風竜胆の書評

コミックスから専門書まで、あらゆる本を読みます。元エネルギー企業の専任部長。現在は、ライター・書評家を標榜する自由人w 時に書評が過激になるのは、長州人の血? 現在「シミルボン」と「本が好き!」でも活動中。 執筆依頼、献本等歓迎します。右欄のメッセージ機能にてご連絡ください。 旧ブログ名:本の宇宙(そら)

ビジネス書

図解 渋沢栄一と「論語と算盤」4



・図解 渋沢栄一と「論語と算盤」
・斎藤孝
・フォレスト出版

 2024年度上期を目途で発行される新紙幣の1万円札の肖像に使われる渋沢栄一。名前くらいは知っていても、どんな人かと言われると意外に知らないものだ。本書は、彼の生涯と主要な著書「論語と算盤」を紹介したものである。ここで、「論語」と言えば孔子の教えを期したものだが、「算盤」というのは経済という意味らしい。

渋沢栄一は、1840年(天保11)、武蔵国の血洗島村(現在の埼玉県深谷市地洗島)の豪農の子として生まれた。家は藍玉の製造販売で財を成し、栄一も小さなころから英才教育を受けた。

 しかし、江戸時代といえば「士農工商」の時代。一方的に代官に御用金を申し付けられ、「能力のない人間が身分だけで上から物を言う」理不尽さにバカバカしくなり、倒幕を目指す。

 クーデターを計画したものの、その計画が頓挫し、御三卿の一つ一ツ橋家の家老並だった平岡平四郎のつてで、一ツ橋慶喜の家臣となる。ところがその慶喜が15代将軍になってしまう。

 彼がフランス万博に行っている間に、大政奉還が行われ時代は明治に。ところが大隈重信により、明治新政府に誘われ、大蔵省に勤めることになる。しかし政府高官と対立し、民間に転じた。

 倒幕を目指していた人間が、いつの間にか幕臣になり、そして明治新政府に仕え、民間に転じて色々な分野で活躍する。そういったところに、運命の面白さを感じてしまう。

 その栄一が、指針としたのが論語だ。私など論語と言うと古臭くて読む気がしないものだが、当時の教養人には必読の書だったのだろう。もっとも、論語を解釈したのは栄一であり、彼の思想が大分入っているのではと思う。要するに、ある書から何を学べるかは、読み手次第だ。別に論語でなくても仏典でもよかったのかもしれないが、栄一は僧侶でないので、論語を学ぶ方が一般的だったのだろう。
 
 新一万円札の顔となる渋沢栄一に興味がある人に勧めたい一冊である。


 なお、本書は、フォレスト出版さまからの頂き物です。ありがとうございました。

どう伝えればわかってもらえるのか? 部下に届く 言葉がけの正解3


・どう伝えればわかってもらえるのか? 部下に届く 言葉がけの正解
・吉田幸弘
・ダイヤモンド社

 本書は、リーダーが部下に対してどのように伝えればいいかを述べたものだ。本書を読むに当たって思ったのは、このリーダーというのはどの位の職位を指しているのかということだ。職位というのは会社によって色々と異なり、リーダーというのも、会社によっては正式な職位ではない場合もある。要するに、一般の(管理職ではない)部下を直接持って仕事をしている人を指し、おそらく課長以下の職位を指しているのだろうと思う。それは次のような記述から推測される。

 例えばこんな表現がある。「人材サービス会社の企画部に所属するリーダーAさんは・・・」(p34)。「全国展開している教育機関の広報部に所属していたリーダーAさんは、・・・」(p40)。所属しているということは部長ではないということで、それ以下の職位だろうということが推測される。

 この部分には、リーダーが課長であることが明記されている。「広告会社の課長職であるリーダーAさん・・・」(p125)

 確かに伝え方は大事である。判断基準を明確にして、ある程度は部下の判断にまかせるという事にも賛成だ。私が一番伝え方が下手だと思っているのは、大学教員ではないかと思う。皆さんは、試験問題なんかで経験はないだろうか。「〜について述べよ」という問題を。これでは漠然としていて何を答えて欲しいのか分からない。そして出題者の意図と違えば、減点する。私が大学教員に言いたいのは、「もっと日本語を勉強せーよ」ということ。答えて欲しければ、出題の意図をはっきりさせて、何を答えて欲しいのかを明確にする必要があるだろう。もっとも理系で賢い教員は、こんな曖昧な問題を出さずにとにかく計算させるような問題を出すだろうが。

