モルト侍

池袋のショット・バー、ジェイズバーのバーテンダーが、大好きなシングル・モルトを斬る。

2006年12月

食べる?(3)

ウィスキー作りとは掌の水を良い場所に運ぶことだ。
昨日の最後にそんなことを言わせていただいた。もちろんそんなものは素人の戯言であろう。ウィスキーに限らず、もの作りには思いも寄らないような苦労と、計り知れない快楽が存在するのだと思う。それを知る職人はその苦労と快楽のバランスをうまく保とうとするのではないだろうか。苦労ばかりで快楽が少なければウンザリするのだろうし、快楽を求め過ぎて手間を惜しむようでは良いものはできない。良い職人とはそれを知る者ではないだろうか。それを知る者は自らの喜びのための手間を惜しまない。手間を掛け喜びを生み出す。

イチローさんの笑顔は素敵だ。

現在建設計画中のイチローさんの新たな蒸留所は埼玉県の秩父市にできる。およそ9,900平方メートルの敷地を取得。来年3月下旬に着工、9月に完成の予定だ。昨日お話したピートを使うことを視野に入れ、若干プランの変更があるとのことだが、順調に準備は進んでいるようだ。竣工すればすぐにでも新たな蒸留所でウィスキーは作られるのだろう。

もちろん蒸留の設備だけではなく、熟成庫もショップなども併設されるとのこと。見学などもできるだろう。陣中見舞いに伺えたなら愉しいと思う。「すべてノー・シークレット」で運営したいとおっしゃった。

新しい蒸留所のウィスキーは「2010年に出したい」と語ってくれたイチローさんだが、どうだろう。次のサッカーワールドカップまでに間に合うだろうか?次の日本代表とともに間に合い、一緒に愉しめれば最高である。

2010年だけでなく、10年後も20年後も、僕は見守ろうと思う。イチローさんの運ぶ水を飲もうと思う。そして人と酒の間に立ち僕は働こうと思う。命ある限り。

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食べる?(2)

さて、この日のイチローさんの最初のオーダーはミッシェル・クーブレー。このふたつをハーフづつ飲んだ。イチローさん自身もクーブレーには良い印象をお持ちのようだ。「素敵なじいさんって感じですかね」とおっしゃる。

僕は以前から思っていたことを聴いてみた。
「イチローさんはそのうち、クーブレーじいさんみたいになるんじゃないかと思うんですよ」。それまでの会話から、イチローさんにクーブレーに対するシンパシーを感じたからだ。その共感は僕の知り得ないところで起きているようで、そんなふたりが羨ましい。それは酒の作り手だけが共有できるものなのだろう。例え知り得たとして、恐らく僕には共有できないものだ。

「むむぅ」と笑顔で唸って、その問いには応えてくれなかった。もちろんふたりの立場の違いは明らかだ。簡単に言ってしまえば、クーブレーの仕事が熟成から始まるのに対して、イチローさんの仕事は蒸留から始まる。イチローさんはスピリッツの作り手でもあるのだ。だけど、話題が樽に及ぶと、僕が思っていたこともそんなに間違いではないだろうと感じてしまった。

クーブレーにしてもイチローさんにしても、彼らのような人の話を聴いていると僕がいつも感じるのは、「実践的な論理の構築」だ。言葉遊びの果てのロジックではなく、イメージに裏付けられた論理。イチローさんと話をしていると言葉を追いかけているのではなく、自身の頭の中のイメージを言葉を使って説明しようとするさまが窺える。どんな人に向かっても自身の中にあるイメージを語ろうとするので、例え言葉の使い方が違っていても、どんな時もその説明の内容はぶれない。

言葉の塊としてのロジックではなく、イメージの連なりがセオリーを作っていくように感じるのだ。そして恐らく、それらは力となり彼らの日々の作業を支えているのではないだろうか。その日のイチローさんはシェリー酒とその樽について語り、スペインに行くことの意味について語り、オークの樽について語り、カシとナラについて語り、ミズナラの木のねじれについて語り、樽作りの作業について語った。もちろんそれだけでなく、今年の夏の軽井沢蒸留所での出来事や、これからの自身の秩父の蒸留所についても語ってくれたが、その話のその言葉の背景に僕は確実なイメージの構築を感じるのだ。

誰でも仕事をしている時に「言葉が追いつかない」と思ったことはないだろうか。素早い判断と適切な動作を必要とする時、実は言葉は役に立たない。マニュアルを持って来る時間はないし、例えそのすべてが頭に入っていたとしても、頭の中でそれを読み返しているヒマはない。身体が覚えていれば適切な動作は可能だろう。しかし、「身体が覚えている」背景に「イメージの連なり」がある人の強味というものがあるのではないだろうか。イチローさんと話をしているとつくづくそんなことを感じてしまう。

ほんの少し思いを馳せてみて欲しい。
今日作ったウィスキーの10年後の姿を彼らはイメージできるのだ。5年後、10年後、20年後に、今日作ったウィスキーがおおよそどんな風であるかを目論むことができるのだ。

実際の作業は、掌にすくい取った水をどこかに運ぶような、そんな繊細なことなのだろう。だけど、その水をどこに運ぶべきか、彼らはそのイメージを持たねばならない。残念ながら、僕にはそんなことは想像も付かない。

イチローさんは語る。
「正直なところ、その着地点がどこになるのか、自分にも分からないことはたくさんあります。でも、投げる方向だけは間違わないようにと思っています」。その語り口をも含め、非常に丁寧で謙虚だ。

ウィスキー作りとは掌の水を良い場所に運ぶことだ。良い場所とはそれを好む人がたくさんいる場所だ。人のいるところに水を持って行くのも良し、持って行った場所に人を集めるも良し。肝心なのは掌からこぼさず良い場所に持って行くことだ。少しづつ天使にその分け前を与えながら、良い場所にそれを運ぶことができたなら、その水は良いウィスキーとなるだろう。そしてそれを人々は愉しむだろう。

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食べる?

飯能ピート昨日、目白田中屋の記事の続きを書くつもりだと言ったばかりであるが、前言撤回。約束を破って本日は違う話をさせていただく。申し訳ない。

実は昨日イチローさんに来ていただいた。先日「イチローズ・チョイス ピーテッド・ゴールデンプロミス1994」については紹介させていただいた。そのご本人、イチローさんの登場である。数日前、「秩父に行った帰りにでも寄らせていただきます」。なんてやり取りがあったばかり。早速来て頂けたのが何より嬉しい。しかも、こんな大雨の日に。

飲み物のオーダーもそこそこに鞄からガサゴソと1本の瓶を取り出すイチローさん。新しいウィスキーか?と少々頬の緩んだ侍であったが、どうやら違うよう。「何だか分かります?」、とイチローさん。差し出された瓶を手に取る。中にはコーヒー豆をとても粗めに砕いたような真っ黒のかけら。「チョコ・フレークですね」とボケてみようかと思ったがやめた。瓶を左右に振ってみたが、思ったより軽い。

「ピートですか?」、カタマリではなくフレーク状であるのが気になったが、何せイチローさんが持ってきたのだ。他のものとは連想できない。「おぉ、さすが。その通りです」、とイチローさん。「いやいや、それほどでも」とは言わなかった。不思議なピートであるが、それ以外には考えられない。

