町田まごころクリニック 院長日記

  町田市の心療内科・神経科・精神科・メンタルクリニック 町田まごころクリニック院長 鹿島直之のブログです

町田まごころクリニックは小田急線、JR線町田駅より徒歩8分、町田市民ホールの斜め向かいにある心療内科・精神科です。
うつ病、パニック障害、不安障害、統合失調症、認知症などのこころの病気や問題に対する治療と相談を行います。

ご予約・お問合せはお電話で 042-851-7824  http://magokoro-clinic.info/

映画「どうすればよかったか」について

水曜日の午前中、一週間前に新宿で見てきた映画についてお伝えします。未治療の統合失調症の女性が、医療を受けられずにその人生の大部分を過ごさざるを得なかった姿についての映画なのでした。

友人に勧められ 

 ある友人にその映画を勧められ、診療のない水曜日の午前中に新宿まで出かけてきました。実は週に一回の大学の授業でもこの映画を取り上げることにしていたからでもありました。テアトル新宿という歌舞伎町のそばにある映画館でしたが、午前中の映画館はガラガラで、快適でした。

大学時代に発症

 ドキュメンタリータッチの映画なのですが、別に作品として明確な目的をもっているドキュメンタリーではありません。映像関係の仕事をしている弟が、姉が統合失調症を発症し、自宅にひきこもったままで異常な状況になっている家族の姿を、発症後してから亡くなるまで長期間にわたって映像に残したものを、あとで映画として編集し直したものなのでした。

成績優秀な姉

 医師で研究者の両親のもとに生まれ、両親のようになりたいと成績優秀で医学部に入学していた姉は在学中に統合失調症に発症したのでした。家族が寝静まっている夜中に興奮して叫び続けたことが、その始まりでした。その後、医師の父親は娘を精神科医のもとに連れていきますが、診察の結果「全く異常はない」と言われたと娘を連れて帰ってきてしまいます。

治療を拒否する両親

 姉の急激な変貌に驚いていたこの映画の製作者である弟は、病院に連れていったという父親を問い詰めますが、父親は「正常だと言われた」と繰り返すばかりなのです。典型的な統合失調症を発症した姉は、全く自分が病気であるという意識、病識がなく、自分から医療を求めることはありません。もともと聡明で活発、よく弟の面倒を見てくれていたという姉の様子は全く変わり果ててしまいますが、それでも両親は治療を受けさせようとしないのでした。

姉の様子

 私は30年程度、精神科医として数多くの統合失調症の方と付き合わさせてもらっています。発症したお姉さまの様子は、これまで見させてもらってきたさまざまな症状そのものでした。常に何かを気にし、落ち着きない雰囲気、ずっと座っていたかと思うと、突然立ち上がって行ってしまう様子、焦点が定まらない視線、まとまらない独り言、突然の怒りや興奮、そして怒声といったことです。会話していてもいつもうわの空で、相手の言葉にきちんと注意を払えず、会話もまとまりません。食事をしていても、こぼしたり、残したり、不注意による粗相がめだちます。

どうしてそうなるのか

 典型的な統合失調症の方は幻覚妄想があります。幻覚ですが、統合失調症の場合の幻覚は幻聴、その内容は悪口であったり、本人に対する命令であったりします。幻聴の主はもともと本人が苦手にしていた人物であったり、家族であることがあります。妄想とは、統合失調症の方にとっては、現実よりリアルに感じられる思い込みです。その内容は、被害妄想や誇大妄想が典型的です。幻覚妄想による普通のひとではありえない異常体験によって、思考と感情は常に大きな影響を被り、その結果としての行動も突飛なものになりがちで、目の前の日常生活に取り組むことが困難になるのでした。

 弟の必死の訴えもむなしく

 異常な様子が続く姉に治療を受けさせるよう、この映画製作者である弟は何度も両親に訴えますが、頑として両親は受け付けません。姉は長年にわたり自宅に引きこもりっぱなしになりました。お二人とも業績ある、名の通った医学研究者であり、医師でありながら、精神症状が明らかな娘をどうして治療を受けさせなかったのでしょうか。

