マヒドン大学熱帯医学教室2012

このブログは、マヒドン大学熱帯医学教室2012年度に留学中の日本人10名の体験記です。

タイの生活

Ubol Rachatani カンボジア国境の町

バス

3回目の研修旅行はUbol Rachatani,上等なバスでしたが、満席で10時間走ってたどりつきました。 

 よっしーです。
 先週は、Ubol rachataniというカンボジアとの国境地区にある中央病院に行ってきました。バスで10時間、高速道路を突っ走って長旅でした。
 遺跡2

 途上、カンボジアに支配されていた頃の、宗教的な遺跡Phnom Rung Historical Parkに立ち寄り、観光地化されていない古いお寺を見ることができました。10
世紀から13世紀までの建造物です。古代から、天文学は、歴を作るために必要で、太陽、月の観測が農業の種まきなどの時期を知る大きな役目を持っています。石を積み上げて出来ているお寺の中心には、一直線に伸びた廊下が有り、年に一回だけ、太陽がまっすぐにここを通して見られるそうです。この日を、太陽歴の一年を計算する時に使うのでしょう。


遺跡  太陽光が貫ける回廊 
 

 訪れた町は、Ubol rachataniの中心病院、1000のベッドが有りますが、稼働率は130%ということで、廊下や階段室までストレッチャーに乗った患者さんがあふれていました。地方では、各村の中心にクリニックが有り、そこには保健師さんが居ます。そこで扱えない人は、更に医師のいる地方病院に行きますが、重傷になると、この県庁所在地の病院へ移送されます。NICU新生児集中治療室の風景を見てもらうと、日本とあまり変わりませんし、先生方は、英語で最先端の勉強をしてきた人たち。看護婦さんもレベルが高いと思われましたが、患者さんが多すぎて、とても大変そうでした。病院不足、そこが一番の問題かもしれません。
 NICU未熟児集中治療室、ベッド数が10ほどありました。

 この病院ではマラリア、デング熱はもちろん多いそうですが、交通事故も多いそうです。病院の手術件数のなかで一番多いのが、事故と帝王切開だそうです。癌の患者さんも多く、抗がん剤治療や放射線治療を行っていると言いますが,手術はそれほど多くないようです。

 この場所で肺炎の一番の原因になる菌は、Melioidosis日本語では類鼻疽です。地中、水の中に常在し、東南アジアには多く、アフリカ、オーストラリア北部にも多い菌です。日本では聞いたこともありません。農業などで土と接触する機会の多い職業の人に見られますが、土煙を吸い込んだり、けがの傷から進入し、全身の臓器に感染して死亡率も高い怖い病気です。ベトナム戦争の時、米軍のヘリコプターが土埃を巻き上げ、それを吸い込んだ兵士たちが大勢この病原菌で死んでいます。アジアを代表する怖い病気の一つです。土に汚れた場所で怪我をしたら、すぐにきれいな水で洗い、イソジンで消毒しましょう。怪我の基本処置ですね、これを怠るだけで死ぬ病気が世界中にはいっぱい有り、破傷風もその代表です。類鼻疽にはワクチンがありませんが、早期に診断すれば抗生物質が良く効きます。破傷風にはワクチンが有り、日本人やタイ人は全員ワクチンを子供の頃に受けていますが、もっと貧しい途上国の子供たちは受けていない子が多く、単純な怪我だけで命を落としてしまいます。アフリカの超貧しい国では、ほとんどの人がワクチンを受けておらず、母親が破傷風のワクチンを受けていないと、生まれた赤ちゃんがへその緒を切るときに感染し、死んでしまいます。破傷風での死亡者の半数は新生児だそうです。へその緒を切るための清潔なナイフさえ無い世界がまだあるのです。
  

