福岡八卦掌研究会

福岡県福岡市と筑紫野市で活動する福岡八卦掌研究会の紹介と練功日程。福岡八卦掌研究会は、宋長栄派八卦掌、程廷華派八卦掌、馬貴派八卦掌を基盤に八卦掌を体系的、統合的に研究する会です。八卦掌の技法、套路の紹介。講習会ドキュメント!

獅子形

進化するライオン(後編) 獅形掌考察

一日空いて7月18日の講習会。この日は珍しく午前中の講習会となった。

理論講習では、獅形を象徴する球形運動には、上下、前後、左右といった外見上の他にも大小や虚実など様々なものがあるが、もっとも重要なものは、やはり上下と左右であるとの事。

実技講習は、軽めの獅形走圏から始まった。

続いて前回と同じく獅形の2。套路自体に変化は無かったが、最初の扣歩の際に円の中心方向に向かう意識が感じられた。また獅形転身の際は、前回より正確な立円(垂直)動作を行っているように見えた。

前回は極限まで筋を伸ばし、 極限まで体も捻るよう要求されたのであるが、この日はそのような要求は無く、むしろ全体をスムーズに行うよう指導された。一日違えば、同じ掌法でも練習方法が異なるようだ。気候のせいなのだろうか。

今回初めて個人的に注意を受けた点としては、最初の扣歩の際に肩に力が入り過ぎているとの注意を受けた。円形を意識するあまり肩に力が入り過ぎていたようだ。

続いて獅形の3。こちらも套路自体は変わらないが、小円の回し方が下→上→上の形に戻っていた。

そしてこの日の講習のハイライトは、ボールの玉転がし。小円回しの後の撩掌的な動作の際に、前回行った雲片掌的な動作を行い、そこから更に背中側を前に転がし、後ろに転がし、最後に走馬活携を小円で行い立円転身に繋げるといったもの。

正直言えば、このような動作が武術的にどうかと言われれば、何とも答えようがない。しかし、体の感覚をより明確にするのには効果があるだろう。

《獅形掌考察》

さて今回の講習に参加する以前に、私は獅形掌について、ある推察をしていた。今回の講習参加は、それを確証する意味もあった。

獅形掌というのは、球体動作である。では、この球体動作が武術の技として、そのまま使えるかと言えば、使えない事もないが、実際には難しいだろう。

ではなぜ、実戦的ではない獅形掌を学ぶ必要があるのだろうか?

詳細は書けないが、獅形を学ぶ事で、おそらく八卦掌の基本技法の功夫が上がっていくだろうと思う。基本技法の質が変わると言ったほうが良いかもしれない。

そして、その秘訣は私は足と胯にあると思われる。つまり足と胯を使っていかに球体動作を行うかである。

ちなみに獅形の動作は、別に馬貴派に限ったものではなく、私が学んだ程派の老八掌の第六掌にもある。そして、程派の獅形もやはり技法ではなく原理を表したものであると言える。

獅子張口
程派老八掌 第六掌 獅子張口

さて、この原理を今後いかに活用していくかが、我々に対しての宿題という事になるだろう。ヒントは老師が示してくれた。大刀も練り直さないとね。

大刀1
八卦大刀 仰身分脚反扎
 
最後に老師が獅形掌は、いくら練習しても疲れないでしょう?という話をされた(私は疲れていたけれど)やはり夏は獅形の季節のようだ!


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2011年11月21日 李老師ドキュメント 個人指導編5

11月21日は李老師に個人指導を受ける日である。

個人指導の内容を書くのは、どういうものかとも思ったが、福岡で馬貴派を学んでいる方々は、まだまだ李老師と触れ合う機会も少ないので、参考になればと思い、個人の練習記として書くことにした。

本日は昨日以上に晴天◎

セミナー開催前に、この日は素晴らしい場所に案内するからと李老師に伝えており、約束通り、四王寺の山頂へと案内した。行ったことのある方はご存知だと思うが、この場所は太宰府市が一望でき、空気は澄み、空も近く感じる。李老師もここからの風景をビデオで撮影されていた。

四王寺 山頂での記念撮影
CIMG0595-2 CIMG0598-2
この時は、まだ笑顔の二人…。この後、どうなるのか。

午後2時個人指導スタート!やや傾斜のある場所で走圏を行った。

この日の個人指導では、磨身掌第二を習う。

磨身掌第二の套路自体は、今夏、東京に行った際にN崎さんとCraigと共に練習する機会があり、套路の順番だけは、その時に覚えて帰ったのだが、李老師から直接習うのは、今回が初めてである。

套路の構成自体は、母掌と比べれば、随分とシンプルである。最大の特徴は、扣歩穿掌しながらの転身圧肘だろうか。

実は、個人指導と言っても、套路の覚え方自体は講習会と相違ない。老師の前で繰り返し套路を練習しながら、老師が気付いた修正点を、その度に指導してもらう。

磨身掌第二では、母掌のように各招式をはっきりと大きく行うのとは違い、鳥を例に出して、動作はやや小さく行い、よりスームズに動くよう説明されていた。用法的には転身圧肘は、相手との距離が重要になるとの事。どうするのかは秘密。何発かいい肘が入った…。ぐっ

