風竜胆の書評

コミックスから専門書まで、あらゆる本を読みます。元エネルギー企業の専任部長。現在は、ライター・書評家を標榜する自由人w 時に書評が過激になるのは、長州人の血? 現在「シミルボン」と「本が好き!」でも活動中。 執筆依頼、献本等歓迎します。右欄のメッセージ機能にてご連絡ください。 旧ブログ名:本の宇宙(そら)

少女

ぶらガール4



・ぶらガール
・甘詰留太
・白泉社

 これはおそらく並行世界の物語。作品中にこのような一文がある。

 「私達の住むこの世界では・・・」(p9)

 「この世界」とわざわざ断っているということは、我々の住むこちらの世界ではないということなのだろう。しかし異世界といっても、こちらの世界と大きな違いがあるわけではない。人々は普通に生活を送り、若者たちは恋をする。

 しかし、一つだけ違うことがある。あちらの世界では、女の子の中に、稀に第3次性徴期を迎える者がいるということだ。第3次性徴期を迎えるとどうなるかって?女の子なのに、股間ににょきにょきと、あるものが生えてくるのである。

 作品のヒロインは、大井はるかという16歳の高1少女。彼女も、第3次性徴期が訪れた一人だ。股間から生えてきたものは、生殖能力がないという以外はほとんど男の子のものと同じ機能。だから、朝はなかなか大変なのだ。刺激されると形状が変わるし、もっと刺激されると・・・、いや止めておこう。

 しかし、はるかはあくまでもどこにでもいるフツーの女の子である(そう作品中に書いてある)。だから一部腐女子層が喜ぶような存在ではないし、かっこいい男の子には普通に恋をする。しかし、自分の股間には、相手の男の子より立派なものがついていたりするので、悩みは尽きない。

 この作品は、はるかが大好きな男の子六道亮一と繰り広げるラブコメなのだが、はるかの股間には立派なモノが生えているため、それをネタにした話が多い。果たしてはるかの恋は実るのか?可愛らしいはるかが、自分より立派なモノを持っていると知ったとき、亮一はどう行動するのか?考えてみれば下ネタばかりなんだけど、なかなか微笑ましいストーリーに仕上がっている。

 しかし、ついている女の子専用だという象さんパンツが出てくるが、あれはさすがにないよな・・(笑)

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時空の流離人

ココロ・ファインダ5


・ココロ・ファインダ
・相沢沙呼
・光文社文庫

 本書は、高校の写真部に在籍する4人の少女ミラ、カオリ、シズ、秋穂の物語だ。4つの話から構成されており、それぞれ語り手を変えて、彼女たちの心の内が描かれる。収録されているの物語には、いずれも写真に関係のあるタイトルがつけられている。

○コンプレックス・フィルタ
 語り手は野崎鏡子(ミラ、ミラ子)。彼女は容姿にコンプレックスを持っており、自分の写真を見て、女装している男みたいだと卑下する。そして、可愛らしいカオリを羨望の眼差しで見ているのだ。
「ミラ、と呼ばれる度に、心の中で笑ってしまう。鏡の見れないミラ子。なんて矛盾だろう。」(p9)

 ある時、カオリが部活に顔を出さなくなった。仲のよかったカオリとシズの間で何かあったらしい。シズが撮ったカオリの写真に何かが写っていないことで怒っているようだが、それはいったい何なのか。


○ピンホール・キャッチ
 語り手は秋穂。彼女は、4人の少女の中で唯一の一年生部員だ(他の3人は二年生)。写真に興味を持ったのは、高校に入ってから。だから写真に関する知識はないが勉強熱心。しかし、自分に自信がなく、人と話すのが苦手だ。自分らしいとはどういうことか分からず悩んでいる。
「わたしの放つ光は弱すぎて、誰にも届かない。自分自身にさえ届かない。だから、わたしはわたしがわからない」(p92)

 ミラ子のSDカードをパソコンで開くと、撮った覚えのないクリーム色の壁が写ったフアィルが。壁の合間に数字が写った写真もある。ディレクトリは、見慣れないworksという名前。どうしてこんなファイルが紛れ込んでいたのか。