はじまして。kenです。

P6020158
はじめまして。mahidol  Univ, DTM&H 2012 のken です。DTM&H 2012が開講されて4ヶ月が経ちました。バンコクに滞在されたことのある方ならご存知だと思いますが、生活には不自由しません。ただし、800万人くらいの大都市を考慮すると、もう少し電車(スカイトレイン、地下鉄など)が発達してほしいところです。。
 yossy先生、Tomo先生の紹介にあったように当コースは熱帯医学を重点的に学べる非常に良いコースだと思います。最近日本でも感染症分野がmajorになりつつありますが、熱帯感染症は症例が限られていることもあり、日本で勉強するのはなかなか難しいと思います。熱帯感染症が好きな自分にとってちょうど良いコースです。(でも、実際に半年間休職して留学するのはそう簡単ではないですよねー。)
 7月末で一旦、授業やテスト、実習が終了し8月からは選択授業になります。私は旅行医学と熱帯地域における医療問題という講義を選択しました。選択授業が始まるまで1週間の休みがあり、みんな旅行にでかけているようです。

(写真はマレーシアのクラスメートとKLの野鳥動物園にて)

 

人との出会いがたくさんありました。

よっしーです。トモ先生、投稿ありがとうございました。学校の仕組みが良く分かります。
私は個人的なことばかりかいていますね。

 バンコックは東南アジアの中でも新興国タイの首都として経済発展がめざましく、飛行場は特に便利で、買い物や、宿泊施設も充実しており、ネパール、インド、パキスタン、カンボジア、ミヤンマー、マレーシアなどへの旅行、仕事の移動での交差点になっています。学んでいるのが熱帯医学なので、途上国への海外からの支援などをしている方に、多く巡り会うことが出来ました。
 最初にお会いしたのは、ネパールで支援活動をされている楢戸先生。北海道で「家庭医」という名の専門分野を開拓し現在も日本中にその専門性(家族のような医師という専門性)を広げ、いまではネパールまで行って医療の原点を伝えようとされている尊敬すべき先生です。お話を伺うだけでその聡明さが伝わり、クリスチャンとしても神の心を伝えようとされている方でした。 写真は控えさせてもらいますが、興味のある方は、以下のPDFをご参考にして下さい。
  http://www.jadecom.or.jp/pdf/gekkanchiikiigaku/22_8.pdf  
 その次には、Mattというアメリカ人。17才の時に神の導きを受け、現在27才くらいですが、2年間の中国北部砂漠地帯での伝道活動中です。VISA更新とリフレッシュをかねてバンコックへよっているようです。「異国の見知らぬ土地へ移り住むと半年は苦労するが、その後は慣れて生活も楽になる」と教えてくれました。私たちの教会の牧師が彼に、「どんな奥さんがほしいか」と訪ねると、「砂漠にも一緒に付いてきてくれる、田舎育ちの子が良い」と言っていました。いつも宣教師にお話を聞くと、何年も不便な土地に住むことをあまり苦と思ってられず、喜びを持って主に仕えられている姿を見て、自分とは一回り大きく違うと感じて、頭がさがります。
MrSeki 4年ぶりの再会。
 先週は、ネパールで教育問題の調査を行っている関先生に会いました(写真)。彼は、東京のある大学で先生をしていますが、4年前にインドのコルコタでマザーテレサの施設へ訪れたときに会いました。彼は14回以上、教え子の大学生を引き連れ、インドやネパールで、学校などを周り、途上国の教育事情を教え子たちに実地体験させています。多くの若者たちがカルチャーショックを受け、その後の人生の転換点になったと思っているようです。今は家族ずれでネパールに1年以上住んでおられ、子供さんは現地の小学校でネパール語の授業を受けているそうです。私が、タイに来るかどうか迷っていたときに、たまたまfacebookのチャットでお話をする機会があり、私がタイの大学へ行くことを進めてくれた人で、おかげで今の自分が有ります。今回もfacebookのおかげで前の日にバンコックへ来ていることを知り、会うことが出来、お礼を述べる機会が出来ました。また、乳製品や生野菜さえ食べられない所に長く住んでおられ、バンコクでお刺身を食べてもらうことが出来ました。
 そのほかにも、学校の先生たちや、先輩たち、NGOから説明に来てくれる人たちもいますし、地元のタイ人で、教会で知り合った友達も色々な仕事をし、福音活動をしています。
 多くのすばらしい人たちに出会うたび、彼らの中の神様に出会うことが出来、主の祝福を感謝します。私も彼らのように、誰かを良い方向へ動かす手伝いが出来ればと思います。どんどんこの様な愛の友達が増えて行きますように、イエス様の御名を通してお祈ります。

