2011年04月

2011年04月27日

気仙沼に入る… その3

 誰も必死に何かをこらえている。誰もが大事な人やかけがえのないものを失くしている。でも、町で道を尋ねた時も、後片付けをしている人たちも、どこを訪ねても驚くほどに優しく明るく前向きな人々に、この悲しみの深さを強く感じとれた。悲しみの分だけ人は優しくなれる。絶望の分だけ人は強くなれると(!)

 あの悪魔は情け容赦なく襲いかかったけれど、人々の勇気や優しさや子どもたちの賢さや未来までは奪えなかった。雪が溶けて、風がぬるみ、桜が咲く…、それはこの世の約束事である。三陸の美しさも、港のにぎわいも、美しく豊かな海も、素朴にあの土地に生きる人々も、この世の約束事である。約束事ならば必ずや復興できるものと信じている。郷里で雑務をこなし深夜バスで帰京した。大雨注意報が出ていて緩んだ地盤が気になったが、すばらしい夜明けが迎えてくれた。新宿西口のバスプールでしばらく美しく明ける空を見ていた。

茜色の空に広がる やさしい君の愛のささやき
小鳥の声はあたりに響く なんて素晴らしい生きる喜び
恐れおののき闘い あの地獄を逃れ
再び見る朝の 新しい光よ…

「人生は美しい」のフレーズだ。

 末尾になりましたが、ご賛同くださった皆さまに心から感謝申し上げます。そして、ポプラ社様のご理解とご協力に深謝いたします。被災地にとって、まずは命をつなぐ支援物資(食料・医薬品・日用品など)が不可欠です。そして繰りかえさせてください。本や音楽や文化は「心のお菓子」「心のセーター」になれる大切なものだと(!) 微力でもささやかでも行動に移すこと、傍観者にならないこと、これからもこの支援の輪を広げていきたいと思っています。

maki_sanaho at 03:31|Permalink

気仙沼に入る… その2

 「もっと自然に生きなさい」とか「あの人はいつも自然体ね」とか、人はよく口にする。穏やかに思えていきなり荒れ狂い、寡黙と思えて豹変し、安堵と絶望をもたらすのが自然というものだ…。
 恩人夫婦は斎藤瑞麿さん(医師)・みわ子さんという。気仙沼駅で待ち合わせたみわ子さんの弟さんは鈴木さんとおっしゃった。斎藤夫妻は山頂にある鈴木さんのご子息の家で小さな箱に納められていた。幸運にも数日前に撮った写真が一枚残った。みわ子さんは辻が花のお気に入りの着物を着て、ご主人と一緒に幸せそうに笑っていた。旅立つときも二人一緒だったことが、せめてもの救いだったと私たちは話した。山頂からは「緑の真珠」と称される大島や気仙沼港が一望できる。津波の後におびただしい油が海面を覆い、炎が黒煙をあげながら住み慣れた町を焼き尽くす地獄絵を、鈴木さんは呆然と見つめていた。そして、代々続いた老舗旅館のこと、評判だったフカヒレ料理のこと、しばらくは流された旅館跡を見に行くのもイヤだったと、堰を切ったように話し始めた。

 私たちは鈴木さんの紹介でまずは少林寺保育所に向った。子供たちはお昼寝の時間だった。迎えてくれた保育士さんたちのなんと明るい笑顔だ(!)。
子供たちはきっと大丈夫、そう思った。少林寺をスタートに伝から伝へ幼稚園、保育園、小学校を回った。「これが本当にほしかったんです…」と絵本のダンボールを抱きしめて涙ぐんだのは鹿折(ししおり)保育園の園長さん。春の入園式に向けて本屋さんに絵本を注文していた。その本屋さんも流されてしまった。間に合って本当に良かった。支援物資として本や音楽は後回しだもの…。

 おずおずとしている私たちに「さぁさぁ入って、入って、寒かったでしょう?」と 鹿折小学校の先生方。小野寺校長先生は「私も家を流されましてね。だから子どもたちの気持ちが分かるんです」と話された。ここでは3人の児童が犠牲になった。お祖父さんが車で孫を迎えにきて飲み込まれてしまった。きれいな校舎だから被災していないのかと思ったら、津波は背丈以上に襲ってきたのだという。「職員全員でね、お掃除したんです」。偶然だが、校長先生の次男は斎藤先生のところで産まれたという。校医もしていた斎藤先生は誰にでも優しくて、町では知らない人はいないのだという。南気仙沼小学校は無念にも流されてしまい、気仙沼小学校に間借りをしている。階上(はしかみ)小学校は水と炎に前から後ろから襲われた。児童が全員無事だったと聞いて胸が熱くなった。残った校舎には被災した約100名の方が避難しており、体育館は遺体安置所になっている。鈴木仁一校長先生は単身赴任で白石市のご家族とは1週間以上も連絡がとれなかった。ご自分のことは言葉少なに語る先生の気持ちが心に痛かった。校舎は残ったとはいえ2度にわたる大地震で東校舎は倒壊の恐れがある。それでも「4月21日には学校再開に向って職員一丸となって準備に取り組んでいる」と、お便りにあった。《その3へ》