 次の部分には疑問がある。「28 部下のSNS投稿で負の投稿が目立ち始めたら危険信号!?」(pp162-168)だが、実名でまずい投稿をする社員がそうたくさんいるとは思えない。もし実名でネガティブな投稿をしているのなら相当なバ〇というべきだろう。実名でそんな投稿をすると、場合によっては懲戒処分となることも考えられることをまず教えるべきだろう(もちろん匿名なら何を言っても良い訳ではない)。

 次の育休に関する部分も書き方に工夫が必要だろう。「38 男性部下が育休の申請をしてきたら認める前に心配事を聞く」(pp210-213)という項目に×認める 〇安心感を与える となっていることだ。趣旨は、部下の悩みなどを聞いて、育休をとっても大丈夫とまず安心感を与えるということだが、会社の制度として育休があるのなら、認めるとか認めないとかはリーダーの判断を超えることだ。会社によっても異なるだろうが、おそらく部長クラスの権限も超える。就業規則にあるのなら認めないといけないし、もし育休を申請した社員に不利な扱いをするのなら、コンプライアンス上の問題も出てくる。これを建前だと思っていると、あとで経営者はひどいしっぺ返しを食らうことになると思う。

 これも引っかかる。「39 休みは仕事を整理するチャンス。業務改善のチャンスととらえる」(pp214-217)。これは有給休暇のことを言っているのだが、休む前にどう業務を改善していくかを話し合うのは別に反対ではない。気になるのは、「・・有給を許可します。」(p214)という表現があることだ。おそらく筆がすべったのだろうが、本来、有給には許可するとかしないとかいう問題は発生しない。なぜなら企業側には時季変更権しかないので、取得理由を言う必要はないし、ましてや不許可にしたり認めないといったことはできないからだ。ただ、その日に有給をとると正常な業務が妨げられるから時期を変えてくれということはできる。しかし、時季変更権を乱用することは許されない。日本には完全にホワイトな会社はないと思うが、有給を不許可にしたとたん、その会社はブラック企業になってしまうのではないだろうか。

 ともあれ、本書の趣旨は、部下とよくコミュニケーションを取れということだろうと思うので、就業規則や労働法などをよく理解したうえで、適切にやっていく必要があるだろう。そのやり方はもしかすると、企業や業種によって違うのかも知れないので、実態に合ったように自分で工夫する必要があると思う。

 なお、本書は著者さまからのいただきものです。ありがとうございました。




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まんがで身につく 続ける技術 Business ComicSeries4


・まんがで身につく 続ける技術 Business ComicSeries
・石田淳、(漫画)臼土きね
・あさ出版

 あなたはこんな経験はないだろうか。何かをやろうと一念発起して、3日坊主で終わったことが。そんな人はぜひこの本を読むといいと思う。

 物事を続けるためには「技術」がある。「続ける」ためには、「才能」も「意志」も「やる気」も不要だというのが本書の主張だ。

 そのためには、何をコントロールしたいのか。コントロールしたい行動を「ターゲット行動」といい、これは「過剰行動」と「不足行動」に分けられる。「過剰行動」というのは、減らしたい行動や止めたい行動であり、「不足行動」とは、増やしたい行動のことである。そして「不足行動」には、それを妨げる「ライバル行動」がある。

 こういったことを、本書は漫画仕立てで、あまり本を読む習慣がない人でも分かりやすく教えてくれる。

 本書の主人公は、野呂豊という28歳のサラリーマン。何をやっても3日坊主で、営業成績はビリ。ところが、引き抜きで25歳の樹林こずえが課長としてやってきたことから、彼女の指導により野呂は変わり始める。そして最後には変身した野呂が、ニューヨーク派遣に選ばれるのである。