弟は何度も両親に問いかける

 姉が自室にこもって興奮し、何かに向かって怒声を浴びせている時、近所を徘徊しようとする姉を自宅にとどめようとして両親が玄関のドアを開かないようにチェーンで固定していた時など、折に触れて両親に弟は問いかけるのでした。姉は病気だから、何とかしてあげよう、見てみないふりをして、どうして何もしようとしない?と。しかし、自らも医師でありながら、両親は変わり果ててしまった娘を、病気として扱うことを頑として拒み続けるのでした。

治療困難なことがある

 統合失調症の方が精神科の治療に結び付けられないことは、決して珍しくありません。その病気の性質上、自分の病気を認識できず、治療に対して拒否的になるからです。残念なことに、きちんとした治療を受けることを拒否し、症状をこじらせているように見える方も少なくありません。

発症25年後に

 この映画は、姉が24歳で発症してから25年後、娘の治療を拒んでいた母親が認知症を発症したため、両親による姉の世話が困難になったことで、弟の勧めによって、両親の同意のもと、姉を精神科に入院させることが出来たのでした。病識に乏しく、入院を理解できない姉はおそらく医療保護入院となったのでしょう。皮肉なことに、姉の治療の障害となっていたのは、自宅にひきこもる娘の奇妙な振る舞いを耐え忍び、身の回りの世話を長年にわたってし続けていた両親だったのでした。

医療保護入院

この入院制度は、病識に乏しく、自分の病気を理解できず、その病気の破壊的な影響のため、入院治療が望ましい場合に、本人の同意が得られなくても、家族や後見人、保佐人の同意があれば、精神科医の診断のもと、入院が可能になるものです。統合失調症の患者さんでは、入院が必要となった場合に、本人の同意が得られないことがあることから、この入院制度を用いることが少なくありません。

わずか3か月の入院で

 当たり前と言えば、当たり前のことでしょうが、3か月の精神病院入院後の姉は、見違えるようでした。落ち着かない様子はほとんど見られなくなり、家族と目を合わせながら、時には笑顔を見せつつ、普通の日常会話をしているのでした。統合失調症が当たり前の治療によって軽快しただけなのですが、未治療の状態でさまざまな衒奇的な振る舞いが映像に長時間にわたり記録されていた、姉の退院後の様子は健康に近く、憑き物が落ちたかのような印象すら与えるのでした。

お気の毒に

 本人が治療を理解できないせいもあるのですが、両親の拒否もあり、治療が不断の進歩を重ねている現代にあって、25年間を未治療のままに自宅にひきこもって過ごさざるを得なかったことを振り返ると、お気の毒としか言いようがありません。

もっともっとよくなれたのでは

在学中に発症したため、姉は大学を卒業できなかったのですが、発症当時から治療に取り組んでいたら、大学を卒業できた可能性があるでしょう。また、医師は無理にせよ、病前の社会機能の高さからも、ある程度の社会生活は送れるようになっていたかもしれません。

むすび

  原因の全てが判明しているわけではないとはいえ、ある程度の治療が可能になっている慢性的な精神疾患の治療の必要性をあらためて感じさせられた映画でした。治療というのはもちろん薬だけではなく、社会的なリハビリテーションを含めてのことです。この映画の主人公が、服薬治療だけではなく、25年前から望ましいリハビリテーションも同時に行っていれば、全く別の人生もあり得たかもしれないと思ってしまいます。

人生の宿題

 今回は「人生の宿題」ということについて、思うことを伝えさせていただきます。

 

30年ぶりに

 先日、たまたまフェイスブックで小学校の時の友人とつながることができました。そこで、東京の多摩地域に在住の、辛うじて連絡がついた同じ小学校卒業の同窓3人で、新百合ヶ丘の飲み屋に集い、小学校以来の邂逅を果たしました。私は羽村市にある公立の栄小学校という小学校を卒業したのですが、とても懐かしかったです。

 かつての足の速かった友達は部長になっていた。

私の友人の一人は、理系の大学を卒業後、電機メーカーに長年奉職し、部長職になっていました。私と同じで、髪には白髪が増え、もうすっかり体格は貫禄がついており、外見は見慣れない中高年のおじさんなのでしたが、話してみれば、かつてのすらりとした美少年の面影を感じることができるのでした。

