4月22日、乃木坂46のメンバー生駒里奈の
卒業コンサートが、日本武道館で催されました。
映画館のライブビューイングで見たことは、
4月26日のブログに書きました。
そして4月28日に、生駒の本『立つ』がでました。

内容は雑誌「日経エンタテインメント」に
2014年8月号から18年4月号まで、
3年8か月にわたり連載されたものです。
新旧95枚の写真とともに、まとめられていました。
構成としては、大きく二つにわかれます。
▽第一部の「AKB48留学日記」には、
2014年8月号から15年6月号まで。
日付を冠した日記風に綴られています。
いちばん最初は、2014年5月となるちょうど4年前。
9th「夏フリ」のMV撮影のお話です。
▽そして、第二部の「ほのぼの日記」には、
2015年9月号から18年4月号まで。
そのまま文章で書かれています。
最後は、卒業への決心で終わっていました。

日記にしても文章にしても、本人の言葉で綴られています。
それは、写真に文章がまじったフォトブックでも、
書き下ろしのエッセイでもありません。
雑誌に連載された日記と文章が、1冊にまとまっているのです。
そのときどきに思ったことや感じたことが、
書いた当時のままに反映されます。
あとで思い出しながらまとめるより、
その場その場の雰囲気や臨場感が、間近に伝わってきます。
心のつみ重ねや、心の葛藤を読み取ることができました。
なによりも、生駒の成長をみることができる1冊になっています。

これまで、乃木坂46のメンバーによる雑誌連載が
1冊にまとめられたという本はないでしょう。
乃木坂46以外でも、あまり見かけないと思います。
アイドルによる文章の連載ものが
まとめられるのは珍しいことと思いました。
そういう意味で、メンバー自身の手による、
乃木坂46の歴史を知ることのできる、貴重な記録本でもあります。
生駒の乃木坂46に対する思いが
存分につまった1冊になっていました。
懐かしむ読者がいれば、新鮮に思う読者もいるでしょう。
二種類の読者が、ともに共感できるのです。

表にでてこない、本人しか語ることのできない
細かな逸話が随所に散りばめられていました。
卒業していったメンバー、
ひとりひとりへの思いは熱いものを感じます。
アンダーメンバーやアンダーライブに対しては
よく書かれていました。
それだけ立場の違うメンバーを思いやり、
気にかけていた証しだと思います。
ライブを数多くつみ重ねているアンダーメンバーは
考え悩んでぶつかって、理解しあいまとまって、
ひとつのステージを作りあげます。
その思いは全国ツアーなど、全体ライブにも発揮されます。
ライブに慣れない選抜メンバーとの差が歴然となり、
生駒に「うらやましい」「憧れ」と言わしめていました。
「一体感のあるパフォーマンスができるのは
アンダーしかいない」(150頁)とも。
また、これからの乃木坂46を担う
2期生に対しては、厳しくも書いていました。

巻頭には、2種類の衣装をきた生駒が8頁ずつ収まっています。
すべて1頁大の断ち落とし写真です。
たとえば、2つの衣装全16頁を巻頭にまとめるのでなく、
ひとつの衣装8頁を巻頭で、もうひとつの衣装8頁は緩衝材として、
第一部と第二部の間に、はさんでもいいのではと思いました。
でも、読み進めていくうちに、生駒の全力疾走を思い浮かべると、
そのまま、いっ気に読ませるのもありかなと、思い直しました。
ひとつ気になる個所がありました。
もとにある連載時の言葉の上に、
新たな言葉がうわ乗せされていたのです。
本を出すに当たり、読み直したときに書き加えたのでしょう。
時間のずれが生じて、視点が定まらなくなっていました。

・卒業コンサートのライブビューイングをみました。
・そして『立つ』を読みました。
生駒は、移り変わり激しい業界のなかで、
誰も経験したことのない乃木坂46という
女性アイドルグループのセンターの重責を、
ひとり担い駆けぬけました。
そこにはいい知れないプレッシャーが、
いつもついてまわったでしょう。
ときとして涙を見せることもありました。
それを耐えぬきました。
だからこそ、いちばんに近いメンバーに慕われ、
日ごろから、かかわっているスタッフに愛され、
たくさんのファンに見守られてきたのです。
そして殻を破った生駒は、
乃木坂46の代名詞となり、顔となりました。
テレビのバラエティ番組をはじめ、
舞台や映画など、幅広く多岐にわたって活躍しました。

そんな生駒の卒業です。
卒業した生駒には、アイドルとしての大きな経験を糧に、
のびのびと第二の芸能人生を歩んでいって欲しいと思いました。

最後に私事をひとつ。
第一部の「AKB48留学日記」には、
そのときどきのことが、日付を冠にして
詳細につづられていました。
これは自作のホームページ「乃木坂46年表」に
うってつけの資料となります。

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