・21世紀型「のれん分け」ビジネスの教科書
・高木悠
・自由国民社

 「のれん分け」自体は昔からある。そして多くの人は「フランチャイズ」と言う言葉を聞いたことがあるだろう。フランチャイズとは、本部と契約を結ぶことで、経営ノウハウや商品・サービスの提供を本部と同じ看板で行うものだ。

 21世紀型「のれん分け」とは、フランチャイズの1種だが、通常のフランチャイズは、本部とは直接的な関係のない第3者と契約をするが、「のれん分け」は、本部で働いていた社員が経営者となる点が異なる。つまり、功績のあった社員を関係会社の社長として送り出すようなイメージを持てばいいだろう。ただ、店舗を持つためには自分で資金を出す必要がある。この点、通常の関係会社の社長なら、極端な話、裸一貫で行けばいい。

 いくつか疑問がある。この方法だと単に本部の経営者の劣化コピーが広がるだけだ。本部の経営者よりのれん分けされた方が優秀なら、今す直ぐ役割を交換した方がいい。順調に行っているときは、劣化コピーを増やしてもいいのだろうが、いざ何かあった時には全滅しかねない。生物が色々な遺伝子を取り入れることにより、環境に適応して生き延びてきたことをどう思うのだろうか? 今回のコロナ禍のように、いつこれまでに経験したことのないような事態を迎えるかもしれないのだ。その時こそ色々な考え方の人がいた方がいいと思う。どこにブラックスワンがいるか分からないのである。更に本部の経営者が変わったときはどうなるのだろう。経営者が代替わりして、経営に対する考え方が変わり、新旧経営者間でトラブルになっているという話は時折聞く。

 本部の経営者は、のれんわけした会社にリスクを移転できるし、のれん分けされた方は宮使えから1国1城の主となるのだ。一見Win-Winの関係のようだが、読んでいると、全体的に本部の経営者の視点で書かれているように見える。著者の職業からは仕方ないのだろうが、当然のことながら、のれん分けされた方が数としては圧倒的に多い。次に本を出すときはそちらの視点で書かれたものを期待したい。

続きを読む