運動神経抜群

 不器用で、運動競技や体育が苦手の極みだった私に比べれば、その友人は運動神経抜群で、運動会のクラス対抗リレーでクラスの足を引っ張る私に「早く走る秘訣」を教えてくれたりしたものでした。もっとも、彼が熱心に教えてくれても、申し訳ないことに、私の鈍足に大した進歩はなかったのですが。

先生どうしているかな

 私たちの話題は、自然と小学校の担任の先生の話になるのですが、「もう死んじゃっているんじゃないかな」という悲観的な推測に収まりがちになるのでした。かつての担任の先生は往時に40歳を超えていました。私たちは長いこと離れすぎてしまっていたのかもしれません。

工藤静香

 先生のことと同時に3人で思い出すのは、芸能人の工藤静香のことでした。以前にブログでお伝えしましたが、静香も我々と同じクラスだったのです。久々に会った友人から聞いたところでは、高校の時に会ったことが最後の思い出であり、静香は友人から近況を聞かれ、芸能で頑張っていくと話していたそうです。静香は小学校からこの方、ずっと芸能一筋に努力を続けていたのでした。目標と夢を諦めないということが計り知れない程に重要であることは、彼女の人生を見ればわかります、

人生の宿題

 お互いに50代後半に差し掛かろうとしている我々が40年に及ぶ年月を経て再会し、話題にしたことは、人生の宿題についてでした。人生の宿題とは、人生が終わるまでにやっておきたいこと、片づけておかねばならないと思っていること、という意味です。人によって違いますが、死ぬまでに誰もが直面することでしょう。それが出来たら死んでもいいと思えることこそが、最大の宿題なのでしょうが。

友人の宿題進捗状況

 私と違って計画性があるその友人は、海外で行ったところを数え上げ、次はこれをやると話していました。彼は人生の宿題をもう考え抜いているようで、リストアップしているとのことでした。ただ、高血圧で服薬しているので、やりたいことの筆頭に来ているというバンジージャンプは、心臓の負担になるかもしれないと気にしていましたが。

ある医師の知人は

 大病にかかっており、余命いくばくもないかもしれない、と医師に突然告げられた時に、その後の物の見方が変わり、残された人生でやらなければならないことは何か、ずっと考え込んでいると話してくれました。誰でも、人生の宿題に向き合わなければならない時が、いつ訪れるかわからないのです。

私の宿題は

 愛猫ひろりんが長期間の家族の不在を嫌がるために、行けなくなっている海外旅行に再度行くことか、分院の院長が見つからないために、手が着けられないままになっている分院建設に取り組むことか、考えてみれば、思いつくことはいろいろあります。私も、宿題に取り組むべき時がすでに来ているのでしょう。

自分なりに貢献をすること

 以前のブログでお伝えしましたが、この社会に、自分ができる貢献を最大限すること、それが自分にとっても最大の利益になると構え、それに尽力する、これが私のポリシーなのです。そもそも、人生の宿題以前に、私には日々の診療やクリニックの運営というとても大切な課題があります。それらの業務は人助けに直結するので、私にとっては宿題以前に最善を尽くさなければならない課題といえるのでした。

課題と宿題をこなすためには

 健康であること、楽観的でリラックスしていることがとても重要だと思います。健康であるためには、食べ物に気を付ける必要があるでしょう。最近、私はみかんや柿、イチゴといった季節の果物を食べるようにし、青汁に加え、患者さんから勧められたユーグレナも飲用しています。肉類は控え、ナッツや豆類を多くとるようにしています。

厚生労働省が掲げる野心的な目標

厚生労働省は毎日野菜を350g、果物を200gとるように薦めていますが、これはちょっとした量なのです。遵守できておられる人はあまりいないのではないでしょうか。ただ、それを意識している私が、再会を果たしたかつでの同級生3人の中で、一人だけ高血圧を抑える降圧薬を服用せずに済んでいたのでした。

