1.問題の所在
 独占的通常使用権は固有の地位により損害賠償の請求ができるか。
債権的権利だから問題となる。
2.規範定立
 債権も権利である以上、不可侵性がある点で物件その他の権利と
異なるところはないが、公示性が欠如するゆえに損害賠償責任要件
の点で制約を受ける。
3.あてはめ
(1)独占的通常使用権は、
  1)商標権者から商標権に基づく権利行使を受けない
  2)他者に対して当該商標の使用許諾をしない
 内容の契約である。
(2)従って、登録商標を独占的に使用し、これによる利益を独占
的に享受し得る地位を契約により得たものではない。
 それでは、第三者が当該商標ないし類似商標を使用した場合には、
独占的使用権者は不法行為を理由に損害賠償の請求ができる
であろうか。
(3)債権の行使が侵害された場合の権利侵害を理由とする損害賠
償は、債権に公示性がないから第三者が債権の存在を認識している
必要があると民法学では説かれている。
 独占的通常使用権者の債権は、民法709条の権利又は法律上
保護される利益に該当することは自明である。問題は、第三者が
その債権の存在を認識していたかである。公示性がある専用使用権
の場合は侵害者の過失が推定されるので、損害賠償の請求は問題が
ない。それでは、公示の術がない独占的通常使用権者の保護はされ
ないのであろうか。
4.結論
 独占的通常使用権の許諾がされても、実際には、第三者に通常
使用権が許諾されている場合や、第三者の使用が放置されている
場合には、独占的通常使用権者は独占的地位を実際は得ておらず、
従って固有の地位による損害賠償の請求は認められない。
 逆に、独占的通常使用権者が登録商標を事実上占有していた場合
には、固有の地位に基づく損害賠償の請求は認められると解する。