煉獄姫〈3幕〉 (電撃文庫)
- 藤原祐
- アスキーメディアワークス
- 599円
日本神話に出てくる火の神カグツチは、生まれる時に母神・イザナギの陰部を焼き、それが原因でイザナギは黄泉の国へ行くことになった。怒ったイザナギは、十拳剣で、カグツチを殺してしまったという。そんなカグツチの悲しみと業を背負った一人の姫の戦いを描いた「煉獄姫」(藤原祐:アスキー・メディアワークス)の第3巻。
主人公は、瑩国の第一王女アルテミシア(アルト)。この作品世界では、煉獄と呼ばれる異世界から取り出した猛毒の瘴気を色々なものに変化させることによって、魔法のような術を使う「煉術師」と呼ばれる者たちが存在する。アルトは生まれながらにして、煉獄の扉を身に宿しているため、近づく人間は、その瘴気にやられて死んでしまう。彼女の母も、その瘴気のために死んだ。彼女に近寄ることができるのは、煉獄の大気を力に変えることができるホムンクルスの少年騎士・フォグただ一人である。そのため、第一王女という身分にも関わらず、その存在は秘され、普段は、塔に幽閉されている。アルトが外に出られるのは、王国に仇成す者たちを、王家からの密命で始末するときだけ。王女でありながら汚れ仕事のみにその存在価値を認められているのだ。アルトはその体質から、生まれながらの卓越した煉術師なのである。
藤原祐は、心の機微を描くのがうまい。人ならぬ身で、アルトを守り抜くことにより自らの存在意義を見出すフォグ。敵ながら、一度は友達と思ったホムンクルスの少女キリエに対するアルトの思いなど、いじらしいとも言える思いが良く表現されている。
この巻では、いよいよ役者が揃ったという感じだ。不審な動きを示していたが、ついに公然と牙をむいたユヴィオールとその一味。いったい彼らの目的は何か。そしてアルトが危機に陥った時、意外な展開が待っていた。更には死んだと思われていた魔剣の作り手アイリスも登場し、これからの展開に目が離せない。
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