ソウルガールズ(原題「THE SAPPHIRES」2012年 豪)
予告編
渋谷遠征で見に行ったもう一本。
アボリジニの少女4人が、ソウルミュージックと出会い、コーラスグループとして成長していく姿を追う、実話をもとにしたストーリー。
映画評論家の町山智浩さんも絶賛しただけあり、平日夕方というのに劇場は満員でした。
こんな映画が、こんなに公開館数少ないのは、悲しい限りです。
さて、私は中学生時代にマイケル・ジャクソンとブルースブラザーズの洗礼を受けて以来ソウルミュージックが大好きでして、バンドをはじめたのもロックよりも、ファンクやソウルをやりたいからというところが非常に大きいです。というわけで、これは見に行かなければと、とても楽しみにしていました。
一応、これがブルースブラザーズね。僕の生涯ベストの一つね。「ソウルガールズ」にも名前が登場するアレサ・フランクリンやジェームス・ブラウンなども登場します。また、「ソウルマン」という曲がたびたび「ソウルガールズ」にも登場しますが、サム&デイブという人の曲なんですけど、ブルースブラザーズもカバーしていますね。
ソウルミュージックについて、私なりに説明させていただくと、かいつまんで言えば昔のR&B音楽です。どうしてそういう言い方をしたかというと、色々ありまして。
1950年代は、まだ黒人音楽はポップスとして決してメジャーという訳ではない状態でした。当時それらの音楽は、R&Bだとかロックンロールだとか、そういった言葉で呼ばれていました。そして、ジャズとの住み分けもそれほど明確ではなかったのではないかと思います。ソウルミュージックという言葉を最初に使ったのは恐らくレイ・チャールズではないでしょうか。
彼は、R&Bやジャズという黒人音楽、キリスト教徒として聖歌、また下積み時代によく演奏していた本来は白人音楽であるカントリーまでも、自信のルーツとして大事にしていました。この映画のサファイアズも最初はカントリーを歌っていたということですが、意識しての設定なのでしょうか。それとも実話なのかな。さて、そんなレイが、一人のアーティストとして注目されたのは、ブギウギなどのR&B的な曲調で聖歌の歌詞を歌ったからです。そんな歌を「ソウルミュージック」と呼び、一般に浸透してきました。
ジェイミー・フォックスの演技がすごいレイ・チャールズの伝記映画「Ray」
ただ、原題のR&B音楽はヒップホップ文化などの影響を受けてだいぶ様変わりしたので、今では古いR&Bをソウル、最近の黒人音楽をソウルミュージックと呼んでいる。
と認識しています。あと、ついでに言えばジェームス・ブラウンなどの16ビートを強調した音楽はファンクと言います。わけるのめんどくさい(笑)
訂正があれば、教えてください!!
ソウルミュージックを題材とした映画といえば、ハリウッド映画でも名作ぞろい。
この映画でもそうですが、その成り立ち、成長、発展を描くにはどうしても公民権運動と、ベトナム戦争が欠かせなくなります。
黒人音楽を白人のものとして最も早くに一般に浸透させたのはエルビス・プレスリーでしょう。その後、アメリカ国外で黒人音楽に憧れ、演奏を続けていたビートルズやローリングストーンズといったバンドが世界に大旋風を巻き起こしていきました。そして、それは黒人の権利を訴える公民権運動と大きく結びついていきます。ようは、ロックもジャズもブルースもR&Bもソウルも根っこは同じなのですね。
本場のミュージシャンだって、名曲を白人に黙って奪われていただけではありません。特にモータウンレコーズというレコード会社が、スモーキー・ロビンソンやテンプテーションズ、シュープリームズ、後にはスティービー・ワンダーやジャクソンファイブなど、ポップスとして一般に食い込んでいきます。
そんなモータウンと、シュープリームスをモデルとしたドリームガールズ。
フィクションとしての省略、シュープリームスとモータウンレコードに対する非常に意地悪な視点が目につきますが、アメリカンドリームを描いた映画として、またフェミニズム映画としてもとても面白いです。ていうか、この映画のサントラ聞くだけで泣けます。
そして、ロックンロールは、公民権運動からベトナム反戦運動、ヒッピー文化に結びついていきます。映画の中でも、公民権運動や、カシアス・クレイ(モハメド・アリ)の徴兵拒否なんかが出てきましたね。また、逆にこの映画で描かれたように、ベトナムで戦う兵士たちの慰安としても利用されていきました。「グッドモーニングベトナム」では、戦地のラジオで音楽を流し続けたDJが描かれます。
笑いと音楽で、戦地の人々を癒していたのです。
悪魔の音楽と言われたロックンロールは、こうしてたった20年ほどで、市民権を得ていったのです。
というわけで、ここまででもう感想みたいな話にもなってしまっていますが、
ここから感想です!ネタバレもあるかも!
