最終回は表紙&巻頭カラーでしたね。
皇帝と姉上の金髪がキラッキラッと輝いています。
最終刊となる単行本35巻は、235~238話を収録。3月18日発売です。

では、藤崎版「銀英伝」@ウルトラジャンプの感想です。
例のごとく粗筋から。
・第238話
新帝国歴3年7月26日、夜。皇帝に最後の時が迫っていた。ド・ヴィリエらが掃討され、静寂を取り戻した仮皇宮で、一時目を覚ました皇帝は、キルヒアイスをお返しすると言って、姉にペンダントを手渡し、6人の上級大将に帝国元帥の地位を与えるよう、皇妃に遺言する。ミッターマイヤーの妻子が到着すると、我が子に友人を作っておいてやりたいと、アレク大公にフェリックスを引き合わせる。今後の帝国の統治については、全てあなたの思う通りにやってくれと皇妃に言い残すと、皇帝は昏睡状態となり、最後に「宇宙を手に入れたら、みんなで・・・・」と呟いて崩御する。享年25歳、約2年半の短い治世だった。軍を退いたら歴史家になるというユリアンは、カリンと一緒に帰郷するが、彼らを待つハイネセンでは、ゴールデンバウム王朝の残滓が蠢いていた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
遂に最終回です。
なんだかんだ言っても、たとえヤンの方が人気があろうともw、ラインハルトに始まりラインハルトで終わるのが「銀英伝」というものです。
けれども、しんみりとしてばかりも居られません。あの方の生存が確認されたのですから。
藤崎先生が、最後にとんでもない置き土産をしてくれました。

冒頭から。
新帝国歴3年7月26日。ヴェルゼーデ仮皇宮。
時刻は夜、原作とは出来事の順番が異なりますが、すでに雨は止み、ド・ヴィリエら地球教の過激派も掃討され、周囲は元の静けさを取り戻しています。
皇帝の寝室には、帝国軍の提督や政府高官が、息を潜めて控えていますが、そんな中、爆発や銃撃戦があったことに気付かないほど、深く眠っていた皇帝が目を覚まします。
ベッドの側に控えていたアンネローゼが、「まだ夢を見たりない?」と問いかけると、皇帝は、「もう充分に見ました、誰も見たことのない夢を」と応え、枕の下からペンダント取り出すと、これまでの感謝の言葉とともに、姉に手渡します。
「もう私には必要がなくなりました。姉上に差し上げます。そして、キルヒアイスもお返しします。
ずっとお借りしっぱなしで申し訳ありませんでした・・・・」

また、皇妃には、皇帝の死後、6人の上級大将(ミュラー、ビッテンフェルト、メックリンガー、ワーレン、アイゼナッハ、ケスラー)に、帝国元帥の地位を与えるよう遺言します。
この6名に、すでに帝国元帥であるミッターマイヤー(「帝国主席元帥」の称号を受ける予定)を加えた7名は、後世において「獅子の泉の七元帥」と称されることになります。
当ブログのタイトルも、十何年かぶりに回収されましたw
22時過ぎになると、ミッターマイヤーが、夫人のエヴァンゼリン、養子のフェリックス、そしてハインリヒ少年を伴って仮皇宮に到着します。
原作ではスルーされていたハインリヒ(ロイエンタールの従卒をしていたランベルツですよ、覚えてますか~w)も、養子ということではフェリックスと同じ、藤崎版ではちゃんと、ミッターマイヤーの家族として扱われています。

居並ぶ提督たちに迎えられて、緊張を隠せないエヴァでしたが、皇帝が彼女たちを呼び寄せたのは、息子のアレク大公に、対等な友人をひとり残してやりたいとの親心から。
自らの若き日に、キルヒアイスの存在があったように、アレクにも、そういう友人が居て欲しいと、皇帝は、ロイエンタールの遺児でもある、1歳年長のフェリックスを選んだのでした。
(アレクは新帝国歴3年5月生まれ、フェリックスは2年5月生まれ)
かくして、幼い二人は、それぞれの母親に抱かれた状態で、対面を果たします。
二人はしばらく、不思議そうに互いを見つめますが、そのうち、フェリックスが、まだ赤ちゃんのアレクの手を握ると、面白そうにブンブンと振り回します。ミッタは慌てて引き離しますが、そうすると、フェリックスは機嫌を損ねて泣き、釣られてアレクも泣き出すことに。