 実はいろいろオチがあるのだが、こんな可愛らしい課長さんの下で働きたいという人は、意外と多いのではないかと思う(笑)。

 これまで、何をやっても長続きしなかった人には、一読する価値はあるのではないかと思う。


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ひらめかない人のためのイノベーションの技法4


・ひらめかない人のためのイノベーションの技法
・篠原信
・実務教育出版

 本書は、天才でなくともイノベーションはできるというコンセプトのもとに、そのための技法を紹介したものである。様々な技法が紹介されているが、これを全部習熟する必要はないと思う。この中のいくつかでも身に着けることができれば大成功だろう。

 本書で特に興味深かったのはまず「産婆術」。無知な者同士が「問い」を重ねあうことにより、新たな知を発見するというものだ。これは古代ギリシアでソクラテスが行っていたことである。確かにいろいろと議論しているうちに、パッと新しいアイデアが閃くことがある。しかし、これは相手を選ぶ必要があるだろう。中には持論を絶対に曲げずに、自分の意見を声高に述べる。こういう人と議論していても、いやな気持になるだけである。

 そして、ノーベル賞受賞者である本庶佑さんが言った「教科書を疑え」ということ。本書に書かれている「教科書に書かれていることには暗黙の前提がある」という指摘には目から鱗が落ちたようだ。確かに教科書に書かれるようなことは誰がやっても同じ結果をもたらす。しかし、それには暗黙の前提通りにやった場合で、そこから外れるとまた違う結果が出てくる。本書では、それを水素や鉄を例にとり説明している。

 もちろん、本書を一読しただけで直ぐイノベーションができるわけではない。そんなことができれば、その人は本物の天才であり、おそらくこの本の読者対象からは外れるのだろう。大切なのは、常にこれらを頭に置いて、折に触れ考えていくことなのだろう。

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問題解決力を高める「推論」の技術4



・問題解決力を高める「推論」の技術
・羽田康祐
・フォレスト出版

 本書は、問題解決によく使われる推論の3つの技法について解説したものである。すなわち、帰納法、演繹法、アブダクションの3つだ。帰納法、演繹法についてはロジカルシンキングについて書かれた本ならまず載っているのだが、3つ目は他の2つのように訳語がないことから最近言われ始めたのだろう。アブダクションについてはあまり覚えがない(私が知らないだけかもしれないが)。

 本書の構成は、まず推論力とは何かを定義して、その後、帰納法、演繹法、アブダクションについて、それぞれ章を割いて説明している。それを読めば、どういったものか、その使い方、トレーニング方法などが分かると思う。しかし実際には、これらを単独で使うよりは組み合わせて使う場面の方が多いだろう。ということで、最後の章で、これらの合わせ技を解説している。

 しかし本を一度読んだだけでは本当のスキルは身につかないのはもちろんである。問題の大小に関わらず、実際に使っているうちに、だんだんと洗練されて自家薬籠中のものになっていくのだ。 

 なお、本書はフォレスト出版さまからの頂き物です。ありがとうございました。続きを読む

株とお金の未来を読む! (資産はこの「黄金株」で殖やしなさい)4





・株とお金の未来を読む! (資産はこの「黄金株」で殖やしなさい)
・菅下清廣
・実務教育出版

 本書は、タイトルの通り、株とお金の視点から世界情勢を述べたものだ。最近はあまり、この手の本は読まなくなったのだが、たまにはということで読んでみることにした。

 主に述べられているのは、アメリカのこと。そしてその次が中国のことであり、そのことは表紙の写真から想像できることと思う。

 今年は、アメリカ大統領選挙の年だ。トランプ大統領の再選を前提として、アメリカ株や日本株の上昇傾向はさらに続くだろうというのが本書の主張である。

 本書には、世界情勢やアメリカ、中国の動きなどが描かれており、大いに参考になると思う。

 しかし、細かいことを言うといくつか、気になる部分がある。まず「波動理論」なる言葉が頻繁に出てくる。おそらく他の著書では説明しているのだろうが、本書にも簡単に触れて欲しかった。

 次に本書には
「民主主義で自由のある国でなければ人材は育たない」(p55)

とあるが、本当にそうだろうかと思う。中国のような1党独裁の国でもGDPは世界2位になっているではないか。確かに科学方面のノーベル賞受賞者は出ていないが、別にノーベル賞だけで人材を評価できるわけではない。要するに国として、特定の分野にどれだけ力を入れるかということだろう。

