風竜胆の書評

コミックスから専門書まで、あらゆる本を読みます。元エネルギー企業の専任部長。現在は、ライター・書評家を標榜する自由人w 時に書評が過激になるのは、長州人の血? 現在「シミルボン」と「本が好き!」でも活動中。 執筆依頼、献本等歓迎します。右欄のメッセージ機能にてご連絡ください。 旧ブログ名:本の宇宙(そら)

放送大学

社会心理学4


・社会心理学
・森津太子
・放送大学教育振興会

 本書は放送大学における「社会心理学」のテキストだ。社会心理学とは、社会心理学者のゴードン・オルポート(Gordon Allport)によれば「他者が実際に存在したり、想像の中で存在したり、あるいは存在することがほのめかされていることによって、個人の思想、感情、および行動がどのような影響を受けるかを理解し説明する試み」(p14)と定義されている。こう書くとなんだか難しそうだが、要するに個人が社会からどのような影響を受けるかを研究する学問らしい。ただしここで言う社会とは、それがたった一人の他社の場合もあることには注意しないといけない。だからその守備範囲はかなり広い。

 本書はその他の放送大学教材と同様、全部で15章からなっている。これは放送大学の講義が15回に分けて行われるからだ。そして各章で社会心理学で著名な書籍を一冊づつ紹介しているというのが大きな特徴である。ただし第1章は社会心理学を学ぶにあたってのイントロ、第15章は社会心理学のこれからについて述べたものなので、紹介されている書籍は以下の13冊だ。

1.「服従の心理」(スタンレー・ミルグラム)
2.「冷淡な傍観者」(ビブ・ラタネ)
3.「予言が外れるとき」(レオン・フェスティンガー)
4.「影響力の武器」(ロバート・チャルディーニ)
5.「偏見の心理」(ゴードン・オルポート)
6.「スヌープ!」(サム・ゴズリング)
7.「後悔を好機に変える」(ニール・ローズ)
8.「自分を知り、自分を変える」(ティモシー・ウィルソン)
9.「それでも、人は楽天的な方がいい」(シェリー・テイラー)
10.「オープニングアップ」(ジェームズ・ペネベーカー)
11.「木を見る西洋人、森を見る東洋人」(リチャード・ニスベット)
12.「信頼の構造」(山岸俊男)
13.「インターネットにおける行動と心理」(アダム・ジョインソン)
(副題は省略)

 中には絶版となっているものもあるようだが、興味のある人は、図書館などで見つけたら読んでみるのも良いだろう。本書には紹介された本がどのようなものかを1章を割いて解説されており、社会心理学に興味を持つ人のよいガイドブックになっていると思う。その他にも多くの参考文献がリストアップされているので、この方面の勉強をしたい人には非常に参考になるに違いない。







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生理心理学4


・生理心理学
・岡田隆
・放送大学教育振興会

 本書は、放送大学の心理学関係のテキストの一冊であるが、通常「心理学」という名前から普通の人が連想するようなものとはかなり異なっている。

 内容を一言で言えば神経科学といったところ。特に脳に関する項目が多い。通俗的な心理学の本とは異なり、一応大学のテキストだけあって、生理学や医学的な部分に重点が置かれている。だから心理学=人文系の学問だと思って取り組むとかなりとまどうことだろう。

 解説されているのは、脳や神経細胞の構造と各部位の働き。そしてこころとの関係。

 まえがきには、<受講生が生物系の予備知識をとくに必要とせずにこの科目の勉強を始められるよう>(p3)と書かれているが、読むにはやっぱり生物や医学の知識、特に生化学に関する知識があった方が理解が進むものと思われる。

 わずか200ページ余りの本であるが、本書の内容を隅から隅まで理解しておけば、この分野における基礎知識は十分につくものと思われる。もし内容が分からなければ、調べながら読んでいけばいいだろう。

認知行動療法 (放送大学教材)4


・認知行動療法 (放送大学教材)
・下山晴彦、神村栄一ほか
・放送大学教育振興会

 先般単位認定試験を受けてきた放送大学の教科である「認知行動療法」のテキスト。表紙には編著者二人の名前しかでていないが、実際には5名の研究者が分担して執筆している。

 「認知行動療法」というのは、一種の心理療法であり、ある人に何か問題が生じている場合は、その原因が認知の誤りにあるとしてそれを修正して、問題行動を無くしていこうというようなものである。

 こういったものを読むときには、何がキモなのかを押さえるということが大切だろう。原理原則を知っておけば、細かい内容を覚えていなくても、色々と応用が利く。

 さて、本書から読み取れる認知行動療法のキモとは、次のようなものだろう。

1.認知行動療法というのは、第一世代である「行動療法系」と第二世代である「認知療法系」を経て、現在は第三世代と言われるものが新たな動向となっている。今巷で話題になっている「マインドフルネス」といったものも、この第三世代に分類される。
2.認知行動療法には、統一的な原理は存在しない。色々な研究者が関わることにより発展してきたものである。
3.認知行動療法では、セラピストとクライエントの協同を重視している。セラピストからの一方的な押し付けや叱咤激励などは否定される。

