中村君は素直である。
今回の「セカイチBLT」に彼が優勝をした理由をひと言で簡潔に申し上げるなら、そういうことになると思う。ひと口飲んで、それを味わい香りを嗅いで、頭の中に浮かんだイメージを素直に言葉にした結果から、合理的に推論を組み立て、排除すべき選択肢を切り捨て、正解を絞り込んで行く。中村君本人の思いは「何となく、当たっちゃいました」、ということかもしれない。しかし、僕からすれば彼の所作はそのようにみえる。自然で素直な振る舞いから正解は導き出されるのである。

もちろん、彼はひとりの力で優勝を勝ち取った訳ではない。彼を助ける存在として傍らにいたのはシングル・モルトの父、マイケル・ジャクソンであった。「モルト・ウィスキー・コンパニオン」を読みながら彼は問題に答えた。

まず、自分が素直な感想を持つことが大切である。素直な感想をマイケル・ジャクソンにぶつけ、中村君はそこから正解を見つけた。アンケートの結果から彼がそれぞれの問題にどんな感想を持ったかを追いかけてみよう。

「どちらに味の濃さを感じますか?」、という質問に対して彼は「A」(ミルバーン)と答えている。そう答えた背景にあるのはミルバーンに存在する複雑さ、またはアルコール度数の高さかと思われる。今回のミルバーンとハイランド・パークを比べた場合、ミルバーンの方により強いインパクトを感じることからも妥当な答えだろう。

「どちらに甘味を感じますか?」、という質問にも「A」と答えている。問題に取り組みながら彼はポツリとつぶやいた。「結局、Aの方が甘いですね」。他の多くの参加者同様、彼もAに存在する塩味には苦しんだかもしれない。しかし、じっくりと味わううち少しづつ大きくなる甘味を彼はその特徴として採用したのだろう。結果としてどちらが甘いかと問われれば、Aが甘いと答えている。

「どちらに華やかさを感じますか?」との質問にも「A」と答えている。複雑な甘味、口の中で広がる感触、嫌味の少ない花のような香りは確かに「華やか」であると思う。しかし、この質問は何人かの参加者を戸惑わせたのかもしれない。他の質問に比べより主観について問われているような思いがあったのだろう。例えば、「どちらが濃いか?」、「どちらが甘いか?」、「どちらがしょっぱいか?」などという質問なら定量的に数値化しその度合いを測れそうな気がするが、「華やかさ」というのはどういうことか、少々面食らってしまった方も多かったのかもしれない。

僕の感想を述べさせてもらうなら、より華やかなのはハイランド・パークではなくミルバーン。反対語に思いを巡らせていただきたい。「濃い」の反対は「薄い」。これは異論がなかろう。「華やか」の反対は「地味」で良いのではないだろうか。今回のハイランド・パークとミルバーンを比べるなら、ハイランド・パークの方がより「地味」であり、ミルバーンの方は「華やか」だ。確かに、「華やか」にはポジティブなイメージが、そして「地味」にはネガティブなイメージが付きまとうかもしれない。しかし、「地味な方が好き」は十分にありだと思うのだが、如何だろう?

アンケートにおもしろい結果が表れている。最初の質問に「どちらが好きか?」を答えていただいた。これこそまさにあなたの主観について尋ねている。この質問に「B」(ハイランド・パーク)と答えた方はどうやら「どちらが華やかか?」という質問に苦しんだようだ。ハイランド・パークが好きと答えた方は8名。その半分が「どちらが華やかか?」と問われ「どちらでもない」と答えている。地味な方が好きな自分に戸惑ってしまったのではないだろうか。

さて、話を戻そう。
より甘く、華やかであるから、正解はスペイサイド・モルトのミルバーン。中村君はマイケル・ジャクソンと相談してそう答えた。まず、自らが素直な感想を持ち、蒸留所の特徴をマイケル・ジャクソンの著作からくみ取り、正解に辿り着く。妥当ではないだろうか。

懲りずに明日に続く。
お願いでござる。人気ブログランキング