「実は最近、面白いものを見つけまして・・・」。
簡単にイチローさんの話をまとめさせていただく。このピート、何と国産のものなのだそうだ。確かに、「国産」と聞いただけでは皆さん驚かないとは思う。ピートはスコットランド特有のものではない。日本にもわりと豊富にピートはあるからだ。

しかしこの写真のピート、「国産」の「製品」である。れっきとした商品。つまり誰かが作って、それを買う人がいるということだ。石炭に比べ圧倒的に熱量の少ないピートは燃料として使われることがなくなったはず。従って国内にピートの採掘業者などないものだと思っていた侍には意外な事実であった。ピートを掘って売る人がこの国にもいたのである。

フレーク状のこの形状の訳を知って納得がいった。何とこれらは家畜の飼料にも使われるらしいのだ。この採掘業者は先細るピートの需要に危機感を抱き、需要の掘り起こしに躍起になったのだろう。彼らはこのピートに含まれる豊富なミネラル分に着目。結果として家畜の飼料や園芸用の腐植土として使われる道を探り当てた。

「恐らく日本でたった1社」とイチローさんの言うピート採掘業者は、何と埼玉県の飯能市にあるらしい。イチローさんが新しい次なる蒸留所を秩父市に建設予定なのを皆さんご存知だろうか?そして、秩父市と飯能市が隣接する市であることを。僕はこの偶然をどう捉えたら良いのだろう。

イチローさん自身「飯能のピート」があることを、ひと月前に初めて知ったそうだ。聴けばこのピート、スコットランドのものとは「大きく違う」らしい。スコットランドのそれがヒースが堆積したものが主であるのに対して、「飯能のピート」は木質ピートなのだそうだ。「燃やせば香りは全然違う」らしい。

恐らくイチローさんは閃いたのだろう。「飯能のピート」を使うために建設計画も若干変更するそうだ。秩父の水と飯能のピートを使って作られたウィスキーを僕らはきっと飲むことになる。

さて、僕らがそのウィスキーを飲めるのは少々先の話。しかし、「飯能のピート」ならすぐに食べられる。家畜用の飼料であるが食べられる。これが、なかなか面白い。食感はあるが味のないものをあなたは食べたことがあるだろうか?まさに無味無臭。口に含み、「味も匂いもしませんね」と、そんな感想をあなたは抱いたことがあるだろうか。

「飯能のピート」差し上げます。
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目白田中屋、再び開店。

田中屋看板目白にある田中屋という酒屋さん。侍にとっても重要な仕入先のひとつである。その目白田中屋さんが移転のため一時閉店していた。その話は先日記事にしたばかり。

12月の上旬に、恐らく数日間の休みを挟んで移転先で営業を始めると思っていたのだが、なかなか「営業再開」の知らせが届かない。ぼんやりしていても噂話レベルの知らせは届くと思っていたのだが。移転先といっても同じビルの地下一階。遠く離れた場所ではないし、それ以前は空きテナントのはず。こんなにも時間が掛かるのは何か事情でもあるのか。

最後にお邪魔した時にお店のスタッフに、「いつから営業できるか、まだ何とも言えない状況なんで、もしも仕入とかあったら電話して下さい。散らかった倉庫の中ならご案内します」。何て笑顔で言われていた。

営業再開の知らせが届かないのも心配であったが、ならば倉庫の中を見させていただくのもまた一興。先週の金曜に電話をした。挨拶もそこそこにいつ頃から営業を再開するのかと聞くと、「実は今週からやっているんですよ」。少々がっかりでもあった。倉庫を拝見させていただいて、「特別な侍」気分を満喫したかったのであるが。「じゃあ、今日の夕方伺いますよ」。そう言って電話を切った。

となりのM真ん中に「Mマーク」のファースト・フード店。その奥の旧店舗の入口はシャッターが閉じられている。もちろん灯りも付いていない。駅に近いこの場所が寂しげなのはやはり切ない。その手前のエレベーター・ホールに地下一階の新店舗に繋がる階段がある。普段は何とも思っていなかったが、「Mマーク」のファースト・フード店と田中屋さんが同じ建物の一階にあることを思い知る。つまり、そのふたつのお店の面積が地下に移った新たな田中屋さんのフロアー面積になるのだ。その分だけ広がったことになる。

貼り紙地下の店舗へと続く階段の前にパイプ椅子。何ものと思いよく見ると営業案内の貼り紙。「商品限定 プレオープン」とあり、その下に「販売しているもの」の品目。「販売しているもの」の中にビールも含まれているが、「大手国産メーカー品はなし」と但し書き。もちろんウィスキーは売っている。「設備が間に合わないので未だ販売していないもの」としてワインが挙げられている。その訳は後に書くが、「もう販売しないもの」として「食品全般」とある。これがちょっとばかり痛い。ここでチョコレートを買うことを常としていたからだ。

パイプ椅子の脇を通って階段を下る。下り切ったところ正面にワイン樽のディスプレイ。右手の自動ドアが入口。入口を入ると右手がレジ。お店の方に「どーも」と声を掛けると鼻腔をくすぐる新築の匂い。いつものように新入荷や気になる商品の話を聴いた後、久し振りの世間話に花が咲いた。

「写真を撮らせてもらっても良いですか?」。
「どうぞ、好きなだけやってください」。

店内の写真は明日。
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イチローズ・チョイス ピーテッド・ゴールデンプロミス1994(3)

いちろーず・ちょいす先日、刺客が来た時にちょっとお気楽なブラインド・テイスティングをした。正解の蒸留所はベンリアックだったのだが、これがなかなかの曲者であった。アイラ・モルトのふりをした(つまり非常にピーティな)ベンリアックだったのだ。もちろんこの侍が間違える訳がない。ダシの要素を感じないことから、アイラ・モルトではないと判断。コクのある麦の甘味を中心にその味わいが構成されている背景に海の影響は感じない。どう考えても島モルトではないし、ハイランド、スペイサイドの沿岸部のシングル・モルトでもない。コクのある麦の甘味がトフィーのように感じられた時にベンリアックという答えが舞い降りた。

現在世の中に増殖中と思われるピート・マニアに対して、実は非常に懐疑的であるのが侍の立場である。「ピーティなだけ、痛いだけのシングル・モルトでいいのか?」と問い掛けたい気持ちがある。このことについてはいづれ記事にしようと思う。いつものように話を横道に逸らさない。

増殖中のピート・マニアの要求に応じるように、アイラ以外の地域からピーテッド・モルトがリリースされるのが昨今の流行のようである。そんな動向を横目で見ながら、実はベンリアックについては口にしたことがなかったのだが、先日飲んだベンリアックには面白味と旨味を感じた。やはり人は下らん意地を張るべきではないと、そう思った。初めてチョコレート・コーティングの柿の種を食べた時のような、そんな不思議な気分であったのだ。素直に「うまい」というのがちょっと口惜しい気分にもさせてくれる。

さて、話を戻そう。
今回のイチローズ・チョイスに出会う前に、ベンリアックを飲んでいたことが幸いだったかもしれない。結果として、僕はこのイチローズ・チョイスを偏見なく十分に堪能することができたかもしれない。ベンリアック同様、面白味と旨味を感じた。ピーティであることが、このシングル・モルトに大きなアクセントを加えている。とはいえ、ここまで強烈なアクセントを加えても味が壊れないのは、元来のその味わいがしっかりしていてこそなのである。何でもかんでもピーティにすれば良いというものではない。

