マグロザキは第2回目の流星道場マンツーマン講習に向かっていた。渋谷で声掛けとファッション講習の予定だった。そしてこの日マグロザキは初流説教を食らう。
前回講習からわずか一週間だったがマグロザキは流星さんの指摘を取り入れてファッションを改善しているところを見せたかった。マグロザキは散々迷ったのち無難で若者受けを狙った洋服をえらんでみた。自分のイメージではこう。(実際は色使いや素材などだいぶ違う)

待ち合わせ場所に流星さんが現れる。流星さんのファッションは若い、渋谷にいても全然違和感がない。
では、マグロザキはどうだ?流星さんは出会い頭の挨拶を済ませると、早速マグロファッションのチェックをしてくれた。「うん原色は使ってないね。髪型もましになった、前回よりいいよ!」しかしすぐに違和感に気づかれる。「でもね、白のパンツ…やっぱり白パンはオジサンだよ。無理して若者受けを狙ってる感じ。あとこの上着の色。無地ならいいのに、なんでこの変なグラデーション選ぶかなあ…(上の写真は無地の紺だが、マグロの上着はグラデーションが入っていた)」
全力をつくしたつもりのマグロファッションも、流星さんにはこういう感じで見えていたらしい。違和感しかねえ。

すっかりファッションダメ出しで意気消沈したマグロだったがさらなる失態を重ねる。
流星さん「今日って紙とかペンとか持ってきた?」
マグロザキ「う…しまった、持ってきてないです…」
流星さん「あらそう?」
なんてことだ、実力・才能最低レベルのマグロザキはヤル気だけはしっかり見せようと思っていたのに。…もはや申し訳なくて、すでに帰りたい。沈み込むマグロザキの気持ちをよそに、流星さんの声掛け講習は始まる。
マグロザキ (そうだ、ここで少しはいいとこを見せよう。4年半もストをやってるんだ、下手くそなりに慣れてるところは見せられるはず。)
3声掛けくらいで、若くて見た目の細い女の子とオープンした。
マグロザキ「こんにちはー!お姉さんかわいいっすねー。」
女の子 「…?」
マグロザキ「うん、すごくかわいい。渋谷で一番輝いてる子がいるから思わず声をかけちゃったんですけど。」
女の子 「いやいやいや」
マグロザキ「買い物ですか?今。渋谷で。」
女の子 「あ、えーと」
マグロザキ「あ、待ち合わせ?」
女の子 「買い物終わったとこですね。」
マグロザキ「そうなんだー、じゃあ疲れてるだろうからコーヒーでも飲みましょう!奢るから」
女の子 「いや、いいですいいです!」
マグロザキ「だってこんなカワイイ子めったにいないですよ!渋谷で一番ですってば!着こなしとか、このシャツが似合うことかいませんよ!」
女の子 「そんな事ないですw」
マグロザキ「実は僕、友達と待ち合わせてて30分位時間あるから…」
その後数分話して結局連れ出しも番ゲもできず放流。いつもどおりの声かけだ。技巧はないがスムーズにいったから、いつもの声かけの何が悪いか指摘してもらえるはず。
あれ…流星さんのところに戻ると、流星さんが眉をひそめている。え…?
