風竜胆の書評

コミックスから専門書まで、あらゆる本を読みます。元エネルギー企業の専任部長。現在は、ライター・書評家を標榜する自由人w 時に書評が過激になるのは、長州人の血? 現在「シミルボン」と「本が好き!」でも活動中。 執筆依頼、献本等歓迎します。右欄のメッセージ機能にてご連絡ください。 旧ブログ名:本の宇宙(そら)

藤原祐

ファイナルファンタジーXIV きみの傷とぼくらの絆 〜ON(THE NOVEL)LINE〜4


・ファイナルファンタジーXIV きみの傷とぼくらの絆 〜ON(THE NOVEL)LINE〜
・藤原祐
・電撃文庫

 本書は、あの国民的RPGであるファイナルファンタジーのノベライズ版である。対象となっているのは、「ファイナルファンタジーXIV 」。シリーズ2作目のMMORPGらしい。このシリーズ、私も昔はよくやっていたのだが、年齢のせいか、-2位までで止めてしまった。ちなみに、このシリーズに並ぶRPGであるドラクエの方は、絵柄があまり好きでないので、やっていない。

 通常は、ゲームのノベライズ版と言えば、その舞台たるファンタジー世界を描いたもののように思える。しかし、この作品が、他のノベライズ版と一線を隔するのは、ゲーム世界はあくまで副次的なものであり、描かれているのはリアルな世界だということだ。

 ちなみに、著者は「電撃の黒い太陽」との二つ名を持つ藤原祐。彼の作品においては、登場人物がどんどん死んでいくのが通例なのだが、この作品に限っては、珍しく誰も死んでいない。

 主人公は、梶木壱樹という大学生。コンプレックスは目つきの悪いこと。同じ大学に通う一つ上の従姉である不知火古都に言われて始めた「ファイナルファンタジーXIV 」だが、ゲームの中で瀕死の状態の時に、通りかかった少女アサカに助けてもらう。やがて壱樹は、アサカやその仲間たちとパーティを組むようになり、ゲーム世界を攻略していく。

 しかし、それはあくまでもヴァーチャルな世界でのこと。現実世界でのアサカこと嶋原朝霞は、親のこと、死んだ姉のこと、自分のことなどで色々な問題を抱えていた。しかし、最後には壱樹たちの働きで、それらの問題が解決するのである。そうこの物語は、朝霞の救済の物語でもあり、壱樹と朝霞の「ボーイミーツガール」の物語でもあるのだろう。二人の本当の物語は、ここから始まるに違いない。

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@HOME(3) 長男と長女を巡る喧噪。4






 「アカイロ/ロマンス」や「煉獄姫」などの重い作品で知られる藤原祐が書いたホームコメディのシリーズ第3作目となる、「@HOME(3) 長男と長女を巡る喧噪。」(電撃文庫)。

 このシリーズは、倉須家の7人きょうだいが繰り広げるどたばたを描いたものだ。7人きょうだいと言っても、それぞれに血のつながりはない。今は亡くなった、倉須の両親に養子として引きとられたという設定である。しかし、互いに他のきょうだいを心から思いやっている。

 倉須家は、長男の高遠、長女の礼兎、次女のリリィ、語り手である次男の響、3女の芽々子、3男(4女?)の稜(男の娘ですw)、末娘の耶衣といった面々である。この中で、響だけが倉須の両親の血縁者だ。皆がそれぞれに、訳ありで、毎回きょうだいの誰かの物語が語られていく。この3巻では、長男の高遠、長女の礼兎の二人の過去と、それぞれの想いが明らかになる。

 この作品のテーマは、家族とは、自分たちで作っていくものだということだろう。家族の縁が薄かった、血の繋がらないきょうだいたちが、だからこそ強い絆で結ばれていく。藤原祐は、人の心の描き方がうまい。もっと重いテーマの他作品はもとより、この作品もコメディとはいいながらも、人の心を描くことに重点が置かれた作品になっている。