軽快な音楽をバックに駆けていく子供たちとともに始まるこの映画。とても胸躍る楽しいシーンです。有刺鉄線を超えて、何かいたずらをするのでしょうか。
のちのちにある展開も含めて、もうこのオープニングでやられます!
私は、この映画を見るまで、アボリジニという人々についてあまりにも無知でした。いつでも、映画やテレビや映画をきっかけにしか問題意識を向けられない自分が嫌になります。
陸上選手のキャシー・フリーマンが、シドニーオリンピックで金メダルを取ったときも、二つの旗(アボリジニの旗とオーストラリアの旗)を掲げたときも、特に意識していませんでした。
映画の中では、アボリジニがいかに差別されていたかを描かれています。特に70年代まで続いた「白人同化政策」が、この映画の核となるのです。これは、ハーフなど肌の白いアボリジニの子供を政府が「合法的」に拉致し、「白人として育てる」というもの。こんな非人道的なことが行われていたということを、映画を見るまで知らなかったことを、本当に恥じます。
この政策のために離ればなれになったメンバーとの間での、アイデンティティーの探り合いと差別と逆差別が本当に痛々しかったです。
しかし、映画がウェットでいやーな感じかと言えば、そうではないのです。劇場内でもときおりクスクスと笑い声が起きていました。映画の中でデイブは言います。
「カントリーもソウルも、歌う内容は一緒だ。なにかを失った感情を歌うんだ。けど、この二つは全然違う。カントリーは失って田舎に帰って嘆き悲しむだけだ。だが、ソウルは失われたものを取り戻そうと必至であがくんだ」(内容すこしあやふやですが)
そんな力強い音楽だからこそ、こんなにも我々を魅了するんだ、元気づけるんだと気づかされたような気がします。
そして、この映画はそういう意味でとってもソウルフルです。
主人公たちは、アイルランド出身でR&B狂いの白人デイブにその才能を見初められ、ソウルミュージックを教わり、やがてベトナム戦線の慰安コーラスグループとしてベトナムへ赴きます。
映画自体は、サファイアズの4人とデイブの本当に短い冒険潭です。自分の夢を追いかけ、その先で現実の恐ろしさを知り、成長してふるさとに帰ってくる物語。
だから、「差別は良くない」とか「当時はこういう差別があった」とか、そういうことはもちろん大前提なんですけど、そんなことよりもいかに夢を追いかけて成長していくかを描くのに注視しているんです。だからこそ、この時代に力強く歌い続けた彼女たちに大きな感動を覚えるのです。被差別民族であり女性である彼女たちが、60年代という時代で夢を追い続け、差別と自分の力で戦ったことに感動するのです!しかも、それを現代の異国の地に住む私たちでも共感できるという!すごい!!
しかも、その中で大切な人を見つけていくのは本当にすてき。特にゲイルとデイブがずっと喧嘩しながら「お互いに言いたいことを言い合える関係」になっていくのは、もう
もげろ!
音楽についても、先ほどもう面倒なほど語っちゃいましたけど、本当にいいですね。特にエンディング曲の「アイ・キャント・ヘルプ・マイセルフ」という曲なんですけど、
あれ小学生の頃課題で演奏した曲で、今でもセッションとかでよく使うネタなんですよね!もうあの曲流れただけでホント泣ける!(すげえ個人的な意見)
映画自体への突っ込みどころとしては、もう面倒くさいので箇条書きと独りノリツッコミで。
1.いくらなんでも、最初のオーディション主人公以外歌もギターもへたくそ過ぎじゃね!?
↑いいんだよ!そこはギャグ+主人公の状況と才能を説明するシーンなんだから!けど、ギターはうまいけど歌は、とか、そういうバランスあっても良かったかもね。
2.ベトナムあんな甘くねえぞ!
↑あれ以上彼女たちを追いつめてどうすんだよ!最後の二チェンのライブとか、もう行くところまで行ってたろ!本人たちも生きてかえってきたんだ!
3.名曲にひっぱられて泣かされるのが癪じゃ!
↑ディープパープルの「ハッシュ」が流れて小躍りしてたくせに!ダンス天国流れたときは立ち上がって踊りそうになったくせに!!
4.邦題出さすぎ!ソウルガールズってwwwwwwwwwwww
↑うん、「サファイアズ」でいいよね。全然。
というわけで、本当にいい映画です。これならデートでも行ける!
上に書いた突っ込みどころが悔しいので、9点/10点
久しぶりに、万人にお勧めできます!
こんなに良い映画、全国拡大ロードショーするべき!!