套路の練習は約一時間ほどで、後半の一時間は、個人指導名物の技の受けである。

技の受けというと、合気道的な技の受けをイメージする方もいると思うが、李老師の技はとてもではないが、受身など取りようが無い。
とにかく極められ、打たれ、投げられ、崩される。

そして…、当たり前だが、痛いのである。

馬貴派八卦掌の特徴の一つに拿法が挙げられるが、走圏で鍛え上げ、全身を統合した力による李老師の拿法(掴み技)は、とにかく痛い。これはもう抵抗のしようのない痛さである。

Kさんと二人で技を掛けられる度に「ぐぇーっ!」とか「ぎゃーっ!」とか叫んでいた。登頂まで登ってきた登山者達は、大の大人二人が屈強な男に技を掛けられ喚いている姿を見てどう思っただろうか

実は今回、Kさんを同行したのも、過去の経験から、とてもではないが私一人で李老師の技を受け続けるのは、体がもたないからである。以前、講習会の前日に個人指導をして頂いた時も、翌日の講習会ではへろへろだった。講習会でも用法の説明はあるが、あれが一時間以上続いたらどうなるのか考えてみてほしい。また自分一人で技を受けていても、実際に自分がどのように技を掛けられているのかが分からない事も多く(武術の場合、相手に分からないように技をかけなければならないので当たり前と言えば、当たり前だが)、今回はKさんと交互に技を受ける事ができたので、自分なりに随分と用法の理解をすることができた。

一般的に八卦掌がどのように戦うのかは知られていない場合が多い。

理由は、八卦掌の演武を見ていれば分かるように、技法と技法の境目を分けずに套路を演武するため、当然だが何をやっているのかが分からない。また套路上は、身法のみを表現していて手法を意図的に隠している場合も多く、やはり見ただけでは分からない。そして訳の分からない套路を、訳が分からないままの指導者が人に伝えていくので、より一層、訳の分からない八卦掌になっていく。そうなると、こうしたほうが見映えが良くなるなどの理由で元の技法とは全く関係のない形に変わっていく。これでは分かりようがないのも頷ける。

その点、李老師の馬貴派八卦掌は、初歩の段階から穿掌、探掌、蓋掌、圧掌、切掌、反背捶、挑打、撞掌などの基本掌法を単操で学ぶし、またこれらの掌法を基にした簡単な套路もいくつか学ぶので、後々八大母掌などの套路を学ぶ際も、基本的には、これらの基本掌法の組み合わせになるため、比較的学びやすい練習体系だと思う。(基本掌法については、基本技法のページをご覧下さい。)

私が学んでいる範囲で、公開しても問題ない範囲で馬貴派八卦掌の戦闘原理を少し解説すると、やはり最重要の掌法は穿掌である。

これは単に穿掌という技法が優れていると言っている訳ではない。

この穿掌の姿勢が全身を統一統合した上で前手(正確には自己の攻撃線)に最も力(気血)を集中できる姿勢だという事である。言い換えれば、前手(攻撃線)に最も力(気血)を集中させるためには、この穿掌の姿勢、構えをとらなければならないという事である。八卦掌の根幹的な原理としてである。(槍法に順ずる)

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     李老師の穿掌

またこの姿勢を根幹に取るからこそ、必然的に相手と接触した際に穿掌を攻撃にも防御にも第一に用いるということである。これも言い換えれば、この姿勢が根幹なために穿掌しか用いることができないのである。(※1)

故に八卦門では搭手の際、穿掌を用いる。そしてより功夫が高い方が必然的に相手の中心を取る事になる。

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相手の功夫が弱ければ、そのまま穿掌で事が足りる。

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相手の功夫がそれなり高く、抵抗が感じられるようなら、ここから変化をする必要がある。

相手の攻撃線をずらす場合は、圧掌(下方)や閉門掩肘(左右)、龍形転身(後方)などの意法と手法を用い、また撩掌によるすり抜けや引っ掛け、巻き込みなども多用される。これらの掌法は、八大母掌などの套路に頻繁に含まれていたり、套路の第一動作となっている。理由は色々とあると思うが、その一つはやはり実用時にもこれらの掌法が頻繁に使用されるからだろう。もっとも実用の際には、套路の動きと比べれば、極小の動作で行い、また意法のみで行う場合もあるため、外見上は分かり辛いかもしれない。これらの実用時の微妙な手法と操作は、詠春拳の防御法に近いような気もする。

自分から仕掛ける場合は、穿掌で相手に圧力をかけた後、撩掌(蛇形)で下に変化して探掌。あるいは、同じように一旦圧力をかけた後、攻撃線をややずらしながら、後手で相手の腕を押さえ、穿掌から探掌を滑り込ませる(探穿掌)。また撩掌の変化に相手が反応しようとすれば、そのまま相手の腕を巻き上げるか、後手で相手の腕を内側から撥ね上げて、前手で挑打や撞掌などを打ち込む。これらの変化は、八卦掌の常套手段だと言えるだろう。

