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(2016年撮影、22歳時の現役種牡馬タイキシャトルと、
今なお一戦で走る、藤沢和雄師、横山典弘騎手)

11月16日で、顕彰馬タイキシャトル最初のGI制覇、
1997年マイルチャンピオンシップから20年を迎える。
時代を経て、競馬の質がどんなに変容しても、
このレース、上位馬が見せたパフォーマンスは色褪せない。

今回は、当時の記録と記憶について、
詳細に振り返ってみたいと思います。

※以下の文中は、旧年齢表記で統一


【外国産馬旋風の最中、4歳馬が人気上位を占める】
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このレース1番人気に推されたのは、
ウッドマン産駒の外国産馬スピードワールド
NHKマイルCを熱発で回避も、直後の安田記念で古馬相手に3着。
秋初戦の毎日王冠でもバブルガムフェローの3着に入り、
初騎乗の武豊騎手を迎え、潜在能力を評価されての1番人気。

2番人気タイキシャトルは、ユニコーンS、スワンSを連勝中。
レース前の時点で6戦5勝・2着1回。
主戦の岡部幸雄騎手が、同厩舎で同年の高松宮杯勝ち馬
「岡部騎手にしか乗りこなせない」と言われた癖馬
シンコウキングに騎乗するため、
前走スワンSから、横山典弘騎手が騎乗していた。

3番人気トーヨーレインボーは、
重賞初出走も、9戦5勝・2着3回。
テンザンストームタイキシャトルの3着だった菩提樹S以外、
連対を外しておらず、こちらも潜在能力を買われての評価。


4番人気に前年の覇者で、同年安田記念2着のジェニュインが続くが、
上位人気3頭を、外国産4歳馬が独占した。

NHKマイルカップの創設は、前年1996年。
このマイルCSの前週には、
グラスワンダーが圧巻の内容で京成杯3歳Sを勝ち、
翌月にはエルコンドルパサーがダートで大差勝ち、衝撃のデビュー。

時代は、外国産馬旋風、真っただ中にあった。


【超ハイペースの中、上位2頭が見せた真の実力】

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レースは、4歳の桜花賞馬キョウエイマーチが、
ダッシュよく、ハナをきる形でスタート。

通常ならここでペースが緩むところで、
2番手から同じく4歳馬で、
前走・天皇賞秋で大逃げを打ったサイレンススズカが、
河内騎手が抑えきれず、キョウエイマーチの直後を追走。
さらにこれに迫る、巨漢スプリンター・ヒシアケボノ

3F目も、2F目と同等のペースで進み、
3F通過は33,2、1000M通過が56,5。
まるでスプリントGIのような超ハイペースで、レースは進行。

タイキシャトルは前3頭を見る形で、
直後の4番手につけた。


直線入口、キョウエイマーチサイレンススズカを振り切り、
後続を一気に引き離す。
春の4歳牝馬特別を7馬身差、桜花賞を4馬身差で逃げ切った実力。
持ち前のスピードをいかんなく発揮し、
キョウエイマーチがリードを作る。

タイキシャトルは、トーヨーレインボーと並ぶ形で進出し、
直線入口で2番手に浮上。
あっという間にトーヨーレインボーを突き放すと、
3馬身前を行くキョウエイマーチを目標に、
1完歩ずつ差を詰める。

残り200M、タイキシャトルキョウエイマーチを捕えにかかる。
しかし、ここでキョウエイマーチも一気の失速とはならず、
タイキシャトルに交わされても、粘る粘る。

結局、タイキシャトルが2馬身半のリードを作り、
最後は余裕を持って完勝。
キョウエイマーチも3着のトーヨーレインボー
1馬身以上の差をつけ、最後まで脚を残しての2着。


1000M通過が56,5の超速ラップを刻みながら、
2着に残したキョウエイマーチ
また、このペースを4番手で追いかけながら、
メンバー中、上がり3F最速の36,1(2位はロイヤルスズカの36,5)を
マークしたタイキシャトル

終わってみれば、2頭の実力が抜きんでた形で、
これほどのペースでマイルGIを走り切った馬は、
20年を経ても、なかなかお目にかかれない。


翌年、タイキシャトルが仏GI・ジャックルマロワ賞に挑戦する際、
横山騎手は、自分が騎乗しない立場でありながら、
「この馬が負けるようなら、
今後10年、日本馬は海外で勝てないだろう」
と、
自身が騎乗した、タイキシャトルの強さに胸を張った。


【After 20 Years, 稀代のスピード馬のその後】

タイキシャトルはその後、スプリンターズS、安田記念も難なく制すると、
フランスに遠征し、GI・ジャックルマロワ賞を優勝。
藤沢調教師、岡部騎手に海外初GI勝ちをもたらす。
帰国初戦のマイルCSでは、前年と同じ走破タイムでありながら、
5馬身差の圧勝を披露。
改めて、前年のレースレベルの高さを示す形となった。

この一年、1998年の活躍を評価され、
タイキシャトルは、1800M以上を走ったことがない馬として、
史上初めてJRA年度代表馬に選出された。
同様の経歴を持つ年度代表馬は、
以後も、ロードカナロア一頭しか現れていない。

またGI5勝と、海外GI制覇の実績を評価され、顕彰馬にも選出。
こちらは、1800M以上を走ったことがない馬として、
現在まで、唯一無二の記録となっている。


タイキシャトル
の産駒成績は、
ウインクリューガーがNHKマイルカップを制した他、
メイショウボーラーが朝日杯FS2着、皐月賞3着の後、
フェブラリーSを優勝。

SS系の猛威の前に、直系ラインの存続は困難を極めたが、
今年に入り、メイショウボーラー産駒ラインミーティア
アイビスサマーダッシュを勝ち、
メイショウボーラー産駒JRA重賞初制覇を達成。

同じくメイショウボーラー産駒のニシケンモノノフは、
ダート短距離レースの頂点、
JBCスプリントを、祖父に騎乗経験のある横山騎手を背に優勝。
父系の存続に、希望を残した。

また、タイキシャトルは母父として
ダービー馬ワンアンドオンリーを出し成功したばかりでなく、
自身と同じマイルCS連覇の実績を持つ
ダイワメジャーの産駒、レーヌミノルが桜花賞を優勝。

祖父が制した20年後のマイルCSに、
今年、桜花賞馬となったレーヌミノルが挑む。



キョウエイマーチ
は、桜花賞後GIタイトルに恵まれなかったものの、
フェブラリーS5着、高松宮記念4着、南部杯2着など、
あらゆるカテゴリーで長く活躍。

繁殖牝馬として、これまでに残した産駒は4頭。
その内牝馬は1頭のみと、厳しい状況にあるが、
それでも直仔のトライアンフマーチが皐月賞2着。
唯一の牝駒ヴィートマルシェは、
重賞2着2回アヴニールマルシェの他、
2016年までに牝駒3頭を出産。
牝系存続に、期待を抱かせている。



多くの歴史的マイラーを輩出したマイルCS。
今年も、後世に語り継がれる素晴らしいレースと、
名馬の出現を期待したいもの。