風竜胆の書評

コミックスから専門書まで、あらゆる本を読みます。元エネルギー企業の専任部長。現在は、ライター・書評家を標榜する自由人w 時に書評が過激になるのは、長州人の血? 現在「シミルボン」と「本が好き!」でも活動中。 執筆依頼、献本等歓迎します。右欄のメッセージ機能にてご連絡ください。 旧ブログ名:本の宇宙(そら)

ビジネス書

小さな会社のWeb担当者・ネットショップ運営者のためのWebサイトのつくり方・運営のしかた4


・小さな会社のWeb担当者・ネットショップ運営者のためのWebサイトのつくり方・運営のしかた
・坂井和弘
・ソーテック社

 最近は、何か商売を行おうとしたら、Webを活用することは必須のように思える。しかし、ただホームページを作ればいいというものではない。ホームページはお客様から見られてナンボである。誰も見に来ないような、言い方を変えれば集客に繋がらないようなものを作っても時間と金の無駄になってしまう。

 本書はどのようにすれば、お客様が集まる、つまり商売に結びつくようなWebサイトを作れるのかを順を追って説明したものである。

 もし、ネットを使ってもっと集客をしたいと考えているなら、本書を一読すれば、どのようにWebサイトを設計していくのか、SEO、SNSの活用、モール出店などのWebマーケットのやり方、アクセス解析をどのようにWebサイトの改善に繋げていくのか、どういう観点からサイトリニューアルを行えばいいのかなど、一通りのことは分かるに違いない。

 ただセキュリティ強化といった守りの面もみられるものの、全体としては攻めのためのWebサイト構築といった性格が強いように思える。老婆心ながら一つだけ提言したい。

 Webという公の場所にサイトを公開する以上著作権というものが常に付きまとってくる。すべての素材を自分たちが用意するのなら、まだリスクは少ないが、そうでない場合には気を付けないといけない。

 自分が経営者だとしたら、Webサイトの実務担当者が必ずしもそういった面で意識が高いとは限らない。もし仮に著作権侵害で問題が発生すれば、せっかく集客のために作ったWebサイトがマイナスの効果しか発揮しないのである。

 そして、この著作権法というのがなかなか厄介な法律であり、特に登録はしなくても権利は発生し、実際問題として完全に調べきることなど不可能と言っても良い。また似ているかそうでないかはかなり主観的なところもあり、どこでいちゃもんをつけられるか分からないのだ。こういった注意事項も入っていれば本書はもっと良くなると思った。

※本書は、「本が好き!」さまを通じてのいただきものです。ありがとうございました。

※初出は、「本が好き!」です。

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究極の問題解決力が身につく 瞬発思考4


・究極の問題解決力が身につく 瞬発思考
・寺嶋直史
・文響社

 問題解決のためには、「考える手順」があると主張する本書。その手順とは、次の通りだ。

1.現状把握
2.問題発見
3.原因究明
4.ゴール・イメージ
5.具体案

 この思考法を繰り返せば、問題解決力は習得できるというのが本書の主張である。上のように項目だけ書いてもなかなかイメージしにくいかもしれないが、本書中に解説があるので、ぜひそちらの方を読んでみて欲しい。

 ところで、これらの項目を読んで何か気が付かないだろうか。そう、最近はだいぶ下火になったが、一時大流行したQCサークルの手順によく似ているのだ。

 本書は、以下のような記述から、経営戦略などの本に良く紹介されているSWOT分析や3C分析、4P/4Cなどのフレームワークを使うことには否定的に思える。

<これらのフレームワークは、報告書や企画書を作成する際に、分析した結果を書面上で表すものであり、分析(=思考)の過程そのものではありません。>(p047)

 確かにそういう面もあり、こういったものを形だけでも使ったように見せれば、それだけで無能な経営者がいればはころりと騙されるかもしれない。実はQCサークルにもそのようなところがあり、内容よりも、いかに見栄えが良いかという事の方が評価されていたと思う。

