モルト侍

池袋のショット・バー、ジェイズバーのバーテンダーが、大好きなシングル・モルトを斬る。

2005年11月

最終決戦

本年最後の決戦が今週金曜に執り行われることとなった。
2005年1月から始まった刺客との闘いも今回で数えて12回目を迎える。これまでの結果は侍の2勝、刺客の9勝ということになる。いささか分が悪い。なんとしても今年最後の闘いに勝利して、3勝9敗、勝率を2割5分に持って行きたいところだ。

ぼんやりと何も考えていない刺客とは違い、こちらは毎日の猛特訓を重ねている。秘密の特訓なのでその内容はお知らせできない。トイレと布団の中とシャワーを浴びる時はイメージ・トレーニングもしている。負ける気がしねぇ、何てもんじゃない。負けない。

ご存知の方も多いと思うが、今回の闘いは先月までの闘いと若干方法が異なる。今までは刺客の手持ちのシングル・モルトを刺客が選びそれが問いとなっていたが、今回は特別に現在ジェイズ・バーで販売中の棚に存在するシングル・モルトを刺客がその場で選び、それが問いとなる。

ブラインド・テイスティングは本当に難しい。
弱音ではない。実感である。しかし、ジェイズ・バーにあるシングル・モルトであれば負けない。

今週は連載中の「一筆啓上、ダン・イーダン」はお休みをさせていただく。やはり少々ナーバスになっている。まるで筆が進まない。本当に申し訳ないのだが、ご勘弁を。

もしも侍が負けたら、結果が出る前に飲んだ飲み物代はすべて無料。
予定通り刺客が負けたなら、刺客の用意したパンダを皆さんに飲んでいただける。

このパンダ、凄いシングル・モルトです。

刺客殿にお願いがある。
当日は営業中である。ブラインド・テイスティングの問題を決めるのに時間がかかり過ぎては、こちらの業務に支障をきたすこととなりかねない。店内の従業員は荒木君ひとりしかいないのだ。
どのシングル・モルトを問題にするのかということに関して、主導権を握るのは刺客殿であるという前提は皆様了解済みのことと思う。であれば来店前にどれにするか予め心に決めておいて欲しい。そして侍が席を外した時に、「今回の問題は○○にしました」と切り出していただけないだろうか?その方がスムースにことが運ぶ。よろしくお願いしたい。
そしてもうひとつ。
刺客殿の心に決めたシングル・モルトを教えていただきたい。あくまでも予定として。そしてその予定を本日のブログのコメント欄に書き込んでいただきたい。もちろんあくまでも予定である。予定であるので当日変更は可能である。
どうだろう、刺客殿。侍の心を揺すぶってみないか?

侍を応援する方も、刺客を応援する方も、
こちらを応援していただきたい。
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「全員タダ」

さて、まだ12月にもならぬというのに、早速刺客より果し状が届いた。
今週の金曜日の午後10時、刺客はやって来る。
本年最後の決戦である。

前回の闘いの記事にも書いたが、侍が負ければ全員タダである。
しかし、刺客が負ければパンダである。
皆様には是非とも応援に来ていただきたい。
心よりお願いを申し上げる。

一筆啓上、ダン・イーダン(22)

ブログネタ
シングル・モルト に参加中!
昨日に続き「オフィシャルのスタンダード品」の話である。
オフィシャルな彼らは何某かの作為を持って1本のシングル・モルトを販売しようと思う訳である。とすれば、その瓶詰された1本のシングル・モルトにはその作為の結果が反映されているのではないだろうかというのが、僕が常に考えることだ。
「オフィシャルのスタンダード品」のシングル・モルトを1杯飲んで、「できる限り安価で、製品の質のバラツキが少なく、最大限彼らの思う蒸留所の個性が反映されていること」を感じられるなら僕は嬉しい。そのシングル・モルトの味わいが気に入ればなおさらだ。

「オフィシャルのスタンダード品」はシングル・カスクの商品ではない。シングル・カスクでないということは、いくつかの樽を混ぜ合わせ、その味わいは均一にされ瓶詰される。問題はどの樽を選ぶのかということである。彼らはどの樽を選んで混ぜ合わせるのかということに関して、その権利を持っている。そしてその結果1本のシングル・モルトがどんな味わいになるのかということに、その責任を持たなければならない。僕はそう考えている。

いくつかの樽の中身(ウィスキー)を混ぜ合わせるということは、裏を返せば意図的にその味わいを作ることも可能というである。似たようなこととして、いくつかの違う蒸留所のウィスキーを混ぜることでブレンデッド・ウィスキーは造られる。もちろんブレンデッド・ウィスキーは蒸留所が違うのみならず、グレーン・ウィスキーという原材料の違うものも混ぜられるし、混ぜるものの種類も豊富である。シングル・モルトの父、マイケル・ジャクソンはそれをオーケストラの奏でるハーモニーに例える。つまり良質なブレンデッド・ウィスキーは指揮者であるブレンダーの力に依るところが大きい。何を選び、どのように混ぜたら、どんな結果が出るのか。そのブレ幅は非常に大きいはずである。

ブレンデッド・ウィスキーほどのブレ幅はないにしても、同じ蒸留所内でも樽ごとにその味わいは違う。となればどの樽を選ぶかは重要なポイントなはずである。
あえて言わせていただこう。「オフィシャルのスタンダード品」であるなら、その味わいはむしろ意図的に造られるべきなのではないだろうか。彼らは彼らなりのポリシーを持ち、その出来上がりを予測し、樽を選ぶべきなのではないだろうか。
「できる限り安価で、製品の質のバラツキが少なく、最大限彼らの思う蒸留所の個性が反映されていること」。僕はそのポリシーを感じたい。そしてそれを感じられた時、僕は納得をする。

昨日お話したシングル・カスクの商品というものには、良くも悪くも潔さがある。
「この蒸留所の熟成庫から選んだ樽を瓶詰したので、この蒸留所のシングル・モルトであることに間違いはありません」。ということなのである。例えそれが「オフィシャルのスタンダード品」と似ても似つかないような味わいであったとしても、である。

もちろんそのような(例えば瓶詰業者の)シングル・モルトがあったとしても、そのことを悪く言うつもりはない。「おいしい」か「おもしろい」があればOKだというのが僕のスタンスだ。そのことがシングル・モルトの愉しみを広げてくれれば良いではないか。「オフィシャルのスタンダード品」の恩恵に十分に世話になっている僕ではあるが、良くも悪くも画一的な「オフィシャルのスタンダード品」ばかりでは確かにつまらない。

お願いいたします。
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一筆啓上、ダン・イーダン(21)

ダン・イーダンの側には彼らの思うオスロスク蒸留所のハウス・スタイルというものがあるのだと思う。彼らは価格の折り合う範疇でダン・イーダンのラベルを貼って瓶詰するオスロスクの樽を選んだのだと思う。彼らの思う「ハウス・スタイルに適ったカタチで素直においしいと思うシングル・モルト」。
それが適切に実現されているのがダン・イーダンのオスロスクであったというのが僕の思ったことである。そのことは前回書いた。僕はそう書いて実は困ったことになった。

「そんなの当たり前じゃないの?」。
読者の皆様にそう思われたらどうしようと。そう思ってしまったのである。

独立瓶詰業者の仕事を中心に昨今はシングル・カスクのシングル・モルトが商品の主流になりつつある時代である。シングル・カスクであるということが何を指すのか。シングル・カスクとはつまり単一の樽から瓶詰されたシングル・モルトのことである。
シングル・モルトという言葉は単一の「蒸留所」で蒸留されたウィスキーのみを使って瓶詰されたウィスキーを指す。つまり、他の蒸留所のウィスキーを混ぜてしまったらシングル・モルト・ウィスキーとは呼べなくなる。例えばグレンリベットとグレンフィディックを混ぜてしまったら、その瓶詰された商品はグレンリベットともグレンフィディックとも呼べない。カテゴリーで言えばシングル・モルトではなくヴァッテッド・モルトということになり、その瓶詰されたウィスキーには新たに商品名を付けざるを得なくなる。
しかし確かにシングル・モルトである以上、他の蒸留所のウィスキーを混ぜることはできないのであるが、自分の蒸留所のウィスキーなら混ぜ放題。ルールの上ではそういうことになる。多くのオフィシャルものの商品はシングル・カスクではない。オフィシャルな彼らは自社の熟成庫の中から適切に樽を選び、その中身のウィスキーを混ぜ合わせ、(多くの場合それに加水をして)、瓶詰を指示する。
僕の言うところの「オフィシャルのスタンダード品」に限って言えば、シングル・カスクの商品はない(あったら御免)。「オフィシャルのスタンダード品」にシングル・カスクと書かれていたり、樽番号が記載されていたことを僕は知らない。例えば、
これにも、
リベット12







これにも、
ロングモーン15







これにも、
タレット12







シングル・カスクとも樽番号も記載されていない。

確かに自分の蒸留所のウィスキーなら混ぜ放題なのであるが、彼らも手当たり次第に混ぜている訳ではない(はずだ)。例えば「12年熟成」と書かれていれば、中身は最低でも12年以上のものを使わなければならないということになっている。しかし、そんな細かいことはどうでもいい。肝心なのはその味わいである。