フェリックスはすでに、ロイに似た面差し。やんちゃそう。
そんな子供たちの様子を、皇帝は微笑んで見守りますが、この場面で気になるのは、ミッタの「アレク大公殿下、いや、皇帝アレク陛下に忠誠を誓約しなさい」という台詞。
危篤状態とはいえ、皇帝が存命のうちに、息子の方を皇帝と呼ぶって、どうなの?
原作を読んだ時から気になっていたのですが、実際にそんな慣例があるのでしょうか。
この後の、「軍務尚書が見えぬようだが」「やむをえない事情で座を外しております」という遣り取りでは、藤崎版の皇帝は嫌味を言わず、「そうか・・・・」とあっさりと。
そして、今後の帝国の統治について、幼い皇帝の摂政となる皇妃に、こう言い残します。
「立憲体制に移行するならそれも良し、いずれにしても、生ある者のなかで最も強大で賢明な者が、宇宙を支配すれば良いのだ。もしアレクサンデル・ジークフリートがその力量を持たぬなら、ローエングラム王朝などあえて存続させる要はない。全てあなたの思う通りにやってくれれば、それ以上、望むことはない・・・・」

天蓋付きのベッドがでか過ぎて、上に登らないと近付けないって、どうなの。
戦いによって皇帝の座についた、ラインハルトらしい言葉ですが、あのルドルフ・フォン・ゴールデンバウムも、皇帝になるまでは、最も強大で賢明な者ではあったわけで・・・・
外敵がほぼ消滅した今となっては、帝国内部の権力闘争の方が、よほど平和を脅かしかねない、となれば、皇位を巡って無益な争い起こらぬよう、なるべく早く、立憲体制に移行した方が良い――ヒルダならば、そう考えそうな気がしますが、どうでしょう。
皇帝は、高熱に喘ぎながら、時間をかけてそう言い終えると、瞼を閉じます。そして、最後に、皇妃の耳元で、「宇宙を手に入れたら、みんなで・・・・」と囁いて、息を引き取るのでした。
新帝国歴3年(宇宙歴801年)7月26日23時29分、ラインハルト・フォン・ローエングラム崩御。
享年25歳。その治世は、2年余という短いものでした。

ほとんど触れられてませんが、帝国軍の提督たちだけでなく、国務尚書のマリーンドルフ伯ら、政府高官も寝室に控えています。
たった今、帝国の摂政皇太后として、権力の頂点に立ったヒルダは、気丈に言い放ちます。
「皇帝は病死なさったのではありません、命数を費い果たして亡くなったのです。病に斃れたのではありません。どうか、そのことを皆さん、忘れないでいただきとう存じます」
敬礼する提督たち。ヒルダは皆に頭を下げ、その時初めて、頬を涙が流れたのでした。
仮皇宮の外では、ユリアンとカリンが星空を見上げています。
ハイネセンのあるバーラト星系だけは、民主主義の手に残る――皇帝がそう約束してくれたとはいえ、たったこれだけのことを実現するために、500年の歳月と、数千億の人命が必要だったのかと思うと、ユリアンは苦笑いするしかありません。

なお、ユリアンの今後の進路ですが、政治指導者を目指すのではなく、臨時政府の軍人となり、任務が終わったら、その後は、歴史家になるといいます。
ヤン・ウェンリーの事績と、激動の数年間の記録を残すことで、後世の人々に考察の機会をより多く与えるのは、この時代を生きた者の義務だと、ユリアンは確信しているのです。
なる早で、「僕だけが知っている――ヤン・ウェンリーの実像」みたいな俗っぽい本を出せば、印税収入で一生食べて行けそうですが、殊勝な心がけですw
そんなユリアンの手を取って、いつまでも一緒にいてあげるというカリン。
組織から離れて、自由な道を行くことを選んだポプランとは別れ、二人は2週間もすれば、フェザーンを発って、ハイネセンに向かうことになります。