 しかし、要は解決すべき問題に応じて使い分けるものなんだろうと思う。例えば生産設備のチョコ停(設備の短時間停止が繰り返し発生すること)が多いという問題を解決するために、誰も外部環境や内部環境といった分析もしないし、強み・弱みなどのSWOT分析もやらないだろう。おそらく最初に書いた手順に近いようなやり方で問題解決を図るのではないか。

 ところで、本書では原因を掘り下げて「根本原因」にたどり着くことが重要だと述べている。本書にも否定的に触れられているが、よく真の原因を究明するためには、「なぜ」を5回繰り返せと言われる。これはおそらく「なぜなぜ分析」のことを述べているのだろうが、この5回というのは都市伝説のようなもので、私が昔受けた「なぜなぜ分析」のセミナーでは、講師が5回にこだわる必要はないと明言していた。要は、本書にあるように、真の原因に行き当った時点が終了点なのである。

 もっとも、この原因分析一つとっても「言うは安く行うは難し」なのである。私自身も、形だけはなぜ、なぜとやってはいるが、「これ本当に原因?」と言いたくなるようなひどいものを何度も見たことがある。

 ある手法を自家薬籠中のものとするためには、ある程度の訓練が必要だ。形だけにならないためには、何か問題が発生したら、自然にこの手法が使えるようになるくらいまで使い込まなくてはならないだろう。

 なお、本書は、「本が好き!」さまを通じての頂き物です。ありがとうございました。

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危機の心理学4


・危機の心理学
・森津太子、星薫
・放送大学教育振興会

 本書は放送大学「心理と教育」の中の1科目となっているものの教科書である。

 私たちは色々なリスクに取り巻かれているが、その事を正しく理解して行動できているとは限らない。人間はヒューマンエラーを起こす生き物だし、認知自体にも様々なバイアスがかかる。

 例えば、リスクの判断において感情は大きな要因となる。怖いと思い込んでしまうと、実態以上にリスクがあると判断してしまう。

 また、大学生と警官を比較すると、前者の方が、軽めの犯罪の発生頻度を過小評価する反面、凶悪だが発生頻度の少ない犯罪を過大視する傾向があるという。

 この原因としてあげられるのがマスコミ報道の影響だ。凶悪な事件が発生すると、連日マスコミが事件の報道をする。それが私たちの判断にバイアスを形成するのである。

 一方警官にはそのような認知の歪みは見られなかったという。犯罪について知識をもっているからだ。寺田寅彦の言うように「正しく恐れる」ことは、なかなか難しいようだ。

 本書を十分に読みこなせば、リスクに対する人間の行動特性が理解でき、噂や風評に踊らされることも少なくなるのではないだろうか。間違った行動を少なくするためにも、ぜひ一読する事を勧めたい。

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ひらめきを生み出すカオスの法則4


・ひらめきを生み出すカオスの法則
・ティム・ハーフォード、(訳)児島修
・TAC出版

 タイトルからは、アイデア創出法のようにも思えるが、本書はそれだけには留まらない。書かれているのは、あまりにも整然としたところからは、画期的なものは生まれないということだ。

 例えば、アドリブの中から素晴らしいものが生まれるということや、目標値を数値で決めてしまうと、数値が達成出来ればいいとばかり視野狭窄に陥る可能性があるということなど。

 コンピュータで全てが制御されているからと安心してはいけない。あまり頼りすぎると、想定外のことが発生した時に人間が対応出来なくなる。本書では航空機の事故例が挙げられているが、多くのプラントの制御系でも同様だろう。

 昔は人間が状況を判断しながら手でやっていたものを、今はコンピュータがやってしまう。かっては、色々な現場に、あの人に任せればOKだという生き字引のような人がいたものだが、最近はトラブル対応の経験が積めないということをよく聞く。

 製造業では、よく5Sが重要だとされる。すなわち、整理、整頓、清掃、清潔、躾だ。私に言わせれば、これらは決まりきったことを効率的にやるのにはいいかもしれないが、本書でも批判的なように、そこから画期的なものは何もでてこないだろう。