僕はかつてこの連載でウィスキーを瓶詰することに責任を持つ方たちにはポリシーを持っていただきたいということを申し上げた。ポリシーとは政策のことであり、それは意図を持ってボトルに詰められたシングル・モルトとしてカタチとなって現れる。
「オフィシャルのスタンダード品」に限って話を進めれば僕はそれを、
造り手とその所有者が「できる限り安価で、製品の質のバラツキが少なく、最大限彼らの思う蒸留所の個性が反映されていること」を目的に瓶詰めされている製品。
であると思っている。いやむしろ、そうであって欲しいと思っている。

だから僕は想像してしまうのだ。
何も彼らは闇雲に、手当たり次第に、瓶詰をする樽を選んでいるのではないだろうと。

是非ともお願いしたい。
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月曜日の出来事

先週月曜日の出来事を記事にした。
僕のもうひとつのブログ。池ブクログにアップした。
読む前にまずはこちら(人気blogランキング)を。
記事はこちらを。

一筆啓上、ダン・イーダン(20)

ダン・イーダン オスロスクさて、問題は僕がダン・イーダンのオスロスクに何を感じたのかである。それはまさに僕が感じた彼らのポリシーであり、僕の思う瓶詰に関する彼らの意図である。

彼らは何を考えどのような意図でダン・イーダンのオスロスクを瓶詰したのか?

昨日の繰り返しになるが僕が感じたダン・イーダンのオスロスクの特徴は何より「ちょうど良い麦の甘味」だ。麦の味わいに特徴があるという意味において、このダン・イーダンのオスロスクはオスロスク蒸留所のハウス・スタイルの範疇にある。「こんな味わいのオスロスクもあるのか?」という奇抜なオスロスクではない。これがオスロスクであること自体には何の不思議もない。

あえて言わせていただけるなら、すんなりと飲み易いシングルトンとクセっぽいが個性的な「花と動物シリーズ」のオスロスクのちょうど中間的な位置に存在するシングル・モルトだと思う。蒸留所の個性(つまり僕の思うところのハウス・スタイル)をしっかりと持ちつつ飲み易い。ちょうど良いのだ。凡庸なのではない。適切に中庸なのだ。ダン・イーダンのオスロスクを僕はおいしいと思う。

先日の記事の中で僕はウィスキーを瓶詰することに対して責任を持つ方たちに、「おいしいこと」か「おもしろいこと」をポリシーとして求めるということを申し上げさせていただいた。それが独立瓶詰業者であるならそのふたつが両立されていることをなおさらに望む。それがオフィシャルな方たちであるなら「あまり突飛なことはしなくとも」と言いたくなるというのが実は本音だ。

このダン・イーダンのオスロスクはそういう切り口で考えるならば、「おいしいこと」をポリシーに瓶詰されたシングル・モルトだ。もちろん「おいしい」とはいっても歩留まり感はある。あまりひどい言い方はしたくはないが、「そこそこおいしい」というレベルである。しかし、きちんとリーズナブルであることだけは申し上げておきたい。

例えばの話だが「吉野家の牛丼」にあなたはどのくらいのおいしさを求めるだろうか?
和牛の霜降り肉を求めるだろうか?
牛丼一杯の値段が¥2,000になってもあなたは「吉野家の牛丼」を食べるだろうか?
¥300でお釣りの来る幸せ。
「吉野家の牛丼」にはそれがないだろうか?
僕の言いたい「おいしさ」とはそういうことである。

話を戻そう。(今回は簡単に戻った)
僕がダン・イーダンのオスロスクに何を感じたか。僕の思う彼らのポリシーを語らせていただく。ダン・イーダンというブランドは、
「彼らの思うハウス・スタイルに適ったカタチで素直においしいと思うシングル・モルト」
なのではないだろうか。そんな意図を持って立ち上げられたのではないだろうか。
つまり、
「優先順位をおいしいことに置き、我々が解釈するハウス・スタイルに近い樽を選び瓶詰しました」
ということなのではないだろうか。

もちろんそれは、僕が感じたことではあるけれど。

一筆啓上、ダン・イーダン(19)

ダン・イーダン オスロスクさて、本日こそはついにダン・イーダンのオスロスクについて話を進めねばなるまい。

我ながら「くどい」と思わざるを得ないが、シングルトンと「花と動物シリーズ」のオスロスクについてもう一度記しておく。
シングルトンは微かなシェリーを伴うが、麦の味わいを軸に甘く柔らかいコクを持つライトなシングル・モルト。普通においしく、万人に受け、あえて言えばブレンデッド・ウィスキー的な要素を持っている。
一方、「花と動物シリーズ」のオスロスクは麦の味わいに軸を置くことは変わらないが、若干酸度が高くショウガに近い。ある種の固さを感じよりシャープな印象。シングルトンから「花と動物シリーズ」のオスロスクに推移したことで、よりクセっぽくなったと表現することは可能だが、それを指して「それこそが蒸留所の個性」と言うことも可能であろう。言うなればそれは非常にシングル・モルト・ウィスキー的である。

ラベルに表記がないので正確なところは不明としか言えないのであるが、ダン・イーダンのオスロスクは恐らくシェリー・カスクではない。色が薄すぎるのだ。ラベルにはカスクNo2550−2551とありそのふたつの樽を混ぜたことは明確であるが、色を見る限りそのどちらもシェリー・カスクではないだろう。

「オフィシャルのスタンダード品」がシングルトンから「花と動物シリーズ」のオスロスクへと推移した際、僕の思う変化とその違いのひとつはやはりシェリーの影響だ。シングルトンには微かとは言え確実にシェリーの影響を感じた。うるさ過ぎないそのシェリーの影響は全体のバランスを整えるのに非常に有効であったと僕は感じている。だからこそうまかったのだと思う。
「花と動物シリーズ」のオスロスクにはそのシェリーの影響を感じない。結果としてそうであるが故に僕はどうにも気に入らなかったのであるが、「花と動物シリーズ」のオスロスクはエグ味を増しよりクセっぽくなったというのが僕の感想だ。そのエグ味を指して僕はショウガのように感じる。
それではダン・イーダンのオスロスクはどうであろう。先ほども申し上げた通り、そこにはシェリーの影響を感じない。それではシェリーの影響を排除したオスロスクは不味いのか?実はそんなことはない。僕は非常に気に入っている。

ダン・イーダンのオスロスクのうまさのポイントは「麦の甘味」だ。麦の味わいに軸足を置いていること自体はシングルトンと「花と動物シリーズ」のオスロスクと同様である。いずれにしても麦っぽいシングル・モルトが出来上がってしまうというのは、それこそオスロスク蒸留所のハウス・スタイルなのだろう。確かにフレッシュで固さのあるシングル・モルトだ。しかしネガティブな意味でシャープではない。程度の良い「麦の甘味」を背景に好印象を持って若さがあるといえる。キッチリと個性を感じるがクセっぽくはない。それどころか僕はこのダン・イーダンのオスロスクに素直ささえ感じた。

うまい。もちろんそれ以上にうまいシングル・モルトはそれこそいくらでもある。唸るほどうまいシングル・モルト。叫びたくなるほどにうまいシングル・モルト。そういうものにも時々出くわす。ダン・イーダンのオスロスクがそれほどにうまいとも思わない。けれど「ちょうど良い」シングル・モルトなのだ。しっくり来るシングル・モルトなのだ。だって何しろ安い。「花と動物シリーズ」のオスロスクの半額くらいで買えるのではないだろうか?シングルトンのように微かなシェリーの影響こそ感じないものの、そのちょうど良さとしっくり来る感じは僕の中でシングルトンのようでもある。正直にいわせていただけるなら、ダン・イーダンのオスロスクに僕は懐かしさすら感じたほどだ。

初めてこのダン・イーダンのオスロスクを飲んだ時、僕はピンと来てしまったのだ。僕は思いを巡らせてしまったのだ。「この1本のシングル・モルトはどんなポリシーで瓶詰されたのだろう?」。

僕の中でその答えはすぐに舞い降りて来たのだ。

ここのところ、熱いです。
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明日へと続く。

一筆啓上、ダン・イーダン(18)

オスロスク3本我々消費者の手に届く最終的な製品のカタチとして1本のシングル・モルトはある。
その品質に関して誰が責任を負うのか問われるならば、それは「それを瓶詰したもの」というところに辿り着くのは自明の理であろう。それほどまでに樽の中で幾年もの間熟成されたウィスキーを瓶詰するとは重要なことである。