楽観的であるためには

 シンプルですが、出来ることと、出来ないことを見抜き、出来ることにベストを尽くし、自分の力ではどうしようもない出来事については、嘆いたり、落ち込んだりするより、冷静にその出来事のメリットを考え、そのメリットを生かすようにすることでしょう。

荘子の語ること
 
古典は叡智の宝庫であり、現代に生きる我々も悩んだ時に読み返せば、常に何らかの教えや生きるための力を得られるものです。紀元前の遥かな昔に、荘子はこう語っているのでした。「物に乗じて以て心を遊ばせ、やむを得ざるに託して、もって中を養えば至れり」と。無為自然として知られる荘子は怠け者の哲学と世間では誤解されています。

無為自然は解釈の誤り

 しかし、荘子は、無為を強調するのではなく、知性に限りがある人間の驕った賢しらを批判したのでした。荘子は、人間としてこの世にある以上は、自分の心については、そのありように逆らわず、あるがままの気持ちに正直に生き、自らの置かれた動かしがたい境遇や状況については、その全てを肯定して生きることを良しとしました。いわば、人間の感情という内界と、境遇や状況という外界のどちらに対しても調和して生きることを最上の養生として勧めているのです。

リラックスのためには

 日々の瞑想と運動が大切です。瞑想は自分の意識を思考や感情でではなく、無限に対して開いておくための訓練といえ、あらゆる状況である程度の精神的な落ち着きを保てるようになります。また、日々の運動もリラックスして過ごすためには重要です。スポーツ選手を見ていれば理解できるでしょうが、日々の運動は運動時に交感神経を刺激することで、かえって普段にはリラックス時に作用する副交感神経の活動を高め、日常生活での緊張緩和を促進するからです。

 むすび

 目の前の人生の課題、ひいては宿題まで視野に入れ、日々やるべきことをこなしていくためには、その土台となる身体を大切にする必要があるでしょう。私がそのすべてを完璧にこなせているとは全く思っておりませんが、ベストを尽くしたいとは思っております。

双極性障害の治療における進歩について

 今回は双極性障害(躁うつ病)の治療についてお伝えさせて頂きます。

気分の波と軽躁状態は異なる

 慢性的なうつ状態にある患者さんが、少し良くなったり、短時間で気分の波があったりすると、「そう状態」と表現されることがあります。また、そういった場合に、ご家族から「躁うつ病」ではないでしょうか?と聞かれることが良くあります。私はその時のお具合が、普通の上機嫌とは質的に異なるレベルの上機嫌で、いつもと行動も異なっているかどうか、また、その気分や症状の続いた期間はどの位なのか、を必ず確認します。

ただの気分の揺らぎではなく、質と長さが異なる。

 一般的な躁状態は一日のうちに切り替わるものではなく、最低でも数日間ないし一週間以上は続き、その間はいつもの上機嫌とは質の異なる爽快な気分や、自信がみなぎった感覚がもたらされ、身体的にも数時間の睡眠で済んだり、その上に過活動になったりすることがあります。慢性のうつ状態が続く中での気分の波を躁状態と誤診してしまうことは、双極性障害の過剰診断につながりかねず、精神科医として注意しなければなりません。

過剰診断にどうして注意が必要か

 双極性障害の患者さんの中には、躁状態がその程度が軽い軽躁状態の場合もあり、正常範囲の気分の波かどうかを判断することが難しい場合があるからです。また、双極性障害の薬物治療の中心となる薬は、気分の波を安定化させる気分安定剤であり、抗うつ薬を単独で用いることは躁状態をもたらす躁転によってかえって気分を不安定化させるため、望ましくないのでした。その診断が難しいばかりではなく、双極性障害の誤診は、長期に渡る治療にも深刻な影響をもたらし得るのです。

双極性障害の治療は、長きにわたり気分安定薬がスタンダード

 慎重な検討の上、双極性障害と診断が決まった場合には、リチウム、バルプロ酸、ラモトリギン、カルバマゼピンと言った気分安定剤を服用してもらうことが治療のスタンダードであると、教科書に書いてあるし、私もかつてそう習ってきたし、今もそれらの薬をお出ししています。双極性の患者さんの数はうつ病の患者さんよりかなり少なく、治療も独特なのでした。

