モルト侍

池袋のショット・バー、ジェイズバーのバーテンダーが、大好きなシングル・モルトを斬る。

2015年05月

江井ヶ島 2010 / 赤ワイン樽フィニッシュ 桜

東京の桜はもうとっくに散ってしまったけれど、ジェイズ・バーのカウンターは少しだけ華やいでいる。500ml瓶、ラベルのデザインと合わせてキュートな佇まいだと思う。

何かの事情か、あるいは誰かの都合かは分からないが世の中の方より少しばかり遅れての入荷であります。

気になっていたウイスキーだった。事前にいくつかの評判を耳にしたが、個人的に「これは愉しめる」ウイスキーだと評価している。

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飲み口のクセっぽさをネガティブに捉える人がいることに異論はない。これは、熟成5年足らずのウイスキー。

フレンチ・オークの赤ワイン樽で一年半あまりの追加熟成を行っているとのこと。その試みがこのウイスキーに大きな愉しみを追加したのだと感じている。

時間とともにカラメル・チョコレートのような香りを放ち、オレンジの皮、火の着いていない炭、干しぶどう、黒糖、靴墨。不思議な展開力のある揺らぎなのである。

飲み干したグラスに鼻を突っ込みながら、僕はスティービー・ワンダーのように揺れていた。

何かを追い掛けていたら、探していたものではないものばかりを手に取って、何を追い掛けていたのかさえ忘れてしまって、でもだからと言って、そのことが特に不都合ではないという気分になってしまった。

何処かにある何か、より、手に持った愉しみ、の方が大切なのだな。

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江井ヶ島 2010
赤ワイン樽フィニッシュ 桜
Red Wine Cask Finish , Cask Ref.61391 , 58%

「3杯セット」のご利用が可能です。
他の違う銘柄のウイスキーと合計3杯(ハーフ・ショット)で¥2,000(税込¥2,160)。
1杯当り、¥720(税込)です。

発注・入荷・リリース情報はジェイズ・バーのFacebookページ
池袋でシングル・モルト・ウイスキーを!

ハイランド・パーク 1984 -2011 27Yo TWA / バグス

今回一挙にリリースした6本の中では一番に小粒に思うかもしれないハイランド・パーク。瓶詰めが2011年で、今思えば、まだギリギリ80年代ハイランド・パークが妥当な値段で売られていた時代だったかもしれない。

ハイランド・パークというのは個人的に思い入れのある蒸留所。ウイスキーを飲み始めたばかりの頃、まだまだ僕には「蒸留所単位」というカテゴライズしかなくて、これは好きな蒸留所のひとつなのかもしれない、と思ったものだ。

その頃飲んでいたのは、当然のことながらオフィシャルものばかりで、何を飲んでもどこかにシェリーのニュアンスを感じるなというのが全般的な印象だった。

それから瓶詰業者華やかなりし時代になって、バーボン樽のシングル・カスクのハイランド・パークを飲んで驚いたことを良く憶えている。その頃、いくつかのその手のハイランド・パークを追い掛けるのに夢中になったものだ。

そんなことが、僕のウイスキー体験に厚みをもたらせてくれたことは明らかだと思う。夢中になっている時には分からない。体験が意味を獲得するには少しばかり時間が掛かるものなのだ。

熟成25年を超えて30年前後、バーボン樽のハイランド・パークとして、これは標準的な香りと味わいだと思う。

今改めて試してみても、あの頃僕が追い掛けていたものが、このグラスの中には十分に存在する。
それらの存在がなぜ僕を愉しませるのかは、僕にも上手く説明はできない。でもそれは、なぜ人が恋をするのかを説明しようとすることと同様に愚かなことだとも思う。

人は理由があって恋をするのだろうか?

誰かを好きになって、その後、「なぜあの人が好きなのだろう」と考えてしまうことなら、誰にでもあるかもしれない。だけど、多くの人が語る「好きな理由」はほとんどの場合こじつけに聴こえてしまう。
でも、僕はどちらかと言えば(いや、むしろ圧倒的に)、「好きな理由」を考え続けてウイスキーと

向き合って来た方だと思う。

相手に注意と関心を向けて理解しようと努め、自分とのマッチングを考え、自分の気持ちを相手に伝えたいと思っていた。もちろん、相手はウイスキーであるのだけれど。

「両思い」というのは同時進行する「ふたつの片思い」なのだと思う。確かにそれは、少しばかり切ないことのように思うけれど、一見「両思い」のように見えるカップルがとても素敵に見えるのは、
そのふたりにある種の覚悟があるからではないだろうか。

互いに相手を思い、相手を気遣い、相手に寄り添い、相手の望むことをしてあげたいと願い合うカップルが素敵に見えない訳がない。だけど両者は自分の施しに条件を付ける訳でもない。