それではどのような人がその瓶詰の責任を負うのかと問われれば、それは大きく分けて2種類ということになる。まずは何よりオフィシャルな方たち。中身であるシングル・モルト・ウィスキーを造った蒸留所に関係する人たち。ごく普通に考えればそれは蒸留所の所有者ということになる。それらの製品はいわゆる「オフィシャルもの」として販売される。「蒸留所元詰め」という言い方をされることもある。余談だが、彼らの瓶詰した製品がいくつかのラインナップを揃えている場合(例えばグレンファークラスなら、10年、15年、17年、25年、105プルーフなどが揃えられている)、その中で一番廉価で販売され市場で数多く流通しているものを僕は「オフィシャルのスタンダード品」と言っている。
そしてもう一方は今回の連載で取り上げているブリストル・スピリッツ社を含めたたくさんの独立瓶詰業者である。彼らはシングル・モルトを瓶詰することを生業としている。そもそも彼らがそれを生業とできる背景には、ほとんどの蒸留所が自らの蒸留所内に瓶詰の設備を持たないという事情が大きく影響している。現在、自ら瓶詰の設備を持つ蒸留所はグレンフィディック、スプリングバンク、ブルイックラディの3つである。シングル・モルトを飲みたい僕らと瓶詰の設備を持たない蒸留所の隙間を瓶詰業者が埋めてくれているところから彼らの仕事は始まったのであろう。

数多くのシングル・モルトが瓶詰され、大陸の反対側の島国である英国からその反対の島国である日本に届き、酒屋の店頭に並び、僕らはそれらを購入することができる。オフィシャルにしろ瓶詰業者にしろ、彼らは僕らに多くの選択肢を提供してくれている。

勝手なことを言い過ぎなのではないかという叱責は免れないであろう。思慮の足りなさ、無礼非礼の数々を省みず、やはり僕はひと言申し上げさせていただく。

僕は彼らに求めてしまうのである。
オフィシャルにしろ瓶詰業者にしろ、シングル・モルトを瓶詰することに責任を持たねばならない人に求めてしまうのである。

あなたたちには、ポリシーを持っていただきたい。
そして、僕はそれを感じたい。

酒なんてものはそもそもがそうであるし、シングル・モルトであればなおさらのこと嗜好品である。人は栄養を摂取することを目的に酒を飲まない。酒は人間の快楽のためにこそ存在するべきである。

彼らは何を思いこのウィスキーを作ったのであろう?
グラスの底を見つめながら、僕は問い掛ける。
その答えの見つけられた時、そこには快楽がある。

シングル・モルトの快楽とは何であろうか?
それはひとつ目に「おいしいこと」である。
そしてふたつ目に「おもしろいこと」である。

もちろん「安いこと」も快楽に他ならないが、「安いだけ」であるならシングル・モルトである必要はないのかもしれない。しかし、「安いこと」は不要ではない。大切ですらある。だから僕はシングル・モルトに妥当という意味においての「リーズナブル」をも求める。

シングルトンとオスロスクシングルトンと「花と動物シリーズ」のオスロスク。
その両方を僕はオスロスク蒸留所のそれぞれの時代の「オフィシャルのスタンダード品」と解釈している。そして僕はそのふたつの製品に所有者である彼らのポリシーを感じている。実はそのことを先週書いた。

シングルトンは微かなシェリーを伴うが、麦の味わいを軸に甘く柔らかいコクを持つライトなシングル・モルト。普通においしく、万人に受け、あえて言えばブレンデッド・ウィスキー的な要素を持っている。

彼らはシングルトンを「おいしいこと」をポリシーとして造った。

一方、「花と動物シリーズ」のオスロスクは麦の味わいに軸を置くことは変わらないが、若干酸度が高くショウガに近い。ある種の固さを感じよりシャープな印象。シングルトンから「花と動物シリーズ」のオスロスクに推移したことで、よりクセっぽくなったと表現することは可能だが、それを指して「それこそが蒸留所の個性」と言うことも可能であろう。言うなればそれは非常にシングル・モルト・ウィスキー的である。

彼らは「花と動物シリーズ」のオスロスクを「おもしろいこと」をポリシーとして造った。

もちろんそれは僕の勝手な話である。しかしそれはひとつの解釈であり、それは僕なりの切り口である。僕の中ではそんなことがシングル・モルトを飲むことを「おもしろく」している。自分なりの切り口を持つこと。それは誰にでもできることで、より十分に愉しもうと思うなら大切なことである。

さらに言わせていただけるなら、シングルトンは「おいしいこと」をポリシーに造られ、ある程度の評価を受け、市場でセールスを伸ばした。時代は変わり、人々はシングル・モルトに個性を求め始めた。シングルトンのおいしさは凡庸と受け止められ、個性が足りないと判断された。個性的であること、つまり「おもしろいこと」をポリシーにオスロスク蒸留所のシングル・モルトを瓶詰しようと彼らは考えた。その結果が、「花と動物シリーズ」のオスロスクなのではないだろうか?
ついでに言わせていただこう。彼らの「花と動物シリーズ」のオスロスクに対するその企ては失敗に終わったのではないだろうか?「花と動物シリーズ」のオスロスクより個性的でおもしろいシングル・モルトはたくさんある。オスロスク蒸留所の範疇で「おもしろい」と言っても、そこには限界があるのではないだろうか?
少なくとも僕はシングルトンにおもしろさを求めない。

さて、僕は昨日の記事をこう締めくくった。
瓶詰業者の仕事とは何であろうか?

もちろんそこにはまだ辿り着いてない。
ダン・イーダンのオスロスクを持ち出して明日はそこへと斬り込んで行きたい。
あくまでも予定だが。

順位を確認してください。
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一筆啓上、ダン・イーダン(17)

ダン・イーダン オスロスク彼らはそんな意図を持ってシングルトンと「花と動物シリーズ」のオスロスク、そのふたつのシングル・モルトを世に送り出したのではないだろうか。そのふたつのシングル・モルトを生み出した背景は異なる。ラベルのデザインが大きく変わったことはそのことを何より象徴しているかもしれない。それは所有者の変更を物語っている。時代が変われば世の中も変わる。
シングルトンはブレンデッド・ウィスキーのように飲み易いだけで個性が足りないと彼らは判断したのかもしれない。新たに瓶詰し出荷する「花と動物シリーズ」のオスロスクは、少々クセっぽく飲みづらくともシングル・モルトらしい個性が必要であると彼らは判断したのかもしれない。

もちろんそれらのことは僕の感想の域を出ない。しかし、シングルトンから「花と動物シリーズ」のオスロスクへという推移は、少なからず僕をがっかりさせたことは事実だ。かといって、僕がどれほどシングルトンを大切にしていたのかというと、それもまた申し訳ないという気になるしかないのだが。「普段飲みの手軽なシングル・モルト」、それこそがシングルトンの強みでもあるのだから。

そんな経緯があり僕はダン・イーダンのオスロスクを飲む機会に恵まれる。その時のことは以前にも記事にした。ひと言で言ってしまえば、ダン・イーダンのオスロスクを飲んだ時に僕は「ちょうど良い何か」を感じたのである。「ちょうど良い何か」を簡単に説明をすると「個性としての飲み易さ」である。

前回の記事で僕はシングルトンをこう説明している。
微かなシェリーを伴うが、麦の味わいを軸に甘く柔らかいコクを持つライトなシングル・モルト。普通においしく、万人に受け、あえて言えばブレンデッド・ウィスキー的な要素を持っている。
一方、「花と動物シリーズ」のオスロスクをこう説明している。
麦の味わいに軸を置くことは変わらないが、若干酸度が高くショウガに近い。ある種の固さを感じよりシャープな印象。シングルトンから「花と動物シリーズ」のオスロスクに推移したことで、よりクセっぽくなったと表現することは可能だが、それを指して「それこそが蒸留所の個性」と言うことも可能であろう。言うなればそれは非常にシングル・モルト・ウィスキー的である。

僕が「ちょうど良い何か」、「個性としての飲み易さ」を感じたダン・イーダンのオスロスクはある意味シングルトンと「花と動物シリーズ」のオスロスクの中間に存在している。

カスクNoトータル・ボトルダン・イーダンのオスロスクはシングル・カスクの商品ではないのだが、ラベルにカスクNo2550−2551とあり、ボトルの中身がそのふたつの樽に限定された商品である。つまりシングル・カスクにより近い。瓶詰されたボトルの総数は695本しかない。
オフィシャルのスタンダード品は一般的にシングル・カスクではなく、シングル・カスクでないことがどのような意味を持つのかは以前こちらに記事にした。簡単に言ってしまうと商品の味わいを意図して作ることが可能であるということだ。そして造り手の意図がどの辺にあるのかという問いに対する僕なりの勝手な答えは先ほどの通りだ。さらに「花と動物シリーズ」のオスロスクへと推移したことが僕は気に入らなかったとも言わせていただいた。

あえて言わせていただこう。
シングルトンは意図的に飲み易過ぎたのかもしれない。おいしかったけど、つまらなかったのかもしれない。「花と動物シリーズ」のオスロスクは意図的に個性があり過ぎたのかもしれない。面白いシングル・モルトではあるけれど、クセっぽいのかもしれない。ダン・イーダンのオスロスクはその間に立っている。

瓶詰業者の仕事とは何であろうか?
熟成10年前後のダン・イーダンというブランドのシングル・モルトを飲んで僕はいろいろと考えることが多かった。

お願いします。
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一筆啓上、ダン・イーダン(16)

