ヒヤシンスSを快勝し、4戦4勝としたエピカリス(美浦・萩原厩舎)。
その牝系は1972年天皇賞春・優勝馬ベルワイドに遡り、
40年以上に渡り、コンスタントに活躍馬を送り出してきた。
今回はコランディアを祖とする牝系の歴史と、
エピカリスのこれまでについて、紐解いてみたい。
【天皇賞馬ベルワイドと、コランディアの牝系】
エピカリスの牝系は、1958年生の英国産の輸入馬、コランディアを祖とする。
浦河・鎌田牧場でコランディアが10歳の時に生んだベルワイドは、
1964年セントレジャー勝ち馬インディアナ(タケホープの父)の産駒。
競走年齢に達したベルワイドは
東京・阿部正太郎厩舎に入厩し、主戦騎手を務めたのは加賀武見。
後に1978年有馬記念優勝馬カネミノブを生む、
厩舎・騎手のコンビで競走生活を送った。
1971年スプリングS2着と早くから頭角を現したベルワイドは、
ダービーはヒカルイマイの前に6着、
菊花賞はニホンピロムーテーの4着。
その間、セントライト記念で重賞初制覇を飾り、
翌1972年、天皇賞春で菊花賞馬アカネテンリュウらを下し、
念願の八大競走制覇を飾った。
こうしたベルワイドの活躍の中、
エピカリスの4代母であるヤヨイカマダは、
当時のリーディングサイアー・チャイナロックの仔として
期待を受けて誕生する。
ヤヨイカマダとその仔ミユキカマダ(父ダイアトム)は、
記録を調べる限り、顕著な成績を残していないが…
ミユキカマダは1980年代に、
ルイジアナピット(父ヴァリィフォージュ)、
ダイカツリュウセイ(父プルラリズム)と、2頭の重賞勝ち馬を輩出し、
社台C白老Fで生産された
ルイジアナピットの孫リトルアマポーラ(父アグネスタキオン)は
エリザベス女王杯を優勝。
ルイジアナピットの半妹
マーチンミユキ(父マルゼンスキー)から発展した牝系は、
上記の表のとおりバアゼルリバー(父フジキセキ)、
アデイインザライフ(父ディープインパクト)、
メイショウナルト(父ハーツクライ)と、
近年、次々に重賞優勝馬を輩出している。
【コランディア系の特長と、鎌田牧場の執念】
上記の表のとおり、コランディアの牝系は、
1970年代~2010年代まで、途切れることなく重賞勝ち馬を輩出した。
特に1990年代以降の活躍馬は、
全てサンデーサイレンスや
サンデーサイレンス系種牡馬の産駒である点が特徴的。
サンデーサイレンス系種牡馬との相性の良さを、
コランディア系の一つの特長と見ることが出来ると思う。
またエピカリス、メイショウナルト兄弟に至る牝系は、
4代母ヤヨイカマダから現在に至るまで、全て浦河・鎌田牧場の生産馬。
チャイナロック、ダイアトム、マルゼンスキー、カーネギーと、
当代の一流種牡馬や欧州活躍馬が配合され、
生産者・鎌田牧場の非常に強い期待と、執念を感じ取ることができる…。
このような血統背景は、
代々メジロ牧場の血が重ねられた、
モーリスと通じる部分を感じることができる。
エピカリスがモーリスと同じく、
カーネギーを母父に持つ点も、興味深い偶然の一致。
代々、競走馬の所有を行わない
マーケットブリーダーの鎌田牧場生産馬・エピカリスは、
当歳時の2014年、セレクトセールに上場され、
ノーザンファームに2600万円で売却された。
【エピカリスのデビュー、止まらない快進撃】
ノーザンファームで育成を受けたエピカリスは、
キャロットファームの所有馬となり、
募集総額は3600万円に設定された。
この設定金額は、
セレクトセールの購買金額2600万円から見ても、
かなり強気な設定であり、
育成段階での動きの良さを示すもの。
生産者サイドの期待は、高いものと推測された。
美浦・萩原厩舎に入厩したエピカリスは、
2歳8月、新潟のデビュー戦を単勝2,3倍、6馬身差で圧勝。
続くプラタナス賞は単勝1,5倍、7馬身差。
北海道2歳優駿は単勝1,6倍、2,4秒差の大差勝ち。
休養明けのヒヤシンスSは、18キロ増の馬体で、
単勝1,4倍の支持に応える完勝。
前評判に違わない、いや、それ以上の活躍を見せた。
【注目される今後のプラン】
エピカリスはすでにUAEダービーに選出済み。
ヒヤシンスSの勝利で、
ケンタッキーダービー出走に必要なポイントを手にした。
ノーザンファームの吉田勝己代表は、
JRA賞授賞式で、
「アメリカのベルモントSも目指したい」
(1月31日付デイリースポーツ)
と、昨年日本のラニが3着に入ったレースを具体的な遠征候補に上げた。
ルメール騎手は、ヒヤシンスSのレース後
「(米国のレースに挑むことに関しては)
スピードがあって前につけられる脚があり楽しみ」
(2月19日ラジオNIKKEI競馬実況web)
と、遠征に対応できる点を強調。
一方で、萩原調教師は、
「海外遠征はオーナーと相談してから考える。
ドバイについては近いうちに結論を出したい」
(2月19日付スポニチアネックス)
と現時点で、遠征プランの明言を避けた。
ここまで国内で圧倒的な力を見せており、
モーリスと同じく日本在来の血統を持つ馬が、
遠征に出る意義はとても大きい。
しかし3歳春の国外遠征は、
成長面で大きなリスクを負うことも確か…。
陣営がどんな判断を下し、
近日中にどのような発表があるか。
動向を注目して見守りたいところ。