そもそも軽井沢蒸留所のシングル・モルトはノン・ピートがハウス・スタイルのはず。このようにピーティなシングル・モルトはかなり実験的でもあるのだと思う。しかし、軽井沢蒸留所のシングル・モルトらしく原材料である麦の甘味をしっかりと感じることができるし、グレンリベットの匂いを感じさせる程度に柑橘系にフルーティ、その上ガッツリとピーティ。まさに三位一体のイチローズ・チョイスである。

どちらがよりピーティであるかというと、このイチローズ・チョイスより先日飲んだベンリアックの方であろうが、「ピーティな方が勝ち」という勝負ではない。どちらも愉しいので「両者勝ち」である。

先週記事を書いた後、やはりイチローさんがどんな風にこのシングル・モルトと出会ったのか聴いてみたくなった。僕は、
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軽井沢でのウィスキー作りの合間、恐らくイチローさんは熟成庫の中に何度も出入りをしたはずだ。だって、そうでしょう。興味がない訳がない。そしてきっと、気になる樽の眠っているウィスキーに声を掛けたはずだ。もちろん、声を掛けただけで気が済むはずがない。間違いなくテイスティングをしたはずだ。「ちょっと良いですかね」、なんて言いながら。正直に言わせてもらおう。ズルイぜ、イチロー。である。

そして、とても気になる樽の前で足が止まったのだ。「おぉ!」と思った後、きっと「ニヤリ」としたのだろう。瓶に詰めて売りたい。そう思ったのだろう。もちろんそんな話は僕の憶測の域を出ない。この知らせを聞いた時に、僕はそんな風に思いを馳せてしまったというだけのことである。
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そんな風に記事にさせてもらったけど。

だけど、気になることは本人に聴いた方が良い。そして早速イチローさんから返事が来た。
以下、本人談である。
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侍がブログで書いている通りの展開でこのモルトを手に入れました。
やはり最初は樽に「GLEN LIVET」 と書いてあるのが気になり、聞いてみて中身が軽
井沢で、しかもピーテッドのゴールデンプロミスだということが分かった次第です。
味の第一印象はピーティーさと麦の甘み、オイリーさもありポンカンなどの大ぶりの
柑橘類の皮を思わせる感じで、全体的には素朴な味わいだと感じました。
たしかにツルっとした柑橘系フルーツっぽさはリベットの要素もあるかなと樽を目の
前に思いました。(笑)

今後も「犬も歩けば棒にあたる」の精神でいい樽、面白い樽と出会えばやってみたい
と思います。
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本日最後にちょっと気になることを。
皆さんご存知の通り、軽井沢蒸留所はメルシャンの蒸留所である。さらに、キリンビールがTOBを成立させメルシャンがキリンの子会社化したこともご存知だろう。

やはり気になる。
そもそもこのウィスキーは、イチローさんが軽井沢蒸留所でウィスキー作りをしたことがきっかけで世に出たウィスキーだ。イチローさんがウィスキー作りをさせてもらえるくらい、イチローさんと軽井沢蒸留所の関係は良好なのだろう。時間を掛け培ってきた人脈もあるだろう。メルシャンの子会社化が決定した今後、僕らはこんなウィスキーをもう一度飲むことができるのだろうか。

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いちろーず・ちょいす裏

イチローズ・チョイス ピーテッド・ゴールデンプロミス1994(2)

いちろーず・ちょいす皆様もご存知の通り、好評開催中の「スコッチショップ 第10回ブラインド・テイスティング」である。今回のブラインド・テイスティングを含め、時々シングル・モルトを愉しみに来てくれるお客さんの中に、酒屋さんの方がいらっしゃる。ご近所のお客さんではなく、電車でわざわざ来ていただけることを思うとありがたいばかりだ。

その彼に一昨日も来ていただいた。まずはジントニックを飲んで落ち着いた後、ブラインド・テイスティングにチャレンジ。比較的長い時間を掛けて問題に取り組み、苦しみながらも愉しそうに解答を出していった。恐らく明日も仕事、終電よりはちょっと早目に帰りたかったのだろう。そんな彼が帰り際にそそくさと鞄から荷物を取り出した。「イチローさんのシングル・モルトなんですよ」。

意外な展開に驚いたが、僕も気になっていたシングル・モルトではあった。最近ご本人とはちょっとご無沙汰の感があるイチローさんだが、久々のご来店である。気持ち良く購入させていただいた。お互いがお互いの支払いを済ませた後、彼は家路についた。

そんなやり取りを脇で見つめていたラーメン屋とN氏。黙っている訳はないだろうと、僕もあきらめた。「飲んでみる?」。

意外な展開で入手したこともあって、封を切るのにドキドキである。グラスを3つ用意し注ぐ。それぞれの手に渡す。ニヤリと頷くN氏。「うめぇ」と笑うラーメン屋。至福の時である。

「ピートが凄い」、「随分甘いな」、「こってりで滑らか」、「フルーティ?」、「うん、確かに」、「度数は何度?」、「えっ、60度超えてるの?」、「リベットの樽なの?」、「そう、しかもシェリー」、「なるほどね」、「何が?」、「フルーティだから」、「そうね」、「オレンジ?」、「いや、みかんだね」、「辛い?」、「うん、確かに」、「っていうか、熱いね」、「そう、ホット」、「唐辛子の辛さだね」、「コショウの辛さと違う」、「そう、それ」、「厚みがしっかりしてる」。話は尽きない。

「似てねぇ?」、と聞いてみた。
「何に?」、顔を上げるラーメン屋とN氏。

「こないだのベンリアック」。


さてと、予定通り続きは次回。
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イチローズ・チョイス ピーテッド・ゴールデンプロミス1994

いちろーず・ちょいすイチローさんがまた面白いシングル・モルトを出した。イチローズ・チョイス ピーテッド・ゴールデンプロミス1994である。「おや?」と思われた方もいるかもしれない。そう今回は「イチローズ・モルト」ではなく、「イチローズ・チョイス」である。

「イチローズ・モルト」ではなく、「イチローズ・チョイス」ということは、イチローさんのシングル・モルトではなく、イチローさんが選んだ。ということである。さて、それではイチローさんは何を選んだのか。

葉書ヒントはここにある。写真は今年の夏、イチローさんからいただいた暑中見舞いである。今年の夏の暑い頃、久し振りにイチローさんがジェイズ・バーに来てくれたことがあった。イチローさんは優秀なウィスキーの作り手であり、ベンチャーウィスキーという会社の社長さんでもあり、ウィスキーのセールスマンでもある。無礼を承知で無駄口を叩かせていただくが、セールスマンとしてよりも作り手として優秀なイチローさんである。そんな彼が来れば自然にウィスキーの話に花が咲く。ウィスキー・マガジンの金賞受賞に喜び合い、ウィスキーの現状について語らい、自らの展望を語り、そして、「実は今年の夏、軽井沢に行こうと思っているんです」。

もちろん夏休みの避暑地の話ではない。軽井沢といえばメルシャンの軽井沢蒸留所のこと。今年の夏イチローさんは軽井沢蒸留所でウィスキーを作って来たらしいのだ。確かに、東京よりも涼しかっただろうが。うらやましい限りである。

ラベルの軽井沢早とちりは禁物である。本日ご紹介するウィスキーは、今年の夏にイチローさんが作って来たものではない。いくらなんでも、早過ぎである。「イチローズ・モルト」ではなく、「イチローズ・チョイス」である。つまり、イチローさんが軽井沢の樽を選んだのであろう。

