『ミュータント・ニンジャ・タートルズ:影(シャドウズ)』(Teenage Mutant Ninja Turtles:Out of the Shadows)
【スタッフ】
監督:デイヴ・グリーン
製作:マイケル・ベイ/アンドリュー・フォーム/ブラッド・フラー/ゲイレン・ウォーカー/スコット・メドニック
製作総指揮:デニス・L・スチュワート/グラント・カーティス/エリック・クラウン/ナポレオン・スミス3世/ジョシュ・アッペルバウム/アンドレ・ネメック
キャラクター創造:ピーター・レアード/ケビン・イーストマン
脚本:ジョシュ・アッペルバウム/アンドレ・ネメック
撮影:ルラ・カルバーリョ
美術:マーティン・ラング
衣装:サラ・エドワーズ
編集:ボブ・ダクセイ/ジム・メイ
音楽:スティーブ・ジャブロンスキー
【キャスト】
ミーガン・フォックス
ウィル・アーネット
ローラ・リニー
スティーヴン・アメル
ピート・プロゼック
アラン・リッチソン
ノエル・フィッシャー
ジェレミー・ハワード
タイラー・ペリー
ブライアン・ティー
ブリタニー・イシバシ
ゲイリー・アンソニー・ウィリアムズ
ステファン・ファレリー
【あらすじ】
リーダーのレオナルド、熱血漢のラファエロ、ムードメーカーでピザが大好きなミケランジェロ、メカに強いドナテロの4兄弟からなるタートルズ。彼らの宿敵シュレッダーが、マッドサイエンティストのバクスター・ストックマン博士と、マヌケな子分ビーバップ&ロックステディの協力で脱獄を果たす。タートルズは、TVレポーターのエイプリル・オニール、新たに仲間となったホッケーマスクをかぶったNY市警のケイシー・ジョーンズらとともに、再びニューヨークを恐怖に陥れようとするシュレッダーの悪事に立ち向かう。しかし彼らの前に、イノシシとサイのミュータントに変貌したビーバップ&ロックステディが立ちはだかる。さらには異次元から現れた新たな敵、悪の帝王クランゲの世界征服の野望も加わり、戦いの舞台はニューヨークからブラジル、そして空中戦へともつれ込む。そんななか、固い絆で結ばれていたはずのタートルズに分裂の危機が訪れる…。
前作『ミュータント・タートルズ』(2015)のヒットを受けての続編。
ジョナサン・リーベスマンから監督のバトンを引き継いだのは、『EARTH TO ECHO アース・トゥ・エコー』(2015)のデイヴ・グリーン。ちなみに『アース・トゥ・エコー』も見ましたけど、面白かったですよ。良いジュブナイル映画でした。
まず前回はどうだったのか。
以前の僕の評をまとめさせていただきますと。前作の監督であるジョナサン・リーベスマンが混戦の見せ方が得意な監督だったので、敵と味方が入り乱れての大乱闘も見やすく楽しめる、良い感じのポップコーンムービーだったっていう感じです。
ただ、今回は監督が変わっていますから。そこんところがどうなっているのか。重要なところですよね。
じゃあまず、良かったところから言いますね。
やっぱりね、原作に登場するお馴染みのキャラクターがたくさん登場すると、そりゃどうしたって上がりますよ!
ケイシーやクランゲ、ビーバップ&ロックステディ、アニメ版では「サワキちゃん♪」でお馴染みのクランゲ。特にビーバップ&ロックステディのアホなノリは、敵なんだけど見ていて楽しいので好きなんですよね。
こんなノリの敵役って、他の作品にはあんまりいないじゃないですか。いたとしてももっと凶悪で、狂っているが故に口調が明るいとか、そういうキャラクターなんだと思うんですよ。
でもビーバップ&ロックステディの場合は、コイツら心底アホでしょ(笑)。こういうのが通用するのも、主人公がタートルズだからだよな、って。タートルズたちもお調子者でノリが軽いから、勢いが合うじゃないですか。
もちろん、軽いノリのタートルズvsクソ真面目なシュレッダーっていうスカし気味の構図も面白いんですけどね(笑)。
それと、前作と比較しても良かった点で言うと。それは、キャラクターの描写です。
さっきも言いましたけど、監督の前作『アース・トゥ・エコー』が面白かったんですよね。で、この作品で何が良かったのかと言うと、登場する少年たちの若さゆえの葛藤であったり、それぞれの個性の描き方が素晴らしかったんですよ。ジュブナイル映画ですから、そういった要素は必須であり、最重要ポイントですから。
おそらく、彼が起用された理由っていうのも、そういった要素を描くうえで適任と評価されたんじゃないでしょうか。
言うてもティーンエイジャーの4兄弟ですから。遊びたい盛りなわけですよ。にも関わらず、表の世界に出ることを禁じられている。
でも舞台はニューヨーク。誘惑は山ほどあるんですよね。「もし外に出られたら。人間の世界に、人間の姿で溶け込めたら」
そういった葛藤を、今作では上手く描けていたと思います。彼らの中で、外の世界に対する願望が徐々に膨れ上がっていくのが、実は序盤の方からスムーズに描かれているんです。
そして、丁寧に個性を描き分けられたからこそ、そんな個性が衝突した結果の仲間割れっていうのも、見ていて違和感が無い。前作であんなに協力して戦った兄弟の間に不穏な空気が流れるのも、見ていて自然なんですね。これは上手い。
そして、彼らの個性が噛み合った時に生まれるチームワークと爆発力。見ていて気持ち良いですよね、こういうのは。
ただ、言いたいことはあってですね。
言うても作品の一番の魅力っていうのは、彼らタートルズのアクションやバトルじゃないですか。ニンジャが活躍する映画なんですから、それはどう考えたってそうですよね?