流星さん 「マグロ君、今のトークって誰かのマネとかしてる?」
マグロザキ「あ、はい。他の人のブログとか参考に、いつもあんな感じで。」
流星さん 「マグロ君さ、女の子の表情見てた?『渋谷で一番』とかいってたけど、マグロ君全然そう思ってないでしょ!」
マグロザキ「一番かわいくは…ないかもしれませんね…」
流星さんは完全に流説教モードに入った。僕は緊張と混乱のあまりひどい顔になっていただろう。多分口元は乾燥して息がクッサクなっていたに違いない。もう、喋りたくなかった。
流星さん 「バレてるんだよ女の子に!!マグロ君が思ってもないこと言ってるの!」
マグロザキ「やっぱり…バレますか。」
流星さん 「声掛けのとき女の子のどこを見てる?誰にでもテンプレどおりのトークをしたって、全っ然響かないよ。薄っぺらい声掛けしてるってあっという間に見抜かれてる。だからトークが尻すぼみになっていたでしょ。」「それに『友達と30分後に待ち合わせ』ってなに?時間制限を使うなんて、女の子が迷ってるときだから効くの!あんなタイミングで言ったってなんの効果もないし、ただのウソじゃん!ウソがバレて後から気まずくなるだけだよ!!そうやってテンプレでごまかして、ウソのトークばっかりやってるから何にも女の子に伝わらないんだよ!!」
正論過ぎて、核心をつきすぎて言葉が出ない。4年半マグロザキは伝わらないトークをひたすら反復練習していた。声かけに緊張しなくなったんじゃない。声掛けの緊張を決まりきったトークで隠してきたのだ。壊れかけの機械のように同じ動作を繰り返しているだけだった。どうせ壊れるならネジの1本や2本飛ばして声をかければよかった。流星さんは自分で5、6本ネジをぶっ飛ばして見当たらないが、正常作動している。
流説教の後は理路整然と改善方法を指導してくれる。
流星さん「まず、女の子を見よう。ファッションもひとつ。さっきオレが声かけた女の子なんて道路で転びそうだったよね?『大丈夫ですか?』って。女の子の格好、動作、どこの店から出てきたのか、手に何を持ってるのか、今日何しに街に来たのか。観察して、考えて声かけて。一人ひとりに対する声掛けは変わるはずだよ!」
考えろっていったって、観察しろって言ったって、すぐにできるはずがない。4年半、いや人生でいままでずっとサボってきたことだ。頭が真っ白になりながらとにかく目につくことを口に出す。
マグロザキ「あ、そのバッグかわいいですね!」「シャツの色良いっすねー!青が似合うよね、ブルー」「おや、携帯見てるけど、どっか探してる?彼氏からのラブラブメッセージかw?」
流星さん「マグロ君、スマホに着目したのはいいね。オレでもスマホをネタにしたと思う」
流星さんはすぐにフィードバックをくれる。よし、次、次!
マグロザキ「(あの…!?)」
流星さん「どうしたの?なんで声かけない?」
マグロザキ「なにも声掛けが思いつかなくて…」
だめだ、最初の一言すらうまく出せない。目につくことを口に出しても、二言目がまったくつながらない。相変わらず緊張で口はクサイ。頑張って声をかけ続ける、続ける…。息がクサイ。なんの進歩もないが、必死で言葉を絞り出そうとする。頭が混乱して真っ白で、自分の思い通りに喋れないし動けない。でも、この感覚は多分知ってる。全く新しいことを始めて、全然うまくやれないときの感覚だ。今マグロザキは新しいことをやっている。口からは魚の死体のような臭いがしている。
講習時間を一時間以上残した時点で体力がつき、流星さんにファッション講習への移行を申し出た。渋谷のアパレル店を回ったのだが、正直一生で一度も来たことない類の服を何着も試着させてもらった。
マグロザキ (若者受けする格好ってこういうことか。そりゃマグロザキが思っていた若者ウケがオジサンの若作りに見えるわけだ。)
店舗間の移動中に流星さんに今日の感想を伝える。
マグロザキ「ほんとうに今日は頭が真っ白で…でも、あたらしいことに挑戦してるから、全力で頭をつかって、それで全然できてないんだなって感じ、あります!」
流星さん「あー、ふーん、なるほどねー。」
マグロザキ (え、流された…!?オレの熱い思いと感覚はオレの勘違い!?www)
ファッション講習が終わってから、最後の声掛け講習再開に付き合ってくれた。雨の降る中流星さんの熱い指導は続く。
流星さん「急な雨だからね、話題にするにはもってこいだよ!行って!」
マグロザキ「やーお姉さん傘持ってないっすよね?まいりましたねー、今日降ると思ってました?ぼくも傘持ってなくてどうしようって。」
途中、流星さんの声掛けも見せてもらう。正三声掛けもやってもらい、オープンした後にパスをくれる流星さん。もちろんパスを取りこぼし、女の子を放流するマグロザキ。
マグロザキ「いや、流星さんの声掛けって自然ですね。本当に友達に話すみたいに。」
流星さん 「『ナンパだから!』って型にハマった声掛けする必要ないんだよ。仲良くなるんだから、仲良さそうに声掛けよう。」
正直、このときは流星さんのトークの凄さは全然わかってなかった。「なんかしらんけどやたらフレンドリーでやたらオープンするなー」くらいにしか思ってなかった。
みっちりと声掛け指導、ファッション指導をしてもらったのち、ヘロヘロになってマグロザキは帰宅した。流星さんに別れ際「もちろんこのあとも声かけていくよね?」と言われたけど、「はいもちろん!」といいつつ、すいません無理でしたやっていきませんでした。ごめんなさい。
この2週間ほど後、技術の向上はまだ感じられなかったものの、マグロザキは約3年ぶりのゲットをすることになる。
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