イチローズ・チョイス ピーテッド・ゴールデンプロミス1994。この商品のリリースの知らせを聞いた時、僕は思わず「ニヤリ」としてしまった。「行きやがったな、軽井沢の熟成庫に」、そうつぶやいた。

軽井沢でのウィスキー作りの合間、恐らくイチローさんは熟成庫の中に何度も出入りをしたはずだ。だって、そうでしょう。興味がない訳がない。そしてきっと、気になる樽の眠っているウィスキーに声を掛けたはずだ。もちろん、声を掛けただけで気が済むはずがない。間違いなくテイスティングをしたはずだ。「ちょっと良いですかね」、なんて言いながら。正直に言わせてもらおう。ズルイぜ、イチロー。である。

そして、とても気になる樽の前で足が止まったのだ。「おぉ!」と思った後、きっと「ニヤリ」としたのだろう。瓶に詰めて売りたい。そう思ったのだろう。もちろんそんな話は僕の憶測の域を出ない。この知らせを聞いた時に、僕はそんな風に思いを馳せてしまったというだけのことである。

いろんな縁もあって昨日このウィスキーが手に届いた。
その縁やその他のことは明日書こうと思う。

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そうそう、忘れてた。今週いっぱい、このウィスキー¥900でどうだ。

本日は飲み過ぎました。

すき間のような一日というのがある。ゆっくりと忙しくなって来た12月。ぽっかりとすき間が空くようにのんびりとした一日であった。ぼちぼち片付けでも始めようかと思っていた矢先、その人が現れたのが午前4時。程なくもう一名。後から来た方が先に帰り、午前4時に来た人は最後までいた。

一年を振り返り、人生を振り返り、気が付けばこんな時間。
少し眠い。

欲しいものは手に入りましたか。


本日はこれにて。
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本日開幕

ずらりBLT先日、「詳細は次回に」とお知らせしていた「スコッチショップ 第10回ブラインド・テイスティング」。遂に本日より開幕である。ご存知の通り、ブラインド・テイスティングとは利き酒のこと。A,B,C,D、4種類のシングル・モルトを飲んで、どの銘柄であるかを当てるゲーム。難しく考えることはない。解答はすべて選択式。何も知らなくとも当たってしまう可能性すらある。

何より愉しいのは4種類のシングル・モルトを飲み比べることである。あなたは普段どのようにシングル・モルトを飲んでいるだろう。目の前にグラスを並べ、それぞれを交互に口にして、飲み比べるような経験をお持ちだろうか。それが何と4種類。しかも値段は1,200円である。1杯1,200円のシングル・モルトなら普通に飲んでいないだろうか。繰り返す。4杯で1,200円である。

そんな経験をお持ちでない方は「分かる訳ないだろ」、と思っているかもしれない。そんなあなたに侍からひと言申し上げよう。「あなたは分かる」、しかも「絶対に」。

今回の問題の出題者の名は「忍者」。奴は今回4つの問題を繰り出して来た。挑戦者はその4つのシングル・モルトをグラスに注ぎ飲み比べる訳だが、違うものを飲んで同じ味がすると感じる人はいない。飲み比べればそれぞれ違う味がすることは「誰にでも分かる」、しかも「絶対に」。だから「あなたも分かる」、しかも「絶対に」。

「違う味がすることが分かる」ということが、どのようなことだかお分かりだろうか?つまりそれは「当たる可能性がある」ということである。確かに「感覚として違うことが理解できても、その味がどの蒸留所であるか、知識がなければ当たらないのではないか」。あなたはそう仰るかもしれない。しかし、知識なぞ後から付け加えればよい。ジェイズ・バーにはシングル・モルト関連の書籍もある。それらの書籍にはそれぞれの蒸留所の詳細なテイスティング・ノートが書かれている。こちらを良くお読みいただきたい。忍者はカンニングを禁止していない。

カンニングが許されるのは今回までかもしれない。この記事を忍者が読んだら、次回からカンニングは禁止されるかもしれない。だから、今回がチャンスかもしれない。いや、もしかしたら、焦った忍者は追加のルール変更をして、今回からカンニングを禁止するかもしれない。でも大丈夫。やってもバレない。多分。

どんなに知識があっても、味の違いが分からなければ絶対に当たらない。いや、ちょっと言い過ぎた。絶対に当たらないのではなく、当たる確立は「鉛筆を転がした結果」と一緒だ。

さて、「違う味がすることが分かる」あなたは、知識を後から付け加えることが可能だ。だとすると、「知識があるだけの人」よりも初心者のあなたが正解をより多く出すことができるかもしれない。

4杯飲めて1,200円。
どうだろう。

今回から「初心者枠」を設定。限定3名、12月30日まで。
「初めてのチャレンジなんですが」、と言っていただきたい。侍の詳細なレクチャー付である。
12月30日までは初めての方のために3名分だけ残しておきます。

シングル・モルトを飲む愉しみを、多くの人に知ってもらえますように、人気ブログランキング

だから私は嫌われる(11)

「バーテンダーはモルトに頼るべきではない」。
あなたはそう言ったのだ。あなたは主語を「バーテンダー」としているが、個人としてのあなたはバーテンダー全体を語れるのだろうか?確かに僕も「バーテンダー」を主語にひと言申し上げた。
「バーテンダーとは酒と人の間に立つ者のことである」、と。
しかし、あなたの台詞と僕のひと言の持つ普遍性の違いに思い至るなら、あなたは自分の間違いに気付くはずだ。

確かにシングル・モルトだけに頼るのは愚かかもしれない。しかし、長く働くバーテンダーなら何かしら自分の切り札を持っていることだろう。もちろんそれはカクテルでもワインでもビールでも、そしてシングル・モルトでも構わない。手札が多い方が有利ではあるだろうが、僕の場合は切り札をシングル・モルトに選んだ。それが僕のスタイルだ。そして、日々一枚しかないその切り札を使って勝負をしている訳ではない。あなたはどんなスタイルなのだろう。

僕とあなたはともにバーテンダーであるが、それぞれに違うスタイルで働いている。同じである必要があるだろうか。僕はシングル・モルトを得意とするバーテンダーだ。もしも、あなたがバーテンダーを代表して、「バーテンダーはモルトに頼るべきではない」というのなら、僕は異議を唱えたい。

「バーテンダーはモルトに頼るべきではない」のではなく、あなたがモルトに頼れないだけだ。だから、「私はモルトに頼れない」。あなたはそう告白してはどうだろう。

あなたがもしも若きバーテンダーであるなら、こう言いなさい。
「私はモルトに頼らずにこの仕事を続けて行きたい」、と。そして、シングル・モルトに頼らないかわりに、何を自分の得意とするかを決めなさい。そして決めたことを続けて行きなさい。日々の積み重ね、毎日の繰り返しはあなたをどこかに至らせるだろう。あきらめず、うんざりせず続けなさい。

他人の失点を望むことなく、自分の得点を積み重ねなさい。
どうか、あなたの続けていくことを、あなたが好きになれますように。

順位が上がりますように、人気ブログランキング

だから私は嫌われる(10)

ぼちぼちこの連載にもケリを付けたいと思っている。先週末からいくつかのお知らせをはさみ、少々間の抜けた感は否めないが、前回の記事はこちら。連載第一回はこちら。

前回の記事の最後にこう申し上げた。
僕がひと言申し上げたいと思うのは、心ない子供のバーテンダーと悪意ある大人のバーテンダーに対してです。そして、心あるすべてのバーテンダーの話が聴いてみたと思うのです。