哀愁漂うトゥルナイゼン君。湖に石を投げています。
彼としては、同期のよしみで、ラインハルトにもっと構って欲しかったんでしょうね。
そのハイネセンで、一つの出来事がありました。
半年ほど前、ハイネセンの辺境で捕らえられ、精神科病院に送られたベーネミュンテですが、皇帝の崩御が伝えられるや否や、彼女を引き取るという、身内の者が現れたのです。
その身内、ランズベルグ伯とシューマッハが病院にやってくると、それまでの金切り声はどこへやら、ベーネミュンテは表情を一変させます。
そして、彼らに同行していた少年に会釈すると、その手を取り、うやうやしくこう述べるのです。
「これで、あなたさまを追うものはいなくなりました。さあ、参りましょう。皇帝陛下」
ベーネミュンテ夫人が最後に登場したのは、第225話 。
その時は、ミイラ化した子供の遺体を大事そうに抱えていましたが、彼女はその遺体を、先の皇帝、エルウィン・ヨーゼフ2世のものだと供述していました。
調査の結果、その子供は、前年の3月に拒食症で衰弱死しており、公共墓地に埋葬されましたが、事件の処理にあたったワーレンは、彼女の供述に沿った形で、「ゴールデンバウム王朝の正統は絶えた・・・・と思われる」と、本国に曖昧な報告をしています。
そのせいもあって、帝国からの追求の手が緩められたと推測されますが、今度ラインハルトが崩御したことで、もう大丈夫だと、彼女は表に出ることにしたのでしょう。

原作では、子供の遺体を抱いていたのは、ランズベルク伯ですが、彼は本当に精神を病んでおり、子供の遺体についても、意図して嘘を述べていたわけではありません。また、本物のエルウィンについては、原作の設定では、行方不明とされてます。
しかし、藤崎版のベーネミュンテの精神病は、完全に虚偽。子供の遺体も、エルウィンを死んだことにして捜索の目から隠すための道具、意図して用意したものです。
彼女がそうまでするのは、エルウィンへの、母性に似た愛情だけが理由ではないでしょう。
恐らくは、ハイネセンに亡命した旧帝国の貴族たちを糾合して、ゴールデンバウム王朝を復興させ、エルウィンを再び皇帝にするため。この野望が叶えば、ベーネミュンテは、ラインハルトや皇帝の寵を奪ったアンネローゼへの復讐心をも、満たすことができるのです・・・・
再び、フェザーンの仮皇宮。
ミッターマイヤーとその家族が、宮殿の外に出て、美しい星空を眺めています。
ミッタはフェリックスを肩に乗せたまま、皇帝を失った悲哀と喪失感に涙していましたが、ふとフェリックスが、「ファーター・・・・」と自分を呼んでいることに気付きます。
それは、息子が初めて発した言葉で、ミッタは嬉しさのあまり、「俺のことを、父さんと呼んでくれたよ!」と叫ぶほどでしたが、フェリックスが、星を掴もうとするかのように手を伸ばした時、「いずれ宇宙に出て、手に入れるがいい!」とも言っているので、将来は帝国軍に入れる気でいることは、たぶん、エヴァにはバレているでしょう。
そのエヴァに促されて、宮殿の中へ戻っていく一家。その頭上に、満天の星が輝いています。
――伝説が終わり、歴史がはじまる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「連載10年の歴史、完結!」との表紙を見て、そんなに長かったかと、改めてしみじみ。
藤崎版『銀河英雄伝説』は、2015年10月に週刊ヤングジャンプで連載が開始され、2020年2月からはウルトラジャンプに移籍しましたが、この件で印象深かったのは、週刊から月刊に舞台が変わった途端、内容が格段に良くなったと感じられたこと。
思うに、週刊誌での連載となると、毎号毎号の“引き”をどうするかなど、構成上の制約がありますが、山場を自在に設けることができるオリジナルのバトル漫画ならともかく、「銀英伝」のような、長篇の小説を原作とする漫画に、そのやり方は向いていなかったのではないかと。
1回毎のページ数が多く、構成上の制約が比較的緩い月刊に移ってからは、自分のペースでのびのびと描きたいことが描けるようになっている、という印象を受けました。
ところで、最終回となる今号で、エルウィンの生存が確認されました。
二次創作に携わったことのある方はピンと来るかも知れませんが、エルウィンが生存していると、どういうことになるかというと、アレク&フェリックス対エルウィンという構図で、ラインハルト後の世界、次世代の若者を主人公にした、続編が描けるようになるんですよねw
原作者の田中芳樹先生は、本編より後の時代は書かないと宣言されていましたが、もしかすると、藤崎先生には特別にお許しが出ていて、未来の話を描いてくれるのではと、今号を読んでいて、そんな期待が膨らみました。続編のことはともかくとして・・・・
藤崎先生、長い間、お疲れ様でした。
皇帝と姉上の金髪がキラッキラッと輝いています。
最終刊となる単行本35巻は、235~238話を収録。3月18日発売です。