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ロストウィッチ・ブライドマジカル25





 椋本夏夜による、表紙イラストが最高に素晴らしい、「ロストウィッチ・ブライドマジカル」(藤原祐:電撃文庫)の第2巻。この少女は、早良坂人魚。銀髪、赤眼で、超絶美貌。正に、ど真ん中ストライクの美少女キャラなのだが、残念ながら敵側である。それも強大な力を持った魔女だ。どうも、ラスボスくさい。

 魔法の国の女王が死に、「女王の器の欠片」が、鍛冶目山氏周辺に住む女の子たちに宿った。その少女たちは、魔法の国の住人と契約することで、魔女となりお互いに殺し合う。最後のひとりが女王となるまで。しかし、主人公咲森水菜とその仲間たちは、そんな魔法の国の勝手な事情に反発し、別の方法でこの戦いを終わらせようとしていた。

 今回は、水菜の通う雉子野中学で、不思議なおまじないが流行する。呪いたい相手の名前を書いた紙を、硝子玉といっしょに桜の木の下に埋めれば、「硝子玉の魔女」がその願いを叶えてくれるというのだ。噂の真相を調べ始める水菜たちだったが、狂信的な魔女集団、「バーバ・ヤーガの小屋(十二月会)」の魔女たちと戦うことになってしまう。

 この巻では、前作では分からなかった色々なことが明らかになる。水菜の仲間、関耶麻音の色っぽい魔女装束とその力。その妹で、まだ9歳の関栞の驚くべき能力。耶麻音と栞は、それぞれ父親の愛人の娘と本妻の娘という複雑な関係だ。二人は普段はあまり馬が合わないようだが、心の奥底では、互いのことを思いやっている。そして、人魚のとてつもなく強力で、敵に対しては無慈悲な力。

 魔法の国には、その強大な力で恐れられていた「七匹の大罪の獣」と呼ばれる者たちがいた。この巻では、そのうちの5匹までが明らかになる。残りの2匹の力とはいったいどのようなものか、どう物語に関わってくるのか。まだまだ先の展開は読めない。

 藤原祐の作品は、登場人物たちがなんとも魅力的である。味方だけでなく、敵キャラの設定もすばらしい。この人魚などは、これまでの藤原作品でも最高傑作だろう。どれを椋本夏夜のイラストが見事に表現している。二人は、藤原祐のデビュー作である「ルナティック・ムーン」からの名コンビだ。前作の、「煉獄姫」では絵師が変わっていたが、この作品で再びコンビ復活というのはうれしい。


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ロストウィッチ・ブライドマジカル1


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ロストウィッチ・ブライドマジカル15




 藤原祐の新シリーズ「ロストウィッチ・ブライドマジカル」(アスキー・メディアワークス)の1巻目。久しぶりに、絵師・椋本夏夜とのコンビが復活だ。魔女の力を持ってしまった少女たちの戦いを描いたものである。

 魔法の国の女王が死に、「女王の器の欠片」が、鍛冶目山氏周辺に住む女の子たちに宿った。しかし、彼女たちは、それだけで魔女になる訳ではない。「女王の器の欠片」を追ってきた魔法の国の住人が、彼女たちと契約して「体現者(マスコット)」となることにより、初めて魔法が使えるようになるのである。

 魔法の国の住人たちは、飛び散った「女王の器の欠片」を再び一つにして、強い女王を復活させるという目的を持ってこの世界にやってきた。「女王の器の欠片」を一つにするということは、魔女同士が殺し合うということだ。勝った方が、負けた者の「女王の器の欠片」を奪い、最後に残った者が魔法の国の女王となる。しかし、この物語の主人公咲森水菜とその仲間たちは、別の方法で、この戦いを終わらせようとしていた。

 これまでの藤原作品は、高校生くらいの年代の少年、少女が主役を務めていたのだが、これは年代が少し下がって、中学生が主役となっている。本作品に登場する魔女たちには、その力に溺れてしまう者も多い。そういった役を演じるのは、理性がまだ十分でない、中学生当たりが、一番ふさわしいということだろうか。

