11話のタイトルは「不器用な石」。
「雄黄」という石の、石らしくない不器用な性質を、己になぞらえたボラクチン。
ということで、今回は、ボラクチンの設定について少し詳しく。
まずは、時間を6年遡って、ボラクチンの過去が描かれます。
まだジンギス・カンが存命で、ボラクチンがその妃だった、1226年頃の話ですね。
隊商が西方から仕入れてきた沢山の宝石類、その中に混じっていた「雄黄(鶏冠石)」という石との出会いが、彼女の契機となりました。
日光に当たると砕けてしまうという、「雄黄」の不思議な性質に惹かれた彼女は、石について調べます。すると、その石は東方では薬とされており、適量を服薬すれば薬になるが、火で熱すると「砒霜」と呼ばれる白い姿に変わり、水に溶けて無味無臭の猛毒になる、というのです。

その翌年、ジンギス・カンが崩御すると、ボラクチンとモゲは、レヴィレート婚の習慣によって義理の息子オゴタイに引き取られ、ボラクチンはオゴタイの第一妃となります。
オゴタイが彼女を第一妃に選んだのは、単に年長だからという理由ではありませんでした。
彼は、モンゴルを将来的に、東と西を繋ぐ大きな市場にしたいと考えていました。そうすれば、わざわざ戦って奪いに行かなくとも、人も物も自分からここへ来てくれるから、と。
しかし、そうした考えを、従来のやり方を尊重するトルイや家臣たちは分かってくれない、だから、ボラクチンような、未知のモノへの探究心があり、新しい考えを理解できる人に、側にいて欲しかった――オゴタイは、彼女の頭の良さ、優れた気質を、知っていてくれたのです。

「あなたが妃になってくれて本当に良かった」。
この言葉に、ボラクチンはどれだけ心を動かされたことでしょう。所謂「キュン死」ですね。
この時、オゴタイは41歳、ボラクチンも40代前半くらいでしょうか。
その年齢まで子供がいなかったということならば、彼女はジンギス・カンからはあまり愛されなかった、大勢の妃の中の一人だったのでしょう。それが、いきなり第一妃に抜擢です。
ボラクチンはオゴタイに感謝し、また尊敬と愛情の入り混じった気持ちを抱いたことでしょう。
しかし、その気持ちは、オゴタイが皇帝になると、暴走を始めます。

「トルイ家の権力は、あの方の自由を奪う、なんとか出来ないものか」
そんな考えに取り憑かれたボラクチンは、ある日、全真教の医者から聞いた話をヒントに、「雄黄」の性質を利用した、トルイの暗殺計画を思い付きます。
それは、オゴタイに先ず、弱い毒「鉱山のほこり」を飲ませて病臥させ、その病気平癒を目的とした祈祷で、トルイに猛毒の「砒霜」を飲ませる――というものでした。
ボラクチンは、オゴタイに飲ませる毒の適量を知るため、自ら「鉱山のほこり」を服用します。
シタラが彼女に初めて会った時の、体調不良や皮膚の爛れは、この人体実験が原因でした。

また、この時のシタラ&毒消しとなる「ジャダ石」との遭遇は、計画に足りなかった、「病臥したオゴタイの体調を、短時間で奇跡のように回復させる」という要件を満たすことになります。
生物化学兵器が、解毒剤とセットになって始めて、使用されるようなものでしょうか。
かくして、暗殺計画は完成。運命を天に委ねたボラクチンは、侍女に手伝わせて「鉱山のほこり」を加熱、「砒霜」を精製すると、金遠征からの帰路、計画を実行に移します。
そして、トルイが死亡すると、モンゴル帝国の権力は、彼女の願い通り、大カアンであるオゴタイに集中することになったのでした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ところで、今作においては、ボラクチンには息子がいない、という設定になっています。
なので、以前作ったオゴタイのハーレム図は、このように訂正させていただきました。

とはいえ、一般には、ボラクチンが刊行を支援した書物、『道蔵』について記された碑文の内容から、皇太子クチュの生母は、ボラクチンとの説が有力のようです。
普通に考えても、第一皇后に皇子がおらず、皇太子の母親は誰だか分からない、とするよりも、何人もの皇子の中で、三男のクチュが皇太子に選ばれたのは、母親が第一皇后だから、という方が、説得力があるように思えます。
ところが、クチュが生まれたのは、1206年頃。となると、ジンギス・カンが死亡する前から、ボラクチンはオゴタイの妃だったことになり、レヴィレート婚で嫁いだという説と矛盾してしまいます。
おそらく今作では、レヴィレート婚説を優先させて、息子はいない、としたのでしょう。