彼らもまた、「自分が裏切られる不安」を抱えて行きているのかもしれない。だけど彼らは「好きになってくれないなら、好きになれない」とは言わない。

僕が好きになった相手はウイスキーで、だから尚更、ウイスキーが僕を好きになることはないだろう。
だけど最後にひとつだけ、
このハイランド・パークは一昨年の秋、縁あってフランス・パリからやって来た。言わば、「友達の友達の知り合い」くらいの距離の所からやって来た訳だ。
いくつもの偶然が重ならないと巡り合うことのなかっただろうウイスキー。人と人との出会いがそうであるように、ウイスキーとの出会いも似たようなもの。
このハイランド・パークとの出会いを思うと、このハイランド・パークが意思を持って僕のところに

やって来てくれたのではないかと感じてしまう。

僕は長いことウイスキーを愛して来たけれど、ボチボチウイスキーが僕のことを好きになってくれ始めたのではないかと思う、今日この頃。

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ハイランド・パーク 1984 -2011 27Yo
TWA バグス


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キャパドニック 1968 35Yo / マーレイ・マクダヴィッド ミッション

引き続き今夜もマーレイ・マクダヴィッドのミッションからキャパドニック。

これも10年ほど前に飲んだウイスキー。当時の記憶では圧倒的にグレン・ロッシーの方が好きであったのだが、2015年の今飲むこのキャパドニックには少し驚かされた。

当時の僕に感じられなかったものを感じられるようになったのかもしれない。あるいは、このウイスキーがボトルの中で十数年を過ごし変化をしたのかもしれない。

ことの真偽は分からない。ただ、十数年ぶりに飲んだこのウイスキーを僕は素直に美味しくなったと感じた。

バニラ・カスタートクリーム系の甘い香り。ハチミツとバナナ。薄いオレンジ・マーマレード。トーストする前の食パン。微かで程良い柑橘系フルーティ。次第に香ばしいクッキーと少しのバター。ピーティ。紅茶のシフォンケーキ。

そして、昨日と同様に、驚いたことに、このキャパドニックもまた微かな(いや、昨日のグレン・ロッシーよりは明瞭に)塩味を感じる。一体このウイスキーは、どの場所で熟成を重ねて行ったのだろうかと思わせるほどだ。

さて、68キャパドニックと言えば、皆さん触手が伸びづらいとお考えかもしれない。確かに、圧倒的なフルーツ感のある72キャパドニックとは一線を画する仕上がりであることは間違いないが、このしっとりした甘さを愉しんでもらえると思う。

お客さんと「ブラインド・テイスティングをしたら何と答えるか?」みたいな話をしていて、僕なら「ハイランド・パーク」と答えるかもしれないと感じたキャパドニック。愉しく話の盛り上がるウイスキー。

僕らは何でウイスキーを飲むのだろう。結局の所、愉しいから飲むのだ。「正解」を求めてウイスキーを飲んでいるのではない。「善/悪」や「正/誤」で切り分けてもその愉しみを分解してしまうだけだろう。

確かに、このキャパドニックにハイランド・パークを感じてしまう僕が「間違い」であることは間違いがない。でもそれは、紛れもなく僕が感じてしまったことなのだ。

ただ、隣に誰かがいるなら、僕のそんな素直な感想に、部分的に納得してくれる人がいたり、まったく共感できない人がいたり、そうやって夜は更けて、仲も深まる。

今夜、ハイランド・パークのように感じた僕も、明日には違うように感じているかもしれない。昨日は分からなかったあの人の言葉が、明日には分かっているようになるかもしれない。

いづれにしても、すべてを「善/悪」や「正/誤」で切り分けてしまうことは愚かだ。自分の思う正義を尊重し悪を切り捨て続ければ、純粋な正義に立てる訳ではない。自分の正義が常に正しいことはないから。

正義は悪と対峙するのではなく、もうひとつの正義とぶつかり合う。清濁併せ持つことで全体は成り立っている。間違いを排除し続けることで、全体が機能しなくなることがある。

長らくウイスキーを飲み続けることで、僕が得たものがあるとするなら、愉しい状態を保つことを心掛け、美しいものを追い掛けて行こうとするなら、どうやら間違いがなさそうだ、ということとくらい。

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キャパドニック 1968 35Yo
マーレイ・マクダヴィッド ミッション
600bottles , 46%

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池袋でシングル・モルト・ウイスキーを!

グレン・ロッシー 1975 27Yo / マーレイ・マクダヴィッド ミッション

このウイスキーを初めて飲んだのは、もう10年以上も前のことになるのだけれど、華やかで美しい麦の香りが印象的だったことを良く覚えている。

このウイスキーをフルーティと感じる人がいるだろうことに異存はない。確かに、追い掛ければいくつかの(十分な)フルーティなニュアンスであると解釈することは可能だ。

ここに華やかなニュアンスがあるなら、例えば、フルーツと穀物とどちらに「華やかさ」を感じるか?と問われれば、フルーツを華やかと感じる人が多いだろうとも思う。

けれど、僕はこれを麦が華やかなウイスキーなのだと解釈している。

華やかで美しいその香りは、やがてゆっくりと時間を掛けて甘い側面を覗かせる。バニラの甘い香り。しっとりしたカステラのような甘い香り。シュークリームの皮のような微かに香ばしい甘い香り。

このウイスキーが少し曲者なのは微かに塩味を感じるところ。例えばそれは、クレープの生地に薄っすらと塩味を感じる程度のもの。そして、タマネギの皮のような独特のニュアンス。

