STDアードベックシングル・モルトは愉しい酒である。
昨日、そう申し上げた。僕がことさら愉しいことを強調したいのは、シングル・モルトは「おいしいだけ」の酒ではないということだ。知るほどに愉しみが広がっていくのがシングル・モルトだ。知ることは面倒なことではない。知ることとは、飲むことである。

僕のいう「知ること」は、知識を指していない。知恵を指している。知の恵みはあなたのシングル・モルトの愉しみを増やすだろう。すべての蒸留所の電話番号を憶えることは苦役でしかない。少なくともシングル・モルトを愉しむのに必要なことではない。だけど、知恵の付いたあなたは、知恵のないあなたより一層シングル・モルトを愉しんでいることだろう。

あなたには愉しみを求めてここに来て欲しい。残念だが僕はあなたの苦しみを取り去ることができない。だけど、愉しみを増やしてあげることならできるかもしれない。それはいつでも僕の望みだ。あなたが愉しみを増やすことを望むなら、僕はそれを手伝うことが可能だと思う。

実はそんなに難しいことではない。
飲んでみれば良い。
飲めば分かる。
分かれば愉しくなる。
何かを憶えてここに来る必要などない。

だけど、あなたはまだ不安かもしれない。「分からなかったらどうしよう」と思っているかもしれない。でも、心配は要らない。飲めば分かる。必ず。

まだ心配なあなたのために、「分かる」について説明をしよう。
「分かる」と「知る」は違う。「分かる」とは身に付くことであり、「知る」とは憶えることである。

あなたは今まで飲んだことのないお酒を飲んで「おいしい」と思ったことがないだろうか?
あなたはそのお酒を飲んで「おいしい」と思ってしまった。そしてそれはあなたが今まで飲んだことのない種類のお酒。飲んだことがないから、確かにあなたはその酒を知らない。だけど、あなたはその酒を「おいしし」と思った。

さて、不安なあなたに僕は聴きたい。
確かにあなたはお酒に詳しくはないのかもしれない。知らないことは多いのだろう。だけど、どうだろう。あなたは自分が何を飲んだらおいしいと思うか、分かっているのではないだろうか?分かっているからこそ、初めて飲む酒を「おいしい」と思うのではないだろうか?
そう、あなたは分かっているのだ。ただ、知らないだけだ。

逆のことを申し上げよう。
すべての蒸留所の住所と電話番号とその敷地面積を、正確に知っている人がいたとしよう。そんな人がどんな酒を飲んでも「おいしい」と思えなかったとする。その人は何がおいしいのか分からない。そんな人はお酒を愉しめるだろうか?

何でも良く知るその人よりも、何も知らないが自分の「おいしい」については分かっているあなたの方が、シングル・モルトを愉しめるのではないだろうか。飲めば身に付く。「おいしい」という感想はあなたの中から沸いて来る。

ただ、本日最後にひと言だけ申し上げておこう。
そんなあなたも、「次に何を飲んだら愉しくなるのか」を知らない。あなた自身がある種の目論見を持って予測を立てることはまだ不可能だ。違うだろうか?
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