みなが皆、さまざまな方向に泳いでいく。
まだ彼らに名前や顔、性別はないが、人ごみを抜け会社につく頃、ちゃんと人格とやらを取り戻しているのだろう。
眠れないから阿佐ヶ谷から新宿まであるいてみた。UFOCLUBでのライブ直後の足のせいか、ここまでで一時間。
白んだ空、露にぬれた小さな草、花、
都会にもちゃんと声がある。小さくとも声は声だ。
「声はアナタになんと問いかけてる?」
さあねエーーーー
春が裸足でやってくる。
ブルーシートの上、野良の猫が横切り、飲みかけの甘酒の紙コップを倒す。
笑った頬、タオルでジーンズの裾をふく
北風に流されていく空っぽの紙コップ、追いかける背中、揺れるチェックのロングスカート
「あなたは誰?」
「あなたはだあれ?」
さて、ゆっくり、同じ時間をかけて帰ろう。阿佐ヶ谷にはおうちがある
どこかで人生が折り返すんだとして、それはどこなんだろう?
ちゃんと肩を叩いて伝えてくれるんだろうか、
とても不安なことなんですが
余命
しってしまったら
アナタはどうする?
きっとアナタは、紙コップを追いかけて風が吹く方へ
人たちに愛されること難しいみたいだから、せめて風には愛されたい。ずっといっしょにいよう
【真人】