では、藤崎版「銀英伝」@ウルトラジャンプの感想です。
例のごとく粗筋から。
・第238話
新帝国歴3年7月26日、夜。皇帝に最後の時が迫っていた。ド・ヴィリエらが掃討され、静寂を取り戻した仮皇宮で、一時目を覚ました皇帝は、キルヒアイスをお返しすると言って、姉にペンダントを手渡し、6人の上級大将に帝国元帥の地位を与えるよう、皇妃に遺言する。ミッターマイヤーの妻子が到着すると、我が子に友人を作っておいてやりたいと、アレク大公にフェリックスを引き合わせる。今後の帝国の統治については、全てあなたの思う通りにやってくれと皇妃に言い残すと、皇帝は昏睡状態となり、最後に「宇宙を手に入れたら、みんなで・・・・」と呟いて崩御する。享年25歳、約2年半の短い治世だった。軍を退いたら歴史家になるというユリアンは、カリンと一緒に帰郷するが、彼らを待つハイネセンでは、ゴールデンバウム王朝の残滓が蠢いていた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
遂に最終回です。
なんだかんだ言っても、たとえヤンの方が人気があろうともw、ラインハルトに始まりラインハルトで終わるのが「銀英伝」というものです。
けれども、しんみりとしてばかりも居られません。あの方の生存が確認されたのですから。
藤崎先生が、最後にとんでもない置き土産をしてくれました。

冒頭から。
新帝国歴3年7月26日。ヴェルゼーデ仮皇宮。
時刻は夜、原作とは出来事の順番が異なりますが、すでに雨は止み、ド・ヴィリエら地球教の過激派も掃討され、周囲は元の静けさを取り戻しています。
皇帝の寝室には、帝国軍の提督や政府高官が、息を潜めて控えていますが、そんな中、爆発や銃撃戦があったことに気付かないほど、深く眠っていた皇帝が目を覚まします。
ベッドの側に控えていたアンネローゼが、「まだ夢を見たりない?」と問いかけると、皇帝は、「もう充分に見ました、誰も見たことのない夢を」と応え、枕の下からペンダント取り出すと、これまでの感謝の言葉とともに、姉に手渡します。
「もう私には必要がなくなりました。姉上に差し上げます。そして、キルヒアイスもお返しします。
ずっとお借りしっぱなしで申し訳ありませんでした・・・・」

また、皇妃には、皇帝の死後、6人の上級大将(ミュラー、ビッテンフェルト、メックリンガー、ワーレン、アイゼナッハ、ケスラー)に、帝国元帥の地位を与えるよう遺言します。
この6名に、すでに帝国元帥であるミッターマイヤー(「帝国主席元帥」の称号を受ける予定)を加えた7名は、後世において「獅子の泉の七元帥」と称されることになります。
当ブログのタイトルも、十何年かぶりに回収されましたw
22時過ぎになると、ミッターマイヤーが、夫人のエヴァンゼリン、養子のフェリックス、そしてハインリヒ少年を伴って仮皇宮に到着します。
原作ではスルーされていたハインリヒ(ロイエンタールの従卒をしていたランベルツですよ、覚えてますか~w)も、養子ということではフェリックスと同じ、藤崎版ではちゃんと、ミッターマイヤーの家族として扱われています。

居並ぶ提督たちに迎えられて、緊張を隠せないエヴァでしたが、皇帝が彼女たちを呼び寄せたのは、息子のアレク大公に、対等な友人をひとり残してやりたいとの親心から。
自らの若き日に、キルヒアイスの存在があったように、アレクにも、そういう友人が居て欲しいと、皇帝は、ロイエンタールの遺児でもある、1歳年長のフェリックスを選んだのでした。
(アレクは新帝国歴3年5月生まれ、フェリックスは2年5月生まれ)
かくして、幼い二人は、それぞれの母親に抱かれた状態で、対面を果たします。
二人はしばらく、不思議そうに互いを見つめますが、そのうち、フェリックスが、まだ赤ちゃんのアレクの手を握ると、面白そうにブンブンと振り回します。ミッタは慌てて引き離しますが、そうすると、フェリックスは機嫌を損ねて泣き、釣られてアレクも泣き出すことに。

