June 2009

June 30, 200923:55らくみ通信09年水無月 〜北京鍼灸事情2〜
Vol.72
                                 2009/ 6/30
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┃\/┃ らくみ通信 09年 水無月 〜北京鍼灸事情2〜
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ムシムシと梅雨らしい毎日が続いています。
湿度が高いと体感温度は上がり、
逆に湿度が低いと体感温度はぐっと下がるといいます。
 
北陸育ちで寒さに慣れているはずなのに
東京で迎えた初めての冬は身を切るように寒く、
こんな天気いいのになんじゃこりゃ・・・と
青く澄み渡ったカラッカラの空を見上げて震えてましたし、
北京の冬はそれこそ本当に耳が切れました。
寒くて湿度もないので、うっすら積もった雪はほうきで掃いて
ちりとりでとれる程のパウダースノー。
 
逆に、海洋性気候の日本のこの時期は、
気温がそう高くなくとも、少し動いただけでじっとり汗ばみ、
一日の終わりの、お風呂上りのキンキンに冷えた冷た〜い一杯
(ビールに限らず?!)が待ち遠しくなります。
 
そういえば北京ではどんなに暑くてもビールはぬる〜いまま。
冷たいものは身体によくないから、と冷やしたものを口にしない中国人でも
さすがに真夏になると冷えたお茶や炭酸飲料を飲んでいましたが、
なぜかビールはぬるいまま。
お店を予約する際は、「ビールは最低○本キンキンに冷やしておいて!」
と、ビールの保冷予約もしていたものです。
 
乾いた土地柄か、北京のビールはどれも飲み口の軽いものばかり。
日本では物足りない軽さが向こうでは不思議と美味しく感じるのです。
また、日本ではほとんど口にしないシュワシュワの効いた炭酸飲料も
やたら飲みたくなりました。
気候って面白いものですね。
 
そう考えると、鍼灸・漢方薬ともに教科書は中国で書かれた古典、
基礎になる理論は中国が発祥なのですが、
果たして全く気候の、土壌の違う日本で通用するのか?!
と懐疑的になってしまいます・・・
 
と、北京の話が出たところで、前回に引き続き、
北京市内の某病院、鍼灸科・神経内科での模様をお伝えしたいと思います。
 
***************
 
朝8時半、朝一番の患者さんたちの鍼を抜いているそばから、
次の患者さんたちが待ちきれないとばかりにまたも”なだれ込む”。
鍼を抜いている間、ベッド脇で待っている患者さんたちと、
「あんたはどこが悪いんだい?」
 「いや私はねー」 と井戸端会議が始まる。
 
プライバシーが優先される日本ではあり得ない光景ですが、
こうやって患者さん同士で情報交換ができるのはよいことだと
個人的には思います。
傷をなめ合うような会話が多いけれど、どうも見ていると、
あぁ、つらいのは私だけじゃないんだ、と癒されているような
場面が多いのです。
ここがつらい、あそこが痛い、と症状の話をしているうちに、
病気の陰に隠されていた負の感情が爆発して、
鍼を打たれている30分の間に号泣した患者さんも見ましたし、
一人で納得したように晴れ晴れした顔で帰っていく患者さんも。
不思議なものでこうして気持ちの上でスッキリした患者さんは
回復が早かったり、長いこと苦しんでいた症状が軽減したり、
ということがあったものです。
 
また、先輩患者さんたちが新入りの患者さんにしたり顔で
私はどういう理由でこうなって今はこうで・・・と話す雑談は、
数日後、数週間後にはこうなっていく、と
治る経過を知り、心の準備をするのに一役かっていましたし、
私たち研修生にとっては患者さんのおかれる心理状況を知り、
治療に活かすいいチャンスでした。
日本人の私にとっては、単純に中国語の語彙を増やす、
という意味で絶好の勉強の機会でもありました(^^;
 
さて、では一体どんな患者さんが多かったのかと言いますと・・・
 
日本と同じく、鍼灸治療にうってつけ、得意分野である
肩こり・五十肩、首や腕の痛み・痺れ、腰痛、膝痛などの
整形外科的疾患のほか、
めまいや頭痛など日常よくある内科的疾患、
中国でも急増中、不眠・うつなどの精神疾患、
はたまた前回お伝えしたダイエットやシミとりなど美容目的まで、
それはそれは広範囲、なんでも可、なんでも科。
患者の年齢層も2歳半(!)〜80台まで老若男女問わず。
 
また、「神経内科」の看板もしょっていましたので、
脳卒中や脳梗塞などの患者さんも多くいました。
 
朝起きたら手が痺れていてフラフラする、となれば即検査にまわし、
必要に応じて入院、投薬治療と同時に病棟担当の医師が朝晩鍼を打つ。
 
鍼で脳卒中や梗塞自体が治るわけでは決してありませんが、
後遺症や付随する症状からの回復を早めたり、助けることはできます。
 
機能の回復という意味では、
発症後できる限り早い時点で鍼灸治療を始めるのが原則ですが、
時間が経過していてもできることはあります。
 
脳梗塞を発症してから7年、すっかりやる気を失ってしまったおばあさん、
膝から下が象の足のようにむくれあがってしまっていたのが、
鍼と自宅での足浴・マッサージ指導で
10日ほどで見違えるように元のほっそりした足が姿を現したのに大喜び!
つやつやと輝きが戻った頬と目の輝きは忘れることができません。
本人はもちろん、マンネリ介護で疲れていた家族も大喜び。
足が細くなったことよりも、ご本人がそのことで元気とやる気を取り戻し
明るくなったことをなにより喜んでいらっしゃいました。
 
その他にも、日本と違って多かったのが顔面神経麻痺。
思春期の男の子女の子から70台80台のおじいさん、おばあさんまで
年齢にも性別にも関係なく、突発的に発症、
朝起きたら顔が半分動かない。
なんか顔がつっぱっておかしいなと思ったら、飲んだ水が口からこぼれ、
目を閉じてもまぶたが閉じない、顔が奇妙に歪んでしまった!
なんとかして!と心配そうにかけこんでくるのです。
 
投薬治療がメインになりますが、同時に顔面への鍼治療も開始。
神経にそって眉の上、目の下、こめかみ、ほお、鼻口の際、耳の下・・・と
顔だけでも十数本立て続けに打っていくので、
初めての患者さんは病気のショックに加え鍼の衝撃で大混乱、
ということも(^^;
 
なにせ色んな患者さんたちがやってきます。
 
これだけ多くの人が鍼灸の力を必要としているのだ、
と実感する毎日。
私も力が入ったものです。
 
とはいえ、中国でもまだまだ鍼灸はナゾだらけ、と捉えられており、
西洋医学の治療法といいとこどりをしているのが現状。
 
いいとこどりでもいい、そうしながらでも患者さんが元気になってくれれば!
鍼灸というこの可能性のある治療法をもっと浸透させたい!
 
・・・と、梅雨空に隠れたお日様のごとく、アツくなってしまいました。
少しクールダウンさせて、次号またお届けいたします。
 
では、ジメジメのこの時期、くれぐれも食中毒などには気をつけましょう!