監督 | ウェイン・ブレア |
---|---|
脚本 | キース・トンプソン トニー・ブリグズ |
原作 | The Sapphires (トニー・ブリグズによる舞台版) |
製作 | ローズマリー・ブライト カイリー・デュ・フレズネ |
出演者 | クリス・オダウド デボラ・メイルマン ジェシカ・マーボイ |
渋谷遠征で見に行ったもう一本。
アボリジニの少女4人が、ソウルミュージックと出会い、コーラスグループとして成長していく姿を追う、実話をもとにしたストーリー。
映画評論家の町山智浩さんも絶賛しただけあり、平日夕方というのに劇場は満員でした。
こんな映画が、こんなに公開館数少ないのは、悲しい限りです。
さて、私は中学生時代にマイケル・ジャクソンとブルースブラザーズの洗礼を受けて以来ソウルミュージックが大好きでして、バンドをはじめたのもロックよりも、ファンクやソウルをやりたいからというところが非常に大きいです。というわけで、これは見に行かなければと、とても楽しみにしていました。
一応、これがブルースブラザーズね。僕の生涯ベストの一つね。「ソウルガールズ」にも名前が登場するアレサ・フランクリンやジェームス・ブラウンなども登場します。また、「ソウルマン」という曲がたびたび「ソウルガールズ」にも登場しますが、サム&デイブという人の曲なんですけど、ブルースブラザーズもカバーしていますね。
ソウルミュージックについて、私なりに説明させていただくと、かいつまんで言えば昔のR&B音楽です。どうしてそういう言い方をしたかというと、色々ありまして。
1950年代は、まだ黒人音楽はポップスとして決してメジャーという訳ではない状態でした。当時それらの音楽は、R&Bだとかロックンロールだとか、そういった言葉で呼ばれていました。そして、ジャズとの住み分けもそれほど明確ではなかったのではないかと思います。ソウルミュージックという言葉を最初に使ったのは恐らくレイ・チャールズではないでしょうか。
彼は、R&Bやジャズという黒人音楽、キリスト教徒として聖歌、また下積み時代によく演奏していた本来は白人音楽であるカントリーまでも、自信のルーツとして大事にしていました。この映画のサファイアズも最初はカントリーを歌っていたということですが、意識しての設定なのでしょうか。それとも実話なのかな。さて、そんなレイが、一人のアーティストとして注目されたのは、ブギウギなどのR&B的な曲調で聖歌の歌詞を歌ったからです。そんな歌を「ソウルミュージック」と呼び、一般に浸透してきました。
ジェイミー・フォックスの演技がすごいレイ・チャールズの伝記映画「Ray」
ただ、原題のR&B音楽はヒップホップ文化などの影響を受けてだいぶ様変わりしたので、今では古いR&Bをソウル、最近の黒人音楽をソウルミュージックと呼んでいる。
と認識しています。あと、ついでに言えばジェームス・ブラウンなどの16ビートを強調した音楽はファンクと言います。わけるのめんどくさい(笑)
訂正があれば、教えてください!!
ソウルミュージックを題材とした映画といえば、ハリウッド映画でも名作ぞろい。
この映画でもそうですが、その成り立ち、成長、発展を描くにはどうしても公民権運動と、ベトナム戦争が欠かせなくなります。
黒人音楽を白人のものとして最も早くに一般に浸透させたのはエルビス・プレスリーでしょう。その後、アメリカ国外で黒人音楽に憧れ、演奏を続けていたビートルズやローリングストーンズといったバンドが世界に大旋風を巻き起こしていきました。そして、それは黒人の権利を訴える公民権運動と大きく結びついていきます。ようは、ロックもジャズもブルースもR&Bもソウルも根っこは同じなのですね。
本場のミュージシャンだって、名曲を白人に黙って奪われていただけではありません。特にモータウンレコーズというレコード会社が、スモーキー・ロビンソンやテンプテーションズ、シュープリームズ、後にはスティービー・ワンダーやジャクソンファイブなど、ポップスとして一般に食い込んでいきます。
そんなモータウンと、シュープリームスをモデルとしたドリームガールズ。
フィクションとしての省略、シュープリームスとモータウンレコードに対する非常に意地悪な視点が目につきますが、アメリカンドリームを描いた映画として、またフェミニズム映画としてもとても面白いです。ていうか、この映画のサントラ聞くだけで泣けます。
そして、ロックンロールは、公民権運動からベトナム反戦運動、ヒッピー文化に結びついていきます。映画の中でも、公民権運動や、カシアス・クレイ(モハメド・アリ)の徴兵拒否なんかが出てきましたね。また、逆にこの映画で描かれたように、ベトナムで戦う兵士たちの慰安としても利用されていきました。「グッドモーニングベトナム」では、戦地のラジオで音楽を流し続けたDJが描かれます。
笑いと音楽で、戦地の人々を癒していたのです。
悪魔の音楽と言われたロックンロールは、こうしてたった20年ほどで、市民権を得ていったのです。
というわけで、ここまででもう感想みたいな話にもなってしまっていますが、
ここから感想です!ネタバレもあるかも!