フェリックスはすでに、ロイに似た面差し。やんちゃそう。
そんな子供たちの様子を、皇帝は微笑んで見守りますが、この場面で気になるのは、ミッタの「アレク大公殿下、いや、皇帝アレク陛下に忠誠を誓約しなさい」という台詞。
危篤状態とはいえ、皇帝が存命のうちに、息子の方を皇帝と呼ぶって、どうなの?
原作を読んだ時から気になっていたのですが、実際にそんな慣例があるのでしょうか。
この後の、「軍務尚書が見えぬようだが」「やむをえない事情で座を外しております」という遣り取りでは、藤崎版の皇帝は嫌味を言わず、「そうか・・・・」とあっさりと。
そして、今後の帝国の統治について、幼い皇帝の摂政となる皇妃に、こう言い残します。
「立憲体制に移行するならそれも良し、いずれにしても、生ある者のなかで最も強大で賢明な者が、宇宙を支配すれば良いのだ。もしアレクサンデル・ジークフリートがその力量を持たぬなら、ローエングラム王朝などあえて存続させる要はない。全てあなたの思う通りにやってくれれば、それ以上、望むことはない・・・・」

天蓋付きのベッドがでか過ぎて、上に登らないと近付けないって、どうなの。
戦いによって皇帝の座についた、ラインハルトらしい言葉ですが、あのルドルフ・フォン・ゴールデンバウムも、皇帝になるまでは、最も強大で賢明な者ではあったわけで・・・・
外敵がほぼ消滅した今となっては、帝国内部の権力闘争の方が、よほど平和を脅かしかねない、となれば、皇位を巡って無益な争い起こらぬよう、なるべく早く、立憲体制に移行した方が良い――ヒルダならば、そう考えそうな気がしますが、どうでしょう。
皇帝は、高熱に喘ぎながら、時間をかけてそう言い終えると、瞼を閉じます。そして、最後に、皇妃の耳元で、「宇宙を手に入れたら、みんなで・・・・」と囁いて、息を引き取るのでした。
新帝国歴3年(宇宙歴801年)7月26日23時29分、ラインハルト・フォン・ローエングラム崩御。
享年25歳。その治世は、2年余という短いものでした。

ほとんど触れられてませんが、帝国軍の提督たちだけでなく、国務尚書のマリーンドルフ伯ら、政府高官も寝室に控えています。
たった今、帝国の摂政皇太后として、権力の頂点に立ったヒルダは、気丈に言い放ちます。
「皇帝は病死なさったのではありません、命数を費い果たして亡くなったのです。病に斃れたのではありません。どうか、そのことを皆さん、忘れないでいただきとう存じます」
敬礼する提督たち。ヒルダは皆に頭を下げ、その時初めて、頬を涙が流れたのでした。
仮皇宮の外では、ユリアンとカリンが星空を見上げています。
ハイネセンのあるバーラト星系だけは、民主主義の手に残る――皇帝がそう約束してくれたとはいえ、たったこれだけのことを実現するために、500年の歳月と、数千億の人命が必要だったのかと思うと、ユリアンは苦笑いするしかありません。

なお、ユリアンの今後の進路ですが、政治指導者を目指すのではなく、臨時政府の軍人となり、任務が終わったら、その後は、歴史家になるといいます。
ヤン・ウェンリーの事績と、激動の数年間の記録を残すことで、後世の人々に考察の機会をより多く与えるのは、この時代を生きた者の義務だと、ユリアンは確信しているのです。
なる早で、「僕だけが知っている――ヤン・ウェンリーの実像」みたいな俗っぽい本を出せば、印税収入で一生食べて行けそうですが、殊勝な心がけですw
そんなユリアンの手を取って、いつまでも一緒にいてあげるというカリン。
組織から離れて、自由な道を行くことを選んだポプランとは別れ、二人は2週間もすれば、フェザーンを発って、ハイネセンに向かうことになります。