 もうひとつついでに言えば、私は、一部でもてはやされているフリーアドレス(自分の机を持たない)というのが大嫌いだ。スペースが共有のため、机の上を自分の好きなように汚せないではないか。私の会社員時代は、机の上は誰よりも乱雑だった自信があるが、生産性のほうも誰よりもあった(と思う)。

 私の読書傾向なども統一性がなく、乱雑なことおびただしいが、いつかはきっとそこから素晴らしい何かが生まれることだろう(笑)。果たしていつのことになるのやら。


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問題解決大全――ビジネスや人生のハードルを乗り越える37のツール4


・問題解決大全――ビジネスや人生のハードルを乗り越える37のツール
・読書猿
・フォレスト出版

 本書は、ビジネスなどで役立つ色々な問題解決のためのツールを一冊に纏めたものだ。それぞれのツールの名前が紹介された後に、やり方、サンプル、解説などが何ページかに渡って続く。全体は、直線的な因果性のある「リニアな問題解決」と因果関係がループになっているような「サーキュラーな問題解決」の二部構成になっている。

 読者は、これらをすべて覚える必要はないだろう。この中から自分と相性がよさそうなものを選んで、実際の問題に適用して使い込むという事が重要ではないかと思う。何しろ、一つ一つの手法は、それだけで一冊の本が書けるくらいなのだ。それがぎゅうっと濃縮されて、そのエッセンスだけが詰まっていると思えば良い。それらの手法の元ネタも記されているので、自分が使うためにはそちらも読んだ方が良いだろう。

 中には特性要因図やPDPCといったQCサークル活動などでおなじみの手法が入っているが、例えば線形計画法といったようなOR的な手法は入っていないし、AHPやFMEA(なぜか対のように扱われるFTAはロジック・ツリーのところで解説されている)といったものも収められてはいないが、この辺りは、著者の好みが入るのかもしれない。

 最初に似たようなことを書いているが、本当に問題解決に役立てようと思ったら、特定の手法を自家薬籠中のものにするくらい使いこなさなくてはならない。本を一冊読んだからといってとたんに問題がスイスイ解決できるようになるというような虫のいい話はどこにもないのである。

 本書の価値は、これまで問題解決のための手法というものにあまりなじみがない人に対して様々なツールをメニューのように示し、考えるためのヒントを与えてくれるということに尽きるだろう。とにかく実践あるのみである。

 なお、本書は、フォレスト出版さまからのいただきものです。ありがとうございました。
 

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小さくても勝てます4


・小さくても勝てます
・さかはらあつし
・ダイヤモンド社

 本書は、理容室「ザンギリ」を舞台にして、小説仕立てで小さな組織でもうまく戦略的な事業活動を行えば成果があがることを示したものだ。なお、舞台となった「ザンギリ」は実際に西新宿に存在している。

 実際のホームページにはスタッフが似顔絵イラストとともに紹介されているので、本書に登場するザンギリのスタッフはすべて実在の人物であることが分かる。

 ザンギリは元々は、家族で営むオフィスビルの地下にあるどこにでもある理容室だったようである。ある日ザンギリ二代目の大平法正氏は、たまたま訪れた立三という元戦略系のコンサルタントに興味を持つ。京都の人間という設定のようだが、関西弁丸出しのヘンなおっちゃんという感じなのだ。

 本書は、法正氏が、立三さんの指導を受けながら、どのようにザンギリを発展させていくかというものになっている。

 よく知られているように、理容業界というのは価格競争が激しい世界だ。組合に加入している理容店だと4000〜5000円の料金が普通だが、その一方では早くて安いがい売り物の格安理容室も台頭している。果たしてどのようにすれば、普通の理容室である「ザンギリ」に未来が開けるのか。

 ところで、皆さん、経営学や経営戦略に関する本を読んで、どうにも理解できなかったことはないだろうか。本書は、それらに出てくるツールを具体的にどのように使えばいいのかがよく分かり、その方面を勉強したい人には役に立つものと思う。