○ツインレンズ・パラドックス
 語り手は、日比野香織(カオリ)。他の部員の誰もが認める可愛らしい美少女だ。彼女は可愛らしさにものすごく拘っている。しかし、活発で可愛らしい自分のキャラは人工的なものだという罪悪感となって彼女の心に影を投げかけている。
 「過去の思いでをすべてなかったことにして、作り替えたかった」(p178)

 彼女が語る中学時代の同級生映子の話。真面目な優等生で、服装は校則通りのダサい格好。校則を守らない子を注意しているうちに、クラスの皆から無視され、いじめられるようになった。英子とは誰なのか。


○ペンタプリズム・コントラスト
 語り手は、天野しずく(シズ)。黙っていれば日本人形のように可愛い。成績も良く、写真は部員の中でも一番の本格派。物静かで人見知りが激しく人付き合いが苦手だ。ただし単におとなしい娘というだけではなく、攻撃的な性格でもある。芸術学部のある大学に入って写真を続けたいのだが、それは両親の期待とは違う。シズは、自分が両親が期待するほど優秀な子ではないと悩んでいるのだ。
「わたしは最初から、出来損ない。失敗作なんだ。」(p221)

 文化祭の展示で使ったシズの撮った10枚の写真。そのうちの1枚だけが日に焼けていた。写真屋で現像したはずの写真を誰かがインクジェットプリンターで印刷したものに取り替えていたのだ。いったいなぜ。

 この作品で描かれるのは、硝子のように壊れやすい、思春期の少女たちの心。色々なことで悩み、傷つく。クラスの女子たちの幼稚な陰湿さもそこに加わってくる。

 それでも彼女たちの心は、写真を通して堅く繋がっている。キーマンとなるのはシズだろう。彼女は他の3人のコンプレックスを救っていくことになるのだが、彼女自身も他の3人によって救われるのだ。読んでいると、もう4人の少女たちが、可愛らしくって、愛おしくって。

 また、各話の中にはちょっとした謎が提示されているので、青春小説というだけではなく、学園ミステリーとしての性質も備えている。つまり本書の性格を一言表せば、青春学園ミステリーというところか。一読すればきっと、相沢紗呼の描く少女たちの世界に引き込まれていくこと請け合いだ。

※本記事はシミルボンに掲載したものです。


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東京自転車少女。15



 東京は練馬区を、自転車に乗った女子高生たちが探訪する物語、「東京自転車少女」(わだぺん:アース・スターコミックス)の第1巻。

 主人公は、憧れの東京ガールになりたいと、島から出てきて東京の高校に通うことになった、島野いるかという、天真爛漫な高校1年生の少女。愛車はママチャリのワカマツ号。

 彼女が東京で最初に出会ったのが、ルームメイトになる加藤さん。こちらは、東京嫌いのクール・ビューティー。その美人度は、練馬に伝説のある照姫の再来かと言われるくらいだ。愛車はロードバイク。いるかは、そのかっこよさに、いっぺんで加藤さんラブになってしまうのだが、彼女はかなりのツンデレ娘。なかなか相手にしてもらえない。面白いのは、この加藤さん、大阪のおばちゃんとは程遠い、可憐な女子高生のはずなのに、身に着けているもののどれかが、なぜか豹柄なのだ。

 いるかは、半分だまされたような形で、「自転車天使部」に入れられてしまうのだが、この部のメンバーがなかなか変わっている。まずは、3年で部長の松竹梅雪見。老舗の和菓子屋の娘で、おっとりした性格だが、その母性は並ぶものなし。一度彼女の膝枕と頭なでなでの味を覚えてしまうと、すっかり中毒になってしまうというから恐ろしい。いるかも、すっかり、その魔力の虜になってしまって、入部させられてしまったのだ(笑)。愛車はクロスバイク。ちなみに、極度の方向音痴。

 そして、2年生の彩果。こちらは、部長とは正反対の、いかにもちゃきちゃきの下町っ娘という感じだ。あちこちの店でツケがたまっているらしい。愛車はミニベロ。実は、これまで「自転車天使部」のメンバーは、この2人だけ。だからいるかを逃がしたくなかったようだ。

 この物語は、いるかが自転車天使部の皆と、東京の魅力を再発見していくというもの。東京が嫌いと言っていた加藤さんも、いるかに巻き込まれるように、東京の魅力を発見していくようになる。可愛らしい少女たちの繰り広げる物語は、とても楽しい。





