2017年12月17日

宮脇俊三氏の描く古い町並

先日、宮脇俊三氏の「最長片道切符の旅」を久々に取り出してさらっと読み返していたところ、ある場面でふと立ち止まった。
高山本線の車窓に見える「うだつ」を備えた商家を見て、「余計なものがくっついているから屋根の美しさを損じている」と説くところだ。

この紀行文を読んだ当初は特に感想もなく、そのまま読み進めていたのだろう。

うだつは瓦屋根の両側を一段持ち上げて立派に見せることで、うだつが上らぬという言葉を生んだように富の象徴ともいえる。うだつを掲げた商家の姿は凛々しく、美しく荘厳なものだと思っている。
初読から長い年月を経た今回はそのように感じて読み進めるのを止めたわけだ。

氏の紀行文の内容を思い起こしてみると、中山道の妻籠宿を訪れた際には、最初に宿場街に足を踏み入れ思わず足を止めたとあるが、すぐに「時代劇映画のセットに見えてきた」との感想を述べている。
高山に宿を取り、日暮れた古い町並を歩いた時にも、「観光客の視線と応対しているうちに見られる意識が芽生えたようで、ここが高山の有名な上三之町ですよ、といった構えも感じられる」とある。

でもこれが、一般の人の古い町並に対する感想だろう。

古い町並を見る目は、一般の人と全く同じであったようだ。いやしかし、町並に限らず食や観光地その他を手広く触れていては、宮脇作品らしさは全く発揮されないものになる。単なる旅行レポに成り下がっていただろう。

宮脇氏の影響で鉄道旅行趣味をしばらく続け、それが形を変えて結果的に今は町並探訪がメインになっているとはいえ、その根底には氏の著書群、特に「時刻表2万キロ」や「最長片道切符の旅」などの純度の高い初期鉄道紀行作品にあったことは間違いない。ふと読み返したことがきっかけで、その思いを再び強くした。

そういえば思い出したのだが、「ローカルバスの終点へ」の中では、岡山県吹屋をバスで訪ねた折に随分感動された様子だった。そうだったとまた読み返す。

そういうわけで、今この文章を打っている手元には5冊くらいの宮脇作品が山積みになっている。

宮脇氏は、ご存命であれば90歳を超えられている。時がいつの間にか経過した事も改めて感じた。


mago_emon at 22:14│Comments(0)読書など 

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