 こういったことを頭に入れて読んでいくと、なるほどとうなずけるようなことも多いだろう。「マインドフルネス」などの通俗本を読む前に、その基礎にはこんな考え方や理論があることを知っておくのもいいと思う。

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問題解決の数理4



・問題解決の数理
・大西仁
・放送大学教育振興会

 本書は、放送大学のテキストの一つで、主として意思決定に役立つ数理的なアプローチについて解説したものだ。

 大学の正規の科目のテキストである以上、一般書のように概要だけを紹介しているようなものではない。取り上げられている手法が、実際にビジネスシーンで出くわす問題解決に役立つよう、きちんと数式を使って説明が行われているのだ。私の個人的な感触としては、学部の2年程度のレベルだと思うが、高校数学程度の知識があれば十分に読みこなせるだろう。

 紹介されているのは、線形計画法、非線形計画法、ネットワーク計画法、スケジュール管理、在庫管理等ORの勉強をした人ならおなじみのものが多い。ゲーム理論が2章に渡って解説されているのは、経済学などでもこの理論がよく使われるようになったという最近の傾向を反映してのことだろうか。ベイズの定理や遺伝的アルゴリズムが入っているのも、いまどきのテキストらしい。AHPなどは、かって盛んだったQCサークルでもよく使われた手法だ。これは複数の選択肢の中から複数の基準を使ってどれかを選択するような場合に使われるもので、そこそこ納得感のある結論が得られるような手法である。

 もちろん本書に紹介された手法が万能なわけはない。目の前の問題に必ず適用できるとは限らないだろう。しかし、意思決定をKKD(経験、勘、度胸)で行うより、こういった数理的な方法を使った方が、はるかに納得感のある結論を得られるのではないかと思う。だからこそ意識決定に関わる者は、教養として本書レベル程度のことは知っておかなくてはならないだろう。おそらく適用できそうなことが、自分たちのビジネスにおいてもいくつかは見つかるのではないだろうか。

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相対論(放送大学教材)4



 大学、大学院で電気工学を学んだこともあり、以前から理工系の本を読むのが好きだったのだが、最近はむくむくと「相対論」を勉強したいという気持ちが沸き上がっている。特殊相対論なら大学時代にも勉強して一応単位も取っているのだが、やはり一般相対論までは学んでみたい。それも通俗的な解説書ではなく、たとえ入門的なものでもきっちりと数式を使って、ごまかしなしに理論を展開しているようなものをである。

 その関係の本を何冊か買ってはみたが、理系の素養があるとはいえ、ウン十年も相対論なんて全く関係のない電気工学関係の仕事をしてきたので、こういった純粋物理学方面の知識はすっかり錆びついてしまっている。一般相対論にはリーマン幾何学の知識が不可欠であり、計算自体も複雑だ。この方面に疎くて計算も苦手な私としては、勉強の進み方はまさに亀の歩みといったところである。

 この状態を少しでも改善しようと本棚から引っ張り出してきたのが、この「相対論(放送大学教材)」(藤井保憲:放送大学教育振興会)というわけだ。’99年の教材なので、ちょっと古いかなという感じはするが、本書は教養学部とはいえ一応大学の正規の教材であるから、通俗書のように単なる言葉だけの説明で終わっていたりはしてはいない。

 たださすがに理学部ではなく、教養学部の教材なので、あまり数学的なことには深入りしておらず、物理的な考察のほうに重点が置かれている。だから相対論を勉強する第一歩として、概念的なものをつかむには役に立つのだろう。実は、この科目も放送大学で単位を取ってはいるのだが、試験のためのやっつけ仕事だったような気がする。今読み返してみると、「こんなこと書いてあったかな?」ということがかなりあったのは驚きだった(苦笑)。

 相対論の世界には、我々の普通の常識とは相いれないようなものが多い。だからこそ、多くの人の興味を引き付けて離さないのだろう。私自身も、本書で概念的な部分を固めながら、少しずつ数学的なところも勉強していき、いつかは一般相対論を数学的にも理解できるようになりたいと思う。しかし、いつの日になることやら。

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文化人類学のすすめ4




 現在放送大学で、「文化人類学」という科目を履修していることもあって、学習センターに寄った際に借りてきた「文化人類学のすすめ」(船曳建夫編:筑摩書房)。

 文化人類学は、ほぼ20世紀の開始とともに始まった、比較的新しい学問だ。それは、19世紀的な人間観、世界観を変えるほどのインパクトを秘めていた。ここでいう19世紀的な人間観、世界観とは、これまでの生命、社会現象のすべてを、壮大な体系の中に位置付けるというものだ。つまり、劣ったものから優れたものへと秩序付けようとする西洋中心の価値観であり、かっての植民地主義に繋がるようなものだった。しかし、文化人類学は、異なる自然環境、異なる地域、歴史の中で、平行して進んできた、人間の社会的、文化的活動に光を当て、20世紀を切り開いたという。

