1.

[授業終了後・麻雀部部室]

哩 「星……?」

姫子「はい!」

哩 「星って、空ん浮かんどる?」

姫子「はいっ!!」

哩 「夜に見っこと出来る?」

姫子「はいっっ!!!」

哩 「……姫子。星はな」


   ザァァァァァァッッ


哩 「雨ん中じゃ見れんばい」

姫子「……いや、今日じゃなくって」

哩 「? じゃあいつの話ば……」

姫子「明後日! 12月4日に決まっとーじゃないですか!」

哩 「決まっとー、て……? なんかあるんか?」

姫子「……ぶちょー、もしかして知らんとです?」

哩 「知らん」キッパリ

美子「哩ちゃん…」

仁美「明後日はナントカって流星群が来る、って話。聞いとらんと?」

哩 「ほー。そんなんが……」

姫子「ですからっ! そのナントカっちゅー流星群、見に行きましょうよ!」

哩 「星、なぁ」

姫子「はいっ! 見晴らしば良か場所、見つけときましたけん!」

哩 「……姫子」

姫子「? なんです?」

哩 「やけに星を見に行くことば推してくるな」

姫子「そりゃ、ぶちょーとお出かけしたいですし……」

哩 「お出かけやったら星なんぞ見に行くんより電車でどこぞ遊びに行く方が好きやろ、姫子は」

姫子「……いや、その」ボソボソ

哩 「天体観測なんて興味無かったはずやけどなぁ」

姫子「最近興味が湧いてきた……というか……」ゴニョゴニョ




哩 「なーんか隠しとらんか?」

姫子「!? か、かかっ、なんも隠してなんてっ!!」ギギクッ


仁美(分かりやすっ)

美子(最近流行ってるもんね、あの話)ヒソヒソ

仁美(『午前0時に町はずれの丘で一緒に流星群を見ると、その二人はずっとそばにいられる』……かーっ、くっさいくっさい!)

美子(姫子ちゃん、完全にそれ狙いやったんやろね)

仁美(そんな噂、信じるんは中学生までやと思っとったばい……)

美子(あはは……まぁ姫子ちゃん、そういうとこあっとね)


姫子「別に、特にやましかことなんて、その、これっぽっちも考えとらんですたい! ただ―――」アセアセ

哩 「ま、良かよ」

姫子「……へ?」キョトン

哩 「たまには天体観測なんてのも風情があって良かばい。何時にどこで集合すっか?」

姫子「あ、えと……0時ちょうどに見たいなって思っとったんで、明日の23時くらいに私ん家で……」

哩 「ん、分かったばい」

姫子「……あのー」

哩 「うん?」

姫子「怪しいとか、そんなん思ったりしないんですか?」

哩 「なん言っとーと。お前んこと悪か風に思ったりはせんばい。……それに」

姫子「それに……?」

哩 「私が姫子の誘いを断るわけが無かやろ」

姫子「! ぶ……ぶちょー!」ダキッ

哩 「わっ!? ちょ、姫子! こんなとこでっ!」


   ガララッ


花田「不肖花田、遅くなりましたっ!

花田「……んんん?」

姫子「ぶちょー! ぶちょー、ぶちょー……!」ハスハス

哩 「は、花田ーっ! たすけっ!」

花田「……なるほど」


花田「少しの間お外を散歩してきますねーっ!」ガララッ

哩 「花田ーっ!」

姫子「ぶちょー、花田より私の名前を呼んでほしかですよ!」


仁美(爆発せんかな、あん二人)

美子(帰り、カラオケでも寄ってこっか)




2.

[翌日夜・姫子宅前]

