私と兄(22)の部屋は隣り同士なんだけど、私の部屋の床下が湿気でやられちゃってて、しばらく兄の部屋で寝ることになった。

いつものように布団に横になっていると、ベッドの上の兄が、

「やめろよ、やめろってよ、殺すぞ」

と、布団の中で何かを払ってる。

私が

「どうしたの?」

と言うと、 「父さんが布団に入ってきた」

とキレそう。

私はぞっとした。

「待ってよ…お父さん帰ってきてないよ」

「あっ?じゃあ何だよ今の!!!!」

怖くなって思わず電気つけて、二人で今のことを話し合ってた。

兄が言うには、声とか匂いとかはなかったが、
てっきり父だと思い込んだという。

それに、そんな大胆なことするの父親ぐらいの親近者だけだと思うし、
汗で湿ったような体温がリアルだったそうだ。

しかし、確かに暑いから部屋のドアを開けてたけれど、
私は誰も入ってこなかったことを知ってるし、窓も閉まってる。

それに兄のベッドは壁からちょっと空いているから、
侵入者はそっちへ回りこんだことになる。


  

気味悪いが、もういいや寝ようということになり、
電気を消した途端、玄関が開く音。

「ただいま~」

と父の声だ。

父はこっちへ歩いてきて、入り口からひょっこり顔を出した。

「もう寝とんのか~」

酔っ払ってるのかヘラヘラしてる。

「道治(仮名)、鳥食わんか~寝とんのか~」

とか言いながら勝手に電気をつけた。

何かニコニコしてた。

顔が真っ赤だから酔ってるとわかる。

しかし壁際の私に気付くとギョッとして、

「なんでここにいるんだ?」

と怒鳴った。

床下が腐ってることを告げると、
不機嫌そうに「そうか、おやすみ」と去っていった。

兄の布団に潜り込んだ侵入者は、
あながち父でないとも言い切れないのかも。