2001年12月19日

元オンセのライダーで、2001年以来マペイに所属しているカニャダの記事を読んで驚愕した。「手術」「切除」更に「パーキンソン」症候群の文字が躍っていた。


パーキンソン病というと、マイケルJフォックスやモハメド アリが浮かぶ。闘病を語るフォックスのTVインタビューは生々しかった。まさか?カニャダがパーキンソン病?

びっくりして、よく読んでみると、カニャダはウルフ パーキンソン ホワイト症候群と書いてあり、MJフォックスが患う(ジェームス パーキンソン氏が報告した)パーキンソン病とは違うようだった。

この辺は、とりあえず後で説明するとして、まずはその記事(スペインの新聞マルカより)から:

ダビッド カニャダはプロ入り後、栄光よりもむしろ苦労を多く味わっていた。怪我、そして過食症といった問題に悩まされ、オンセ時代、なかなか頭角を現すことができなかった。

しかし、2000年、そんな彼に転機が訪れた。シーズン前半のシルクイト サルトと、ムルシア一周で総合優勝を遂げたのだ。この成功がなければ、2001年マペイ移籍の話も持ち上がらなかったことだろう。

かくして、彼は2001年マペイに移籍することを決断した。しかし同時に、それは心臓の持病の手術を行うという決断でもあった。オンセ時代から、カニャダは自分の心臓が通常と違うことに気づいていた。

病名はウルフ パーキンソン ホワイト症候群。頻拍性の不整脈を引き起こす病気で、生死にかかわる病気ではないとされているものの、これによって突然死が引き起こされるケースが希にある、と報告している学者もいるという。

そもそも、この病気は神経系の戻り道(後で解説)が原因なのだが、スペイン、その他の国では、この戻り道を治す手術は、選手生命が終わってから施せばいい、ということになっている。

ところが、イタリアの連盟には、スポーツ選手適正テストなるものがあり、この病気を患う選手の場合、戻り道の切除を行うことを選手に課している。

そこで、カニャダは、2001年のシーズン終了早々の125日(シーズン前に手術を行うことはせず、終了後に手術を行った模様)、規定に基づき手術を行った。

手術は予定では、大腿動脈からカテーテルを心臓に入れて、戻り道を切除するという内容だった。2時間半余り、カテーテル挿入前に、心臓収縮のチェック、その他スキャンで確認する作業を行った末に執刀医が出した結論は、戻り道の切除断念であった。

付随する神経系統管が手術不可能であり、手術によって他のゾーンにダメージを与える可能性が大であるという理由だった。

この結論に、実はマペイのチームドクター、ロドリゲス氏は密かに胸を撫で下ろした。手術不可能であれば、イタリアの規定であれ、これ以上措置を施す必要はない。

もしも手術をしていれば、術後2ヶ月はトレーニングを中止せざるを得ない状況だったたが、手術がキャンセルとなり、これで、このままカニャダは中断なく走り続けることができることになったわけだ。

既に先週金曜日には、フレイレ、オリヨ、ガルゼッリ、アッジャーノ、ブラマーティ、ボドロギらマペイの選手と合流し、キャンプインしたカニャダ。キャンプ終了は20日となる。


以上が、記事の和訳ですが、実はこのウルフ パーキンソン ホワイト症候群の実態が最初わからず、更にパーキンソンという文字がつくため、一般に知られるパーキンソン病とどう違うのかどうしても知りたくて、走るドクター「コナ」さんに助けを求めました。

コナさんは、すぐさま回答を寄せてくださり、下記の通り講釈を頂戴しました。

「ウルフ パーキンソン ホワイト症候群はWolfさん、Parkinsonさん、Whiteさんによって記載された病気で、一般的にはWPW syndrome(ダブリュピーダブリュ症候群と発音します)とよばれるかなり普通に見られる頻拍性の不整脈の病気です。若い人にも起こって、発作的にすごく脈が速くなり、頻拍時は仕事をするなどというのはおろか、自転車に乗るということもできない」、とのこと。


更に、病気の仕組みについては下記の説明を頂戴しました。

「心臓の収縮は簡単に言うと上から下に電気的刺激が波のように伝わって、一回収縮するというのが繰り返されているわけです。一回一回の刺激は心臓の上にある洞房結節という場所から発せられて、下まで伝わると消えてしまうのが普通なんですが、途中に戻り道ができているヒトがいます。そうすると、消えるはずの刺激がクルクル回って、すごい頻拍になってしまう。そんな病気です。以前はその戻り道を心臓を開いてメスで切るという大変な治療だったのですが、最近は太股の動脈からカテーテルと呼ばれる管を心臓に入れて、電気でその戻り道を焼き切るablationという治療で完治します。いい世の中になりました。ですから、自転車選手としてのキャリアにもパフォーマンスにもなんの影響も与えないと思います。ただ10年以上前だったら、キャリアの終わりを意味したかもしれません。」

そして、パーキンソン病については、「マイケルJフォックスやモハメド アリがなっているのは、大脳の一部の病気で筋肉が固縮したり、無表情になる病気です。ですから全然違う病気です。
原因不明でなるのがパーキンソン病、外傷であったり、脳梗塞であったり、ボクシングのパンチドランカーの症状としてなったりするのがパーキンソン症候群です。」と。


上記のコナさんの説明のおかげで元の記事の意味がやっとクリアになりました。operar la doble via nerviosa mediante la ablacionというくだりの意味がイメージできなかったのですが、なるほど、戻り道ですね。ありがとうございました。