マヒドン大学熱帯医学教室2012

このブログは、マヒドン大学熱帯医学教室2012年度に留学中の日本人10名の体験記です。

2012年05月

ライチとparacyte寄生虫

熱帯のタイでは果物が安く、ライチがこのくらいで40円ですっかり冷えてオイしそうです。 
raiti


 またまた試験です。みんな忙しくて、ブログのアップなどしてられない様子ですが、息抜きにアップします。

handoutfile

写真は、この2ヶ月弱で配られた、講義のスライドを印刷したもの(両面コピーで大きなファイルに1個半)と、教科書です。ファイルの下にあるマンソン熱帯医学は1500ページほどですから、聖書の半分くらいでしょうか?International Edition と言って、先進国で売っている値段の1/3くらいで買えました。

 今回の試験は、寄生虫でおきる病気と、細菌、ウイルスなどの下痢が主ですが、英語の聞いたことない虫や薬の名前を、山ほど覚えるのはつらいものです。試験をしてくれるので、こんなに真剣に覚えようとするのですから、ありがたいものです。いつもクラスで隣に座っているサミーは、一度聞いたら何でも覚えられるくらいの秀才です。6才からコーランを記憶し、戦争中のアフガニスタンで勉強して医師になったばかりで、サッカー好きの好青年です。何でもよく知ってます。同じ人間でも、大きな差があるものです・・(年のせいかな?)

 タイに来てから、先輩に貰った本「医者は現場でどう考えるか、What doctods thinkジェローム グループマン を読みました。アメリカのオックスフォードで白血病,エイズを治療する超エリート大学教授が著者。「患者の訴えや、検査、患者の心を読み、聞き取れなかった症状を時間をかけて効き出せば、きっと正しい診断に至ることができるだろう。いかに様々な要因によって、間違いが引き起こされているのかを考えさせられ、また患者にとって最も良い選択を自ら選ぶことができる様、本人の価値観を引き出すか」と言うものです。

 色々共感する面もあり、おもしろく読みました。私も5年ほど前から「治せない病気(癌末期など)や気がつかない病気(精神疾患)、本人の生活の乱れ、たばこによる病気、精神的な状況による体の変化」などに対して自分なりに対処してきたつもりです。しかし、この著者が、わざと書かなかった面が病気にはあります。それは、病気や人間の体についての知識や治療法にはまだまだ分からないことが沢山あると言うことです。寄生虫は原因生物がかなり分かっている病気で、その中でもマラリアは良く研究されています。しかし、単純なことが分かりません。たとえば、「マラリアが感染した赤血球は脾臓で殺されない様に血管の内側で必死に内壁に接着するが、しまいに血管が詰まって、臓器が機能しなくなり宿主の死に至る。なぜマラリア病原体は宿主である人間を殺してしまうのか?それでは種の保存ができなくなるではないか?」、「双子の兄弟が、片方はマラリアに免疫ができ重傷にはならず、もう一人は子供の時に重傷化して死んでしまうのか?」(もちろん多くの要因は分かっていますが、個々の個体ではその差は分かりません)

 全部が分かっていない病気に対処して行くには、分かった部分で立ち向かうしかありませんが、そういう意味で我々人類はかなりの進歩をしました。しかし、この薬を使えば良いと分かっても、その薬を買うお金がないこともあります。寄生虫の広い範囲に良く効き、しかも一回飲めば(これまでの薬は3週間以上)95%以上治癒するなどと言うIvermectinNitazoxanideができてきました。「ありがたや」ですが、途上国では高くて買えません。しかし、本当にその薬が必要な患者が多いのは、先進国ではなく、途上国なのです。先進国で多い癌の治療薬はすごい値段でも売れます。開発には、数千億円以上のお金が動きます。しかし、HIVや途上国での感染症に必要な薬の開発には、なかなかお金が出ません。ジレンマを抱えて、勉強に戻ります。    よっしーでした。

 

初めてのドリアン

初めてのドリアンに挑戦

 熱帯地方は、トロピカルフルーツの宝庫です。マンゴに代表される果物は、豊富な雨と太陽光に恵まれ、育ちが早く種類も豊富です。マンゴやスイカ、パイナップル、ライチ、などは屋台でも、皮をむいて切った状態で氷の上に置いて売られており、一人分のビニール袋入りが、35バーツ(10バーツは27円)くらいで買えます。バナナは生でも売ってますが、こちらで見かけたのは焼きバナナ。