僕が感じたものを拾い出して感想文のようにまとめれば、そのような文章になるのだけれど、それらのすべては僕が感じたことに他ならない。他の人が僕と同じように感じることを僕は強制しないし、またその必要もないだろう。

同じ本の読書感想文をふたりの人がそれぞれに提出し、その内容がまったく同じだったらとても奇妙な話だ。

何もウイスキーの限った話ではないけれど、世界のすべては認識と解釈で成り立っていると言えるかもしれない。人により解釈が異なることがある。同一の対象に違う解釈が成り立つことは不思議ではない。

視点が変われば見え方は違う。
それが、世の中であるとも言えるだろう。

だから、「思ったことを言えば良い」のだと思う。言いたいことを言い。人の話に耳を傾け解釈は改められて行く。同一の対象を眺める者が増えれば、それはやがて複眼的になり、世論として形成されて行くのだろう。

同じものを違う視点から眺める人がいるなら、その人の経験を借りないのはもったいない話ではないだろうか。互いの立場の違いを理解すれば、やがて共感が訪れる。何しろ人はそうやって仲良くなって行くものなのだ。

僕はこのウイスキーをカステラやシュークリームの皮やクレープの生地のように「解釈」した。それらは概ね薄力粉を使って作られるものだろう。つまり、僕は僕自身「麦が華やか」と感じることに合点が行くのだ。

確かに、世界のすべては認識と解釈で成り立っているのかもしれない。だけど、一番大切なのは認識でも解釈でもなく期待だ。僕はウイスキーの将来に期待を持っていて、期待には未来を変える力があると信じている。

もう少しで21周年。

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グレン・ロッシー 1975 27Yo
マーレイ・マクダヴィッド ミッション
600bottles , 46%

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スプリングバンク 1970 - 2007 / ザ・シークレット・トレジャー

昨日に引き続き今夜もスプリングバンクのご案内。OB/21Yoと一緒に何か他のスプリングバンクはないかなと探していたところに出て来てくれました。

ある意味こちらの方が「正統派」なスプリングバンクではなかろうか。OB/21Yoと比べると、エッジの効いたスクエアないで立ちであります。程良いシェリー感もなかなか秀逸でありますな。

しっかりとその存在感を保ちつつ、かと言ってまったく嫌味ではない。微かにワクシー。オレンジピール、少しの塩味とピート。海藻とココナッツ。パイナップルとナツメグ。複雑にスパイシー。柑橘フルーツとバニラ。

70ヴィンテージのスプリングバンクなんていうウイスキーを、僕はこれから先、一体どのくらい愉しむことができるだろう。

今気軽に愉しめるスプリングバンクとは、明らかに違うウイスキーと言って良いだろう。スプリングバンクにも当然ながら変化は訪れているのだろう。

ウイスキーとは体験するものだ。ただ、体験が意味を獲得するまでには、少しばかり時間の掛かるものなのだ。体験は情報と違う。知識とも違う。言うなれば、知恵のようなもの。

頭を明瞭にしてくれるはすの情報や知識が役立たずなことがある。だけど、あなたが集めた知恵はあなたの足元を明るくするだろう。

もう少しで21周年。

スプリングバンク1970

スプリングバンク 1970 - 2007
ザ・シークレット・トレジャー
Sherry Cask , Cask No.1344 , 489bottles , 43%

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池袋でシングル・モルト・ウイスキーを!

スプリングバンク 21Yo / OB 陶器ボトル

今年21周年になるジェイズ・バーですが、当然のことながら昨年は20周年でありました。昨年もいくつかの手持ちの在庫を出しまして、その時に「来年は何を出そうかな」なんて思っていたのでありますな。

「来年(つまり今年)は21周年だし、スプリングバンクの21年でも出そうかな」と思っていたのでありました。

予定通りに出しましたが、こいつは陶器ボトル。まぁ状態が心配だったので開封時にはドキドキでした。封を切り、香りを取って一安心。しっかりと生きておりました。

艶っぽい気品のある香り。しっとりと穏やかに落ち着いた淑女という感じでありますな。豊潤で甘い香りは非常に複雑でありますが、各要素に切り分けるのが難しく、確かに際立って特徴的とは言えないでしょう。

しかし、これはこのバランスを愉しむウイスキー。

「変わらないこと」というのはある意味「後退」なのではないだろうか。何故なら時代は進歩するのだから。永遠に現状維持を目指すなら、その態度は保守ではなく守旧であるだろう。

スプリングバンク蒸留所も時代とともに変化をして来ただろう。それが進歩であるのか後退であるのかは、時代の中で世論が決めること。僕は事の良し悪しを僕は語ろうと思わない。

長い時間、この陶器のボトルに納まって、か細く息をして来たと思われるこのスプリングバンク。こいつだってボトルの中で少なからず変化を遂げて来たのだろう。恐らくは、そのおかげで個性的過ぎないバランスの良さを手に入れている。

もう少しで21周年。

R0025223

スプリングバンク 21Yo
OB 陶器ボトル
43%

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