2008年05月30日

第24回 ゲスト:直枝政広

<お詫び>

「招かれざる客」は、3回分お休みさせていただきました。

ただ単に忙しかった、という理由だけではなく、
敬愛する直枝さんの言葉がどれも素晴らしく、それに応えられるだけのキャパが自分の中に探し出せずにいたのでした。
いろいろ悩みながら、3ヶ月もかかってしまいましたが、なんとか完成することができました。

待っていてくれた皆さん、そして直枝さん、ご迷惑をおかけしました。
次回からはきちんと毎月25日掲載していきますので、よろしくお願いいたします。


神森徹也


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さて。
この企画も、今回でなんと24回目!
なんと2周年年。
とっても感慨深いです。
思えばあんなこと、こんなこと、ありました。

今回のゲストは、過去の連載で2人のゲストから(堂島孝平君と中村ケンゴさん)、それぞれお薦めしてもらった、敬愛するバンドのヴォーカリスト。
感激です。

毎回毎回、ゲストに出演を頼むときは、「本当に、こんな企画に出演してもらえるのだろうか?」と不安でいっぱいなのですが、皆、いつも快く引き受けてくださって、そして真面目に参加していただき、感謝してもしきれません。

今回のゲストも、僕の中では雲の上の人なので、恐る恐るメールをしてみたのですが、気さくに引き受けてくださいました。
本当、何でも言ってみるものですね(笑)
一歩踏み出す勇気、ですよ!

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「神森君の音楽は昔から知っていますよ。かなりギターが弾ける人なんだな、って思っていました。」と、最高に嬉しい言葉をかけてくれた、今回のゲストは‥


直枝政広












直枝政広



1983年、カーネーションを結成。
1984年、シングル「夜の煙突」でレコード・デビュー。
以降、数度のメンバーチェンジを経ながら、数多くの傑作アルバムをリリース。


「存在感のある言葉」
「美しいメロディ」
「斬新なサウンド」
それらが絶妙なバランスで混ざり合い生み出される氏の曲は、一度聴いたら忘れられない。そして何度聴いても新しい発見がある。
憧れの先輩であり、(勝手ながら)密かに共感していた人である。

音楽愛聴家としても有名である直枝氏だが、その膨大な知識を駆使して、いろいろな音楽の要素を足していくようなポスト・モダン的な曲作りではなく、不器用で熱のある、かつ洗練された曲作りが、大好きだ。


バンド・マンでありながらも、シンガー・ソング・ライターでもある、最強の音楽家だ。



そんな直枝氏のお薦め3枚は‥


SandyDenny










○Sandy Denny「The North Star Grassman and The Ravens」(1971)



■直枝

サンディー・デニーがフェアポート・コンヴェンション(Fairport Convention)から飛び出して作った最初のアルバム。
ロックを通過した電化トラッドを追求した研究家的佇まいがフェアポート・コンヴェンションだったとすれば、このソロ・アルバムは当時、時代とともに内省に向った若者たちの心情にも通じていたであろうリアルなSSW(シンガー・ソング・ライター)のアルバム。

女性的な感覚のしなやかさと独特のロンサム感をうまく幻想的に表現する人だよ。
歌詞は非常に抽象的だったりするけど、断崖から広い海をただ眺めているような曲の世界がなんたっていいんだ。でも、これは危険な音楽のひとつだね。
気持ちが入るが故に、深くて痛くてね。女性的な強さや弱さが、全部(曲に)出てるっていうか。
自ら意識せずとも、サンディはそういうのがついつい出ちゃうタイプで、男性や恋愛に対する依存心がすごく強いんだとも思いますね。
そこが逆に歌の強さに繋がるという魅力がある。気持ちの揺れ動きの捕まえ方というか感情の動きかたが尋常じゃないっていうか。

彼女はその後、アル中になって、まぁ、男のこととかいろいろ理由があるんですけれど、それで酔っぱらって階段から落っこちて、その怪我がもとで亡くなったんだよ。
彼女の人生について考えることはあまりにもヘヴィなので、俺はもう語るのを止めようと思ってたんですけどね。
でも、これは一応、神森君には紹介しておこうと思ってね。