ことの発端はとあるバーテンダー氏の「バーテンダーはモルトに頼るべきではない」。というひと言である。誤解なきよう申し上げたいが、僕は何も喧嘩がしたい訳ではない。「喧嘩がしたい訳ではないのなら、そんな台詞は放って置け」というのはごもっとも。「そもそも見知らぬ他人の話」ということも重々承知の上である。

だから僕も「聞き捨てならぬ、無礼者!」と言いたい訳ではない。あれこれ思い悩むのはこの侍の性質である。切ないと思うのは、それでは「取り付く島がないではないか」、「あなたと僕は互いをリスペクトすることはできぬのか」ということである。もちろん、いつもそんなことばかり言っていて「だから私は嫌われる」のである。


こんなことを言わせていただいた。
「バーテンダーとは酒と人の間に立つ者のことである」、と。

僕もあなたも酒と人の間に自らの居場所を求めたのだ。人に向かい愉しみを提供するのがその役割ではなかろうか。その前提において、僕らはともにバーテンダーなのではないだろうか。となれば、僕らは互いを知り、互いをリスペクトし合うことができぬだろうか、と。いづれにしても、お客さんを愉しませることができなければ、僕らはバーテンダーとして不要なのである。

酒と人の間に立ち、酒瓶の並ぶ棚を背に、人に向かい愉しみを提供するのが僕らの役割であろう。その前提において、あなたがどのようなやり方でお客さんを喜ばせるか。また、僕がどのような手立てでそれを実現するか。それこそが、バーテンダーの個性というものであろう。僕らの仕事の範疇をはみ出すことがなければ、僕らはそれぞれに恥じ入ることも恐れ入ることもない。あなたはあなたの道を、僕は僕の思うところを貫けば良い。すべてのバーテンダーが一緒である必要はないではないか。

前回の記事の最後に、
僕がひと言申し上げたいと思うのは、心ない子供のバーテンダーと悪意ある大人のバーテンダーに対してです。
そう言わせていただいた。

悪意ある大人には実はお手上げである。なす術を持たない。関わりを持てば泥仕合のループである。削り合うだけでは疲れる。長い時間を掛けて積み重なった悪意はなかなか落とすことができない。ましてやこちらにそんな義理もない。だから保身のために関わらない。

僕はあなたが心ない子供であることを実は望んでいる。心ない子供は心を持てば変わるからだ。何故なら子供には時間がある。

僕は若きバーテンダーたちに申し上げたいのだ。どんなに嫌われようとも。
孤独を受け止め、孤立を恐れず、孤高を貫く侍からひと言申し上げたい。
次週。人気ブログランキング。たぶん最終回。

忍者と闘う

BLT年の瀬の恒例行事である。忍者がまた4本の手裏剣を繰り出してきた。楽天のスコッチ・ショップ、「ブラインド・テイスティング」である。

いつものように品物が送られて来たのだが、実は忍者の不手際でまだ解答用紙が届いていない。早くも妨害工作である。いきなりの陽動作戦に、皆様、怯んではならない。とはいえ、締め切りはまだ先、年明けの一月である。焦ることもない。早ければ今日明日にでも、遅くとも来週初めにはチャレンジしていただけると思う。

いつもの通り、A,B,C,D4つの問題から答えを探るブラインド・テイスティング。もちろん答えは選択式。しかし今回からちょっと進化を遂げたようだ。複雑になることなく、ひと手間加えて愉しくなりそうだ。詳細は次回にお知らせを。

申し訳ないが本日はこの辺で。
大晦日に向けて一休みしたい気が納まらない侍である。
こんな時こそ飲み過ぎ注意である。

明日は「だから私は嫌われる」の続きを終わらせたい。
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ミッシェル・クーブレー2本

クーブレーニュー・リリース続発の年末である。先週末に封を切ったミッシェル・クーブレー2本を紹介したい。

写真右は以前ジェイズ・バーでも仕入れたことのあるクーブレーズ・クリアラック。とても淡い色のシングル・モルト。加水のせいか若干の濁ったさまが艶っぽくもある。独特の甘味は好き嫌いの分かれるところだろう。フルーツの腐敗した香りにも近い。万人に高評価を得られるシングル・モルトではないだろう。香りを嗅いで口に放り込み飲み下した後にニヤリとして、「なかなか悪くない」、そんな風に思ってもらえれば良い酒なのではないだろうか。おいしいより以上に愉しみを提供してくれるシングル・モルトである。

続いて写真左は「OVER 15YEARS」のシェリー・カスクのクーブレー。こちらはシェリー・カスク好きには堪らないシングル・モルトかもしれない。実はもう半分ほど売ってしまったが、思った通りに受けが良い。濃い甘味を重視したエグ味の少ない味わい。華やかでコクのある甘味はメープル・シロップやバターとハチミツを落としたパンケーキを連想させる。アルコール度数は47度。アルコールがきついという意味でなく、非常にパワフル。

2杯でハーフで¥1,500でどうだ。

ツボを知るミッシェル・クーブレーならではの2本。まさにシェリーの達人である。
先週末知った、御大ミッシェル・クーブレーの台詞にしびれた。

「好きなことを続けるのではなく、続けていることを好きになれ」。
名言を前に深く頭を垂れた侍である。

「ウィスキーの95%は熟成で決まる」と公言してはばからないミッシェル・クーブレーである。蒸留所名を明らかにしないミッシェル・クーブレーのシングル・モルトを口に含み、彼の言葉が聴こえて来た。

「私にとって蒸留されたばかりのウィスキーは素材である」。
「生まれたての彼らを私は揺りかごで育てる」。
「良い子は良いウィスキーとなる」。

グラスを片手に立ち昇る香りに鼻をくすぐらせながら、ミッシェル・クーブレーの意思を探る。
至福の時である。

飲んでいただきたい。人気ブログランキング

お詫びの印に

ラガヴァリン昨日はいささか飲み過ぎた。池袋西口の業界関係者50名ほどの参加した忘年会である。最年長者であることを良いことに傍若無人な振る舞いの数々。お許し願いたい。42という年にして相変わらずの厚顔無恥。振り返れば恥じ入るばかりである。情けないことに帰りの電車を乗り過ごし、気が付けばまた池袋に逆戻り。

二日酔いと睡眠不足に苦しむ一日であった。店に行けば働くのであるが、家に帰った今、非常に眠い。申し訳ないが、これからすぐ寝る。

お詫びの印と言っては情けないが、皆様にちょっとしたお買い得情報を。
写真のラガヴァリン16年。最近の高値にはちょっとうんざりであったが、少々安く手に入ったので安く売らせてもらう。1杯¥700でどうだ。

お1人さま1杯限り。
順位を確認した後、人気ブログランキングご注文を。

ラーメン屋、敗れる。

月曜の朝にこの記事を読んでいる方も多いかと思うが、実は普段は更新しない日曜日に記事を書いている。月曜の朝から忘年会があるのだ。なので、月曜の記事の更新はお休み。飲み過ぎないように、気を付けたいとは思うが。

昨日の土曜日。ちょっとしたイベントをジェイズ・バーでやった。そこに刺客も参加していただいたのだが、ついでに営業と集金、さらにラーメン屋との勝負をすることになった。