そして後手は、上記の前手の操作で相手に隙ができれば、穿掌、探掌、蓋掌、撞掌、劈掌などを進歩しながら即打ち込む。(この際、当たってから打つ、あるいは打った時には当たっているなどの微妙な意法が必要である)相手が避けるか受ければ、打ち込んだ手がそのまま前手となり、歩法と共に次の攻撃に進む。

相手の攻撃力が強ければ、龍形走圏の身法を応用して相手の攻撃線を後ろに逸らしながら、歩法を変化し、帯手や走馬活携、今回の講習会で学んだ背身後転からの撩陰掌なども使いやすいと思う。

私もこれまでいくつかの流派を専門に学んできたが、馬貴派八卦掌は根本を押さえる事ができれば、使いやすい拳法だと思う。

ただし当然だが、やはりそれなりの功夫がないと相手の中心に対して圧力をかける事ができないし、変化もできないので何の役にも立たない。その点では形意拳に似ているかもしれない。

ついでなので蹴法について紹介しておくと、やはり根幹の姿勢は崩せないので、膝や腰などの低い位置への蹴り技が中心となる。(廻身掌などに出てくる高い蹴り技は、鍛錬型や奇襲技としての意味合いが強いと思う。)ただし、扣歩や擺歩は足払いとしても使えるし、相手の歩法を封じ込めての投げ技へも変化する。(11月20日の講習会ドキュメント単換掌の応用の写真を参照)そういう意味では応用変化は多い。

最後に近接技法に関しても触れておくと、今回の個人指導でも随分と肘打ちや投げ技を受けたが、これらの近接技法は、よくよく見れば、そのほとんどが単換掌の応用といえると思う。単換掌は八卦門だけに伝わる招式であり套路だが、唯一無二の第一掌である事が頷ける。

極端な一意見として聞いてもらえれば、穿掌と単換掌、この二つが八卦掌を理解するためのキーワードと言っても良いだろう。そしてこの二つを繋げるものが走圏と言えるかもしれない。走圏は、穿掌をしながら単換掌を行っているとも言えるからである。走圏により、穿掌や単換掌は鍛えられて強くなり、穿掌や単換掌の功夫が上がれば、それが走圏にも反映されてくる。それぞれ別の練習法でありながら、究極的には同じことを行っている。一つである。もっとも馬貴派のすべての練習法は、すべてで一つとも言えるのだが。

離れた距離から攻撃する場合は、独特な拍子と歩法を用いるようだが、これはまたの機会に。

少し書き過ぎたかな…。しばらくしたら、消してしまうかもしれない。


午後4時、さすがに二人とも体がもたないので、こちらからの包拳礼で個人指導は終了。李老師、本当にありがとうございました。

夕飯までは、まだ時間があるので、この後は太宰府市の政庁跡に移動。李老師は、政庁跡がたいそう気に入られたご様子。私やKさんにカメラを持たせてご自身の写真やビデオを撮られていた。

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  政庁跡で練習する李老師

途中、二度ほど88式を一緒に演武する機会にも恵まれた。ただし、もうへろへろだったので細部までは覚えていない。また少し変わっていたのかな。あのビデオほしいな。

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風景も含めて美しい、李老師の獅子形

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講習会では見ることのできなかった撞掌

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  最後は、やっぱり挑打!

5時半過ぎ、辺りは暗くなってきたが、李老師はまだKさんに蹴法をかけたり、帯手や撞掌で飛ばしていた。李老師も稽古相手が欲しいのかな。Kさんも今日は良い経験になっただろう。

その後、春日公園近くの福源で夕食。ちなみに李老師が住む、鶴ヶ島にも福源があるとのこと。


11月22日

さて、いよいよ李老師の帰られる日である。

送る車内で聞いた話しでは、来月には新しいホームページができるとの事、楽しみですね。今後は世界に向けて馬貴派八卦掌を広めていきたいようです。

その他、単換掌の16アプリケーションの話しなども出たが、うまく聞き取れなかった。もっと英語のレベルも上げていかないと。

空港到着。保安検査所を通過後、背伸びをして大きく手を振っていた李老師。今回は一緒に過ごした時間も長かったので、少し感慨深かったですね。

李老師は無事にご自宅に戻られたようです。以下は彼から福岡の講習会に参加した皆さんへのメッセージです!

    I am also very happy to have teaching which students like, I am satisfied after the two times teaching, I hope you and your students would grow and progree as quickly as possible.
 
    In the future I hope our meeting.
 
    My best wishes to you and your students.
 
Li

progreeは、progressかな。各自訳してみて下さい。今後とも皆さん頑張っていきましょう。

※1 「この姿勢が根幹なために穿掌しか用いることができないのである。」と上述したが、これはどの流派にも、やはり長所があり短所もあるということである。馬貴派の最大の特徴は姿勢であり、これは規格とも言える。この規格を外れれば、それは馬貴派とは言えない。故に規格を外れた技法は使用できない。しかしこの規格内で使用できるよう各技法を工夫している。


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