「日本ボロ宿紀行」なる本が出ていることは、少し前から知っていた。
私の第一の趣味である町並集落探訪に関し買ったり読んだりした本は、以前は保存地区を取上げた本などが中心だった。しかし最近ではレトロな店舗やスポット、鄙びた温泉や旅館といった、本来探訪中に付加価値として求めていたものを好んで読む。
春になり少し時間の余裕がでてきたところで、この本を求めた。筆者が実際に宿に予約をし現地に足を運んだレポートである。ちなみに筆者がボロ宿と呼んでいるのは古く設備が悪いという意味ではなく、歴史的に価値のある宿から古いが安くて良い宿をひっくるめて愛情を込めてそう呼ぶとのことである。
聞くところによるとドラマ化もされているらしいが、そちらには興味は湧かない。
先月後半から少しずつ読み始めて、7割がた読み進んだところで「日本ボロ宿紀行2」を追加で注文した。今それも半分近く読み終えたところである。
最近求めた本の中には途中で読むのをやめてしまったものもある中で、吸い寄せられるように読み進んだ。
それはなぜかというと、まず単なる宿の紹介に留まらない紀行文形式になっていること。それも多くは公共機関を使って訪ねたものであり、宿の予約から当日のアクセスについても丁寧に書かれていることだろう。そしてその部分を読むにつけ、私の探訪中の趣向と実に合致しているのを感じる。
さらに筆者が酒好きであり居酒屋や地酒などの話題も随所に見られること。
客寄せを狙った、キャラクター物などを立てて町を宣伝しているようなことに否定的な感想が散見されるのも私の思いと共通する。
しかしそれよりもやはり、筆者の古い旅館に対する深い愛情が行間にあふれているのが一番大きいのだろう。
触れられた旅館の中には私も実際泊ったことのあるものもあれば、知人が泊ったという旅館もある。また残念ながら営業をやめてしまったものもあるようだ。
依然として慌しく町を訪ね歩く形が続く私の探訪も、趣向を変えていきたいとここ数年思いはじめている。実際変ったといえるのが、泊るところは原則旅館と決めていることだが、もっとその部分にこだわってみたいものだ。何しろ古い旅館はいつ営業をやめて、泊れなくなるかわからない。旅館に好んで泊るようになった私も実際思うことである。
このボロ宿紀行のような旅もひとつの形としては理想ではないか。
「日本ボロ宿紀行2」の残りを読み進めるのが楽しみだ。