 この作品の見どころのひとつは、椋本夏夜が描く魔女たちの衣装だろう。水菜の衣装は、ウェディングドレス風のものでなかなか可愛らしい。今回お披露目する味方の衣装も、ネコ耳フードにバニーガールと、色々な趣味の方に対して、しっかりサービスしている。しかし、バニーガールの衣装を着た魔女(おまけに中学生)というのは、少しサービスのしすぎか(笑)。また、敵方の魔女の衣装も、なかなか素晴らしく、次巻以降に、どのような衣装を纏った魔女が登場するのか楽しみである。

 今回見せた、水菜の恐るべき魔法。魔法の国の住人たちを震えあがらせる七匹の大罪の獣。そして、水菜の幼馴染の魔女・早良崎人魚の謎の行動。これからの展開がどうなっていくのか。まだまだ物語は始まったばかりだ。
 

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@HOME (2) 妹といちゃいちゃしたらダメですか?4




 「アカイロ/ロマンス」や「煉獄姫」などで知られる藤原祐の、「@HOME (2) 妹といちゃいちゃしたらダメですか?」(アスキー・メディアワークス)。彼の書くものには、重い作品が多いが、これはいつもの作風とはがらりと変わって、ホームコメディ仕立てとなっている。

 主人公は倉須(旧性園村)響という高校2年生の少年。両親が突然の事故で亡くなり、叔母の家に養子に入ることになったのだが、そこでは、お互いに血のつながらない兄弟姉妹が一緒に暮らしていた。このシリーズは、そんな彼ら、彼女らが繰り広げるドタバタを描いたものである。ところで、叔母夫婦は10年前に亡くなっているので、どうして養子になることができたのかは、1巻目からずっと考えているのだが、良く分からない。単に作者が法律を知らなかっただけか。

 前巻では、高校で暴君の異名をとる次女のリリィが話の中心だったが、今回は三女の芽々子が事実上の主役だ。響と同じ高校の1年生で、身長145cmと、小さいながら、出るところはしっかり出ており、とっても可愛い子と言う設定である。少し天然なところがあるが、家族依存症的なところがあり、やたらと響にべたべた、いちゃいちゃしてくる。

 ある日、芽々子が、親友3人を家に連れてきたことから騒動が始まる。その中の一人が、芽々子が、血の繋がらない兄の響にやたらとくっつくことに邪推し、彼を敵視する。その子は、自分がこう思い込んだら、もう周りが見えず、絶対それが正しいという、一番始末に負えないタイプのようだ。大きくなって、ヘンな宗教にひっかかるなよなんて、注意してあげたくなるのだが、意外とこんな人、世の中には多そうである。響の方も、あまりにその娘が敵視するものだから、芽々子に、あまり兄妹でべたつかないほうがいいと言ったことが、彼女の家出騒動にまで発展する。

 ところが、彼女の家族依存症には、ある秘密があった。響がその謎を解き明かしていくところが、この作品の読みどころなのだが、家族の絆とはいったいなにか、家族であると言うことはどういうことなのか、そんなことを考えさせてくれる。 


○関連過去記事
@HOME 我が家の姉は暴君です


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煉獄姫 3幕5


煉獄姫〈3幕〉 (電撃文庫)
  • 藤原祐
  • アスキーメディアワークス
  • 599円
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 日本神話に出てくる火の神カグツチは、生まれる時に母神・イザナギの陰部を焼き、それが原因でイザナギは黄泉の国へ行くことになった。怒ったイザナギは、十拳剣で、カグツチを殺してしまったという。そんなカグツチの悲しみと業を背負った一人の姫の戦いを描いた「煉獄姫」(藤原祐:アスキー・メディアワークス)の第3巻。

