やっと帰国し、大変申し訳なかったですが、月曜日、火曜日の非常に混んでしまっていた外来診療を終え、一息つかせてもらったところです。皆様のおかげで、無事に元通りの生活へ戻りつつあります。しかし、まだヨーロッパと日本の時差症候群のため、日中の眠気と不眠が続いていますが。上は自宅に戻ってくつろぐひろりんと、窓際でパソコンに向かう私のそばから離れないひろりんです。
ひろりんの報復
お伝えした通り、出発前に旅行のガイドブックをおしっこで濡らして長期不在に対する無言の抗議をしていたひろりんは、自らの故郷でもあるホームセンターのペットショップから一昨日戻ってきました。しかし、昨日は自宅に妻がいるのにも関わらず、居間で4回もおしっこをする報復に出ました。朝9時半から10時頃までぶっ続けだった診療を終え、私が11時半頃に帰宅すると、妻が何やら怒っているではありませんか。
妻の怒り
むくれている妻を見て、また何かやらかしたかと自分を振り返った私でしたが、妻の怒りは私ではなく、猫のひろりんに向けられていたのでした。妻の話によれば、久々のひろりんは膝の上に乗りたがり、妻はひろりんを3時間も膝の上に乗せてあげていたそうです。しかし、それでもひろりんの怒りは収まらなかったようで、妻によれば、「嫌がらせで」日中に4回も居間のあちこちにおしっこをしたということでした。
ひろりんの葛藤
ひろりんは何度も嫌がらせをしたあげく、それでも夜には再度妻の膝に乗りたがり、妻に何度も歩み寄っては、にゃおんと鳴いて膝の場所をせがむのでした。しかし、怒りに燃えている妻は、頬を膨らませ、真剣に「嫌だからね」と言い放ち、その膝を譲りません。動物に対してとは思えない程の、妻の激しい憤りに、ひろりんはもう人間と対等な家族の一員なのだなとしみじみ思ったものでした。
寂しがり屋のひろりん
ひろりんは妻に拒絶されると、私のところにきてゴロゴロとのどを鳴らし、身体を摺り寄せてくるのでした。そんなひろりんを撫でてやりながら、日本に戻ってきたことを実感いたしました。帰宅したばかりのひろりんも家族が恋しいようで、手ひどい報復はしても、いつもより何度でもすり寄ってきて、私のそばから離れようとしない様子でした。
旅行の振り返り
今振り返れば、この旅にも名所史跡を訪れるばかりではない、様々な人との出会いがありました。その中でも印象的だった方は、今回のツアーでお世話になったJTBのガイド、水谷さんでした。水谷さんはとても陽気で冗談好きの愉しい方で、人一倍心優しく気遣いに富み、客とガイドの仲を超えて、親しくさせてもらいました。
260番中255番
これは水谷さんの高校時代の成績だそうですが、特に英語は関心が持てず、全然聞いていなかったと話されていました。ただ、旅行会社に就職した後に、一念発起され、半年アメリカにホームステイして英語を勉強し、あとは実地で経験を積まれたということなのです。
有能かつ誠実
ご自分のこれまでの人生についてあっけらかんと話して下さった水谷さんは、私より少し上の年だと思います。高校卒業まで英語とほとんど縁がなかった彼女は、今や英語を自在に駆使し、常に笑顔で現地の人々と理想的に見える和やかなコミュニケーションをとり、万全なツアーの進行のために、世界中の誰でも積極的に協力させてしまうのでした。
高校時代の先生もびっくり
水谷さんの高校時代を知るかつての先生が、有能なガイドとなって海外で働く彼女の姿をたまたま目にすると、「まさかお前が・・・」と二の句が継げなかったという話をしてくれ、大笑いしてしまいました。
困っている人を放っておけない
いつでも陽気で、とてつもなく人がいい彼女は直接自分のツアーと関係ないお客さんでも、困っている様子を見ると、自分の都合を顧みず、つい助けてしまうと話していました。いい意味で素朴かつ思いやり深いご性格は、彼女がとても優秀なガイドに大変身する助けにもなったのでしょう。
先生は普通なんですね。
これは今回同行したツアーでご一緒したご年配の上品で教養豊かなご婦人から私が言われたことでした。そのお方はかつて演劇の勉強をなさっておられたそうです。その一環として心理学を学ばれた時に、とある有名国立大学医学部の臨床心理士やら精神科医やらと顔見知りになったことがあったとのことでした。
精神科医は陰気なはず
その時に受けた印象は、どなたも陰気なご様子で、私とは全然違った印象たったそうです。私から渡された名刺で私も精神科医であることを知り、恐縮ですが、私が「人格円満」で、普通に見えることに驚いたとのことでした。
ああまたか
その時に、私は、ああまたか、といった嘆息を禁じえませんでした。不機嫌だったり、一癖ありそうだったり、偉そうだったり、陰気だったりすることが、一般的に、精神科医の典型的なあり方、または一つの特権であるかのように誤解されていることが、私には嘆かわしくて仕方がないからです。
何よりも陽気で、親切で、謙虚であること
これは、以前にもお伝えしたことですが、精神医療に携わる者に私が求める性格です。悩める人を相手にする以上、精神医療者に話しかけやすい明朗な人間性は不可欠なのです。まず自分自身の問題に苦しめられていたり、極端に厭世的だったり、悲観的だったりする人が精神医療に向いているはずはありません。
誠に申し訳ございません
私はこのクリニックを設立し、7年になりますが、雇った医師の数は20名を超えているでしょう。とても残念で、皆様に大変ご迷惑をお掛けしてしまいましたが、その20名以上の人々が全員それらの条件を満たしていたとはとても言えませんでした。
人はわかりません。
面接した私の前では一見礼儀正しく、それらしいことを話していても、実際クリニックに勤めて頂くと、そうではない面を見せつけられることはとてもよくありました。誰が見ても問題のある振る舞いや態度を私が穏やかに注意すれば、患者さんの迷惑も顧みず、すぐに辞めると言い出すばかりか、実際に辞めてしまう、そういったことも珍しくありません。
せめて普通の人間であって欲しい
また、遅刻が続いたり、患者さんやスタッフに感情的になったり、人間として基本的な部分で難があっても、医師は何度注意しようが、直らないことがほとんどでした。恐らくその職業上の優越した立場のために、他人から注意されることがほとんどないからでしょう。
精神医療者の資格なし
正直なところ、人間的に未熟な割には、プライドと傷つきやすさ、手前勝手の屁理屈だけは3人前の人間が医師には多すぎるのです。ただ、そんな甘ったれは、精神医療には最も相応しくありません。一時こそ辛くとも、自分を見つめ、自分から変わろうとしない人間が、他人の変化を援助出来る筈がないからです。
医学教育には期待できない
恐れ入りますが、社会に生きる以上、最低限求められる人間性という点で普通以下である、そういった医師を少なからず生み出す医学教育とは大したものです。ただ、この7年間私なりに経験を積み、経費を惜しまず、広く人材を集めさせてもらったため、今集まってもらっている先生方には、それなりに自信があります。少なくとも、精神医療と患者さんのことが大好きで、悩める患者さんのために、汗をかくことを全く厭わない、そういった方たちです。
むすび
つい愚痴になってしまいましたが、この旅ではいろいろな素晴らしい出会いがありました。また、誇り高いわりには、寂しがり屋のひろりんについても新たな発見が出来ました。普段は診察室にこもりきりのことが多い私も大いにリフレッシュできたので、私の能力の及ぶ限り、これからも皆様に尽くさせて頂く所存です。