オスロスク3本予めお断りをしておかなければならないかもしれない。本日はオスロスク蒸留所の2本のシングル・モルトである、シングルトンと「花と動物シリーズ」のオスロスクについて記事を書こうと思っている。その2本のシングル・モルトについて、その味わいの違いがあることを前提として話を進めていく。
もちろんその味わいの違いとはあくまでも僕の「感想」の域を出ない。もしもあなたの「感想」と相違があったとしても、むしろそれは当然のことで僕は特に困らない。あえてひと言面倒なことを言わせていただけるなら、僕がそのふたつのシングル・モルトを見詰める視座が、その違いを際立たせてしまうということはあるのだと思う。

シングルトンがオスロスク蒸留所のオフィシャルのスタンダード品として出荷されていたのは恐らく2002年頃まで。蒸留所の所有者の変更に伴い、それ以降「花と動物シリーズ」のオスロスクがオフィシャルのスタンダード品としてリリースされ始めたといって良いだろう。

シングルトンは微かなシェリーを伴うが、麦の味わいを軸に甘く柔らかいコクを持つライトなシングル・モルト。普通においしく、万人に受け、あえて言えばブレンデッド・ウィスキー的な要素を持っている。
一方、「花と動物シリーズ」のオスロスクは麦の味わいに軸を置くことは変わらないが、若干酸度が高くショウガに近い。ある種の固さを感じよりシャープな印象。シングルトンから「花と動物シリーズ」のオスロスクに推移したことで、よりクセっぽくなったと表現することは可能だが、それを指して「それこそが蒸留所の個性」と言うことも可能であろう。言うなればそれは非常にシングル・モルト・ウィスキー的である。

蒸留所のオフィシャルのスタンダード品というのは、造り手とその所有者が「できる限り安価で、製品の質のバラツキが少なく、最大限彼らの思う蒸留所の個性が反映されていること」を目的に瓶詰めされている製品なのではないだろうか、というのが僕の思うところだ。
繰り返すが、つまりその目的を適えるための条件は3つ。
1.できる限り安価であること。
2.製品の質のバラツキが少ないこと。
3.最大限彼らの思う蒸留所の個性が反映されていること。
1,2は彼らが蒸留所の所有者であることが有利な条件となる。当然彼らの企業努力に負う部分も大きいはずだが、豊富な在庫を保持しているという事実は見逃せない。

僕が注目するのは3である。「最大限彼らの思う蒸留所の個性が反映されていること」。ポイントは「彼らの思う」蒸留所の個性である。つまりそこには彼らの解釈する蒸留所の個性があるのだろうし、彼らが蒸留所のオフィシャルのスタンダード品を瓶詰しようと思った際には何がしかの意図が存在するのではないだろうか。というのが僕の推論だ。彼らは彼らの思いに沿ったカタチでその味わいをまとめるのではないだろうか。

僕はシングルトンと「花と動物シリーズ」のオスロスクからそれぞれに彼らの意図を感じてしまう。そこに存在するポリシーをひと言で説明すると、
シングルトン・・・飲み飽きず、飲み易く、よりブレンデッド・ウィスキー的なシングル・モルト。
「花と動物シリーズ」のオスロスク・・・クセはあるが個性的、よりシングル・モルト・ウィスキー的なシングル・モルト。

彼らはそんな意図を持ってシングルトンと「花と動物シリーズ」のオスロスク、そのふたつのシングル・モルトを世に送り出したのではないだろうか。そのふたつのシングル・モルトを生み出した背景は異なる。ラベルのデザインが大きく変わったことはそのことを何より象徴しているかもしれない。それは所有者の変更を物語っている。時代が変われば世の中も変わる。
シングルトンはブレンデッド・ウィスキーのように飲み易いだけで個性が足りないと彼らは判断したのかもしれない。新たに瓶詰し出荷する「花と動物シリーズ」のオスロスクは、少々クセっぽく飲みづらくともシングル・モルトらしい個性が必要であると彼らは判断したのかもしれない。

明日へと続く。

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一筆啓上、ダン・イーダン(15)

オスロスク3本僕は「花と動物シリーズ」のオスロスク(写真中央)が好きにはなれなかった。
「花と動物シリーズ」のオスロスクが世に出る前、オスロスク蒸留所のシングル・モルトと言えばシングルトンだったのである。シングルトンに対する僕の評価は高い。麦の味わいを軸に甘く柔らかいコクを持つライトなシングル・モルト。さらには微かなシェリー。「凡庸」と言われがちであろうことは否めないが、「普通においしい」シングル・モルト、それがシングルトンであると思う。

「一筆啓上、ダン・イーダン(2)」
の記事の中でも申し上げているのだが、「花と動物シリーズ」のオスロスクに関して僕は伊かのように評価を下している。
「花と動物シリーズ」のオスロスクは若干酸度が高くなった気がする。その酸味を捉えて「フルーティである」と言えなくもないが、僕の感覚で言えばその酸味は 「ショウガ」に近い。悪い言い方をすれば「エグ味が強く、固くなった」という印象である。そして何より「花と動物シリーズ」のオスロスクにはかつてシングルトンに存在した「微かなシェリー」を感じない。

「一筆啓上、ダン・イーダン(8)」
の記事の中で僕はこう申し上げている。
オフィシャルもののスタンダード品にこそ、その蒸留所の個性は現れるのではないだろうか。そして、僕の思う優秀なオフィシャルもののスタンダード品とは、その蒸留所の個性をしっかりと反映した味わいを持ち、しかも比較的安価でいつでも入手可能なシングル・モルトであることである。と。

また、「一筆啓上、ダン・イーダン(9)」の記事の中では、オフィシャルのスタンダード品にはバラツキが少なく、その蒸留所の個性をしっかりと反映した味わいを持ち、しかも比較的安価でいつでも入手可能なシングル・モルトであるために、それは人工的なのではなく、ある種の意図を持って作られているのではないだろうか。といわせていただいた。

話を戻そう。
かつてのシングルトン(写真左)。これは僕のいうところのオフィシャルのスタンダード品である。そして、「花と動物シリーズ」のオスロスク(写真中央)。こちらも同様にシングルトン亡き後のオスロスク蒸留所のオフィシャルのスタンダード品といってもいいだろう。
そしてそれらがオフィシャルのスタンダード品である以上、その味わいにはコンセプト、ある種の意図があるのではないだろうか?それこそが僕の推察するところである。
その販売されていた時期こそずれるが、同一の蒸留所からラベルのデザインのまるで異なるオフィシャルのスタンダード品が市場に出てきた訳である。そのふたつに味わいの違いがあるのなら、そこには意図を感じざるを得ない。そしてそのふたつに味わいの違いを感じた以上、僕はその意図の違いについて思いをめぐらせてしまう。

続きは明日。
是非とも順位のご確認を
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ごめんなさい。

どうやら風邪を引いてしまったようです。
今日の記事はおやすみをさせていただきます。

店には出勤をいたします。
本日はサッカー。キリン・チャレンジ・カップ、日本VSアンゴラ。
もちろんやります。TV観戦。
7時より営業。

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一筆啓上、ダン・イーダン(14)

長らくお待たせいたしました。およそ2週間ぶりの連載再開である。軽くおさらいをしておこう。
この連載で取り上げているのはブリストル・スピリッツ社のダン・イーダンというシリーズ。そのすべてが、という訳ではないが、多くの商品は熟成年数10年前後、アルコール度数を46度に加水され、比較的手頃な価格で瓶詰され販売されている。
このブランド全般に亘ってある種のポリシーを感じることがあり、そのことを記事にしようと思っている。そして僕の飲んだダン・イーダンについて、ひとつづつ記事にして行こうと思っている。

前回はオスロスク蒸留所のシングルトンという商品について話をした。今は終売となった商品だ。僕はシングルトンをこんな風に説明させていただいた。

ブレンデッド・ウィスキーを飲み慣れたお客さんにも飲み易く、強烈な個性を売り物にしたシングル・モルトではなく、「微かなシェリー」を説明すればシングル・モルトの個性をも理解してもらい易く、好景気を背景に「他人とはちょっと違うウィスキー」を求めていた人に受け入れられたウィスキー。それがシングルトンではなかっただろうか。

シングルトンは80年代後半から90年代にかけて、そこそこのセールスを上げたシングル・モルト だ。シングル・モルトは個性的に過ぎると思われていた時代に、飲み易さとあり過ぎると思われない程度の個性を発揮していた。

2003年頃からシングルトンはゆっくりと市場から姿を消す。飲み易いことは悪いことではないが、シングル・モルトとしてはいささか個性がなさ過ぎる。時代は移り変わりシングルトンにはそんな評価が下されていたのではないだろうか。僕はそう解釈している。

シングルトンを世に送り出していたオスロスク蒸留所は、現在ディアジオ社傘下に収まる蒸留所だ。ディアジオ社はかつてのUD社所有の多くの蒸留所を受け継いでいる。UD社については以前そのブランドのひとつである「クラシック・モルト・シリーズ」を取り上げ記事にしたことがある。UD社は他にもいくつかのブランドを持っていた。そのひとつが「花と動物シリーズ」である。その始まりは純粋にその地方でのみ販売することを目的に立ち上がったブランドのようだが、時代とともにその数を増やしていった。