哩 「……お、姫子」

姫子「ぶちょーっ! お待ちしてましたっ!」

哩 「今日は晴れてよか……って、そのカッコ」

姫子「あ、これですか! 今日のために新しい服ば買ってきたんです! 似合います?」クルクルーッ

哩 「よう似合っとるけど……そんなひらひらしたカッコ、大丈夫か? 結構歩くんやろ?」

姫子「大丈夫ですよ! さ、行きましょうっ!」フンスッ

哩 「……ま、いいか」

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

姫子「―――それで、その丘がほんとにすてきな場所らしいんです! 晴れた日にはもー、360度全面が星空! って感じらしくって!」

哩 「ほー。そいは楽しみたい」

姫子「でしょうっ? 昨日は楽しみで楽しみで……全然眠れんかったとです!」

哩 「ふふ。まるでおっきい子供ばい」

姫子「仕方ないじゃないですか! 久しぶりにぶちょーと二人っきり、なんですから!」

哩 「そう言ってもらえると嬉しかよ。……ところで、姫子」

姫子「なんですか?」

哩 「ちょっと言いにくかけど……」

姫子「はい?」



哩 「あとどれだけしたらこの林を抜けてそん丘に着くん?」

姫子「……」

哩 「似たような道ばっか歩いとるような気がすっと」

姫子「……気のせいじゃないですかね」ダラダラ

哩 「でもこん木とかさっきも見たような気がするばい」

姫子「暗かですし、同じに見えるだけですよ」

哩 「ちょうど姫子と同じくらいの大きさの足跡見つけてしもたんやけど」

姫子「私と同じくらいの足の人も星見に来とるんと違いますかね……」ダラダラダラ

哩 「なぁ、姫子」

姫子「……」ダラダラダラダラ



哩 「もしかして迷って――」

姫子「いやっ! そんなこと無かです!! きっとこっちに行けば!」ダダッ

哩 「『きっと』って…… …って姫子!! そっちはぬかるんで……!」


   ズルッ


姫子「きゃああああぁぁっ!?」

哩 「姫子ッ!!」




3.

[帰路]

姫子「……ん」

哩 「お、気ぃ付いたか」

姫子「あれ……? ここは……いたっ!?」

哩 「あんまり脚ば動かさん方が良かよ。擦りむいとったけん、持っとったペットボトルん水で洗っといた」テクテク

姫子「ありがとうございます…… ……?」

哩 「うん? どうした?」テクテク

姫子「………」

姫子「……」

姫子「…」



姫子「私おんぶされてるっ!?」ズゴンッ

哩 「気付くの遅かね」クス

姫子「や、降ろしてくださいっ! ぶちょーに悪いです!」

哩 「アホ、脚ケガしとるのに歩かせられっか」

姫子「でも……」

哩 「姫子に無理される方が私にはつらかよ。……大人しく甘えときんしゃい」

姫子「……はい」


哩 「…お、そろそろ0時か」

姫子「ぶちょー……ほんとに、申し訳なかです」シューン

哩 「いや、私こそ悪かった。そんな歩きづらそうな靴、ちゃんとあん時に止めんとかんかった」

姫子「そんな……ぶちょーは悪くなかですよ! 私がなんも考えんと、こんなカッコしてきたんが……」

哩 「……やめ、やめ」

姫子「…?」

哩 「こんなん、ずっと『自分が悪か』の平行線になるんが目に見えとーと。アホらしか」

姫子「…そうかも」

哩 「どっちも悪かった、で良かやろ。な、姫子?」

姫子「ふふ……そうですね」クス

哩 「…ん。やっぱり姫子は落ち込んどるより笑っとる方がよかよ」

姫子「……あれ? 笑っとるとか、背負ってるのに分かるんですか?」

哩 「息遣いとか、鼓動とか……伝わってくるけん、よう分かるばい」

姫子「…あの、ぶちょー」

哩 「うん?」

姫子「そういうこと、あんまりはっきり言われると……その、恥ずかしかです」カァァァ



哩 「……」ブルルッ

姫子「ぶちょー?」

哩 「…福岡ん冬は、寒かね」

姫子「……そうですね。寒かです」

哩 「ばってん、姫子がおっけん。ちょっとはぬっかよ」

姫子「……えいっ」ギューッ

哩 「おお。もっとぬくなったばい」


   テク テク テク......


姫子「……ぬっかですね、ぶちょー」

哩 「ああ。ぬっか……」



姫子「あ」

哩 「どうした?」

姫子「今、見えました。流れ星」

哩 「…残念やったな」

姫子「?」

哩 「星。例のその…すてきな丘で、見たかったんやろ?」

姫子「……」フルフル

哩 「残念やなかと?」

姫子「もっと、ずっと。ずーっとすてきなところで、星を見れましたから」ニコ

哩 「……? こんな田舎道、なんでもなか場所やと思うが……」

姫子「…私にとっては、とってもすてきな場所ですよ。ぶちょー」



―――ぶちょーに背負われながら、肩ごしに見えた流れ星。

―――ほんの一瞬だけ煌めいたその流れ星は、今まで見てきたどんな景色よりも素晴らしく見えて。

―――ぶちょーの身体のあたたかさを全身で感じながら、ひっそりと心の中で流れ星に願い事をした。



姫子「……ぶちょー」

哩 「ん?」

姫子「これからも、ずっと……」



―――私と一緒に、いてくださいね。、