『キサラギ』 07年ショウゲート

(基本的にネタバレ無し)

一年前に亡くなったアイドルを偲んで、ビルの一室に集まった五人の男達。
グッズを眺めながら、思い出話に興じるはずが、彼女の死の真相を追い始めるというのがストーリーの発端。

密室で過去の事件について振り返る形式は、特段珍しくも無い手法であり、一歩間違えると「劇場中継」になってしまう危険性を孕んでいる。
優秀な脚本(しっかりとしたキャラの性格付け、飽きさせないストーリー展開)と確かな演出が不可欠となるのだが、この作品の場合、特筆すべき長所はあまり見当たらないのだ、正直なところ。
脚本も、カメラワークも、役者の演技も、すべてが星「☆☆☆★(3.5個)」という感じ。
悪くはないが、「スゲー!」と驚くほどでもない。

しかし、脚本は特段の切れ味は無いものの丁寧で、セリフのテンポも良く、ストーリーに淀みが生じない。
演出も派手さは無いが、堅実。
ストーリー的にも凝った作りではないが、二転三転、タイミング良く話を転がして、ラストにさっとまとめるあたりは上手かった。
すごく凝った料理じゃないけど、「なんかこれ美味しいね」という感じ。

役者陣に関しても、世間で演技派として認知されているのは香川照之くらいなのだが、キャスティングの妙と言うか、それぞれの役者が演じやすい役割を割り当てられていて、それぞれの持ち味を十二分に発揮していたように思う。

まず、小栗旬はストーリーの進行役だが、「よく見ると実は二枚目のアイドルオタク」を無理なく演じていた。
演技に幅があるとは言い難いが、固いセリフと柔らかいセリフの使い分けは出来ており、特に、イジけて笑いを取るシーンではなかなかのコメディアンぶりも発揮した。
類型的な「若いイケメン俳優」という印象が強かったが、こうした自らにあった役をもらって、役者としてのポジションを上げるケースはよくあるので、今後に期待。
作中ではちょっと変わった髪形だが、他の二枚目俳優と差別化する為にも、なかなか良いのではないか。

周囲の会話を拾い、細かく笑いを取る役割に小出恵介。
演技は完成途上という印象だが、素材の良さを感じさせる。
この人も自分に合った役柄を割り当てられており、今後の活動にプラスとなったはず。
前半はやや過剰な演技が気になったが、ラスト近くの力を抜いた静かなセリフ廻しは良かった。

ユースケ・サンタマリアは“真下正義”系の演技。
ぶっちゃけ、この人の演技が上手いとは思えないのだが、ヘタウマみたいな感じで、「これはこれでいいか」と思えてきてしまう。
中盤におけるキーマンなのだが、この人も役柄とマッチしていて、演技の巧拙以上に、役柄とシンクロしていたように思う。
こうした役柄で評価を受けると、仕事には困らないだろう。

塚地武雅は、「そのまんま塚地やん」という役柄。
逆に「塚地以外だったら誰がやるのか」と想像しても、容易に想像がつかないほど。
『間宮兄弟』でも感じたことだが、「この役は塚地でいこう」と脚本の段階で決まっていたのではないかと思う(軽トラの前で農作業スタイルで立つスナップはハマりすぎ)。
以前に、「(自分は役者として)役柄を選ぶとかそういうレベルではない」と発言していたが、この人の場合、「これは塚地しかねぇだろ」的な感じでキャスティングされるケースが今後も多そうであり、こうした場合、当然本人にマッチした役柄が廻ってくるので、「俳優・塚地」としての仕事は順調に推移しそう。
演じられる役柄は狭いが(本業は芸人だし)、独特の味わいが熟成されていくと、「塚地って昔は芸人だったんだって」なんて言われる日が来るかも(そうなったら、芸人としての塚地が好きな自分としては複雑な心境だが)。

最後に、香川照之。
登場シーンで挙動不審な中年男を演じて、いきなり笑いを取れるあたりがスゴイ。
他のキャストとは異なり、「この役は彼にピッタリ」ではなく、「彼ならこの役をこなせるだろう」的なアプローチではなかったか。
前後半でキャラの位置づけが大きく変わる役柄なのだが、この人の場合、無問題。
確かな演技力を持つ役者さんだけに、仕事が途切れないのも頷ける(と思ったら、今度は舞台で藤山直美と共演との事、ホントに仕事の幅が広い)。
いつも感心するのは、必要以上に出過ぎない姿勢。
演技派と呼ばれる面々の中には、個性を強烈に押し出し過ぎて、作品のバランスを狂わせてしまう人も少なくないが、この人は本当に他の出演者の演技を邪魔しないと思う。

こうした作品の場合、「これって映画にする必要があんの?」という疑問も湧いてくるが、「それじゃこの作品をテレビドラマとしてゴールデンで流せるか」という疑問も湧いてくるワケで、こうした規模で上映される映画だからこそ拾える好企画なのだと思う。
ただし、元来が舞台向きであるのは間違いなく、今回のヒットを受けて、舞台化への期待も膨らむ(同じキャストならぜひ観てみたい)。

「笑わせ」、「考えさせ」、「泣かせる」は、娯楽としての映画の三大要素であり、特にラスト付近の「心地好く泣かせる」部分については、なかなか良かったように思う(脚本が『三丁目の〜』と同じ人と知って大いに納得)。

ただし、そうしたラストについても、二点ほど気になった点があったので、最後に指摘しておきたい。

.サラギ・ミキは最後まで「覆面」の存在であってよかったように 思う。
 最後の最後に素顔を露出させる必然性を感じない。

▲薀好箸離タダンスは、もっと動きを大きく、ダイナミックに。
 全員が動きを合わせる必要はないが、ホンモノのソレをコピー すれば、もっと面白いシーンになったはず。


「アイドルが好きだ・好きだった」という人が観ると、ラストの心地好さが20%増しになると思われます(ソースは私の実体験)。
それだけに、,鉢△ちょっと、ねぇ。
(最後の最後でこだわるのがココかよ!)

監督・佐藤祐市、脚本・古沢良太。