「花と動物シリーズ」はディアジオ社になった現在も受け継がれ多くの蒸留所から商品を出している。シングルトンが市場から姿を消すよう決定が下されたあと、オスロスク蒸留所のシングル・モルトは「花と動物シリーズ」として市場に登場する。

シングルトン亡き後、蒸留所の所有者がブランド力のある「花と動物シリーズ」のラインナップのひとつとしてオスロスクを売り出す。このことはシングルトンの正当な後継者に「花と動物シリーズ」のオスロスクを指名した。それこそは蒸留所の所有者の意思であると思っても良いのではないだろうか。

そして僕はそのことが気に入らなかったのである。

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闘いの行方(5)

侍は正解であるカーデュを最初に選んだ。それは間違いではなかった。無反応なお客さんに不安になり、刺客のひと言にとどめを刺される。
「侍は何をやっているんですかね?来月の対決は勝ちだな」。

一口飲んだ瞬間、ひらめきは舞い降りたのである。「このぼんやりした感触はカーデュ」、「「カーデュが間違いであったとしてもCに属するシングル・モルト」、「ダルウィニーである可能性は否定できないがジェイズ・バーの棚には存在しない」。
そんな背景から迷わずカーデュ選び、手に取りカウンターの上に置いたのだ。

不安、疑念、孤独、それらの感情は人を悪い方へと押し流していく。ひと通りボトルをカウンターの上に並べたあと、もう一度確かめるように一口、グラスを口に運んだ。自分でも驚くほどピーティだったのだ。信じられないほどピートを感じてしまった。

不安に煽られ侍は暴走する。思考はより短絡的に傾く。
「ピーティ」→「アイラ・モルト」→「アイラ・モルトでぼんやり」→「ブルイックラディ」。

思わず侍は口に出す。今思えばその瞬間に闘いは終わった。
「ピートって何だっけ?」。

シングル・モルトの父、マイケル・ジャンクソンの著作からカーデュに関わる記述を引用させていただく。
「フィニッシュ:シロップのような甘さが長く残る。しかし、ほのかなピート香をともなう。まろやかなドライさに変化する、ただしこれもまた微かではあるが。」

闘いの翌日、カーデュを一口飲んでみた。確かにピートを感じる。しかしそれは父も指摘するとおりあくまでも「ほのか」だ。
不安に煽られ、確認を急ぎ、思考はより短絡に傾き、判断を間違える。
侍は解答をブルイックラディとした。それは合理的な推論の結果ではない。


ブルイックラディ旧ブルイックラディ新ジェイズ・バーには新旧2本のブルイックラディがある。古い方のブルイックラディはぼんやりしたシングル・モルト。しかしそのぼんやりの背景にあるのはダシの要素である。僕はかつてのブルイックラディを「塩味の効いていないお吸い物」に例える。そんな意味でのぼんやりなのだ。対照的に現行のブルイックラディは「しっかりと味の決まった」シングル・モルトである。ダシもある。塩味もほど良い。薬味にピートもちょうど良い。お吸い物に例えればそんな味わいなのである。
ダシの要素を排除して考えれば、その新旧2本のブルイックラディの中間的なところにカーデュは存在している。しかし、その中間の1本のシングル・モルトは存在しない。
カーデュと答えれば正解は棚に1本しか存在しない。ブルイックラディと答えればそれは棚に2本存在する。ブルイックラディと答えれば「確率は倍」。その時の侍の中にそんな思いは確実に存在していた。ゆっくりと大きくなる危機意識は侍に「逃避」を選択させた。侍が逃げ込んだ場所は袋小路だったようだ。

いつもそうだ。闘いの最中は非常に不安で、そしてとても孤独だ。
プロフェッショナルとして正解を探り当てたい。正解に近付きたい。少なくとも恥ずかしい間違いはしたくない。
芸人として楽しんでいただきたい。「愉しいシングル・モルト」、それこそは僕の訴えたいことだ。

けれど、その狭間でいつも揺れる。
当てる自信なんてない。集まってくれた人には楽しんでもらいたい。しかし、今の侍にその器量はない。
先週の金曜日、雨にやられて午前3時。お客さんは鶴さんだけになった。ちょっと遊んでみようと思い、鶴さんと荒木君に問題を出してもらった。彼らが選んだのはグレンフィディック。これはキッチリと当てた。素直に直感を信じた。ひらめきを信じる。今さらながら大切なことである。ジェイズ・バーの棚にあるシングル・モルトであるならなおさら。
侍の敵は刺客のみではない。敵は己の中にこそある。

「闘いの行方」、この連載は随分と長いものになってしまった。今回のこの連載は、正直に言えば自分のために書かせていただきたいという思いが強かった。読者の皆様には迷惑な話だったかもしれない。ご勘弁を。来月は己に克つ。そして勝負に勝つ。

募集中

ブクログに記事を書いた。
10人ほど人を集めてあることをしようと思っている。
記事の中の「その3」である。
定員は10名。
今のところ未定であるが、先方と都合が合えば決行予定。
興味のある方は来店時に声をかけて欲しい。

闘いの行方(4)

侍が店を出ている間に刺客は棚の中から1本のシングル・モルトを選ぶ。侍が店に戻るとグラスに注がれた1杯のシングル・モルトが用意されている。そこまでは普段の闘いと変わらない。今回違うのおにぎりがないところ。いくら侍とて短い時間に2個のおにぎりは食えない。気持ちを落ち着ける間もなく勝負は始まった。

ひと口飲んでみる。口の中で非常にぼんやりした印象だ。恐らく、間違いなく、Cに属するシングル・モルトだろう。繰り返しで申し訳ないがもう一度A,B,C,Dについて説明しておこう。
A:アイラ・モルト
B:アイランズおよびキャンベルタウン、ハイランド・スペイサイドの沿岸部の蒸留所
C:ハイランド・スペイサイドの内陸部の蒸留所
D:ローランド・モルト

この4つの中で言えばCの蒸留所。可能性としてDであることも考えられなくないが、少なくともA,Bである可能性はない。ダシの要素を感じないのだ。

言い訳にもならない話をひとつ。
この時点で実は侍は答えをカーデュと読んでいた。もちろんカーデュはCにカテゴライズされる。Cの中のカーデュというより、恐らくカーデュであるだろうが、Cに属することに間違いはないだろう。そう、予測していた。そして正解もカーデュ。

正直、侍はいい気になっていた。直観的にカーデュであろうとの判断が舞い降りた。はやる気持ちを抑えて合理的に推論を組み立ててもCの中の蒸留所、恐らくカーデュであろうとの結論にも達した。ついさっきの負けを帳消しにできるほどの勝利を収められるはずだ。「刺客の首、獲ったり」。そうとすら思っていた。勝利は今、侍の手の中にある。正解を当てるついでに、ひとつ話をさせていただこうか。そんな風に思っていたのだ。

Cに属する蒸留所の数が多いことは一昨日も記事にした。故にその中からひとつの蒸留所を絞り込むのは非常に困難であるとも。しかし、こちらもまるで無策である訳ではない。判断をする基準はいくつかある。侍の中でその基準の中心になるのは「麦」か「フルーツ」かということ。そのどちらに軸足を置いているか。
当たり前であるがシングル・モルトの原材料は麦である。ほとんどのシングル・モルトに麦の味わいはほぼ間違いなく存在する。そこにどの程度フルーツのニュアンスを重ねて感じるか。それがポイントになる。ここでいうフルーツとは基本的には柑橘系のフルーツのこと。つまり、レモンとかオレンジとか、そのようなニュアンスを嗅ぎ取れるかどうかが重要なのである。
スペイサイド・モルトに的を絞って説明をさせていただく。まず、スペイサイド・モルトの中で柑橘系のフルーツのニュアンスを感じてしまうものを紹介しよう。

 グレンリベット…熟成の若いものは酸度が高くレモンに近い味わい。熟成を重ねればより甘味を増し、その味わいもオレンジに近くなる。
 ロングモーン…オフィシャルの15年は例外的に麦芽系。しかしそこにフルーツの味わいが乗りバランスの良さを表す。ボトラーズものは辛味を中心に切れ上がりの良い爽やかなフルーツの味わい。
 グレンロセス…オフィシャルの1992ヴィンテージから軸足を麦芽系に移した感があるが、それより以前のものはオレンジ。
 ストラスミル…全般的にオレンジ。熟成を重ねるとそのオレンジがより熟すようになる。さらには甘味と苦味が増しドライ・フルーツのよう。

他にもいくつかあるが、これらは相対的にフルーツに軸足を置いたシングル・モルトであると侍は考えている。
それでは麦芽系のシングル・モルトとはどんな蒸留所であろうか?