気分安定剤は精神安定剤ではない

気分安定剤は、気分を上げる抗うつ薬でもなく、不安を和らげる、いわゆる精神安定剤でもありません。双極性障害の患者さんに服用してもらった時に、日常生活の支障になる気分の波である躁状態とうつ状態を予防する効果のある薬なのです。

気分安定剤は独特な副作用がある。

 ただ、気分安定剤は、双極性障害の患者さんには、福音となり得るとてもいいお薬なのですが、副作用は少ないは言えないお薬なのです。例えば、リチウムは副作用で手足の震えが見られることが多く、治療用量を超えてしまうリチウム中毒になった場合には、意識障害などの重篤な副作用が見られるため、血中濃度測定のための定期的な検査が必要な薬なのです。また、ラモトリギンには服用開始時に、稀に重症の薬疹が見られることがあり、増量はゆっくり行う必要があります。カルバマゼピンは副作用として、眠気、めまい、ふらつきが目立ち、転倒に注意が必要なことがあります。

双極性障害の講演会

 私は普段診療で夜遅くなるため、ほとんど薬品メーカー主催の講演会は出席しないのですが、2月初めの休日に、都合がついたので、大塚製薬主催の講演会に品川のホテルまで朝から出向いてきました。たまにでも出席すると、高名な先生の謦咳に触れられ、勉強になることが少なからずあるからです。

アリピプラゾール(商品名:エビリファイ)LAIの講演会

 双極性障害の治療、及び現在の大塚製薬の主力製品である、アリピプラゾールLAILong Acting Injenction:持続性注射剤)についての講演会だったのでした。持続性注射剤は月に一回の筋肉注射で効果が一か月持続するものです。薬物の効果が持続する理由は、筋肉注射された薬剤がゆっくり時間をかけて血中に移行するからです。

双極性障害の最善の治療は

その最近の講演会では、驚くべきことに、双極性障害で最も望ましい治療は、気分安定剤より、副作用からも、効果の面からも、アリピプラゾールLAIが最善であるというのでした。なお、アリピプラゾールは統合失調症と双極性障害、どちらにも有効である大塚製薬創薬の優れた薬です。当院では統合失調症でアリピプラゾールLAIを使う患者さんは少なからずおられるのですが、双極性障害の患者さんはほとんどおられなかったので、驚かされてしまいました。

患者さんが最高の治療を受けられない理由はない。

 その講演会で印象にのこった先生のフレーズがこれなのでした。目の前の患者さんが、日本で最高の医療を受けらない理由はないはずだ、医師たるもの、常に最善最新の医療を患者さんに提供すべく尽力すべきである、といった意味なのです。私はこの言葉を聞き、必要とあれば、双極性障害の患者さんにエビリファイLAIを確実に提供しようと決意しました。当院には午後4時まで看護師さんに常駐してもらっており、いつでも外来でLAIを提供できる体制にあるからです。

むすび

 あらゆる医療はそうですが、長期的に見れば、精神医療も日々の新たな知見を踏まえつつ、変化し、進歩しているのでしょう。多忙な私も、講演会に出席し、精神医療の進歩に乗り遅れてはならないと、当たり前のことですが、反省させられたのでした。

人の心は発電機

人の心は発電機

 1月の下旬になってしまいましたが、改めて明けましておめでとうございます。今年も何卒宜しくお願い申し上げます。今日は人の心は発電機ということをテーマにお伝えさせていただきます。

人の心は心的エネルギーを生み出す発電機といえる。

 発電機とは、言うまでもなく、電気を自分で生み出せる機械のことです。私は人の心は発電機のようなもので、日常生活で様々な心理的負担にさらされながらも、基本的には自分の心のエネルギー、心理的なエネルギーを自分の心から生み出せるものだと思っております。ですので、日常の活動にあたって、心のエネルギーを最大限生み出せるように、心を発電機として理解し、生かすように普段からその扱いに気を配るべきなのです。