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少女病2





 ロリコン親父というのは、昔から居たようだ。私小説作家として「蒲団」などの作品で知られる田山花袋の「少女病」だ。主人公は、杉田古城という文学者。かっては、少女小説でもてはやされたようだが、今はすっかり忘れられて、雑誌社の社員として糊口をしのいでいる。

 この先生、とにかく少女大好きなのだ。趣味は少女ウォッチング。雑誌社には電車で通勤しているのだが、その途上が彼が自分の趣味に没頭する場のようだ。どこから、どんな少女が乗ってくるかもしっかりチェックしている。そして、少女を見ながら、たわいもない妄想にふけるのだ。触ったりはせず、ただ眺めて楽しむだけなので、一応害はないようだが、結構蛮カラな風貌をしているため、少女との対比が面白いのか、友人たちからは嘲笑の的だ。

 先生の許容範囲はかなり広く、<若い女なら、たいていな醜い顔にも、眼が好いとか、鼻が好いとか、色が白いとか、襟首が美しいとか、膝の肥り具合が好いとか、何かしらの美を発見して、それを見て楽しむ>らしい。それでも、発見されるような美が一か所もない場合は、<見ただけで不愉快だ>と、自分のことは棚にあげ、何とも勝手なことを言っている。もし、隣に、漫☆画太郎氏のキャラのような娘が座ったらどんな反応をするんだろう(そんなのいるわけないか(笑))。

 呆れてしまうのが、ラストの場面。いかにもこの先生らしいというか。アホらしいというか・・・。


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少女4




 湊かなえの、「少女」(早川書房)。物語の内容をごく手身近に紹介すると、だいたい次のようになる。主人公は、敦子と由紀という、女子高生。敦子は過呼吸症のため、由紀は、左手の怪我のために、中学時代に打ち込んでいた剣道をあきらめなければならなかった。二人は、親友同士だが、どこか気持ちがすれ違っているかのようなところがある。しかし、心の底では。互いを思いやっている。高校二年の夏休み、敦子は、特別老人養護ホームの手伝い、由紀は小児科病棟へ入院している子供たちへの読み聞かせと、それぞれボランティア活動に参加することになった。そこで体験した、様々なできごとを通じて、二人は親友としての絆を確認する。

 こう書くと、とても微笑ましい話のようだが、さすがにイヤミスとして話題を呼んだ「告白」の作者だ。一筋縄ではいかない。敦子が過呼吸症になったのは、学校裏サイトへの同じ剣道部員からの陰険な書き込みが原因だし、由紀の手の傷も、認知症が進んだ祖母に付けられたものだ。だから、二人は、心に鬱屈したものを持っている。彼女たちがボランティア活動をやったのも、転校生の紫織から、親友が自殺したのを目撃したことがあるという話を聞いて、自分たちも人が死ぬ瞬間を見たいというとんでもない理由からだ。

 学校裏サイトや無実の人に痴漢の言いがかりをつけ、金をせびる女子高生。由紀にしても、ブランド物を買う資金を、自分に変なことをしようとしたオヤジを脅して出させようと考えたりする。少女とは、これほどまでに裏と表の違う生き物なのか。

 男たちは、少女に対して、清く、正しく、美しくという幻想を抱いている。しかし、この作品は、女性作家の冷静な目で、少女たちの持つ、不安定さ、奇妙な倫理観、本質的な残酷さを洗いだし、男たちの夢を木端微塵に砕いてくれる。それにしても、各所に散りばめられた、ちょっとしたエピソードが、次第にパズルのピースのように、一つにまとまっていく作者の手腕は見事である。


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少女には向かない職業4



 どこか異形を抱えた少女を描かせたら並ぶもののない桜庭一樹の「少女には向かない職業」(東京創元社)。 舞台は、下関市に沖合にあると言う設定の架空の島。沖縄でもないのに、なぜかサンゴ礁の島で、本土とは橋で結ばれている。主人公は大西葵という13歳の少女だ。

 彼女の父親は既に亡くなり、母親の再婚相手の義父はアルコール中毒。仕事もせずにぐうたらし、葵がバイトで稼いだお金を財布から抜き取るようなろくでなしだ。母親も生活の疲れからくるイライラを葵にぶつけてくる。