 クラガンモア…品の良い複雑さを感じる。さまざまな要素を感じるが基本的に麦芽。しっかりとした芯の固さを感じる。
 グレンフィディック…麦芽系でしっとりと柔らかいシングル・モルト。熟成を重ねると甘味がより複雑になるのが特徴。
 グレン・マレイ…しっかりと麦芽系。熟成の若いものはショウガのようなニュアンス。熟成を重ねると甘味と柔らかさを増す。
 オスロスク…軽快さが身上であるが軸足は麦芽系。シングルトンは若干のシェリーを感じるため例外的。酸味はあるがフルーティというよりショウガのよう。
 カーデュ…ライトでスムースであるがその味わいはしっかりと麦芽系。程度の良い甘味がとても心地良い。飲み易く飲み飽きない。ただし、ぼんやりではある。

正解がカーデュであろうことは予測できた。カーデュはスペイサイド・モルト。侍の区分ではCに属するシングル・モルト。解答をする前に、その中でも同様に麦の特徴を持つシングル・モルトを並べて軽く解説を施してみようか。そんなことを思っていたのである。いい気なものである。
クラガンモア、グレンフィディック、グレン・マレイ、オスロスク、カーデュ。先ほども紹介したその5本を取り上げて話を進めればちょうど良いのではないか。そう思っていたのである。その5本のシングル・モルトをカウンターに並べて説明をしよう。

侍は手にしたグラスをカウンターの上に置きおもむろに棚に近づく。まず手にしたのは正解と思ったカーデュ。カウンターの上に置く。しかし、その時の店内の冷ややかな反応に正直なところちょっとびびった。「あれ?もしかしたらカーデュは正解じゃない?」、そう思ってしまったのである。店を出て、戻って来て、いきなりひと口飲んで、5分も経たずに選んだ最初のボトルがカーデュ。もうちょっと、何か、こう、「おぉぉ!」とか言ってくれても良いんじゃないかな、なんて思っていたのだが。
いや、間違っているはずはない。そう、説明を施すためにカウンターの上にボトルを並べようと思っていたのだ。臆することはない。残りの4本を並べよう。次に手にしたのがグレンフィディック。カーデュの隣に並べる。次はグレン・マレイ。グレンフィディックの隣に。とその時、刺客がつぶやく声が聴こえた。
「侍は何をやっているんですかね?来月の対決は勝ちだな」。
侍はその瞬間、ほんの僅かな時間であったが意識を失った。

続きは来週。

さて、本日もアジアシリーズにつき7時より営業。
うなぎを食べに来て下さい。

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お知らせ ふたつ

ハラキリ 11月本日はお知らせをふたつ。昨日の続きは申し訳ないが明日になります。

まずは皆様お待ちかね、今月のハラキリ・モルトのご紹介。
写真を良くご覧頂きたい。ウィスキー・エクスチェンジのグレンタレットである。この面構え、見覚えのある方も多いと思う。今年の4月のハラキリ・モルトでクライネリッシュをご紹介した。非常に好評であった。
今回のこのグレンタレットもサンプルを少し飲んだが、うまい。¥1,200はお買い得。是非お試しを。
写真を良く見ていただくとそのグレンタレットの後ろにもう1本隠れているボトルがあるのがお分かりだろうか?
そう、クライネリッシュである。こちらはハラキリではない。そのうちショット売りで出します。

ふたつ目のお知らせ。
本日はアジアシリーズ第一戦。ロッテVS韓国のサムスン・ライオンズ。
もちろんTV観戦予定。
当然うなぎ付き。7時より営業を開始します。
うなぎを食べたい方は7時半までに電話を下さい。

お待ちしております。

皆様のご協力を
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闘いの行方(3)

11月の対決の勝敗は決した。侍、惜しくも敗れる。
パンダを賭けた争いも来月12月、あと一回を残すのみとなった。

どうやら刺客には事前に決めた思いがあったらしい。
「来月の闘いなんですが、ジェイズ・バーにショット売りで置いてあるシングル・モルトを使うってことでどうでしょうか?」

なめられたものである。「ここにあるものなら、全部当てられる」。口にこそ出さなかったが、言われた途端に強くそう思ってしまった。その侍の思いは結果として自らの首を絞めることになるかもしれない。
今までの闘いは刺客が刺客の手持ちのシングル・モルトを、つまり侍の知らないところで知らない選択肢の中から選んでくる。ジェイズ・バーの棚に存在するシングル・モルトであるなら、すべて侍が飲んだことのあるシングル・モルトであるはずである。「飲んだことがないから」、とは言わせない。刺客が言いたいのはそういうことなのであろう。
そうまでして侍を貶めたいか!そうまでして侍に恥をかかせたいか!
よろしい、受けて立とう。

予想外な提案に侍は少し興奮していたのかもしれない。少しいい気になっていたのかもしれない。
刺客がそのつもりなら、侍も腹を括ればならぬ。
「そうまで言うのであれば、そちらからも何か提案をしろ、こちらもそれを飲む」。
しばし考え込む刺客である。
「分かりました。その日に来ていただいたお客様の飲み代半額って言うのはどうでしょう」。やり取りを見つめるお客様からため息が漏れる。
そう来るか。ならば必殺「倍返し」である。
「ぬるい!タダにしてやる!」。お客様のため息も倍である。

「いいんですか?」
「よろしい」

やっちゃったかもしれない。不安である。
確かに「やっぱりやめた」とは言えませんよね。ですな。
侍の大好きなビックカメラでさえ「100人に1人タダ」、であるが、ジェイズ・バーの侍は凄い!「全員タダ」である。12月の闘いの日取りはまだ決まっていない。恐らくまた12月の初旬。時刻は午後11時前くらい。勝敗が決するまでに飲んだ飲み物の料金は、侍が負ければ「一切頂かない」。

来月の闘いの段取りは整った。後は待つのみである。
何やら刺客が不敵な笑みを浮かべている。
「来月の予行演習をしておきませんか?」。
「なるほど、よろしい」。
少しばかり店内はバタバタしていたが、すぐさま店を出た。待つこと5分。店に戻り早速シングル・モルトの注がれたグラスを手に取った。

さて、皆様には来月是非ともお集まり頂きたいのであるが、ひと言申し上げておきたい。
確かに、侍が負ければ料金は「一切頂かない」。のであるが、
侍が勝てば、「パンダ」が飲める。

あなたはあなたの中の儀により動かねばならない。あなたは恥ずかしいことをしてはならない。あなたはみっともないことをするべきではない。あなたは侍こそを支持するべきである。
よろしいか、あなたの敵は刺客である。

その日2度目の対決の結果はまた明日。

皆様順位のご確認を
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闘いの行方(2)

「やっぱりやめた!」。
そんな話が通る訳がない。お客さんの反応を見れば、侍の答え「コールバーン」が間違っていることは了解済みだ。「ざんねーんって言ってみろよ、コノヤロ」、と思っていたのであるが、刺客本人の口から「残念!」と言われればやはり口惜しい。

繰り返しで申し訳ない。
A,B,C,D、侍による4つの蒸留所区分は以下の通り。
A:アイラ・モルト
B:アイランズおよびキャンベルタウン、ハイランド・スペイサイドの沿岸部の蒸留所
C:ハイランド・スペイサイドの内陸部の蒸留所
D:ローランド・モルト

この区分からすると正解である「ダルユーイン」はC。そして昨日もお伝えした通り、侍もCにカテゴライズされる蒸留所であろうことは予測していた。そこまでは間違っていない。問題はそれ以降である。
A,B,C,D、侍による4つの蒸留所区分。このことを上手く利用できるようになってから、対決の内容も濃くなってきているのではないかと思っている。そしてそのことは刺客も認識しているのではないだろうか。しかしこの蒸留所区分のしんどいところは、いかんせんCに属する蒸留所が多過ぎるということである。一般的な6つの地域区分でもハイランド・モルトとスペイサイド・モルトが多過ぎることを考えると当然だとは思うのだが。
9月の闘いではずれたとは言え、刺客に冷や汗をかかせることには成功したと思う。10月になって刺客が問題に選んだのは「グレンロセス」、11月はご存知「ダルユーイン」。このふたつはもちろんC。結果として侍による4つの蒸留所区分の弱点を突いたことになる。これは偶然ではあるまい。恐らくそこには刺客の意図がある。
もちろんそのことに何の不満もない。相手の弱点を突く、闘いの場においてそのことは正攻法であろう。

侍にとってもA,B,C,Dくらいは当てたいという気持ちがある。それが当たらなければ恥ずかしいとすら思う。今回の「ダルユーイン」もCであることまでは絞り込めた。そのことに関しては一定の満足、いや安堵はある。

今回もCであることまでは侍自らの力で絞り込めた。やけくそ、あるいは偶然ではあるがディアジオ社系列の蒸留所であることも結果として当たっていた。侍がディアジオ社系列の蒸留所であろうと判断した根拠は、「ある程度の長期熟成」、「アルコール度数はカスク・タイプ」、「整えられたおいしさ」、その3点である。もちろんそれは根拠として非常に希薄だ。「窮鼠猫を噛む」、「藁にもすがりたい」、そんな思いが小さな手がかりを欲し、たまたま正解の方向へ歩み始めただけである。