今回刺客が用意した問題はグレンリベット。ディスティラリー・コレクションの商品だ。1979年蒸留、26年熟成、49.1度。

実はやばいのではないかと思った。ラーメン屋には当て易い蒸留所だ。あれこれ悩んだ末にラーメン屋が出した答えはスプリングバンク。結果として刺客の勝利。最終的な決着を次の最終戦に持ち越すことになった。

甘さとバニラ、ピート感のなさに気付いていながら答えにたどり着けなかったラーメン屋である。素直に考えれば、スペイサイド・モルトであることまでは絞れたのではないか。
ラーメン屋が気にしていたのはある種の腰砕け感。「何だか、ヘニャッとした感じがあるんだよな」と盛んにつぶやく。シャキっとした印象は薄いかもしれないので、確かにそれは理解できるが、ラーメン屋の感じたそれは熟成感でもある。また、今回のグレンリベットに存在する、どこか漢方薬にも似た苦味と辛味は答えを探すのを邪魔したかもしれない。

さて、その後である。「いくつか持ってきたサンプルがあるので、侍もやりますか?」。

急遽始まった刺客対侍の対決であるが、恐らくは史上最短、最速の解答で侍は刺客を斬った。
「答えはベンリアック!」。
店内には「おぉ」とため息が漏れた。最高に気持ちが良い。

刺客が用意したのは非常にピーティなベンリアック。アイラ・モルトに間違わせようという魂胆はみえみえであるが、この侍を舐めてはいけない。まず、問題のシングル・モルトに塩味を感じない。いわゆるダシの要素も感じない。麦芽系の甘味を持つシングル・モルトである。アイラ・モルトではないが非常にピーティなシングル・モルトであると予測した。実は当初、グレンタレットではないかと考えたが僕が普段感じる生姜のようなニュアンスがほとんどなかった。

少々疑問だったことがある。とても話を単純にしてしまうが、ピーティであることを「辛い」としよう。あくまでもそれはニュアンスの話であるが、僕の中でその辛さがコショウに近いものが多いのがアイラ・モルトであるのに対して、このベンリアックの辛さは非常にホット。赤唐辛子の熱さに近い。

まぁ、とはいえ、正解である。
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ブラッカダー ロウ・カスク ピート・リーク

ピート・リーク封を切ってから実は1週間ほど経つのだが、こちらの記事の都合で紹介が遅れた。申し訳ない。本日はニューリリースのお知らせです。昨日の記事の続きは来週。

「SINGLE ISLAY MALT WHISKEY」とあるだけで、蒸留所名は表記されていないが中身はカリラ。蒸留年度も熟成年数も表記はなし。長期熟成ではないだろうが、ロウ・カスクらしくパンチの効いたアイラ・モルトである。ウィスキー・エクスチェンジのカリラを売り切ってしまったので、急遽リリースすることにしたが、仕入れたのはもう1年以上も前のことになる。

蒸留年度の表記はないが、瓶詰については記載がある。2005年の6月。現在市場には2006年3月に瓶詰されたピート・リークが出回っている。今回ジェイズ・バーで昨年の2005年瓶詰のもの。

カスクNo.は10572、もちろんシングル・カスク。オーク・ホッグスヘッドから351本瓶詰された。

リーク(REEK)を辞書で引くとどうにも下品なニュアンスを感じる。実際の味わいは切れ上がりの良さと味の濃さを感じるが、もちろん悪臭とは思わない。好きな人には「爽やか」にすら感じるだろう。

1杯¥1,200でのご提供。気楽にやって欲しい。
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大晦日に向け、ラストスパートです。

リリース3本

だから私は嫌われる(9)

僕らの暮らすこの日本という国の人たちは、食べ物に限らず飲み物を含め「人が口にするもの」に対して非常に敏感で繊細で、そして興味と好奇心が旺盛なのだと思う。それこそが文化なのだと思うし、この国に住むものとして、僕はそのことをとても誇りに思う。もちろんその文化は日本という国の豊かさを背景として成り立っているし、豊かな文化が庶民のレベルに根付いていることは安定と繁栄がある程度持続的であったことの証左であろう。

ことの是非はともかくとして、その文化なるものを多くの大衆が支え手になっているのが日本ではないだろうか。どんな職人に対しても、素直な敬意を表そうとする風土がこの国には存在すると思うし、ラーメン屋のどんぶりに手を合わせて「いただきます」と言ってそれを喰らい、吉野家の牛丼ですら食後には「ご馳走さま」と言う。もちろん、施しを受けた側が不愉快な思いをしなければということは前提であるが、この国に暮らす人たちがそんな風でいられますようにと僕は願う。

最近は随分事情が変わって来たと仰る向きも多いだろうが、なかなか捨てたモンでもないと思うこともある。マクドナルドのハンバーガーに「ご馳走さま」を言うのが僕である。食育という言葉が喧伝されて久しい昨今、「いただきます」の言葉の背景に存在するのは想像力であり、「ご馳走さま」の背景に存在するのは感謝であると考える。想像力と感謝なくして出て来た「いただきます」と「ご馳走さま」は力を失う。

僕はこの仕事を長い間続けて来て、つくづく思うのだが、世の普通の人々の特別でない舌は非常に優秀だ。違うものを飲めば違う味がすることを素直に分かる。知識として事前の情報がなければそれが何かを「当てる」ことは難しかろうが、違いがあること自体は誰にでも理解できる。違いを説明するには知識が必要だろうが、違うものを飲めばその味に差異があることは誰でもが理解できる。

ことほど左様に僕らはそのような人たちを相手に働く。文化的な背景を背負い、味覚にも優れた人たちを相手に仕事をするのだ。しかし、くつろぐ場所を演出するのも僕らの仕事である。お客さんの固い表情を和らげて行くことも確かに仕事だろう。僕らが気負い過ぎてもお話にならない。酒と人の間に立ち、愉しみを提供するのが僕らの仕事だ。

件のバーテンダー氏に僕は聴きたい。
あなたはお客さんの「ご馳走さま」をどのような気持ちで受け止めているのだろう?

あなたにとってのそれは「お会計」の合図だろうか?
扉の向こうに立ち去るお客さんに、頭を下げて「ありがとうございました」と言っているだろうか?

「ご馳走さま」、何より僕はそのひと言がとても嬉しい。

「バーテンダーはモルトに頼るべきではない」。
あなたはそう仰った訳だ。僕にはそれは、
「シングル・モルトをバーテンダーの仕事の視野の外に置いても構わない」。
そう仰っているようにしか思えないのだが、如何だろう?
「シングル・モルトなんぞ、脇に置いていたってお客さんは勝手に注文するのだ」と。
「グラスに注いで差し出せば、飲んで満足してくれるのだ」と。
「仕事としてはとても簡単なことである」と。

つまりあなたはシングル・モルトを使ってお客様を愉しませることのできないバーテンダーである。シングル・モルトを視野の外に置いたとあなたは宣言したのだ。あなたが愉しませることができないので、優秀な飲み手があなたを使って勝手に愉しんでいるだけなのだ。確かにあなたは面白くないのだろう。しかしあなたは、
「バーテンダーはモルトに頼るべきではない」。
などと言う「べき」ではない。
「私はモルトに頼れない」。
そう仰ってみたらどうだろう。


さて、この連載もぼちぼち佳境に入って参りました。
関係各方面からの反響も多く、誤解を恐れるばかり筆を進めることに大きな躊躇いもありました。まさに、「だから私は嫌われる」のであります。