哀愁漂うトゥルナイゼン君。湖に石を投げています。
彼としては、同期のよしみで、ラインハルトにもっと構って欲しかったんでしょうね。
そのハイネセンで、一つの出来事がありました。
半年ほど前、ハイネセンの辺境で捕らえられ、精神科病院に送られたベーネミュンテですが、皇帝の崩御が伝えられるや否や、彼女を引き取るという、身内の者が現れたのです。
その身内、ランズベルグ伯とシューマッハが病院にやってくると、それまでの金切り声はどこへやら、ベーネミュンテは表情を一変させます。
そして、彼らに同行していた少年に会釈すると、その手を取り、うやうやしくこう述べるのです。
「これで、あなたさまを追うものはいなくなりました。さあ、参りましょう。皇帝陛下」
ベーネミュンテ夫人が最後に登場したのは、第225話 。
その時は、ミイラ化した子供の遺体を大事そうに抱えていましたが、彼女はその遺体を、先の皇帝、エルウィン・ヨーゼフ2世のものだと供述していました。
調査の結果、その子供は、前年の3月に拒食症で衰弱死しており、公共墓地に埋葬されましたが、事件の処理にあたったワーレンは、彼女の供述に沿った形で、「ゴールデンバウム王朝の正統は絶えた・・・・と思われる」と、本国に曖昧な報告をしています。
そのせいもあって、帝国からの追求の手が緩められたと推測されますが、今度ラインハルトが崩御したことで、もう大丈夫だと、彼女は表に出ることにしたのでしょう。

原作では、子供の遺体を抱いていたのは、ランズベルク伯ですが、彼は本当に精神を病んでおり、子供の遺体についても、意図して嘘を述べていたわけではありません。また、本物のエルウィンについては、原作の設定では、行方不明とされてます。
しかし、藤崎版のベーネミュンテの精神病は、完全に虚偽。子供の遺体も、エルウィンを死んだことにして捜索の目から隠すための道具、意図して用意したものです。
彼女がそうまでするのは、エルウィンへの、母性に似た愛情だけが理由ではないでしょう。
恐らくは、ハイネセンに亡命した旧帝国の貴族たちを糾合して、ゴールデンバウム王朝を復興させ、エルウィンを再び皇帝にするため。この野望が叶えば、ベーネミュンテは、ラインハルトや皇帝の寵を奪ったアンネローゼへの復讐心をも、満たすことができるのです・・・・
再び、フェザーンの仮皇宮。
ミッターマイヤーとその家族が、宮殿の外に出て、美しい星空を眺めています。
ミッタはフェリックスを肩に乗せたまま、皇帝を失った悲哀と喪失感に涙していましたが、ふとフェリックスが、「ファーター・・・・」と自分を呼んでいることに気付きます。
それは、息子が初めて発した言葉で、ミッタは嬉しさのあまり、「俺のことを、父さんと呼んでくれたよ!」と叫ぶほどでしたが、フェリックスが、星を掴もうとするかのように手を伸ばした時、「いずれ宇宙に出て、手に入れるがいい!」とも言っているので、将来は帝国軍に入れる気でいることは、たぶん、エヴァにはバレているでしょう。
そのエヴァに促されて、宮殿の中へ戻っていく一家。その頭上に、満天の星が輝いています。
――伝説が終わり、歴史がはじまる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「連載10年の歴史、完結!」との表紙を見て、そんなに長かったかと、改めてしみじみ。
藤崎版『銀河英雄伝説』は、2015年10月に週刊ヤングジャンプで連載が開始され、2020年2月からはウルトラジャンプに移籍しましたが、この件で印象深かったのは、週刊から月刊に舞台が変わった途端、内容が格段に良くなったと感じられたこと。
思うに、週刊誌での連載となると、毎号毎号の“引き”をどうするかなど、構成上の制約がありますが、山場を自在に設けることができるオリジナルのバトル漫画ならともかく、「銀英伝」のような、長篇の小説を原作とする漫画に、そのやり方は向いていなかったのではないかと。
1回毎のページ数が多く、構成上の制約が比較的緩い月刊に移ってからは、自分のペースでのびのびと描きたいことが描けるようになっている、という印象を受けました。
ところで、最終回となる今号で、エルウィンの生存が確認されました。
二次創作に携わったことのある方はピンと来るかも知れませんが、エルウィンが生存していると、どういうことになるかというと、アレク&フェリックス対エルウィンという構図で、ラインハルト後の世界、次世代の若者を主人公にした、続編が描けるようになるんですよねw
原作者の田中芳樹先生は、本編より後の時代は書かないと宣言されていましたが、もしかすると、藤崎先生には特別にお許しが出ていて、未来の話を描いてくれるのではと、今号を読んでいて、そんな期待が膨らみました。続編のことはともかくとして・・・・
藤崎先生、長い間、お疲れ様でした。
































