 蛇足ながら一言付け加えたい。本書の中で法正氏の父親が、知人の保証人になる場面があったが、その後の展開は予想通り。借りた人間が行方をくらましたらしく、法正氏の父親も入院したので、法正氏が対応した。その時取り立てに来た先方の営業部長が、「払えなかったら、どうなるんすか?」という問いに対して、「(前略)足りない分は腎臓でも売って、返してもらうことになるんじゃないかな」(p212)なんて言っているが、今どきこんな取り立てをしたら、法的には完全にアウトだ。

 常連客の弁護士に相談したら、「これは仕方ないね。契約は契約だから」と言ったらしい。取り立ての際にそんな発言をしているくらいだから、金利の方も違法な可能性もある。本当にどこまで返済しないといけないのかを洗い直す必要もあるだろう。かなりフィクションが入っているとは思うが、弁護士が本当にこんな発言をしたのなら、どれだけ無能なんだと思ってしまう。

 ともあれ、経営企画関係に興味がある方、その方面で仕事をしている方、大学などで勉強をしている方などは、一読しておいても損はないと思う。

 なお、本書は「オトバンク」さまよりのいただきものです。ありがとうございました。
 

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幸せとお金の経済学4


・幸せとお金の経済学
・ロバート・H・フランク、(訳)金森重樹
・フォレスト出版

 本書の教えるところによれば、財には、「地位財」と「非地位財」の二つの種類があるようだ。私は元々は電気工学が専門だが、経済学関係の本も割と読んでいる。しかし、他書であまりこの概念について書いてあった覚えはない。

 ここで、「地位財」はコンテクストの影響を受ける財のことだ。要するに相対的な位置づけが重要だということである。本書に載っている例としては、家の広さがある。他の人が6000平方フィートの家に住んでいる中で、自分だけ4000平方フィートの家に住むのと、他の人が2000平方フィートの家に住んでいる中で、自分だけが3000平方フィートの家に住むのとではどちらが良いかというものだが、絶対値でいえば前者の方が家が広いにも関わらず、ほとんどの人が後者を選ぶという。

 これに対して、「非地位財」というのは絶対的な位置づけが重要な財のことだ。これも本書に載っている例だが、他の人が、年間6週間の休暇をもらえる中で、自分だけが4週間の休暇しかもらえないのと、自分は年間2週間の休暇がもらえるのに、他の人は1週間しかないのとどちらが良いかというものだが、これはほとんどの人が絶対数の長い前者を選択したのである。

 アメリカでは、近年所得格差がどんどん広がっているという。そして、高所得層は、可処分所得が増えるので、例えば、もっと広い家を持つようになる。この割を食うのが中間所得層以下である。家は、「地位財」だから、高所得層に近接している中間所得層は、その影響で自分たちもより広い家を求めるようになり、それが次々に下位の層に伝搬していく。これでは、少しばかり所得が伸びても、決して生活は豊かにはならない。

 考えてみれば、これは日本でも似たようなことはある。例えば勤めている会社の給与水準が、世間一般では平均よりかなり高くても、同期の人間より100円でも給料が安いと、ものすごく不満を持つのではないか。これは、コンテクストの中で、満足、不満足を判断してしまうからだ。

 要するに、金をたくさん使えるようになっても、それは、基準が上方にシフトするだけで、決して幸福にはつながらないのだ。本書には面白い例が載っている。経済学者のリチャード・レナードの言葉のようだが、「豊かでない国では、夫の妻への愛情表現は1輪のバラですが、豊かな国ではバラの花束が必要です」(p209)というものである。しかし、いつも花束を贈っていては、それが当たり前になって、ありがたみも薄れるかもしれない(笑)。

 著者はアメリカの経済学者なので、アメリカを例に語られているが、これは日本についてもあまり変わりはないように思える。「吾唯足知」、「われただ足るを知る」という禅の言葉がある。京都の竜安寺のつくばいに記されていることでも有名だが、私達はこの言葉をもっと噛みしめなければいけないのではないだろうか。

 なお、本書は、フォレスト出版さまからのいただきものです。ありがとうございました。

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