 主人公は、瑩国の第一王女アルテミシア(アルト)。この作品世界では、煉獄と呼ばれる異世界から取り出した猛毒の瘴気を色々なものに変化させることによって、魔法のような術を使う「煉術師」と呼ばれる者たちが存在する。アルトは生まれながらにして、煉獄の扉を身に宿しているため、近づく人間は、その瘴気にやられて死んでしまう。彼女の母も、その瘴気のために死んだ。彼女に近寄ることができるのは、煉獄の大気を力に変えることができるホムンクルスの少年騎士・フォグただ一人である。そのため、第一王女という身分にも関わらず、その存在は秘され、普段は、塔に幽閉されている。アルトが外に出られるのは、王国に仇成す者たちを、王家からの密命で始末するときだけ。王女でありながら汚れ仕事のみにその存在価値を認められているのだ。アルトはその体質から、生まれながらの卓越した煉術師なのである。

 藤原祐は、心の機微を描くのがうまい。人ならぬ身で、アルトを守り抜くことにより自らの存在意義を見出すフォグ。敵ながら、一度は友達と思ったホムンクルスの少女キリエに対するアルトの思いなど、いじらしいとも言える思いが良く表現されている。

 この巻では、いよいよ役者が揃ったという感じだ。不審な動きを示していたが、ついに公然と牙をむいたユヴィオールとその一味。いったい彼らの目的は何か。そしてアルトが危機に陥った時、意外な展開が待っていた。更には死んだと思われていた魔剣の作り手アイリスも登場し、これからの展開に目が離せない。



○関連過去記事
煉獄姫 2幕


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煉獄姫 二幕5


 私が気に言っている若手作家の一人が藤原祐だ。彼の作品には、思わず吹き出しそうなコミカルな掛け合いの後ろにダークで思いテーマが座っているというというものが多かった。彼の「レジンキャストミルク」、「アカイロ/ロマンス」では、この二つが絶妙なバランスで組み合わされていたのだが、最近は、少し路線が変わっているようだ。最新シリーズの「煉獄姫」では、コミカルさは封印されており、デビュー作の「ルナテック・ムーン」の作風に戻っているかのようだ。もっとも、コミカルな掛け合いは、彼のもう一つのシリーズ「@HOME」の方で受け継がれてはいるのであるが。




 この作品世界の煉獄とは、現世に隣接した異世界のことである。煉獄の大気は猛毒であるが、「煉術」により色々なものに変化させることができ、それを行うことのできる者は「煉術師」と呼ばれている。

 瑩国の第一王女アルテミシア(アルト)は、煉獄の扉をその身に宿しているため、人は彼女に近寄ることができない。彼女に近寄ることができるのは、煉獄の大気を力に変えることができるホムンクルスの少年騎士・フォグただ一人だ。そのため、普段は、塔に幽閉されている。アルトが外に出られるのは、王国に仇成す者たちを、王家からの密命で始末するときだけ。王女でありながら汚れ仕事のみにその存在価値を認められているのだ。

 今回アルトたちが対峙するのは、疑似ホムンクルスのイパーシ。元々は人間だったが、アルトたちとの戦いで一度死に、レティック=メイヤという煉術師によりホムンクルスとして蘇った男だ。何者かが、イパーシに魔剣を与え、更にフォグの妹のホムンクルス・キリエが彼に近づく。瑩国には、何かとてつもないどす黒い陰謀が渦巻いているようだ。

 藤原祐は、異形を抱えた者たちの心理描写がうまい。アルトもフォグも、人外とも言える存在のために、心に大きな孤独を抱えている。だから、お互いに相手を何よりも大切な存在だと思っているし、アルトは、一度は友達と思ったキリエと戦う時は、悲しみが心を満たす。

 この巻では、フォグのもう一人の妹・レキュリィも登場し、ますます物語は目が離せない展開になってくる。kaya8によるイラストもなかなか良い。


○関連過去記事
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2019.2.23.「本が好き!」×「書店フェア」で「あなたの街で本と出会う Vol.2」に「こころを彩る徒然草」のレビュー掲載

2019.04.28.【本が好き!×カドブン】コラボレビュー!第4回『皇室、小説、ふらふら鉄道のこと。』の書評が掲載

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2020.02.04.『どんなことからも立ち直れる人』の書評が「新刊JP」に掲載
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