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『ペット』(The Secret Life of Pets)

【スタッフ】
監督:クリス・ルノー/ヤロー・チェイニー
脚本:ブライアン・リンチ/シンコ・ポール/ケン・ダウリオ
製作:クリストファー・メレダンドリー/ジャネット・ヒーリー
編集:ケン・シュレッツマン
音楽:アレクサンドル・デプラ

【キャスト】
ルイス・C・K
エリック・ストーンストリート
ケビン・ハート
ジェニー・スレイト
エリー・ケンパー
レイク・ベル
ダナ・カービ
ハンニバル・バレス
ボビー・モナハン
スティーブ・クーガン
アルバート・ブルックス

【あらすじ】
ニューヨーク。神経質で頼りないテリア混ざりの雑種犬マックスは、大好きな飼い主ケイティと何不自由ない生活を送っていた。ケイティが家を出ると、同じアパートに住む他のペットたちがマックスの部屋にやって来て、飼い主の恥ずかしい話を披露し合ったり、一緒に『アニマル・プラネット』を観たり、カワイイ表情の練習をしたりして一日を過ごしている。そんなある日、ケイティが毛むくじゃらの大型犬デュークを保護して連れて帰って来る。その日からマックスの完璧な生活は一変。デュークとスペースを共有するだけでなく、ケイティの愛情も彼とシェアすることになったのだ。お互いに自分が優位に立とうと奮闘する中、ある事件をきっかけにマックスとデュークは都会という荒野で迷子になってしまう。やがて2匹は、見た目は可愛いがクレイジーなウサギのスノーボールに遭遇。スノーボールは飼い主に捨てられた動物軍団を結成、人間に対する復讐を企んでいた…。











『ミニオンズ』で有名なイルミネーション・エンターテイメントの最新作。
監督のクリス・ルノーの作品で見たのは、
『怪盗グルーの月泥棒』(2010)
『ロラックスおじさんの秘密の種』(2012)
『怪盗グルーのミニオン危機一発』(2013)

ヤロー・チェイニーは、まだ新人監督さんですね。以前には『怪盗グルーのミニオン危機一発』で美術担当なんかもされてましたけども。

はい、じゃあ今回の『ペット』ですけども。
僕は字幕版を見てきました。日本語吹き替え版は見ていないです。
なので、バナナマンのお二人の吹き替えがどうなのかとかは、全く解りません!
正直、予告編の時点で「これは字幕版を見よう」と思っちゃいました。本編を見ずに批判するのは良くないですけどね。
もう普通になってきている、タレントさんを声優に起用するキャスティングですけど、上手い人がやってくれるならそれは良いと思います。『ルドルフとイッパイアッテナ』の鈴木亮平さんや、『ONE PIECE FILM GOLD』の小栗旬さんなんかは上手かったですし。
でも、上手くなかったり合ってなかったら、それは完全に問題外ですよね。
その点で言うと、本家のキャスティングはやっぱり素晴らしかったですよ。

まず、主人公のマックスですけども。
最初に話し出した時に「思ったよりオッサン声だな!」って思ったんですよ。担当しているのがルイス・C・Kさんっていうアメリカのコメディアンなんですけども。年齢は48歳ですからね(笑)。
でも、主人公の犬をオッサン声にすることによってどうなるのかと言うと、犬の成長速度と、犬のマックスと飼い主のケイティが共に過ごした日々の蓄積が、そこで無意識に観客に伝わるんだと思います。
マックスがケイティと出会った時は、まだマックスが子犬だった時。じゃあケイティも子どもだったかと言うと、彼女はもう一人暮らしを始めていて、もちろん大人ですよね。
大人のケイティと子どものマックスが出会って、今は大人のケイティとオッサンのマックスになっている。その成長速度の違い。でもマックスの感性が成熟しているのかと言うと、そこは犬なんで。考え方は犬なんですよね。
その「年を重ねても犬は犬」っていう感じ。まだ老犬ではないんですけど、もうオッサン。
このキャスティングはキャラクターの魅力に影響するだけじゃなくって、登場人物同士の関係を表現するのにも役立っているわけですね。

それと僕が良いなぁと思ったのが、白いポメラニアンのギジェットですけども。演じていたのは、ジェニー・ストレイトさん。
この方、『ズートピア』で羊の副所長のドーン・ベルウェザーの声を当ててた人です。
この人の声、めっちゃ良くなかったですか? ちょっとハスキーで大人っぽい印象で、でも可愛かったり、やっぱり強かったり。
雰囲気の違ういろんな声を演じ分けているのが印象的でした。