発電の妨げになる幻想とは

 まず人間の心のエネルギ―を乏しくさせる大きな要因、最高の発電機としての働きを妨げる幻想があります。それは何かと言えば、「不死の幻想」なのです。健康な普通の人間に必ず生まれてくる幻想なのですが、今日は昨日と同じような日が続く、明日は今日と同じ日が続く、自分だけはずっと健康でいられる、と漠然とした考えを抱くことです。

人間は必ず死ぬのに

 様々な不安で動揺しやすい人の心は少しでも安定しようと、無意識のうちに、不安を和らげるために何らかの非現実的な幻想を抱くことがあります。残念なことに、放っておけば習慣のように思い浮かぶその漠然とした考えは日々の人生についての感謝と喜びの気持ちを希薄にしてしまうのでした。

現代日本での生活

 ちょっと考えれば、我々が与えられている何気ない日々の生活も、実は途轍もなく稀有なものであることがすぐにわかります。現代日本にいれば、いろんな問題はありながらも、基本的には、誰もが衣食住と高度で先進的な医療、言論の自由を保証され、他の国より治安が遥かにいいため、犯罪に悩まされることはほとんどなく、内戦や戦争といった国家規模の暴力の問題からも無縁でいられるのです。

ラッキー!

これは感謝してもしきれない程、実はありがたいことです。その上、さらに健康でいられているなら、人間が幸福になれる条件は全て揃っていると言えるでしょう。感謝出来ることに遍く感謝し、全て当たり前のものだと思わないことで、感謝すべきことはさらに我々のために生かしやすくなるのですから、感謝すべきことを失ってしまわないうちに、それに意識的でいた方がいいのです。

朝は感謝から始め、夜は感謝して眠る

 私が週に3コマ程行っている大学の授業で、いつも基本的なメンタルヘルスの一助として、学生さんにお伝えしていることがあります。それは朝起きてすぐに、今日一日を迎えられたことに感謝すること、夜の就寝時には、今日一日を終えられたことに対する感謝で終える、という習慣の勧めです。

感謝は心のエネルギーを充てんする

その習慣によって、私は今日を当たり前の、ごく普通の一日としてではなく、唯一無二のありがたい人生の機会として生かすよう、今日一日ベストを尽くすための心のエネルギーを充てんできるのでした。さて、故人ですが、私が尊敬してやまない、原子力発電のようなエネルギー源を心に秘めておられた大医療人がおられます。日本の医療を変えた、医療法人徳洲会の創設者である徳田虎雄先生です。

偉人達のすすめ

 彼はそのご著書で、年間365日、11秒を惜しみ、自分の理想と具体的な目標に向かって邁進することを訴えておられます。およそ人間とは、その命ある限り、自分の人生の目標の達成のために、情熱を燃やし、最大限行動し続けるべきで、それが自分の人生を最高に輝かすことである、といったお考えなのでした。私の見るところ、大経営者であられた稲森和夫先生もそれに近いお考えだったように思います。                       

徳田虎雄先生の工夫

 そういう徳田先生にして、世界の医療を変えるといった途轍もない高い目標に邁進する果てしない行動の積み重ねの日々に疲れ切ってしまうことがあったそうです。そういう時彼はどうしていたか。彼は自分の病院にある集中治療室(ICU)を訪れるようにしていたのでした。

ICUの患者さんからエネルギーをもらう

集中治療室では、もちろん生命的な危機に瀕している重篤な身体状態にある方たちが集中的な治療を受けているわけですが、彼はその姿を目の当たりにすることで、「ここにも命がけで頑張っている人たちがいる。」ことを思い出し、自らを奮起させ、心のエネルギーを充電していたということなのです。何とすさまじい、私はこの話を読んでそう思ったものでした。

 ICUまでは行けませんが。

 私が時折思い出すことは、町田市民病院で緩和ケア病棟に居た頃のことや、癌が発見され、闘病されている患者さんのことです。命に関わる病気にかかったことに絶望し、抑うつを深めながらも、改めて与えられた人生に最大限感謝し、命ある限り精いっぱい生きる、そのようなお姿に感銘を受けたし、今でも勇気を与えられ、励まされ、心のエネルギーを与えられているのでした。

