QEDシリーズなどで知られる高田崇史の「麿の酩酊事件簿」シリーズの第1弾、「花に舞」(講談社)。
舞台は古都鎌倉。主人公の勧修寺文麿は、旧家のお坊ちゃまである。何しろ、家に執事がおり、実際に「お坊ちゃま」と呼ばれているのだから、まさに掛け値なしのおぼっちゃまだ。もっとも、もう三十歳を超えているのだが。文麿は、ベンチャー企業のオーナーで旧家のボンボンなのに、いまだに嫁の来てがない。ただ一人の肉親である祖母から、早く嫁をもらうようにせっつかれているのだが、嫁の来てが無いのは、必ずしも彼のせいであると言う訳でもないようだ。
なにしろ、勧修寺家には、婚姻家訓というとんでもない家訓があるのだ。
1.見合厳禁
2.手助け無用
3.独力発掘
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と、この調子で、前文7条と本文86カ条もある。これでは、相手を見つけるのにも一苦労だ。こんな嫁取りに関して悲惨な状況にある文麿だが、女性との出会いはもちろんある。ところが、どういう訳か、出会う女性は皆、何か心にわだかまりのようなものを抱えているのだ。彼女たちのわだかまりを文麿が解決するのはよいのだが、結局はふられてしまうというのが、この作品の基本的なストーリーである。
収められているのは4つのエピソード。
○ショパンの調べに
美人ピアニストの人生を変えた事件
○待宵草は揺れて
茶会で起きた毒殺事件
○夜明けのブルー・マンデーを
女性バーテンダーのわだかまり
○プール・バーで貴女と
女性ハスラーの悩み
ところで、文麿には、変な性質がある。酒に弱いのだが、究極まで酔っ払ってしまうと、キザ男君に変身してしまう。しかし、キザ男君になると、やたらと頭が冴える。素面の時より、頭の働きが格段にあがり、名探偵になってしまうのだ。
水戸黄門の印籠ではないが、この作品のパターンも決まっている。思いを寄せた女性と飲みに行ったのはいいが、酩酊して呆れられているときに、急に、キザ男君に変身して、見事に彼女たちの悩みを解決してしまうのだ。しかし、文麿が彼女たちの悩みを解決することが、彼女たちが新たな人生に踏み出すきっかけを与えることにもなってしまい、結果はいつも失恋というのは、少し悲しい気がする。(笑)
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(本記事は、「時空の流離人」と同時掲載です。)