軽快な音楽をバックに駆けていく子供たちとともに始まるこの映画。とても胸躍る楽しいシーンです。有刺鉄線を超えて、何かいたずらをするのでしょうか。
のちのちにある展開も含めて、もうこのオープニングでやられます!
私は、この映画を見るまで、アボリジニという人々についてあまりにも無知でした。いつでも、映画やテレビや映画をきっかけにしか問題意識を向けられない自分が嫌になります。
陸上選手のキャシー・フリーマンが、シドニーオリンピックで金メダルを取ったときも、二つの旗(アボリジニの旗とオーストラリアの旗)を掲げたときも、特に意識していませんでした。
映画の中では、アボリジニがいかに差別されていたかを描かれています。特に70年代まで続いた「白人同化政策」が、この映画の核となるのです。これは、ハーフなど肌の白いアボリジニの子供を政府が「合法的」に拉致し、「白人として育てる」というもの。こんな非人道的なことが行われていたということを、映画を見るまで知らなかったことを、本当に恥じます。
この政策のために離ればなれになったメンバーとの間での、アイデンティティーの探り合いと差別と逆差別が本当に痛々しかったです。
しかし、映画がウェットでいやーな感じかと言えば、そうではないのです。劇場内でもときおりクスクスと笑い声が起きていました。映画の中でデイブは言います。
「カントリーもソウルも、歌う内容は一緒だ。なにかを失った感情を歌うんだ。けど、この二つは全然違う。カントリーは失って田舎に帰って嘆き悲しむだけだ。だが、ソウルは失われたものを取り戻そうと必至であがくんだ」(内容すこしあやふやですが)
そんな力強い音楽だからこそ、こんなにも我々を魅了するんだ、元気づけるんだと気づかされたような気がします。
そして、この映画はそういう意味でとってもソウルフルです。
主人公たちは、アイルランド出身でR&B狂いの白人デイブにその才能を見初められ、ソウルミュージックを教わり、やがてベトナム戦線の慰安コーラスグループとしてベトナムへ赴きます。
映画自体は、サファイアズの4人とデイブの本当に短い冒険潭です。自分の夢を追いかけ、その先で現実の恐ろしさを知り、成長してふるさとに帰ってくる物語。
だから、「差別は良くない」とか「当時はこういう差別があった」とか、そういうことはもちろん大前提なんですけど、そんなことよりもいかに夢を追いかけて成長していくかを描くのに注視しているんです。だからこそ、この時代に力強く歌い続けた彼女たちに大きな感動を覚えるのです。被差別民族であり女性である彼女たちが、60年代という時代で夢を追い続け、差別と自分の力で戦ったことに感動するのです!しかも、それを現代の異国の地に住む私たちでも共感できるという!すごい!!
しかも、その中で大切な人を見つけていくのは本当にすてき。特にゲイルとデイブがずっと喧嘩しながら「お互いに言いたいことを言い合える関係」になっていくのは、もう
もげろ!
音楽についても、先ほどもう面倒なほど語っちゃいましたけど、本当にいいですね。特にエンディング曲の「アイ・キャント・ヘルプ・マイセルフ」という曲なんですけど、
あれ小学生の頃課題で演奏した曲で、今でもセッションとかでよく使うネタなんですよね!もうあの曲流れただけでホント泣ける!(すげえ個人的な意見)
映画自体への突っ込みどころとしては、もう面倒くさいので箇条書きと独りノリツッコミで。
1.いくらなんでも、最初のオーディション主人公以外歌もギターもへたくそ過ぎじゃね!?
↑いいんだよ!そこはギャグ+主人公の状況と才能を説明するシーンなんだから!けど、ギターはうまいけど歌は、とか、そういうバランスあっても良かったかもね。
2.ベトナムあんな甘くねえぞ!
↑あれ以上彼女たちを追いつめてどうすんだよ!最後の二チェンのライブとか、もう行くところまで行ってたろ!本人たちも生きてかえってきたんだ!
3.名曲にひっぱられて泣かされるのが癪じゃ!
↑ディープパープルの「ハッシュ」が流れて小躍りしてたくせに!ダンス天国流れたときは立ち上がって踊りそうになったくせに!!
4.邦題出さすぎ!ソウルガールズってwwwwwwwwwwww
↑うん、「サファイアズ」でいいよね。全然。
というわけで、本当にいい映画です。これならデートでも行ける!
上に書いた突っ込みどころが悔しいので、9点/10点
久しぶりに、万人にお勧めできます!
こんなに良い映画、全国拡大ロードショーするべき!!
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