チャガタイの後ろに並んだ、オゴタイの息子たち。左から、長男グユク、次男コデン、三男で皇太子のクチュ。
物語をより面白くするためならば、史実や通説通りである必要はないと思います。
しかし、この件に限っては、ボラクチンがクチュの母親だとする方が、作劇的にも盛り上げやすくて良いのになぁ――とは思いますね。
というのも、ボラクチンがトルイを暗殺した、そのわずか数年後に、クチュは若くして亡くなっているのですが、これを、「親の因果が子に報いた」せいだ、とすることが出来るからです。
(もし、クチュがオゴタイより長生きしていたら、彼がすんなりと第3代皇帝に就任したはずなので、皇位を巡るゴタゴタは起こらず、シタラの出る幕もなかった・・・・)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
さて、現在に戻って、グユクの天幕に乗り込んだシタラとシラ。
シタラは、知らない人に怯えるグユクに構わず、ドレゲネを助けるよう迫りますが、そこにボラクチンの使者が訪れ、ドレゲネの身柄を返還する条件として、以下の二点を要求します。
「ドレゲネは今後、グユクの所領で暮らすこと」
「トルイの未亡人ソルコクタニと、グユクが結婚すること」
ボラクチンは、ドレゲネを宮廷から遠ざけると同時に、ソルコクタニ(42歳くらい)をグユク(26歳)と結婚させることで、トルイ家をオゴタイ家に取り込んでしまおうというのです。

使者が帰るとカダクは、全ては、ボラクチンが仕組んだことだったと、裏事情を解説します。
ボラクチンの目的は、トルイ家の力を削ぎ、皇帝の権威を高めること。そのためには、トルイが皇帝の身代わりになって死んだとアピールする必要があり、ドレゲネを利用して、死なない程度の毒を皇帝に盛ったのだ、と。
ボラクチンのトルイ暗殺計画、完全犯罪のようでいて、結構見抜かれてますねw
でも、大カトゥーンの権力が怖くて、誰も何も言えない、と。

錬金術で人の生死を操るボラクチンを、まるで魔女だと思ったシタラですが、ボラクチンの天幕に戻ると、グユクとの結婚を打診する、ソルコクタニへの使者の役目を引き受けます。
シタラはそうして、トルイ亡き後、落ち込んでいるというソルコクタニの様子を伺おうとしたのですが、3年ぶりに再会した彼女は、まるで別人のように無気力で、結婚についても、「大カトゥーンのご意向に従います、私の身はいかようにも」と、あっさりと受け入れてしまいます。
かつて、シタラの大切な人を奪いながら、人の痛みにはお構いなし、傲慢な態度でシタラを怒らせたソルコクタニが、今や絶望の淵に沈み、何も考えることが出来なくなっていたのです。

そんな彼女に苛ついたシタラは、いつものポーカーフェイスをかなぐり捨て、「もうあなたを守る人はいません、考えをやめて屈するなら、ご勝手に。私は考え続けますから!」と、声を荒げてしまいます。が、この言葉が結果的に、ソルコクタニを叱咤激励することになりました。
「ねえ、トルイ、私はじめて、失うことを知ったわ。あの子もそうだったのかしら?」
グユクとの結婚を断る決意をした、ソルコクタニのモノローグ。素晴らしい演出でした。

この時、もし、ソルコクタニがグユクと結婚していたならば、トルイ家はオゴタイ家に吸収合併されるような形になり、トルイの血筋が、後のモンゴル帝国の主流になることもなかったでしょう。
オゴタイ家からの圧迫を受けながらも、ソルコクタニがトルイ家の独立を守り、若年の息子たちを育て上げたことが、その後の歴史を大きく動かすことになったのです・・・・
というところで、以下次回。たぶん、1クールの最終回。