ただ、僕自身がシングル・モルトを軸に扱うバーを経営する立場にあることを、強く自覚し働き続けることはこれからも変わらないでしょう。そんな場所にたくさんの、そしてより大きな共感を求めてお客さんがいらしていただけることを僕は願って止みませんが、どんなお客様にもゆったりと心地良い時間と空間を僕という人間の手で提供していきたいと思います。

バーの世界の中で「カクテルVSシングル・モルト」という対立の構図を描くことは、僕の意図することではありません。それは今まで僕がどれほどの誹謗中傷を受け、様々な揶揄と嘲弄を受けたとしてもです。確かにそこには近親憎悪のような感情があるのかもしれません。

僕の立場はシングル・モルトの側にあるのでしょう。だけど、カクテルを軸とするバーテンダーの方とでも、それが大人の方であれば、相互理解の結果、互いをリスペクトすることは十分に可能です。人生を豊かにするそのような経験の積み重ねは素晴らしいものです。

僕は常々、「こだわり過ぎないことにこだわれ」。あるいは「視野を広く取ろう」。シングル・モルト好きの方にそう申し上げております。「シングル・モルトの森」を散歩するとはそんなことでもあるのです。

僕がひと言申し上げたいと思うのは、心ない子供のバーテンダーと悪意ある大人のバーテンダーに対してです。そして、心あるすべてのバーテンダーの話が聴いてみたと思うのです。
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だから私は嫌われる(8)

「バーテンダーはモルトに頼るべきではない」。
そう仰るあなたにひと言申し上げよう。

あなたは若い。実年齢がそれほど若くないのなら、あなたは視野が狭い。
視野が狭いが故の整合性というものはある。視野の狭さを有効に使うことは可能だ。その狭い視野の中だけで理に適った生き方をすることは不可能ではない。シンプルな原理原則を用いて、潔く生きたつもりになることはできる。

しかし、世の中とはそんな単純なものではない。簡単にしたい気持ちがあることは理解できるが、簡単でもない。複雑で複合的であるのが人の世の常である。本来は視野を広く持ち、目の前の世の中を見つめるべきだろう。あなたの周りにある360度の広がりを持つ世の中で、固定的な一部の領域にしか興味を持たないのでは結果として不都合を招くのではないだろうか。

「バーテンダーはモルトに頼るべきではない」。
あなたはそう仰った訳だ。僕にはそれは、
「シングル・モルトをバーテンダーの仕事の視野の外に置いても構わない」。
そう仰っているようにしか思えないのだが、如何だろう?
「シングル・モルトなんぞ、脇に置いていたってお客さんは勝手に注文するのだ」と。
「グラスに注いで差し出せば、飲んで満足してくれるのだ」と。
「仕事としてはとても簡単なことである」と。

もちろん僕はその態度に承服しかねる。
しかし、僕はあなたを赦そう。視野狭窄はむしろ若者の特権である。その視野の狭さを利用して、どこかに突き抜ければよろし。もしもあなたが、万が一にも老人であるなら、その視野の狭きことはむしろ弊害である。

とはいえ、ひとつ付け加えよう。
あなたは自らの仕事の優位性を訴えるために、シングル・モルトを劣位に置こうとしているのだろうか?あなたはお客さんに支持されたいと願っているのだろうか?そのこと自体は自分を戒め日々働くために立派な態度と思うが、シングル・モルト好きのお客様には支持されないと思う。なるほど、シングル・モルト好きのお客様など相手にしないというなら話は別だが。

しかし、どうだろう。カクテルが得意と自負するあなたなら、ご自分の得点を重ねるべく努力をしたらよろしいのではないだろうか。徒に相手の失点を望むのは如何だろう。あなたがシングル・モルトに頼りたくないのなら、もちろんそれは構わない。だけど、僕がシングル・モルトを大切にすることまでをも汚さないでいただきたい。

あなたはお客さんに尊敬されたいと思っているのだろうか?
そのために自分に都合の良いお客さんだけを集めたいと思っているのだろうか?
シングル・モルトに興味のあるような、
カクテルを飲もうともしないようなお客さんには興味がない?

僕はお客さんに信頼されたいと願って止まない。
僕はカクテルを作りながら、シングル・モルトをグラスに注いでいこう。

どうやら視野が狭いあなたのようだ。
他人のことは構わない。あなたはあなたのことを語ったらどうだろう。
シングル・モルトを使ってお客様を愉しませることを、あなたはあきらめたのだから。

失礼を申し上げたか?人気ブログランキング

だから私は嫌われる(7)

僕らの仕事はオーダーを受けたところから始まるのだろうか。お客さんにメニューを渡し、それを見たら勝手にオーダーが入り、言われた通りに作る。受けたオーダーを懸命にかつ丁寧にこなすことはもちろん大切だが、それが僕らの仕事だろうか。

その態度は作業であるかもしれないが、仕事ではない。僕はそう思う。
他の職業に詳しくはないので僕のことに限って言わせていただくなら、人を気持ち良くさせるのがバーテンダーの仕事である。

当然、僕もバーテンダーの「作業」を軽く見ているつもりはない。僕らの仕事は細かく小さな作業の積み重ねの上に成り立っている。作業がおろそかで人を気持ち良くすることはできない。高いところに行こうと思うなら熟練が必要となる。どのような職業の方でも、そう変わりはないのではないだろうか。僕はおいしいカンパリ・ソーダを作りたいと思っている。

気持ち良くなりたいと思うから、人は酒を飲むのではないだろうか。酒は愉しみを増やす為にある。バーに限らず、飲み屋とはそんな場所ではないだろうか。気持ち良くて良いのだ。酒は快楽の為に存在する。しかし残念だが、酒を飲んでも苦しみは減らない。それを理解し公共の場所である飲み屋で他人に迷惑を掛けなければ良いのだ。それが大人の嗜みである。

快楽を求めることに深い罪悪感を持ってはいけない。適切な戒めを持てば良い。快楽を浪費し幸服を取り逃がすことがあるからだ。快楽を求めることに損得勘定があれば良いのだ。費用対効果である。快楽を効果とするなら、それを得るための費用は付いて回る。費用対効果のバランスが崩れてまで効果(快楽)を求めるのは愚かだ。費用が効果を上回ってはいけない。それを崩しがちな侍から皆様に忠告をさせていただく。

さて、話を戻そう。
愉しみを求めて人は酒場に来るのである。愉しみ方を十分に知る人を前にするなら、僕らの仕事は少し簡単かもしれない。まずは待てば良いのだ。愉しみ方を知る人は、どうしたら自分が気持ち良くなるかを知っている。その人には「心に決めた、飲みたい一杯」があるかもしれない。僕はそれを邪魔するべきではないと思う。オーダーを受けて、それから動き出せば良い。注文通りに適切に対処すれば良い。

恐らくその態度こそが、件のバーテンダー氏のいつもの振る舞いなのではないだろうか。
「お客さんに頼まれたものを精一杯の努力で作ったので、それを嫌いだと言われても、それはお客さんが悪いです」。そのバーテンダー氏は愉しみ方を十分に知る人を前にするなら、きっと非常に優秀なバーテンダーなのだろう。その手の優秀なお客さんはバーテンダーの使い方を心得ている。しかし、裏を返せばその手のバーテンダーは、愉しみ方を十分に知る人の前でしか働くことができない。昨日も言わせていただいた。提案のできないバーテンダーなのではないだろうか。