Cであり、なおかつディアジオ社関連の蒸留所をピックアップしてみる。
オスロスク
ベンリネス
ブレア・ソール
カーデュ
コールバーン
クラガンモア
ダルユーイン
ダルウィニー
ダフタウン
グレン・アルビン
グレン・エルギン
グレン・モール
グレン・スペイ
グレンデュラン
グレンエスク
グレンロッキー
グレンロッシー
ノッカンドオ
リンクウッド
ロホナガー
マノックモア
モートラック
ノース・ポート
ピティバイク
ストラスミル
ティーニニック

ざっと数えただけで25を超える。もちろん対決の短い時間の中でそのすべてを把握していた訳ではない。ベンリネス、ブレア・ソール、ダフタウン、グレン・モール、グレン・スペイ、グレンデュラン、グレンエスク、グレンロッキー、マノックモア、ストラスミル、ティーニニックその辺の蒸留所は眼中にすらなかった。僕が頭の中に思い描いていたのは「UD・レア・モルト・シリーズ」であった。

問題のシングル・モルトがどの蒸留所であるか?
選択肢の中からオスロスクは外した。20年程度の熟成のボトルは恐らく多くは存在しないだろうと思った。カーデュを外したのは昨日お伝えした通りだ。クラガンモアにしては土臭い印象が強い。ダルウィニーであるならよりライトなのではないだろうか。グレン・エルギンであるならもっとスパイシー、独特の醤油のようなニュアンスがあるのではないだろうか。ノッカンドオであるなら土臭くないはずだ。またもっとベリー系のフルーツを感じてもおかしくない。リンクウッドであるならより切れ上がりの良さを感じてもおかしくない。ロホナガーにはまずピートを感じないはずだ。モートラックにはよりフルーツを感じるはずだし、より香りは甘くないのではないだろうか。ノース・ポートはもっとシャープで固いはずだ。ピティバイクもオスロスクと同様、商品自体が存在しないのではないだろうか。それにもっとネガティブな苦味を感じるはずだ。最後にストラスミル。ある程度長期熟成であることを想定すればドライフルーツのような印象があってもおかしくない。

グレン・アルビン
コールバーン
ダルユーイン
グレンロッシー
その4つの蒸留所を残したが、これにて手詰まり。4つの中からコールバーンを解答として選んだが、そこにはしっかりとした根拠はない。今のところ侍の力量の限界はこの辺りにあるのだろう。
あえて言わせていただこう。口惜しくはない。日々精進である。

この日の勝負はこれで終わった。
つもりでいたのだが、実はまだこの次がある。
続きは明日。

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闘いの行方

先週の金曜、刺客との闘いがあった。皆様にはその結果を報告せねばなるまい。
負けた。
それ以上のことはあまり語りたくないのだが、そんな訳にも行くまい。
本日は敗戦の弁である。

正解はダルユーイン。侍の解答はコールバーン。
それでは勝負の経緯をお伝えしよう。

まずは、おにぎりである。今回の具は「鮭」。刺客が今回持ち込んだダルユーインについて説明をしている間にコンビニで買った。コンビニから戻り店に入り、おにぎりを食べる。ゆっくりと時間をかけ落ち着いて勝負に向かう。
「今日のおにぎりの具は鮭ですね」。
勝負の前に刺客に一本取られた。今思えば、この時点でその日の負けは決まっていたのかもしれない。

まずは問題のシングル・モルトを受け取る。しっかりと濃い色だ。グラスをふたつ用意しそれぞれに注ぐ。そこまでの手順はいつもと変わらない。そのひとつを手に取り香りを嗅ぐ。穏やかと言えば穏やか。恐らくはまだ香りが開いていないだろうと思われた。ちょっとゆっくり待つしかないようだ。少量口に含む。十分にコクと甘味のあるシングル・モルトではない。適切な量の甘味と心地良い軽快さを兼ね備えたシングル・モルト。ドライと言ってもいいかもしれない。その時点、第一印象での侍の評価はそんなところに落ち着いた。しかし、例えば先月の闘いのように、今回は直感は舞い降りてこなかった。

以前、一般的な6つの地域区分とは違うA,B,C,Dの4つの区分方法を侍は念頭に置いているということを記事にした

実は最近、ブラインド・テイスティングで正解を当てるために、次のA,B,C,Dの4つに蒸留所を分けて考えている。

A:アイラ・モルト
B:アイランズおよびキャンベルタウン、ハイランド・スペイサイドの沿岸部の蒸留所
C:ハイランド・スペイサイドの内陸部の蒸留所
D:ローランド・モルト

このA,B,C,Dは2つに分けることができる。
ダシの要素を感じるA,B。
ダシの要素を感じないC,D。

今回のこの問いはAあるいはBではない。味わいから察するところ僕なりにそう判断できた。何しろ今回、直感は舞い降りてこなかったのだ。恐らく今まで飲んだことのないシングル・モルトなのだろう。合理的に推論を組み立てねばなるまい。味わいにダシの要素を感じない。フレッシュとは違う軽快さ。その点はDである可能性を否定できないが、時間が経つにつれ底の固いコクと表面の華やかさを増すのではないだろうかと予測していた。
恐らくはC、つまりハイランドおよびスペイサイドの内陸部の蒸留所ではないかと思った。

やはりゆっくりとコシが強くなったようだ。これは恐らくDではない。Dであるならどこか儚げな印象があっても良いのではないだろうか。間違いなくCにカテゴライズされるシングル・モルト。

さて、侍はここで困ったことになる。正直に言えばここである意味手詰まりになったのである。A,B,C,Dの4つの区分の中でこのCが実は一番蒸留所の数が多い。しかも直観が舞い降りてきた訳ではない。Cとはいえこれはダラスデュではない。またグレンリベットでもロングモーンでもモートラックでもない。そのくらいのことは予想がつくが、それ以上どう合理的に推論を組み立てていいのか分からなかった。

一歩後退して考えよう。そう思った。
目の前のこのシングル・モルトは非常においしいシングル・モルトだ。しかも時間とともにどんどんおいしくなってくる。どう考えてもこれは今このブログで連載中の、「一筆啓上、ダン・イーダン」で取り上げている「オフィシャルのスタンダード品」ではない。アルコール度数は恐らく60度前後。熟成年数は20年前後。そう思われた。

目の前のこのシングル・モルトが「オフィシャルのスタンダード品」のレベルにまで後退したら、どんな味わいになるのだろうか?

僕はそんなことを考えていた。
そうするうちにこのシングル・モルトにスモーキーと若干のピーティを嗅ぎ取ることができた。ピーティとは言ってもとても微か。ダシの要素を感じないことからも、もちろんアイラ・モルトではない。Cにカテゴライズされる「オフィシャルのスタンダード品」の中で軽快で微かにピーティ。そんなシングル・モルトはないだろうか?

ぼんやりと答えを追いかけていた侍の頭に浮かんだのは、実はカーデュ。しかし、目の前のシングル・モルトがこれ(写真)であるはずがない。しかしこのカーデュがもっとおいしくなったら目の前のシングル・モルトのようになる可能性はない訳ではないだろう。
念のためと思いシングル・モルトの父、マイケル・ジャクソンの「モルト・ウィスキー・コンパニオン」をめくる。カーデュは「オフィシャルのスタンダード品」以外にほとんど商品を出さない。アルコール度数は恐らく60度前後。熟成年数は20年前後。そんなカーデュはあっただろうか?

実はあったのだ。UD・レア・モルト・シリーズのカーデュ。アルコール度数60.02度。熟成年数27年。条件にはわりと適っている。しかしこれは明らかに正解ではない。このシングル・モルトを侍は飲んだことがあるが、目の前のこのシングル・モルトほどおいしくはない。僕の感覚で言えばこのカーデュは少々エグイのだ。カーデュである可能性は恐らく否定できる。
しかし、父の著作のP176のこのUD・レア・モルト・シリーズのラベルを見て、僕は何かを感じてしまったのである。

確かに僕は目の前のこのシングル・モルトに、どこか「整えられたおいしさ」を感じていたのである。もちろんインパクトが足りないとは思わない。しかしシングル・カスクの商品のような「荒削り感」がないのである。「上出来」な印象があるのである。であるなら、このシングル・モルトはUD社つまり現在のディアジオ社が所有する蒸留所の可能性があるのではないか?侍はそうひらめいた。

結果としてその推理は当たった。しかしその推理は「窮鼠猫を噛む」という状態がたまたま生んだものだったのであろう。正直に言えばそこに合理性はない。偶然である。以前に「UD・クラシック・モルト・シリーズ」について、また最近「ダン・イーダン」について記事にし、ハウス・スタイルとオフィシャルと瓶詰業者について話をしてきたことがその偶然を後押ししたということはあったかもしれない。しかし侍がひらめいてしまったことは確かだ。


メモ11月Cにカテゴライズされ、ディアジオ社が所有し、味わいとして侍が納得できるもの。
その3つを検索条件としていくつかの蒸留所を絞り込んだ。選んだのは次の4つ。
グレンアルビン
コールバーン
ダルユーイン
グレンロッシー

はっきり言ってしまえば、これ以上絞ることは不可能であった。選択の根拠が何ひとつない。正直に言ってしまおう。コールバーンを解答に選んだのは「最近飲んでおいしいと思ったから」、である。そして、その時の記憶から「コールバーンである可能性は十分にある」、とは思っていたけれども。

侍は書いたメモのうち、コールバーンに大きく丸を付け刺客に渡す。

「まずはメモに書いてある答えを読み上げてくれ」。
侍は刺客にそう申し出た。
「わかりました。答えはコールバーン」。

「ファイナル・アンサー?」。
刺客にそう詰め寄られ、侍は思わず口にしてしまった。
「やっぱりやめた!」。

だって、お客さんの反応がイマイチだったんだもん。
セコイぞ、侍!