でね、最初に僕言いました。前作は「敵と味方が入り乱れての大乱闘も見やすく楽しめる、良い感じのポップコーンムービーだった」。
ジョナサン・リーベスマンの見せ方が上手かったので、製作側に回ったマイケル・ベイ映画の数倍見やすいアクション映画だったんですよ。
それがですね。おそらく今作のデイヴ・グリーンさんは、まだそういった技術は不勉強だったのかな?
まぁ、見難いんですよ。アクションシーンの画が。
全体的にスローモーションを多用しているから、そのスローの場面だけは何が起きているか解るんですよ。スローのシーン以外はゴッチャゴチャでスゲー見難い。
良いアクションシーンって、スローを多用しなくても解りやすいアクションを撮るっていうことだと思うんだけど、どうも迫力のある画を重視しすぎたせいか、勢いはあるんだけどゴチャゴチャしたシーンばっかりだったように思います。少なくとも前作は、ゴチャゴチャしているように見えて、ちゃんと解るように整理した見せ方としてくれていましたよ?
で、そのスローなアクションシーンですけども。あまりにも多用しすぎるせいで、明らかにテンポが悪くなってるんですね。サクサク進まない。
約2時間ある映画なのに、内容が薄い。そのくせに、じっくり描いてほしいところは薄味だったりするし。
例えば、クランゲの登場シーン。タメも無しにいきなり登場するから、「え、何? コイツ前からいたっけ?」ってなっちゃうんですよ。あまりにもアッサリ登場させすぎ!
一応、得体の知れない悪の帝王なんですから、そこはもっとジックリもったいぶって登場させてくださいよ。
でね? この無駄に長くてゴチャゴチャしたアクションシーンとやたらと多いスローモーションって、どっかで見たと思ったら、まさしくマイケル・ベイの特徴なんです! 『トランスフォーマー』や!!
マイケル・ベイが主張し始めているぞー!(笑)
他にもですねぇ。ちょっとご都合主義が過ぎると言いますか。
そもそも未知なる敵の情報を、なんでドナテロはすぐに調べられるんですか? 名前まで知ってたじゃないですか。敵の目的とか、どういう武器を持っているのかとか。
あまりにもチートすぎると言うか。まぁそれが彼のキャラクターとしての個性だから、「そういうもんだよ」って言っちゃえばそれまでなんですけど、どうも気になっちゃって、そこから先の展開が割と何でもアリというか、どうでもいいというか。何とかならなかったですかね?コレ。
あと、敵の扱いが残念すぎます。強そうな敵キャラがあっけなく人間に負けるし、脳ミソもアッサリ負けるし。
何より、もったいぶって復活したシュレッダーがそんなオチ!?
僕てっきり、エンドクレジットの途中とか後に何か出てくるんだと思ってたんですよ。前作でもシュレッダーの復活は臭わされていましたし、今作でもそういうのがあって、何ならお約束になていくのかな、って。
そうしたらね、アッサリ終わりやがった!!(笑)
ちょっとー、頼むよー。ガッカリだよー。
それに、さっき言った「タートルズの衝突、そして和解からのチームワークと爆発力」っていう件にも関わる話なんですけど。
物語中盤、ブラジル上空で飛行機から飛行機にダイブするシークエンスで、実は結構仲良さそうなやり取りしてるじゃないですか。
これね、普通はまず衝突するきっかけがあって、そこからしばらくはモヤモヤしているんだけど、モヤモヤが爆発して衝突して、解決につながるきっかけがあって、そして和解。普通はこうじゃないですか?
でもね、今作は変わっていて。割と早い段階で衝突して2つにチームが分かれちゃうんですね。で、その後にまた問題が生じて、今度こそもうチームの崩壊だ~と思いきや、そこからの飛行機ダイブのシークエンスなんです。
しかも、あろうことかそのシーンの中で「ナイスキャッチ!」とか言って、けっこうデレてるんです! 何だよ、普通に仲良しじゃねーか!
それじゃあ、クライマックス前に仲直りするシーンが全く活きないでしょ!?
最後に言いたいのが、なんでタイトルを『Out of the Shadows』から、ただの『影(シャドウズ)』にしたんだよ!
観た人なら解ると思いますけど、今作の中でなぜ『Out of the Shadows』なのかって重要じゃないですか! 声優に芸人を起用するとか(僕は字幕版で見ましたけど)、日本の配給会社マジでセンス無ぇわ!!
総評としては…、
良い部分も確かにありました。面白かったと言っていいでしょう。
エンディングで流れるタートルズのテーマも含め、ファンサービスも嬉しかったです!
でもね!? もっと良くなったでしょうよ!?
正直、気になる部分が多すぎます! 撮影途中に何かあったのか?と疑いたくなるレベルです。
これが全力じゃないと信じたい!
前作は面白かったし、くどい様ですがデイヴ・グリーンの『アース・トゥ・エコー』は力作です!
次回! 次回があるのなら、僕はまだ期待していますよ!!