あとキャラクターの魅力で言ったら言っておかないといけないのが、動物たちの「その動物っぽさ」だと思います。
この作品の面白さって、「人間が見ていない時に動物たちは何をしているか」であって、実はめちゃめちゃ人間に近いコミュニティを築いていたり、話してる内容や表情なんかも「人間っぽい」じゃないですか。
それだけに重要になってくるのが、人間が見ている時の「動物っぽさ」ですよ。対比が無いと、人間っぽい彼らの仕草や言動、もっと言うとキャラクターそのものが活きてこない。
序盤で見られる、飼い主と居る時の動物の仕草なんかが凄く良いんですね。
そして、これも重要なんですけども。これ、ちょっとネタバレ入っちゃいますけど、結末はハッピーエンドなんです、この映画(笑)。ちゃんと飼い主のもとに帰れます。
で、その飼い主のものに戻った時の「動物っぽさ」も良いですよね。
序盤で描かれる「飼い主とペットの関係」って、マックスやデュークとケイティの関係ぐらいじゃないですか。で、その後に何やかんやあって、彼らの人間っぽいキャラクターが見られたりコミカルなやり取りがあったりして。
そうして戻ってきた我が家では、やっぱりみんな飼い主に会いたかったし、飼い主もみんなペットが大好きっていう。散々笑って楽しんで、でもその後にホッとさせてくれるんですよね。
僕も実家で犬と猫を飼っていたんで。飼い主が帰宅したらペットがそこに居るっていう、その独特の安心感には大いに共感しました。

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物語に関してで言ったら、ド定番の「行って帰ってくる話」です。『トイ・ストーリー』っぽかったですよね。もちろん、その間で「どこに行くのか」「どうやって帰ってくるのか」なんかがハチャメチャで楽しいんですけども。
その中でも見た人みんながギョッとしたであろう、ソーセージ工場のシーン。マックスやデュークが空腹で追い詰められてからの、あの大量のソーセージ。
何と、そのソーセージが擬人化されてるんですよ。しかも、唄って踊ってマックスたちを歓迎してくれるんですね。ニコニコ笑いながら、楽しい音楽とダンスが楽しい。そしてそんなソーセージたちを容赦なく食いまくるマックスとデューク(笑)。
言っちゃ悪いですけど、頭おかしいですよね(笑)。見てる間、「これ確実にラリってんだろ」と思いながら見てましたけども。
作り手側は悪ふざけ半分で作ってんだろうなと思ってたらですね、実は先日12日にアメリカでは『Sausage Party』っていう3DCGアニメーション映画が公開されまして。こっちはソーセージも、ソーセージを挟むホットドックのパンも、マスタードも、ドーナツも、みんな擬人化されてます。しかも、ソーセージは男性キャラクターで、パンは女性キャラクターです。これ大丈夫なんでしょうか?(笑)

感心したのは、保健所の動物だったり、捨てられた動物に関して。
まずケイティが連れて帰ってくるデューク自身が、保健所にいたっていう設定じゃないですか。マックスからしたら、「邪魔な奴がやってきた」っていう感情しかないんですけど、デュークからしたら命を救われたわけですから。この居場所を何としても死守しなければならないんですよね。そのためには手段は選んでいられない。
また、人間に捨てられて地下にアジトを構えて復讐を誓う動物たちも、もともとは人と共に生活していたのが、それぞれの理由で人を憎むようになってしまった。
こういういろんな設定の中で、人が動物を捨てたり悪く扱ったりすることが、彼らに何を及ぼすことになるのか、彼らがどうなってしまうのかが描かれているんですよ。
でもちゃんと上質に描かれているなと思うのが、そういった負の要素を必要以上にウェットに描いていないんですね。基本は笑って楽しまるアドベンチャーですから、動物たちがウジウジしている姿なんかあんまり見たくない。だから、捨てられたウサギのスノーボールの過去も、実は悲劇的なんですけども半分ギャグぐらいの扱いになっていたりします。
でもだからと言ってぞんざいに扱われているのかと言うとそうでもなくって、ちゃんと見た人に「動物を捨てると」っていうことを考えさせるバランスになってるんですよ。
映画の雰囲気と勢いと損なわずに、でもメッセージはちゃんと込めるっていうね。上手い。

最後に、音楽についても。
まず冒頭、ニューヨークの街全体を上空から映したショットから、カメラが高速で降りていって、セントラルパークに入って行って、そこで人間をペットが散歩している様子からスタート。そのバックで流れるのが、テイラー・スウィフト『Welcome To New York』。
テンポよく連続して繰り出される「Welcome to New York」っていう歌詞と、そこで生活する人と動物で、一気にその世界に入っていけるんです。

他にも、システム・オブ・ア・ダウン『Bounce』とかいろいろあるんですけど、個人的に良かったのが、ラストで流れるアンドリューW.K.の「Party Hard」。
何でしょうね、あの有無を言わさぬ問答無用のハッピーエンド感(笑)。「ゴチャゴチャ言ってんじゃねぇ!エンディングだ!」っていうね。
やったー! やったぜー!!
もうね、登場するペットたちと一緒に劇場で身体動いてましたもんね、僕も(笑)。

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総評としては…、
最高でしたよ、大好きです!!
犬を、猫を、ネズミを、鳥を、魚を、亀を、ウサギを、ブタを。ペットを飼い、彼らを愛するすべての人に!!
オススメですッ!!!