良い感じになってきた、シタラとシラ。唯一ほっこり出来る場面だったり。
なお、ミステリ的には、ドレゲネはボラクチンの計画をどこまで知っていたのか、「鉱山のほこり=毒」であることを承知でオゴタイに飲ませたのか、それとも「不老長寿の妙薬」とでも言われて騙されていたのか、この辺りが曖昧なまま残されているのが気になります。
最終回でスッキリすると有り難いのですが・・・・
「雄黄」という石の、石らしくない不器用な性質を、己になぞらえたボラクチン。
ということで、今回は、ボラクチンの設定について少し詳しく。
まずは、時間を6年遡って、ボラクチンの過去が描かれます。
まだジンギス・カンが存命で、ボラクチンがその妃だった、1226年頃の話ですね。
隊商が西方から仕入れてきた沢山の宝石類、その中に混じっていた「雄黄(鶏冠石)」という石との出会いが、彼女の契機となりました。
日光に当たると砕けてしまうという、「雄黄」の不思議な性質に惹かれた彼女は、石について調べます。すると、その石は東方では薬とされており、適量を服薬すれば薬になるが、火で熱すると「砒霜」と呼ばれる白い姿に変わり、水に溶けて無味無臭の猛毒になる、というのです。

その翌年、ジンギス・カンが崩御すると、ボラクチンとモゲは、レヴィレート婚の習慣によって義理の息子オゴタイに引き取られ、ボラクチンはオゴタイの第一妃となります。
オゴタイが彼女を第一妃に選んだのは、単に年長だからという理由ではありませんでした。
彼は、モンゴルを将来的に、東と西を繋ぐ大きな市場にしたいと考えていました。そうすれば、わざわざ戦って奪いに行かなくとも、人も物も自分からここへ来てくれるから、と。
しかし、そうした考えを、従来のやり方を尊重するトルイや家臣たちは分かってくれない、だから、ボラクチンような、未知のモノへの探究心があり、新しい考えを理解できる人に、側にいて欲しかった――オゴタイは、彼女の頭の良さ、優れた気質を、知っていてくれたのです。

「あなたが妃になってくれて本当に良かった」。
この言葉に、ボラクチンはどれだけ心を動かされたことでしょう。所謂「キュン死」ですね。
この時、オゴタイは41歳、ボラクチンも40代前半くらいでしょうか。
その年齢まで子供がいなかったということならば、彼女はジンギス・カンからはあまり愛されなかった、大勢の妃の中の一人だったのでしょう。それが、いきなり第一妃に抜擢です。
ボラクチンはオゴタイに感謝し、また尊敬と愛情の入り混じった気持ちを抱いたことでしょう。
しかし、その気持ちは、オゴタイが皇帝になると、暴走を始めます。

「トルイ家の権力は、あの方の自由を奪う、なんとか出来ないものか」
そんな考えに取り憑かれたボラクチンは、ある日、全真教の医者から聞いた話をヒントに、「雄黄」の性質を利用した、トルイの暗殺計画を思い付きます。
それは、オゴタイに先ず、弱い毒「鉱山のほこり」を飲ませて病臥させ、その病気平癒を目的とした祈祷で、トルイに猛毒の「砒霜」を飲ませる――というものでした。
ボラクチンは、オゴタイに飲ませる毒の適量を知るため、自ら「鉱山のほこり」を服用します。
シタラが彼女に初めて会った時の、体調不良や皮膚の爛れは、この人体実験が原因でした。

また、この時のシタラ&毒消しとなる「ジャダ石」との遭遇は、計画に足りなかった、「病臥したオゴタイの体調を、短時間で奇跡のように回復させる」という要件を満たすことになります。
生物化学兵器が、解毒剤とセットになって始めて、使用されるようなものでしょうか。
かくして、暗殺計画は完成。運命を天に委ねたボラクチンは、侍女に手伝わせて「鉱山のほこり」を加熱、「砒霜」を精製すると、金遠征からの帰路、計画を実行に移します。
そして、トルイが死亡すると、モンゴル帝国の権力は、彼女の願い通り、大カアンであるオゴタイに集中することになったのでした。
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ところで、今作においては、ボラクチンには息子がいない、という設定になっています。
なので、以前作ったオゴタイのハーレム図は、このように訂正させていただきました。

とはいえ、一般には、ボラクチンが刊行を支援した書物、『道蔵』について記された碑文の内容から、皇太子クチュの生母は、ボラクチンとの説が有力のようです。
普通に考えても、第一皇后に皇子がおらず、皇太子の母親は誰だか分からない、とするよりも、何人もの皇子の中で、三男のクチュが皇太子に選ばれたのは、母親が第一皇后だから、という方が、説得力があるように思えます。
ところが、クチュが生まれたのは、1206年頃。となると、ジンギス・カンが死亡する前から、ボラクチンはオゴタイの妃だったことになり、レヴィレート婚で嫁いだという説と矛盾してしまいます。
おそらく今作では、レヴィレート婚説を優先させて、息子はいない、としたのでしょう。