 学校ではひょうきんなキャラを演じているが、その学校も彼女にとって必ずしも楽しいところではない。、誰かが好きな男子に手を出したとか出さないとかで無視したりするような、女子世界特有のめんどくささ。葵の心は、何の悩みもなさそうな迷い山羊にあたってしまうような深い孤独に満たされている。そんな葵がもう一人の異形を抱えた少女、宮乃下静香と知り合ったことから、運命の歯車は大きく狂いだした。

 下関市がサンゴ礁の島と結ばれていたり、葵の武器が、修学旅行で買った土産物のバトルアックスだったりと、思わずつっこんでしまいたくなるようなコミカルな設定ながら、その裏に潜む、少女の痛ましいまでの哀しさと閉塞感がよく伝わってくる。やはり、桜庭一樹の描く少女は一味違う。


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ブルースカイ4




 晴天の空を思わせる、青一色の表紙が目を惹く桜庭一樹の「ブルースカイ」(早川書房)。過去から未来と、時空を超えて逃走を続ける青井そらという少女の物語だ。

 最初の場面は、魔女狩りの場面が吹き荒れる中世ドイツのレンス。この魔女狩りというのは、例えば、「魔女狩り」(森島 恒雄 :岩波新書)などに詳しいが、多くの無実の人が教会の手により魔女として処刑された。愛を語るキリストの使途の仕業とも思えない凄惨な歴史であるが、宗教というものが本質的に持っている、独善性や偏狭さを表した出来事だと言えるえだろう。本作中にも、クリスティーネという美しい女性が、この魔女狩りによって惨たらしい殺され方をする場面が描かれており、胸が痛くなる。少女は、この時代で、マリーという小さな女の子を助けて旅をすることになるのだが、この世界では、女性は、子供からいきなり女になってしまう。現代の日本から来た少女は、不思議な格好をした黄色い肌の悪魔であり、<アンチ・キリスト>なのだ。

 次に少女が現れるのは、2022年のシンガポール。姿を現すのは、3Dグラフィックデザイナーのディッキーという男性の前。この世界では男子は草食系でか弱い存在であり、女子は肉食系で逞しい。そして、少女とは、3Dグラフィックの中にしか見られないような、絶滅危惧種のクリーチャーだ。

<ぼくはきづいた。少女っていう生き物は近代にしかいなかったんだなって>
<近代とはつまり彼女たちの時代だった。少女という名前のクリーチャーたちがカルチャーを席巻した>


 確かに、AKBなどが時代の象徴となっているような現代は、未来から振り返って見ればそのように見えるに違いない。現代では普通に見られる「少女」と呼ばれる者たちは、この時代だけに咲くあだ花であり 秩序の破壊者なのだろうか。。

 少女を追いかけているのは、「強化老人」という不気味な姿をした存在。なぜ少女が追われているかは、この作品の核心であり、結末とも大きく関連するので書けないのだが、秩序の破壊者としての少女と、秩序の維持を図ろうとする老人。この対比にもこんなメタファーが潜んでいるような気がして面白い。


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H25.10.26発売の図書新聞(3132号、2013年11月2日号)に「泥棒は几帳面であるべし」の書評掲載

H26.6,28発売の図書新聞(3165号、2014年7月5日号)に、「市場主義のたそがれ―新自由主義の光と影」の書評掲載

H28.8頃より「シミルボン」への投稿開始

H29.7.4「彗星パンスペルミア」の書評が「新刊JP]に掲載

H29.10.19「ハンナ・アーレント - 「戦争の世紀」を生きた政治哲学者」の書評が「新刊JP」に掲載

H29.11.24「ペンギン・ハイウエィ」の書評が「新刊JP」に掲載

H29.12.26.「ニッポンの奇祭」の書評が「新刊JP」に掲載

H30.1.18.「問題解決大全――ビジネスや人生のハードルを乗り越える37のツール」の書評が「新刊JP」に掲載

H30.4.26.「メゾン刻の湯」の書評が「新刊JP」に掲載

H30.7.20.「極道ピンポン」の書評が「新刊JP」に掲載

H30.7.26.「シミルボン」にインタビュー記事掲載

2019.2.23.「本が好き!」×「書店フェア」で「あなたの街で本と出会う Vol.2」に「こころを彩る徒然草」のレビュー掲載

2019.04.28.【本が好き!×カドブン】コラボレビュー!第4回『皇室、小説、ふらふら鉄道のこと。』掲載
本が好き!免許皆伝レビュアー風竜胆
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