 文化人類学は、「未開社会」を扱うものという誤解があるようだ。この「未開」というのは、西欧的価値観に他ならないのだが、本当にそうだとすると、世界のグローバル化により、どんどん真の「未開」が少なくなっている昨今、文化人類学が活躍できる場はどんどん小さくなってしまう。だが、実際にはそんなことはない。〈「人類」のさまざまな文化・社会の問題を、「人間」とは何か、という深さまで降りて論じる〉(p17)のが文化人類学だからだ。だから、グローバル化により、より複雑になった社会の中で、文化人類学は、ますます重要な役割を担っていくものと思われる。

 本書は、編者による、文化人類学の大御所、山口昌男へのインタビューから始まり、編者を含めた10人の研究者が、それぞれの立場から文化人類学について熱く語っている。しかし、本書は決して文化人類学の入門書ではないだろう。これから大学での専攻を決めようという人に向けた勧誘の書なのだ。編者によれば、文化人類学をすすめる理由は2つだそうだ。ひとつは、あなたを幸せにするから。もうひとつは、世界をより良いところにするからということである。実は私が、昔大学に入った時に、一般教養として履修した科目の一つが、「文化人類学」だった。田舎の高校から出てきて、右も左もよく分からないままに履修したのだが、あのころこのような書があればよかったのにと思う。

 ところで、文化人類学の研究方法の特徴は、フィールドワークを重視するということなのだが、最近は、「フィールドワークをしなければいけないんですか」と聞いてくる学生もいるらしいから、少し嘆かわしい。

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博物館経営論4





 放送大学のテキスト、「博物館経営論」(佐々木亨/亀井修:放送大学教育振興会)。私が、履修した、同名の科目で使われたものだ。タイトルの通り、博物館の「経営」とはどのようなことに留意して行うべきかということについて、詳しく説明したものである。なお、ここでいう「博物館」とは「動物園」や「美術館」なども含んだ、広い意味でのものである。

 博物館には、4つの業種特性があるという。すなわち、「装置産業」、「流行依存産業」、「メディア産業」。「公共サービス」である。博物館の経営には、これら4つが特性がすべて絡んでいるため、経営が難しいというのが本書の主張だ。しかし、本当にそうだろうか。どのような企業にとっても、置かれている環境は千差万別で、それぞれに経営の難しさがある。経営の難しさというのは、業種特性だけから来るのではなく、その企業が置かれている個別の環境にも大きく依存している。

 しかし、博物館にとって、「経営」という概念が重要なことは、間違いない。一般に博物館は、事業収入が運営費を下回るというインカムギャップが発生している。国公立の博物館の場合は、このギャップは税金で補われることになるのだ。市民の立場からは、できる限りの効率的な経営を望むのは当然のことだろう。

 そうはいっても、博物館と言うのは、その街のステイタス・シンボル的なところもある。立派な博物館があるというのは、その街の文化度を表しているとも言えるだろう。だからこそ、博物館は、税金を注ぎ込むのに相応しい価値があることを訴え続けていかなければならないのだ。

 本書では、まず博物館と社会との関係、組織や人材、行動規範などを概説した後、博物館の経営手法、指定管理者制度危機管理、博物館における連携といったことについて色々な例を示しながら説明している。更に、外国での事例として、イギリスとアメリカの博物館事情についても記されている。本書を読めば、博物館を経営するとはどういうことなのか、おおよそのイメージがつかめるだろう。

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H23.3:書評コミュニティ「本が好き!」より「免許皆伝」称号を受ける

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H25.10.26発売の図書新聞(3132号、2013年11月2日号)に「泥棒は几帳面であるべし」の書評掲載

H26.6,28発売の図書新聞(3165号、2014年7月5日号)に、「市場主義のたそがれ―新自由主義の光と影」の書評掲載

H28.8頃より「シミルボン」への投稿開始

H29.7.4「彗星パンスペルミア」の書評が「新刊JP]に掲載

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H29.12.26.「ニッポンの奇祭」の書評が「新刊JP」に掲載

H30.1.18.「問題解決大全――ビジネスや人生のハードルを乗り越える37のツール」の書評が「新刊JP」に掲載

H30.4.26.「メゾン刻の湯」の書評が「新刊JP」に掲載

H30.7.20.「極道ピンポン」の書評が「新刊JP」に掲載

H30.7.26.「シミルボン」にインタビュー記事掲載

2019.2.23.「本が好き!」×「書店フェア」で「あなたの街で本と出会う Vol.2」に「こころを彩る徒然草」のレビュー掲載

2019.04.28.【本が好き!×カドブン】コラボレビュー!第4回『皇室、小説、ふらふら鉄道のこと。』の書評が掲載

2020.01.24.「貧乏大名“やりくり”物語 たった五千石! 名門・喜連川藩の奮闘」が「新刊JP」に掲載

2020.02.04.『どんなことからも立ち直れる人』の書評が「新刊JP」に掲載
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