チャガタイの後ろに並んだ、オゴタイの息子たち。左から、長男グユク、次男コデン、三男で皇太子のクチュ。
物語をより面白くするためならば、史実や通説通りである必要はないと思います。
しかし、この件に限っては、ボラクチンがクチュの母親だとする方が、作劇的にも盛り上げやすくて良いのになぁ――とは思いますね。
というのも、ボラクチンがトルイを暗殺した、そのわずか数年後に、クチュは若くして亡くなっているのですが、これを、「親の因果が子に報いた」せいだ、とすることが出来るからです。
(もし、クチュがオゴタイより長生きしていたら、彼がすんなりと第3代皇帝に就任したはずなので、皇位を巡るゴタゴタは起こらず、シタラの出る幕もなかった・・・・)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
さて、現在に戻って、グユクの天幕に乗り込んだシタラとシラ。
シタラは、知らない人に怯えるグユクに構わず、ドレゲネを助けるよう迫りますが、そこにボラクチンの使者が訪れ、ドレゲネの身柄を返還する条件として、以下の二点を要求します。
「ドレゲネは今後、グユクの所領で暮らすこと」
「トルイの未亡人ソルコクタニと、グユクが結婚すること」
ボラクチンは、ドレゲネを宮廷から遠ざけると同時に、ソルコクタニ(42歳くらい)をグユク(26歳)と結婚させることで、トルイ家をオゴタイ家に取り込んでしまおうというのです。

使者が帰るとカダクは、全ては、ボラクチンが仕組んだことだったと、裏事情を解説します。
ボラクチンの目的は、トルイ家の力を削ぎ、皇帝の権威を高めること。そのためには、トルイが皇帝の身代わりになって死んだとアピールする必要があり、ドレゲネを利用して、死なない程度の毒を皇帝に盛ったのだ、と。
ボラクチンのトルイ暗殺計画、完全犯罪のようでいて、結構見抜かれてますねw
でも、大カトゥーンの権力が怖くて、誰も何も言えない、と。

錬金術で人の生死を操るボラクチンを、まるで魔女だと思ったシタラですが、ボラクチンの天幕に戻ると、グユクとの結婚を打診する、ソルコクタニへの使者の役目を引き受けます。
シタラはそうして、トルイ亡き後、落ち込んでいるというソルコクタニの様子を伺おうとしたのですが、3年ぶりに再会した彼女は、まるで別人のように無気力で、結婚についても、「大カトゥーンのご意向に従います、私の身はいかようにも」と、あっさりと受け入れてしまいます。
かつて、シタラの大切な人を奪いながら、人の痛みにはお構いなし、傲慢な態度でシタラを怒らせたソルコクタニが、今や絶望の淵に沈み、何も考えることが出来なくなっていたのです。

そんな彼女に苛ついたシタラは、いつものポーカーフェイスをかなぐり捨て、「もうあなたを守る人はいません、考えをやめて屈するなら、ご勝手に。私は考え続けますから!」と、声を荒げてしまいます。が、この言葉が結果的に、ソルコクタニを叱咤激励することになりました。
「ねえ、トルイ、私はじめて、失うことを知ったわ。あの子もそうだったのかしら?」
グユクとの結婚を断る決意をした、ソルコクタニのモノローグ。素晴らしい演出でした。

この時、もし、ソルコクタニがグユクと結婚していたならば、トルイ家はオゴタイ家に吸収合併されるような形になり、トルイの血筋が、後のモンゴル帝国の主流になることもなかったでしょう。
オゴタイ家からの圧迫を受けながらも、ソルコクタニがトルイ家の独立を守り、若年の息子たちを育て上げたことが、その後の歴史を大きく動かすことになったのです・・・・
というところで、以下次回。たぶん、1クールの最終回。

良い感じになってきた、シタラとシラ。唯一ほっこり出来る場面だったり。
なお、ミステリ的には、ドレゲネはボラクチンの計画をどこまで知っていたのか、「鉱山のほこり=毒」であることを承知でオゴタイに飲ませたのか、それとも「不老長寿の妙薬」とでも言われて騙されていたのか、この辺りが曖昧なまま残されているのが気になります。
最終回でスッキリすると有り難いのですが・・・・