フロー状態

 また、リラックスして自信がある状態、それをフロー状態と呼びますが、それが一番仕事がはかどる心理状態であり、疲れも蓄積しずらい状態なのでした。上機嫌とフロー状態の専門家である辻秀一先生は、上機嫌でいられれば、仕事を含めたすべての活動の質が高められると訴えておられます。自分の機嫌を保つことは、発電機のパワーを高めるのです。

自分の出来ることを考えればいい

 心理的なストレスに見舞われると、誰でも文句や愚痴、言い訳がつい頭の中に浮かぶものです。また、辻先生は、現在に集中することの重要性を訴えておられます。過去や未来についての雑念は置いておき、現在の出来ることに精一杯集中することで、かえって否定的な感情は退き、パフォーマンスは向上するものです。

目の前の人に尽くす

 目の前にいる人に、精いっぱい奉仕しようと努めること、これも心のエネルギーを保つうえで大切だと思います。精神医療であれば、相手が安心でき、落ち着ける言葉を言ってあげる、苦痛を取り除くための対処方法や薬の処方を考えるといった努力を最大限行うということになるでしょうが、他人に尽くすことほど、張り合いのあることはありません。張り合いのあることに対してこそ、心の発電機は、そのパワーを最大限に発揮するものなのです。

むすび

かつてのブログでお伝えしましたが、私はスピリチュアリズムの古典である「シルバーバーチの霊訓」を愛読書としています。霊界からのメッセージを伝えてくれる高級霊のシルバーバーチも、人に奉仕しようとする気持ちがある限り、霊界からの援助が期待できること、霊界からの援助はリラックスして自信がある心理状態の時に得られやすいと語っておられました。私にとっては、そのメッセージが心の支えになっているのでした。

 

この年末に思うこと

今回はこの年末に私なりに思うことを、お伝えしようと思います。

 

ブログの間隔

 2週間おきにはと思っていたものが、9月以降、ブログが1か月くらいの間隔になってしまっています。これは週に2回いらっしゃっていた遠藤先生が突然7月に退職されたことで、私の患者さんが急に増えてしまっていたことが大きな要因だったのでした。

月に2日の休みすら

私が書かなければならない書類、月、金曜日の診療時間が急に増えてしまい、月に2日の私の休みにも誰もいないクリニックに出かけて多くの患者さんから依頼された数々の診断書に取り組む有様でした。それでも書類はやや遅れがちで、この間に診断書をご依頼された患者さんには大変申し訳ない次第だったのですが。

それほどでも

 普段は周囲が心配するほど忙しさを感じなかったのですが、この数か月は、水曜日は日本大学、木曜日は成城大学で行っている毎週の大学講義の準備もあり、自宅に帰っても調べものばかりでした。肥満、成人予防や体力の維持の目的で行っている日々の筋トレもあるので、中々まとまった時間をとれなかったのでした。

年末の同窓会

 ちょっと毎年より多忙な日々でしたが、優秀で意欲溢れる当院の素晴らしいスタッフと、当院に通院してくれている大勢の患者さんのご協力のおかげで、何とか28日に今年の仕事を終えることが出来ました。全く感謝あるばかりです。さて、年末の休みに入ってからすぐの29日、私の出身高校である桐朋高校(中高一貫)の音楽部(ブラスバンド)の同窓会が高田馬場のイタリアンを貸し切って日中から企画されており、今年初めて出席してきたのでした。

36年ぶりの邂逅

 私が高校を卒業してから36年ですから、ほとんどのOBとは36年ぶりの再会でした。ちょうど私から7期位上のOBまで参加されていたため、50代後半から60歳に差し掛かかった中高年の男性ばかりの集いとなりました。

人間関係は永遠に

参加者は中高年のおじさんたちばかりなのですが、私から見れば10代の頃のおもかげを多少は残していました。当然のことですが、話しかければ以前の関係が長年の時を超えてあっさりと戻ってくるのが、愉快でもあり、また懐かしくもありました。

