっぱら仕事法という観点からレビューしてみたい。本書には、いろいろと参考になるような事項が見受けられる。

 例えば、自分の求められている役割を洗い出して、現実とのギャップを明確にして、進めるべきものとそうでないものを区分することが紹介されている。これはなかなか良いやり方だと思う。人間の能力には限りがある。あれもこれもできるわけがない。何かをやろうと思ったら何かで手を抜くことも大事なのである。

 また、本書では、自分がやる必要のない「Do not List」を作るのも一つの手だと言っている。なんでもかんでも自分でやろうとせず、人にやってもらった方が効率的なものはアウトソースを検討すべきだろう。

 このように、ココナッツオイルやオーガニックにあまり関心がなくとも、視点を少し変えて読めば、参考になることは多いのではないだろうか。

 なお、本書は「オトバンク」さまからの頂き物です。ありがとうございました。

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時空の流離人



 

奇跡は自分で起こせ!4


・奇跡は自分で起こせ!
・佐藤正幸
・旭屋出版

 本書は、新潟県の南魚沼市で寿司屋を営む、佐藤さんのこれまでの取り組みを纏めたものだ。龍寿しというのは、本書によれば、海からも離れた、交通の便もそれほどよくない山の中の寿司屋らしい。念のためにネットで地図を確認すると、確かにそんな感じだ。

 新潟県は昔大糸線経由で北陸旅行をした際に糸魚川を通過したことはあるくらいで、私にとっては未知の土地である。今住んでいるところからも遠いので、さすがにこちらの方まで「龍寿し」の情報は入ってこないのだが、このような場所で繁盛しているというのは、きっと知る人ぞ知る名店なのだろう。

 もっとも龍寿しの経営がずっと順調だったわけではない。一時は、年収が100万円を切ったこともあるという。しかしそれでも佐藤さんは寿司屋を繁盛させるために工夫を重ねた。佐藤さんの工夫もさることながら、龍寿しの成功には、次のことも、追い風になったと思われる。

 1つは、業態が高級寿司屋だったということだ。日本人には寿司(特に回らない方)とは、どちらかといえば「ハレの日」の食べ物だというコンセンサスができているように思える。つまりは、ある程度の値段がして当然だと思われているのである。要するに客単価が高いのだ。本書によると客単価は8,000円だということだ。

 売上=客単価×回転率である。これが、ラーメン店のように客単価が安くて(さすがに、客単価8,000円のラーメン屋というのはないだろう)、回転率で稼いでいるような業態だったら、果たして同じような結果になるだろうか。

 そして田舎だと、回転率を上げるにも限度があるだろう。だから客単価の高い商品で勝負するしかないのだ。

 もう一つは、モータリゼーションの進展である。地方は鉄道もバス路線もどんどん廃止されている。田舎では車がないと生活できないという現状があるのだ。しかしこれは、逆に駐車スペースさえあれば、割と遠くからでも客が来ることができるのである。だから最近はテレビなどで、辺鄙なところある繁盛店が話題になったりするのだろう。

 教訓となるのは、SEOなどのネット対策はコストばかりかかりあまり効果がないということ。有名人のブログなら大したことは書いてなくても(本当にくだらないことしか書いてないので、私は
まず読まない)かなりのアクセスがあるのに、無名の人間がどんなにいいことを書いても、訪れる人はほとんどいないというのがネット社会の現実だ。ネットにアップすればそれだけで人が来るようになるわけはない。

 佐藤さんの取り組みは、なかなか戦略的なのだが、最後に龍寿しの戦略をマーケティングの4Pの観点からまとめて終ろう。

1.Price(価格)
 これは上に述べたように、かなり客単価の高い層を狙っている。本書に失敗例として載っているのだが、佐藤さんはいなり寿司にかなり熱心だった時もあったようだ。色々味を研究して自信をもって店に出したが、さっぱり売れなかったらしい。まあ、この客単価でいなり寿司を食べたい客は来店しないだろう。

2.Place(流通)
 寿司屋なので商品は店で出すしかないが、ネタの仕入れ先には工夫がある。また、仕入れ先をパートナーと考えて信頼関係を築いている。

3.Product(製品)
 これは店で出す寿司のことだが、この龍寿しには、いろいろ面白い寿しがある 太刀魚のポアレやナスの寿司など。イタリアンを食べても、そこからヒントを得て寿しに応用していく。写真も掲載されているが、これは機会があれば、ぜひ食べてみたいものだ。

4.Promotion(プロモーション)
 龍寿しでは、DMの出し方を工夫したり、プレスリリースを活用したりしている。人に知ってもらわなくては、どんなにいいものを作っても売り上げにはつながらないのである。

※初出は「本が好き!」です。



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H23.3:書評コミュニティ「本が好き!」より「免許皆伝」称号を受ける

H23.3.16:読売新聞朝刊“読者のホンネ”に「カラスと髑髏―世界史の「闇」のとびらを開く」の100字書評掲載

H25.10.26発売の図書新聞(3132号、2013年11月2日号)に「泥棒は几帳面であるべし」の書評掲載

H26.6,28発売の図書新聞(3165号、2014年7月5日号)に、「市場主義のたそがれ―新自由主義の光と影」の書評掲載

H28.8頃より「シミルボン」への投稿開始

H29.7.4「彗星パンスペルミア」の書評が「新刊JP]に掲載

H29.10.19「ハンナ・アーレント - 「戦争の世紀」を生きた政治哲学者」の書評が「新刊JP」に掲載

H29.11.24「ペンギン・ハイウエィ」の書評が「新刊JP」に掲載

H29.12.26.「ニッポンの奇祭」の書評が「新刊JP」に掲載

H30.1.18.「問題解決大全――ビジネスや人生のハードルを乗り越える37のツール」の書評が「新刊JP」に掲載

H30.4.26.「メゾン刻の湯」の書評が「新刊JP」に掲載
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