HIVと人パピローマウイルス

wasizukuriバンコックにある王宮を訪れた時に体験させて貰った、和紙(タイ紙?)作り、花びらを浮かべて仕上げるのがタイらしいです。

 よっしーです。相変わらず、みんなが記事を書いてくれないので、一人で寂しく書いています。今日は、午前中お休みで、ようやく休息がとれました。 タイは貧しかった歴史があるため、風俗業への寛容が今も続いており、HIVの患者さんが多い国の一つです。 午後の病院見学はHIV(人後天性免疫不全ウイルス)の専門病院でしたので期待していましたが、集合時間が分からず遅れてしまい、先ほど帰ってきた友人から様子を聞きました。病院は、古い建物だったそうですが、清潔な施設と聞きました。若い入院患者さんについての詳しい検査などの話があったそうです。
 先週から、HIVの講義がひっきりなしに行われてきましたが、小児科領域で、母親から胎児新生児の時に感染した症例の話を聞きました。このとき、患者さんの状況を知って貰うための冊子ももらい、これを読みました。エイズという病気が、ライ病と同じように、人から人へ簡単に感染すると勘違いされ、偏見で避けられてきたのです。(ライも簡単には移りません)。今でも、HIVの知識は多くの方が持っておらず、患者さんは迫害を受けています。コンドームを使わないセックスや、血液を採取した注射針(麻薬の注射を含め)、母胎から子供への感染以外ではほとんど感染しません。 他の性病よりも感染率は低いくらいです。一端感染すると、非常に増えるのが早いため、そのたびに突然変異を起こす可能性が有り、薬を決まった時間に正確に飲まなければ、ウイルスが増えてしまいます。また、完全に治った人は、ごく少数と考えられており、特に貧しい国では死亡率が高いです。
 セックスで感染する死亡する病気と言えば、最近ワクチンが実用化された子宮頸がん(人パピローマウイルス)も同じです。こちらは幸い、母児感染が無いので、悲惨な子供患者は見られませんが、ワクチンさえ受ければ安心というわけには行かないので、今後も子宮癌検診は続けて受ける必要が有ります。
 HIVのワクチンも盛んに研究されていますが、突然変異が多すぎて、治療薬さえ間に合わないのが現状で、聖書に書かれている様に、不倫は大きな罪なのです。男女の関係でセックスは重要なものと思いますが、一番好きな人とだけしましょう。一番好きな人を探している間は、これです。
 condome
 母児感染で感染した子供たちの多くは、親もHIVの病気のために死亡する事が多く、迫害などもあるため、多難な生涯を送ります(自分が選んだ道では無いし、自分の失敗でも無いのに)。日本など、最新医療を持つ国でもHIVのウイルスの発育を抑える治療はなかなか難しく、エイズが発症した後には最新治療でも救命は困難です。ましてや、貧しい国(全地球人口の60%以上は貧しい国にいます)では、値段の安い薬を使うしか無く、一端その薬を止めると、数日で耐性が出来てしまい、次に使う薬は高額になります。これを、一生、時間を決めて飲まなければなりません。「個人のお金が無くなれば、その個人の生命が終わりだ」という常識は、世界では当たり前なのです。
child careマラリア、デング熱;いずれもタイでは多い病気で、子供に対する教育用の冊子と小児HIVの手記(日本語訳)

 HIVの病気の世界的蔓延を防ぐには、画期的な薬の開発を期待するよりも、貧しい国での耐性菌の発生を抑えることが非常に重要です。すなわち、診断もできずに性行為を続けている人が居る世界では、薬の効かないウイルスや菌がどんどん増えて行きます。今の国際流通時代では、この耐性菌はすぐに世界中に性行為を通じて広がるからです。自分たちの目を、自分の周囲だけに向けずに、世界規模で経済や病気を見ていくことがこれからは本当に重要です。隣で困っている見にくい人を、愛する勇気はなかなか持てないでしょうが、今それが求められている時では無いでしょうか。神様は、ノアの箱舟物語を再度行うことは絶対しないと約束して下さって居ます。しかし、愛する子供たちの未来のために、神の教えに忠実になる時間も必要では無いでしょうか。これは熱帯医学の最前線の課題の一つです。

HIVとタイ人気質?