 先輩かと思ったよ

 私が気さくに話しかけた一人の先輩は、最初私のことが誰だか分らなかったようで、戸惑いながら後輩である私に敬語を使って応じていましたが、私と分かるとすぐに、「何だよ。先輩かと思ったよ。」と苦笑されました。月日の流れはやむを得ないことですが、私も高校時代とは外見がかなり異なってしまっているようです。

地球防衛軍のキャラクターデザイン

 以前のブログでお伝えしていましたが、私はかつて「地球防衛軍」というパソコンのゲームにはまっていたことがありました。「地球防衛軍」は大人気を博している日本のパソコンゲームのシリーズなのですが、登場してくる敵も巨大生物という設定のアリ、蜘蛛、カエルなど、とても独創的かつよく出来たデザインで感銘を受けていたものでした。かつての話ですが、プレイ時間も100時間を超えています。

そのデザインはかつてのキャプテンが

 たまたまその日に出席していたOBで、私が中学2年生の時に高校2年生で部活動のキャプテンをなさっていた先輩がゲーム会社に勤務しているという話を聞き、ゲーム好きの私は、どのようなゲームを製作しているか尋ねたのでした。何とそれは「地球防衛軍」であり、その先輩はグラフィックス担当で、ほとんどのキャラクターデザインを手がけたとおっしゃるではありませんか!

かつてのキャプテンはちょっとオタク

 当時のその先輩は、40人ほどのブラスバンドを束ねるキャプテンでありながら、リーダーシップとか、カリスマ性とか、そういったものと縁が遠い雰囲気で、どちらかというと物静か、絵がとてもお上手で、アニメの話が大好きな、オタク的な雰囲気がある人だったのでした。しかし、偉ぶったり、怒ったりすることは滅多にない、とても優しい方で、私は勝手に慕っていたものでした。

これでも主将(キャプテン)でした。

 その先輩はOB会で一人一人が近況報告をする時に、自分の番になると、美大を卒業し、ゲーム会社に勤めていると話した上、「これでも主将をやっていました。」と自らのかつての部活動について、ちょっとはにかみ、照れながら触れていました。私は別に照れる必要はないのにと思いながら、その懐かしくも正直なお人柄に、先輩らしいとちょっと嬉しく思ったりしたものでした。

それぞれの人間はそれぞれの才能を発揮すればいい。

 そのオタク気質の先輩がその秘めたる貴重な才能を存分に発揮し、高校を卒業してからは全く先輩とは関係がなかった私が気づかないうちにお世話になってしまうほど、社会に貢献されていることに私は深い感銘を受けました。また、これも桐朋高校の特徴なのですが、そのOBには医師になっている方がとても多く、参加したOB20名位のうち、私を含め、4名が医師だったでした。 

私が近況報告したこと

 私は自分の近況を話し、同窓会に出席した理由について話しました。私はこの機会を逃せば、もう会えない方もいるかもしれないからと言ったのでした。年末に一回、去年から行われている高校部活動の同窓会なのですが、人生は有限で、私も50代半ばになり、そう年の離れていないOBの方も何名か亡くなられていることを考えると、年末の休みで都合がついた今年は何としても出席しようと思っていたのです。

現在は過去と未来を作り出す。

 過去は変えられない、変えられるのは未来だけと言われますが、私の考えでは、それは一面的な見方で、人間は現在を生きることで、常に未来も過去も作り出しています。ただ、変わり、作られ続ける過去とは、過去の出来事そのものではなく、その意味についてですが。人間が生きる限り、誰でも生きてきた過去の意味も変化と成長を積み重ねているのです。

むすび

年末に同窓会に出席し、かつての高校の部活動を共にしたOBの方々と愉しい時間を過ごすことで、あの夢のような日々と、自分自身について、私は再考し、さらに深く見直す機会を得られたのでした。皆様、今年も大変お世話になりました!よいお年を!

当院のご案内
町田まごころクリニック 町田駅徒歩8分 心療内科医 神経科 精神科 メンタルクリニック
町田まごころクリニック
〒194-0022
東京都町田市森野2-8-15
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駐車場12台完備
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JR線町田駅 徒歩8分
バス停「町田市民ホール」
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