 

maki_sanaho at 02:58|Permalink

2011年04月25日

三陸に入る… その

 4月17日に催された震災チャリティーコンサート(於:三越劇場)を終え、翌18日の深夜バスで東北入りをした。曼荼羅の義援金で購入した本は8〜10冊ずつを1パックにしてもらって、既にポプラ社から郷里の同級生宅に送付済みだ。お弟子さんや有志から預った粉ミルクや幼児用の服やお菓子、梅干、文房具なども車いっぱいに積み込んで、雨の中、3名で気仙沼に向った。津波のあまりの酷さに海側の被災地がクローズアップされているけれど、内陸の郷里も震度7の激震、家屋の倒壊や液状化現象などで被害は甚大なのだ。そんななかで気仙沼行きを頼むのは気がひけた。同級生とは本当にありがたいものだ。歌手「槇小奈帆」として預った義援金は「槇小奈帆」として役立てたい…、彼らはふたつ返事で引き受けてくれた。
 生きるとは借りをつくること、生きていくということは借りを返していくこと…、 何かで読んだ。私はどうしても気仙沼に行きたかった。行かなければならないと思った。今回の津波で「槇小奈帆」の恩人夫婦が命を奪われた。仲のいい夫婦だった。出かけるときはいつでもどこにでも二人一緒だった。二人は自宅の2階でそろって遺体で見つかった。九死に一生を得た弟さんが遺骨を持っているということが分かって、手を合わせてお礼を言い、これからの槇小奈帆の残りの人生をお約束したかった…。

 現地の形相には言葉を失った。悪魔の仕業としか思えない。一瞬のうちに
おびただしい濁流で襲いかかり、家々や人々を飲み込み吹っ飛ばし、穏やかにたたずむ町を破壊し、恐怖のどん底に引きずりこんだのだから。「1トン以上はあるだろうな…」と助手席の朝男が呟いた。国道沿いに巨大なコンクリートの塊が転がっている。防波堤の一部だ。カーテンがひらめく二階の窓に漁船が突き刺さっている。そこに更に車が頭から突っ込んでいる。麦藁帽子のように田んぼに畑に道端に這いつくばっているのは、立派な瓦の屋根だ。あの悪魔は怪力をひけらかすように線路を飴細工のように捻じ曲げ引きちぎった。その飴細工は空に地に宙に救いを求めているかのように腕を伸ばしている。そして、ほんの数メートル先に無傷に思える家屋が沢山見えてくる。庭先には鮮やかな黄色の水仙がようやく訪れた春を告げているのだ。高台の方の気仙沼駅は数年前に訪れたまんまで、駅前の美容院も蕎麦屋も平常営業のようだった。悪魔はなにを基準にしてその狙いを定めたのだろう…。 
《長くなりますので次号に続けます》


maki_sanaho at 09:22|Permalink

2011年04月09日

感謝をこめてご報告申し上げます

 約束どおりに春が来て、菜の花が咲き紫陽花の新芽が顔を出し、いよいよ艶やかに桜の開花です。何ごともなかったように海は穏やかに凪ぎ、高く青い空の下で、あの惨劇をどうして信じられましょう。突然襲いかかった悪魔は、家を思い出をかけがえのない多くの命を、情け容赦なく奪い去っていきました。
でも、人間の勇気や優しさや子どもたちの賢さや私たちの未来までは奪えなかったと、あの悪魔に向って叫びたい気持ちです。浄土が浜の美しさも、港のにぎわいも、深く澄んだ三陸の海も、素朴にあの土地に生きる人々も、この世の約束事です。約束事ならば必ずや復興できるものと信じます。
 さて、過日は不安な日々の中、マンダラの定期コンサートにお越しくださいまして、ありがとうございました。心から感謝申し上げます。郷里は震度7の激震、三陸には親戚や知人もたくさんおります。家々は流されてしまいましたが親族は奇跡的に全員無事でした。でも大切な恩人を失くしました。今回は原発の恐怖や節電の問題もありましたので中止を考えましたが、最少の電力で最高の音楽を(!)をコンセプトに決行いたしました。コンサート後、当日の義援金は生徒6名の立会いのもとに75860円を確認いたしました。皆様に重ねて御礼申し上げます。色々話し合って、被災地の子供たちに本を贈る費用に当てさせて頂きました。ポプラ社様の格別なご理解とご支援を戴き、幼児向けの絵本や小学生向けの本など135冊を購入できました。
 本は心のお菓子にも心のセーターにもなります。そして、読み聞かせるお母さんや大人たちにとっても癒しになってくれれば…と願っております。10人が読めば1350冊に、100人なら13500冊になってくれます。皆様の真心は郷里の同級生の力をかりて、きっと子供たちに届けることをお約束いたします。不要な絵本がありましたら是非、ご一報くださいませ! あの日、ささやかなお礼のつもりで2種のCDをご用意致しましたが、1980年のものが不足だったようです。ご希望の方はご一報くださいね。三寒四温の今日この頃です。皆様、どうぞご自愛くださいませ。まずはお礼とご報告までです。   



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