すべての人が愉しみ方を十分に知った上で酒場に来る訳ではない。
「愉しみ方を知らない人は飲みに来るべきではない」。あなたはそう言うのだろうか?では、愉しみ方を知らない人はどこでそれを覚えたらよいのだろう。もしもあなたがそれを知っているなら、あなたはそれをどこで覚えたのだろう。また、愉しみを十分に知る人でも、すべてを知っている訳ではない。

僕は謙虚でありたい。
不愉快に身悶えし、悪意に怒りを表し、それでも最後は人の過ちを赦したい。
僕は医者ではない。
だから、人の苦しみは治せない。
僕はバーテンダーなのである。
だから、人に愉しみを増やしたい。

ほど良いくらいに連載が終わりますように。人気ブログランキング

だから私は嫌われる(6)

先週の記事の続きです。この連載の1回目はこちら
「買って来たものを量って売るだけなのがシングル・モルト」、「ラクで良いよね」。だから、「バーテンダーはモルトに頼るべきではない」。「バーテンダーはカクテルを作るほどにもっと苦労をすべきである」。あなたはそう言いたかったのではないだろうか。

まだ見ぬバーテンダー氏の言いたいことを要約させていただこう。
バーテンダーとして、
「カクテル作りには知識と技能と感性を必要とする」。
「グラスに注ぐだけでこと足りるのがモルトである」。

あなたの仰る通り、「カクテル作りには知識と技能と感性を必要とする」という見解に僕も異存はない。しかし、シングル・モルトに対する見解にはまるで同意できない。「技能」という点では確かにおいしいカクテルを作るバーテンダーには高度なそれが存在することを認めよう。しかし、シングル・モルトを提供するためにも「知識と技能と感性」は必要なのである。それを知恵と呼んでも良い。

「グラスに注ぐだけでこと足りるのがモルトである」。
もしもあなたがそう思っているなら、それはあなたがそんな態度でシングル・モルトを扱っているのだ。その台詞はあなた自身の仕事振りを言い表しているに過ぎない。だから当然、あなたはシングル・モルトを売ることが「ラク」なのだろう。あなたが「グラスに注ぐだけでこと足りる」と思っているだけである。だってあなたはそんな風に働いているのだから。

さて、僕はあらぬ心配をしてしまったので話をさせていただこう。
あなたはお客さんに提案をできないバーテンダーではないだろうか?

お客さんが来店する。「いらっしゃいませ」と言う。カウンターに座る。メニューを出す。お客さんは飲み物を選ぶ。例えばカクテルをオーダーする。あなたはオーダーを受けてカクテルを作る。もちろんカクテルの得意なあなたのことだ。高度な技能でおいしいカクテルを作るのだろう。だけどあなたは、お客さんがメニューを見て注文したことを免罪符にしていないだろうか。

確かに注文をしたのはお客さんだ。あなたは頼まれたものを正確に出した。もちろん他のバーテンダーが出すものよりも「おいしい」という自信を持って。それはきっとカクテルとしては素晴らしいものなのだろう。しかし、あなたはどのくらい興味があるのだろう?カクテルの出来映えとしての「良し悪し」ではなく、お客さんの「好き嫌い」を。

あなたは言うのだろうか?
「お客さんに頼まれたものを精一杯の努力で作ったので、それを嫌いだと言われても、それはお客さんが悪いです」、と。果たしてそれはお客さんの「自己責任」なのだろうか?あなたは「良いカクテル」を作った。それを受け入れないお客さんが「悪い」のだろうか?

「良いカクテル」を作り続けるあなたは、あなたのカクテルをおいしいと言ってくれるお客さんがいることを誇らしく思うかもしれない。だからあなたはつまらないのかもしれない。グラスに注いだだけのシングル・モルトをおいしいと言うお客さんが。

あなたはお客さんの気持ちに寄り添うことができているだろうか?あなたはお客さんの快楽に敏感だろうか?自分の製品を押し付けることを仕事だと思っていないだろうか?

もしもそうであるなら、あなたのその振る舞いは「仕事」ではない。非常に高度なものではあるかもしれないが、それはただの「作業」である。

この侍はシングル・モルトを売ることを仕事としている。
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ファースト・カスク ダルユーイン1973 30年

ダルユーイン昨日は失礼をした。少々快復の侍である。一昨日の続きは申し訳ないが、来週に。
本日は皆様にニュー・リリースのお知らせである。

お客さんと話をしながら好みの酒を探っているうち、きっとこれが良かろうと思い、先日また1本封を切ってしまった。30年熟成、1973年蒸留のダルユーイン。ダイレクト・ワイン社のファースト・カスクの商品である。恐らく、ダイレクト・ワイン社のシングル・モルトを仕入れるのは初めてのことである。

初めての出会いである。素直に「初めまして」と言いたいところだが、その前に皆様にご説明をしたいと思う。特にこのラベルについて。向こうだって、侍に会うのは初めてのクセに、どうにも無作法な奴なのである。

写真でもお分かりいただけるように、ラベルの中央に一番大きな文字で「FIRST CASK」とあるが、何もこれはダルユーイン蒸留所の「初めてのカスク」という意味ではない。まして、ジェイズ・バーで仕入れた「初めてのカスク」という意味でもない。同社の持つひとつのブランドだと考えていただくと妥当だろう。

その下、「1973」と蒸留年度。さらにその下、「Speyside Malt Whisky」。ラベルは上下二段仕立てになっており、下のラベルには「CASK no. 14740」、「BOTTLE no.410」。

「おや?」と思われた方もいるかもしれないし、いないかもしれない。そう、このボトル。蒸留所の名が見当たらない。蒸留所名が表記されていないこと自体は、そうそう珍しいことではないと思う方も多いかもしれない。何がしかの制約のもと、蒸留所名を表記できないボトルがあることをご存知の方も多いだろう。

「名を名乗れ!」、と言いたい気持ちを抑えて、蒸留所の名が書かれた場所を探した。この手の瓶詰業者のボトルというのは、自社ブランドを優先的に大きく扱う。どの瓶詰業者も樽を手に入れた蒸留所名よりも、自社名とブランド名を大きな字で表記する。だから、「FIRST CASK」の字よりも小さい字で書いてあってもおかしくはないのだが。「スペイサイド・モルト」と書いてあるのだから、スペイサイド・モルトに間違いはないだろうが。

見つからない。なるほど、何かの理由で蒸留所名を表記することを許されていないのだなと思った。ところが、である。
実はこのボトル、蒸留所名が書かれている。
どこに?と思うだろう。とても小さいので虫眼鏡で拡大してみた。
ダルユーイン 虫眼鏡







ここに、こんな小さな字で。
ダルユーイン拡大小さ過ぎねぇか?
これはまた、非常に珍しい。どうせなら、もう少し大きな扱いにしてあげても良いのではないだろうか。そんな小さな声では分かんないよ。自らの出自がそんなにも恥ずかしいか?
今回、初めての出会いとなったダイレクト・ワイン社であるが、「うちが瓶詰したんだから、蒸留所なんてどこでも良いよ」という彼らの主張なのだろうか。
「横暴か?」。


その味わいについてはまだ何も語っていなかったが、非常に爽やか。涼しげなシングル・モルトである。寒さが本格的になる前に、どうだろう。何はともあれ、うまい。
今日から、金・土・日、3日間のみ¥1,500で、どうだろう。
お一人様、1杯限定でお願いしたい。
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