 昨日は、大学構内に屋台でドリアンを売りに来ていましたので、買って見ました。人生未経験の分野でしたので、臭いと聞いていたものの、一度挑戦してみたかったものです。皮が厚く、むく時に臭いそうで、すでに剥いてラップがかけてあるものを買ってきました。高級品で、リンゴより少しお大きめのフサが2個入って80バーツでした。冷蔵庫で一晩冷やしてから、早朝に挑戦。意外と臭くなく(思いっきりかぐと、うんこ臭さがしますが、食べているときは、クリーミーなマンゴのようで、トロピカルフルーツ特有の果物の香りもします。まだ熟れきってないようで、臭さもほどほど、もう少し冷蔵庫で熟れるのを待ちましょう。高級品でした。

 発展途上国から新興国への転換期であるタイは、平均年齢も低く、人口も30代の人が一番多繰、町も活気にあふれています。裏返して言うと、高齢者が早く死ぬ世界で、一番多い原因は感染症です。町にあふれる屋台も、歩道を狭くしているため、また舗装道路や歩道の整備も悪いため、とても車いすで生活できる環境ではありません。高齢者社会の日本では、歩道やエレベーターの整備が進んでおり、今タイに来て、30年ほど前の日本の歩道の状況をを思い出させます。
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写真はドリアン。

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はじめての試験です

よっしーです。

 熱帯医学を習いだして、はや一ヶ月。私は産婦人科で主に腫瘍(癌など)を扱ってきたり、研究したり、20年前には人の発生学を研究して、臨床では体外受精をしたりしていましたが、感染症は詳しく勉強しておらず、特に熱帯地方に多い寄生虫などは、今の日本でほとんど見ることができないため、全くの素人分野の学習が始まりました。みんなに追いつくだけで必死です。

 今週初めての試験を控えて、みんな勉強しています。便の中にいる、寄生虫の卵や、原生動物の嚢胞を顕微鏡で見て、特徴を書き出し、英語の名前を書き出すという物です。しかし、普通に便の検査で見られる物は30-40種類で、成虫が直接肛門から出てくる寄生虫は数種類。その中で、この大学に保存してある標本の中身を、ミックスして出題されるので、頻度の多い疾患しか出ません。それでも予想問題は20個ほどで、ほとんどラテン語に近い英語の表記をスペルまで覚えるのは高齢者の私には至難の業で、究極の語呂合わせをしています。

 原生動物は、なんと地球上に5万種類も見つかっており、おそらくそのほとんどが地上で見つかっているだけで、海に入るともう何種類いるのかさえ分かりません。人間に住み着くものが2万種類もあり、覚えるのは無理ですが、本当はその何倍居るかすら分かっていないのです。これと別に、細菌(真細菌)は人間の細胞数の10倍も人間の体にいますし、古細菌 archaeaに至っては何種類あるのかさえ見当も付かないようです。寄生虫も検査すれば人類の2億人以上に感染していることが見つかるそうで(マラリアを入れるとすごい数)、人間は自分の細胞の何十倍もの微生物と一緒に共生(お互いに益があること)している事になります。まだまだ医学では、ほんの端っこの方が解明されているだけで、分かっていないことが99%以上あるわけです。

 私もいっぱしの科学者として、「どうしてみんなが科学に興味を持って大きなお金を使い、宇宙ステーションを作ったり、医学や化学、建築学など色々な分野を研究するのか?」に興味があります。ある人からおもしろい話を聞きました。「文化系と理科系の違いはなんでしょう?」と言う質問の答えを「理科系は人間以外の宇宙に存在する物を解き明かし、文化系は人間について解明するのもの」と彼は言っていました。そうすると医学はどっちかというと文化系の科学になるようです。私が興味を抱くのは、「神様が自ら作り出した我々生物にさせたいことは何か?」神の目的を知るために、ある人は科学を使って解き明かそうとしており、また違う人は宗教を使って神との対話を試み、哲学は人の性質などを勉強し、理屈をひねって宇宙の真理を考えています。それほどに人類は、神の意志を知りたいと願うのであります。

 「試験中に神の声が届きますように」と、お祈りして今日のレポートを終わります。
 下の写真は、寄生虫Helminthes と呼ばれる寄生虫の仲間で、 

 Trichuris t              
Trichuris trichuriaの卵(両側の栓は幼虫が出てくる穴です)と、
taenia
Taenia soleum
の卵です。中に牙が見えます。美しい色と形をしています。さすが神様。      
                                     よっしー

 

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