 そして、最後に個別の株式銘柄が出ているのだが、最初の方を読まずに、この部分だけ読んでもそう問題は感じられない。また、A型〜D型といったタイプが個別の銘柄につけられているが、特に説明がないなと思ったら、なんと「はじめに」の部分にあった。この部分は、読まない人もいると思うので、個別の銘柄に近いところに説明を書いた方がいいだろう。


最速で10倍の結果を出す 他力思考3


・最速で10倍の結果を出す 他力思考
・小林正弥
・プレジデント社

 本書のキモを一言で言えば、「人の能力には限界があるので他人の力を借りよう」ということ。いくら優秀な人でも、自分一人だけでは独善的な考え方になってしまう。何でも自分でやろうとせず、能力にしても人脈にしても人の持っているものを借りれば、そこにレバリッジがかかり、タイトルのように、自分一人でやっているのとは比較にならないくらいの成果を出すことができるのである。

 こういう経験はないだろうか。何かを自分一人で考えていた時にはいい考えは出なかったのに、誰かと議論していると、うまいアイディアが浮かんできたことが。これは他人の頭を借りる一つの例だ。

 いま、ネットでは様々な情報が溢れている。ちょっと検索をかければ、簡単に多くの情報を手に入れられる時代である。しかし本書でも触れているように、有益な情報を手に入れるには、検索力や質問力が必用なのだ。

 何を取り入れて、何を取り入れないかは自分で判断する必要はあるだろう。また、人の知恵を借りる前にある程度は自分で考えて置く必要もある。宗教ではないが、「絶対他力」というのは危険だ。それだとロボットや盲信者・狂信者と変わらないだろう。要は自分の頭を使う必要のないところは、うまく人の頭を使うということだろう。

 管理職になったら、ぜひこの考え方を取り入れることを勧めたい。係長クラスならともかく、課長クラスになれば、そうでないと、幅広い業務をこなしていけないだろう。指示は出すが、具体的なやり方・進め方は部下に任せないと、沢山のことは成し遂げられない。

 なお、本書は、著者様からの頂き物です。ありがとうございました。

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H23.3:書評コミュニティ「本が好き!」より「免許皆伝」称号を受ける

H23.3.16:読売新聞朝刊“読者のホンネ”に「カラスと髑髏―世界史の「闇」のとびらを開く」の100字書評掲載

H25.10.26発売の図書新聞(3132号、2013年11月2日号)に「泥棒は几帳面であるべし」の書評掲載

H26.6,28発売の図書新聞(3165号、2014年7月5日号)に、「市場主義のたそがれ―新自由主義の光と影」の書評掲載

H28.8頃より「シミルボン」への投稿開始

H29.7.4「彗星パンスペルミア」の書評が「新刊JP]に掲載

H29.10.19「ハンナ・アーレント - 「戦争の世紀」を生きた政治哲学者」の書評が「新刊JP」に掲載

H29.11.24「ペンギン・ハイウエィ」の書評が「新刊JP」に掲載

H29.12.26.「ニッポンの奇祭」の書評が「新刊JP」に掲載

H30.1.18.「問題解決大全――ビジネスや人生のハードルを乗り越える37のツール」の書評が「新刊JP」に掲載

H30.4.26.「メゾン刻の湯」の書評が「新刊JP」に掲載

H30.7.20.「極道ピンポン」の書評が「新刊JP」に掲載

H30.7.26.「シミルボン」にインタビュー記事掲載

2019.2.23.「本が好き!」×「書店フェア」で「あなたの街で本と出会う Vol.2」に「こころを彩る徒然草」のレビュー掲載

2019.04.28.【本が好き!×カドブン】コラボレビュー!第4回『皇室、小説、ふらふら鉄道のこと。』の書評が掲載

2020.01.24.「貧乏大名“やりくり”物語 たった五千石! 名門・喜連川藩の奮闘」が「新刊JP」に掲載

2020.02.04.「どんなことからも立ち直れる人」の書評が「新刊JP」に掲載

2020.04.28.「半自伝的エッセイ 廃人」の書評が「新刊JP」に掲載
本が好き!免許皆伝レビュアー風竜胆
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