ダラス・バイヤーズ・クラブ(原題「DALLAS BUYERS CLUB」2013年 米)
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 予告編


 アカデミー賞発表直前!
 今回見てきたのは、アカデミー賞6部門にノミネートしたのを始め、数々の賞を受賞している「ダラス・バイヤーズ・クラブ」です。


  この映画は、余命30日を宣告されながら、7年生き続け、HIVの未承認治療薬を密売することで、結果的に多くの人々の命を救った実在の人物、ロン・ウッドルーフの物語です。
 21kgも体重を落とした主演のマシュー・マコノヒーをはじめ、共演のジャレッド・レトらの減量の末の鬼気迫る演技が魅力で、この両名はアカデミー賞主演男優賞・助演男優賞にノミネートされています。非常に楽しみです。

 1980年代、アメリカ・テキサス州。保守的なカウボーイのロン・ウッドルーフは、医師よりHIV陽性で、余命30日の診断を受ける。当時アメリカで認可されていた毒性の強いAZT治療薬を拒否した彼は、メキシコから未承認の薬を個人輸入。さらに、400ドルの会費を支払った顧客に、薬を無料配布する「ダラス・バイヤーズ・クラブ」を立ち上げるのだが、、、。

 この映画を、脚本家のクレイグ・ボーテンが書き始めたのは、20年前。彼は亡くなる1ヶ月前のロンにもインタビューをし、このシナリオを書くのですが、それから20年、予算などの都合でなかなか映画化されることはありませんでした。そして今回、マシュー・マコノヒーという素晴らしい俳優とともに、ついに映画化と相成った訳です。


 さて、私の感想に移る前に、この映画を見る前に最低限知っておきたいことがあります。
 それは、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)と、エイズについてです。私も専門家ではないのですが、最低限これだけ分かれば、映画の空気感を体感できるかなあと思いまして。

●HIVとは、エイズとは。
 HIVウイルスは、ヒトの体を様々な雑菌から守るT細胞やマクロファージに感染するウイルスです。T細胞などがウイルスにより減ってしまうと、免疫力が下がり、様々な病気にかかりやすくなってしまいます。その状態のことをエイズといいます。
 HIVウイルスに感染したとき、ウイルスは血液や精液、膣分泌液、母乳に多く含まれます。また、感染は主に傷口や粘膜から起きます。例えば、感染している人とのガードのない状態での性交渉やアナルセックス、注射の回し打ち、あるいは輸血による感染も起こりえます。なので、アナルセックスをする機会の多い同性愛者や、注射の回しうちをすることの多い薬物依存者が感染するケースも多いです。逆に、唾液や皮膚などにはウイルスはほとんど増殖しないため、感染者に触ったり、くしゃみや咳などではうつることはありません。 
 HIVは現代の医学を持ってしても克服することは出来ません。しかし様々な研究から、少しでも長く生きていくための治療法と、患者さんへのケアの研究は今でも続けられています。

●HIVと差別
 HIVウイルスは、性交渉、特にアナルセックスによる感染率が非常に高いと言われます。そのため、この病気が知られたばかりの頃、ゲイの発症者が多いという状況となりました。
 HIVウイルスという未知のウイルスへの恐怖と、同性愛者への偏見・差別が合わさり合い、感染された方の中には、非常に酷い差別を受けた方もいらっしゃいます。
 さらに、HIVウイルスは傷や粘膜を通してしか感染しないのですが、知識の不足から感染されている方を隔離しようとするようなことをする方もいらっしゃいます。
 こうした差別は今では少なくなりましたが、それでも非常に重要な問題です。自分に関係のないことだとは思わず、一人一人が正しい知識を持つことが大事だと思います。
 

 以上、簡単ではありますがここの部分を押さえた上で、映画を見ていただきたいと思います。ちなみに文章は、こちらを参考にしました。 HIV検査相談マップhttp://www.hivkensa.com/whatis/ 
 さて、というわけでダラス・バイヤーズ・クラブの感想の前に点数です。
 9.0 点/10


 
はい。少しでも気になった方には見ていただきたい映画です。というよりも、みんな見てほしい映画です。
 というわけで、以下感想です。ネタバレを含みます!
 