ワットポー寺院1 サワディーカー

タイでの挨拶です。写真は、ワットポー寺院の大仏様。大きすぎるせいか、横に寝そべっておいでになります。
 東南アジアの中で、タイは途上国から新興国へ抜け出していますが、北のミヤンマー、東のカンボジアとの国境あたりは、未だ移民が多く貧しい避難民も多い地区です。この地区では 雨期にはマラリアも流行し、下痢をする寄生虫、サナダムシや回虫も見られます。中には、豚を生で食べる習慣のある地区も有り、以前紹介した納豆虫(ナットストミアシス)は消化管だけでは無く、脳や筋肉内にはいってきます。
 

sonnkuran
旧正月のソンクラン祭りの時のカオサン通り、水を掛け合う一年中で一番混み合う日でした。

 最近気がつきましたが、タイ人は歩くのが遅い。屋台などが多くて、広いはずの歩道はとても狭くなっています。タイの人は歩道を道幅いっぱいに広がって歩くのが流儀で、道が広いところでも必ず、道幅全体を使って時にアベックは手をつなぎ両側に広がって横を追い抜かせてくれようとはしません。急に立ち止まる人、携帯で話しながらゆっくり歩く人、前を向かずによそ見をしながら歩いている人、携帯でメールしながら向かってくる人、急に横のお店の商品を見るために立ち止まる人、エスカレーターでは必ず追い越せない様に2列に横並びをするのが当たり前。

 私は歩くのが速いほうで、どうもタイの道は歩きにくいし、多くの人とぶつかります。追い越しが出来ないので、急いでいる時は歩道では無く車道を歩いています。しかし車道の端は、頻繁に走るオートバイにひかれそうで危なく、何ともまどろっこしい歩道を、とぼとぼ人について歩かねばなりません。人が多いのであきらめれば良いのですが、最近どうも短気になってきて、車道に出て小走りに走って居る自分を感じながら、「そんなに急いで生きているのはどうしてなのか」問いかけています。

 雨期に入り、夕立がよく見られます。慣れてきて、いつも折りたたみ傘を持ってでかけますが、突然バケツをひっくり返した様な雨が強い風とともに降ってくるので、雨宿りしていないとかなりぬれてしまいます。何年もこうした生活をすると、慣れてくるのでしょうか?約束の時間に間に合わないことは当たり前の様になってくるのか、特に熱帯の人たちの時間感覚はゆっくりしています。ミヤンマーの同級生と話していると、5分間隔の新幹線が事故も起こさず時間通り来るのは信じられないと言っていました。世界の常識では考えられないほど便利すぎる国、それが日本かもしれません。
petwear

サンデーマーケットにあった、ペットの洋服屋さん。寄り道も大切かもしれません。 

condome
HIV感染予防のために行われている、タイでの100% コンドーム作戦キャンペーン

 
 昨日の授業では、急いでしゃべる先生に出会いました。HIVの超専門家らしく、ご自分ではすごく良く分かっておられるようですが、2時間の講義で、なんと中身の濃いスライドを162枚も紹介してくれましたが,あまりに速くて、スライドを読む時間も無く、おそらく誰も理解できずに、質問さえできませんでした。資料として残してくれたスライド原稿は、一冊の本みたいなもので、教科書よりも内容が濃いものになっています。あの先生には、休養が必要ではないかと心配してしまいました。しかし、HIVという病気、ウイルスが一番やっかいなのは、非常に増えるのが早く、そのため突然変異が多いことです。そのため、薬の耐性やワクチンの効かない種類がどんどん増えていきます。HIVの研究者は、この新幹線の様なウイルスと、かけっこをしながら競争している様に思えます。

 私も、少し休息しないと、この頃失敗ばかりをしています。お休みなさい。  

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