明日へと続く。

お願い

どうやら今日もまともな記事が書けない。
本日はお知らせではなく、「お願い」である。
本日、決戦の日。是非とも皆様にお集まりいただきたい。

9月10月と悪くない闘いをしている。
今月は勝つ。絶対に勝てる。観に来ないと絶対に損をします。
よろしくお願いをしたい。

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緊急告知

あの男がやって来る。
小さなボトルを持ってやって来る。
金曜にやって来る。
10時前にはやって来る。
納品にもやって来る。
集金にもやって来る。

お前の本当の目的は何だ。
闘いにやって来い。
斬り捨てる。

決戦の時、11月4日(金)
是非とも皆様の応援を。
お集まり願いたい。
甲藤くん、谷口くんと来なさい。

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一筆啓上、ダン・イーダン(13)

「シングル・モルトって何ですか?」。シングルトンが日本の市場に出回り始めた頃、ウィスキーを巡る状況はそんな様子だったのである。そして、「シングル・モルトって何ですか?」。その質問に答えることはバーテンダーの仕事でもあった。

そんな背景の中、シングルトンはとても売りやすいシングル・モルトだったのである。

シングルトンはクセっぽいシングル・モルトではない。ちょうど良い飲み応えのある、飲み易いシングル・モルトである。もちろんその当時だって飲み易いシングル・モルトがなかった訳ではない。その代表は昨日紹介したグレンフィディックであろう。しかし、シングルトンはそれまでのシングル・モルトとはちょっとだけ違った。
グレンフィディックは麦の味わいに軸を置いたシングル・モルトだ。麦の味わいに軸を置き飲み易いことは確かにブレンデッド的である。対照的にシングルトンは「微かなシェリー」、それがポイントのシングル・モルト。
もちろんその当時、シェリー・カスクを売りにしたシングル・モルトとしてマッカランは存在していたが、その時代のマッカランは個性の際立ったシングル・モルトだったのである。マッカランのその個性は確実に人気があったが、その裏返しとして嫌いな人には「エグイ」、「酸っぱくて苦い」という評価を持たれた。しかし、個性的であることは確かにシングル・モルト的である。

グレンフィディックとマッカラン、ちょうどその中間あたりにシングルトンは存在した。

シングルトンがそれまでのシングル・モルトと違った点をもうひとつだけ申し上げておこう。それはその商品名だ。シングルトンはオスロスク蒸留所のシングル・モルトである。蒸留所の名前自体が商品名というのが一般的な中、オスロスク蒸留所は自らのシングル・モルトにシングルトンという商品名を付けた。もちろんそれは初めてのことではない。しかし、付けた名前がシングルトンである。シングルトンというシングル・モルト。シングル・モルトであることを殊更に強調しているようでもある。

「シングル・モルトって何ですか?」。シングルトンを使って、その問いに僕はそんな風に答えた。

実は当時、空前のバーボン・ブームであった。巷はバーボンで溢れていたのである。TVも雑誌もバーボンの広告ばかりであったのである。スコッチ・ウィスキーは「オヤジが水割りで飲む酒」、だったのである。どんなシングル・モルトであろうとも、「カッコいい酒」ではなかった。ブレンデッドもシングル・モルトもその区別に理解のない時代、「だって、それスコッチでしょ」。そんな時代に現れたのがシングルトンなのである。

ブレンデッド・ウィスキーを飲み慣れたお客さんにも飲み易く、強烈な個性を売り物にしたシングル・モルトではなく、「微かなシェリー」を説明すればシングル・モルトの個性をも理解してもらい易く、好景気を背景に「他人とはちょっと違うウィスキー」を求めていた人に受け入れられたウィスキー。それがシングルトンではなかっただろうか。僕の中にはそんな思いがある。

あえて言わせていただこう。
バーボンが売れ過ぎて作り過ぎ、作り過ぎて安くなり、安くなって悪くなり、悪くなって見放された。そんなことも追い風になったのかもしれない。「ちょっと高いけど、他人とはちょっと違うスコッチ、しかもシングル・モルトって言うんだぜ」。それがシングルトンではなかっただろうか。

怖いので言い訳をひと言。
誰だって自分の子は可愛い。僕がシングル・モルトを愛して止まないのは皆さんご存知の通りだ。僕はバーボンの悪口を言いたい訳ではない。シングル・モルトを愛しているということが言いたいだけだ。結果としてバーボンの悪口を使ってシングル・モルトを愛していることを表現するという手法を取ったが、悪意はない。だから僕はバーボンの好きなあなたが、スコッチの悪口を使ってバーボンを愛していることを表現することを1回だけ許す。

明日からはやっとまともな路線に持って行けそうだ。
続きは明日。
順位はこちら

一筆啓上、ダン・イーダン(12)

ブレンデッド・ウィスキーとシングル・モルト・ウィスキーの違いを非常に大雑把に、しかも乱暴に説明してしまうと、「万人受けを狙い多くの人にとって妥協の産物としてのブレンデッド」、「蒸留所の個性を背景に好きな人に飲んでもらえれば良い開き直りの産物としてのシングル・モルト」である。我ながら「お前が開き直ってどうする!」と突っ込みを入れたくなるほどの乱暴な説明ではあるが。

昨日、「シングル・モルトって何ですか?」。
シングルトンが出始めた80年代というのはそんな時代であったと申し上げた。マッカラン、グレンリベット、グレンフィディック。それぞれに「あぁ、聞いたことあるウィスキーですね」って言ってくれる人は少なくなかったけど、それらがシングル・モルトという属性を持つという認識は多くの人になかった。スコッチ・ウィスキーと言えば「よりたくさんの人においしいと言ってもらえるように作られた」ブレンデッド。それは本当にごく普通のことだったのである。

フィディック恐縮ついでにまた話はそれてしまうのだが、シングル・モルトというのはそもそもその始まりの時期、まず間違いなくほとんどがブレンデッド・ウィスキーの原酒として出荷されていたのである。
個性的ではあるが、その特徴はいかにも強烈過ぎる。ブレンドされることで調和をもたらされ飲み易さと飲み応えを兼ね備えることができるのは悪いことではない。シングル・モルトに対するそんな認識は造り手側にもあった。
シングル・モルトが一般消費者に受け入れられるとは誰もが思わなかった時代。そんな状況であえて瓶詰され大々的に小売されるシングル・モルトとして市場に登場したのがグレンフィディックである。同業者からは「アホ」呼ばわりされたが彼らは信念を貫いた。結果として彼らのその決断は間違いではなかった。シングル・モルト好きでグレンフィディックの名を知らぬものはまずいないだろう。世界で一番売れてるシングル・モルトである。「瓶詰され小売されるシングル・モルト」、その決断を下した彼らに僕は感謝をしてやまない。

もちろん彼らには何の落ち度もない。彼らはまったく正しい。僕はグレンフィディックに何の不満もない。そして当然敬意をも払いたいと思っている。
しかし、である。グレンフィディックが売れた最大の理由はその飲み易さである。麦芽風味のしっかりした軽快できれいなシングル・モルト。それこそがグレンフィディックの身上である。少なくとも他の多くと比べクセっぽくはない。

飲み易い、だから売れた。それは真実であると思う。
さて、それでは乱暴なことを言わせていただこう。80年代の日本でグレンフィディックをシングル・モルトであるという認識を持って飲んでいた人は少なかったのではないだろうか?

酒が嗜好品である以上、「良し悪し」の基準は「好き嫌い」がすべてである。
それが僕の見解である。

グレンフィディックがシングル・モルトであろうがブレンデッドであろうが、そんなことはどうでも構わない。うまいから飲んでる。
当時、グレンフィディックを好んで飲んでいた人にそんな人は多かったのである。

乱暴ついでにもうひと言申し上げておこう。
「舶来品」という言葉のニュアンスがまだ生き残っていたその当時、スコッチ・ウィスキーであることはそれだけでまだ「ありがたい」時代だったのである。お酒の量販店は少しづつ増え始めてきたけれど、町の酒屋さんはまだ「キリン・ラガー・ビールとサントリー・オールドだけを配達してればOK」だった時代を捨てきれずにいた。
シングル・モルトであろうがブレンデッドであろうが、そんなことはどうでも構わない。「だってスコッチでしょ」。

僕がお話したいのはそんな時代背景に出て来たシングルトンについてである。

本日もオスロスクに(さらにはダン・イーダンに)話を戻せないまま、明日へと続く。

最後にやはり皆様にお願いを、
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