ただ、実話をもとにした映画ですので、調べれば分かることですし、ネタバレされてもかまわないという方もいらっしゃると思います。まあ、自己責任でご注意ください。



















 泣きました。
 
全くウェットな映画ではありません。むしろ、懸命に生きる一人の男を一生懸命追っている映画作りで、同情とかそういうくだらないものではなく、それでいて非常にドラマチックです。
 主人公ロンは、典型的な南部男。ロデオと酒と女が大好きで、保守的で、同性愛者へのはばからない差別の態度。
 そんな彼が、「ゲイしかかからない病気」であるHIVにかかり、生きるために出来ることをしていくだけの映画です。
 
薬を売るのも、自分が助かるためとお金儲けのためだけ。本当に嫌なやつなんです。
 けれど、その懸命な姿が涙を誘います。
 
かつての仲間からも差別を受け、本当に身も心もぼろぼろになったところから、生きるために何をするのか懸命に考え抜いた末の行動だからです。


 HIVを描いた映画といえば、私はミュージカル「RENT」が大好きです。この映画は、HIV陽性、ゲイ、レズ、バイセクシャル、ストレートの主人公たちが、ニューヨークの片隅で各々自分の作品を作るために貧乏な生活をしながら、懸命に生きる姿を描いたミュージカルです。
 RENTのミュージカル公演が終わるということで行われた2009年のワールドツアー公演が日本に来たときは、初日に見に行きました。
 もう第一幕から大号泣な訳ですよ。
 こちらもあわせてみていただければと思います。
 RENT


「RENT」のオープニングを飾る名曲「Seasons of Love」。最近では、コーヒーのCMでも使われているので、聞いたことのある人もいるのでは?


 この歌で525,600分という歌詞が出てきますが、死を目前にして1分1分大切に生きるという思いが現れています。

 今回の映画「ダラス・バイヤーズ・クラブ」でも、何年か経過したところでも「〇〇日後」というテロップの出し方をしているところがあります。
 余命30日を宣告されたロンが、懸命にどれだけの1日を戦ってきたかを端的に表す、素晴らしい演出だと思いました。

 さて、「RENT」には物語の中核をなすトランスジェンダーのダンサー、エンジェルが登場しますが、この映画でも非常に美しい「女性」が登場します。
 このレイヨンを演じたのがジャレッド・レトです。レイヨンは、映画用に創作された架空の人物ですが、この映画におけるロンという人間の変化を非常に強調してくれる、非常に素晴らしいキャラクターでした。
 保守的なロンははじめ、レイヨンを毛嫌いします。しかし、重要なビジネスパートナーとして接する中で、2人の間に友情が生まれていきます。
 スーパーで2人が買い物をしていたところ、たまたま出会った昔の友人に彼女を侮辱されたときに、本気の怒りを見せたところは、何とも言えない感情を抱きました。

 1980年代の、HIVに対する間違った知識と、治療方法の確立していないという状況の中で、「生き続ける」ということは、非常に大事なことです。1年生き残れば、もっと良い治療法が開発されるかもしれない。そうしたわらをもすがる思いで、患者の皆さんは死と戦っていたのです。そして、その戦いは今でも続いています。

 今を懸命に生きること。そんなこと、普段生活していると考えも及びません。しかし、少しでも考えるきっかけとしてこういう映画は作られ続けなければならないと思います。
 ロンのダラス・バイヤーズ・クラブの活動は、当時は非合法だった上、もともと金儲けを目的にはじまった活動です。また、医師たちもただ指をくわえて患者たちと向き合わなかった訳ではなく、一人でも多くの人を救おうと努力していたと思います。
 しかし、偽善は善という言葉もあります。
 ロンの行動が多くの命を救ったのも、また事実なのでありました。


 上映館があまり多いという状況ではありませんが、ぜひもっと拡大して公開していただきたいです。そして、少しでも多くの人にこの映画を見てほしいと思います。

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