女性ってほら、手が小さいじゃない?おそらく男性より。
だから彼女はギターではオープン・チューニングにしてみたり、独特な押さえ方をするんだよね。指使いをはしょってはしょって、神秘的な音を探しちゃう感じがあって。
とにかく彼女の押さえるコードの響きは不思議な感じがしますね。
俺も手が小さいんです、実は。だからその案配はよく分かる。

「レイト・ノヴェンバー」と「ネクスト・タイム・アラウンド」、この2曲に人生変えられたっていう感じがしますね。
本当にいい音楽のひとつだなって思います。


■神森

なんて強い音楽なんだろう、しかしそれと同じくらい、なんて繊細な音楽なんだろう。
強いんだけど、優しくてどこか儚い彼女の歌声。
ジョアン・ジルベルトを初めて聴いたときの感覚に近い。

声を張り上げる、とか奇をてらった歌い方、とかでは全然なく、それでいてこの存在感。
心と声が、繋がっている感じ。
自分を偽ることなく、たくさんの人の心に訴えかける歌が歌えるなんて、すごいことだ。


歌がうまい、って正確なメロディを正確なリズムで歌えることを指すことが多いが、そうだとしたら歌がうまいだけでは意味がない。
誰にでも、その人にあった声質というものがある。声の音量や音程、音色など。それを活かさなければ良い歌は歌えない。誰かの物真似では自分の表現はできないのだ。
それから歌うモチベーション。歌うことに特別な「何か」を感じていなければ、こちらも「何か」を感じることはない。
彼女は自分の声を素晴らしい技術で、心で表現している。


それから美しくて儚いメロディや、ストリングスやスライド・ギターなどを駆使した洗練された暖かいサウンドなど、楽曲の完成度も非常に高い。
リチャード・トンプソン(Richard Thompson)のブルージーでファンキーでドラマチックなギターも素晴らしい。

Sandy Dennyは某大型CDショップでは、POPSやROCKが置かれているコーナーとは階が違う、「British Trad(ブリティッシュ・トラッド)」というコーナーに置かれてある。
本当、ジャンル分けって虚しい。


僕の中学生の時からの愛聴盤である、Led Zeppelinの「IV」というアルバム(「天国への階段」が収録された彼らの代表的なアルバム)の中の、「The Battle Of Evermore」という曲でSandy Dennyがゲスト・ヴォーカルとして参加している。
知らずに、もう20年近く前から、慣れ親しんで声だったとは!





GaryWilson










○Gary Wilson「Mary Had Brown Hair」(2004)



■直枝

宅録もの、ですね。
多少のゲストはいると思うんですけど。
ベックがこの人の70年代の作品を再発見して以来、ガーンと知名度が上がった。

こういう天然の人はうらやましいね。
このアルバムは、2004年なんだけど、それでいても全然上等な感じじゃなくて、本当、カセットMTRでやっているような感じで、この図々しさがなんといってもいいな(笑)。
なんたって誰にも媚びていないし。

グチャグチャしてて、だだらしなくて、でもどこかキュートなんだよね。
アイディアもいちいち笑わせてくれる(笑)
1人遊びの境地だけど、その子供みたいな純度の高い感じがいいよね。
多分、こういう 感覚って神森君も好きだと思うけど。


■神森

こちらはSandy Dennyとうってかわって、奇をてらったことをする人(笑)
いや、正確に言うと、奇をてらったことを「素」でやってしまう人。
そういう意味では、この人も自然体の人、なのかもしれない。
流行の音楽(流行した音楽)と比べると、マイノリティである自分のセンスを慈しみ、自分を取り繕うことも誤魔化すこともなく、自分らしい音楽を作る感じがすごく伝わってくる。


最初聴いたときはペラペラでゴチャゴチャしていて「何これ?!」って感じなんだけど、聴き進めるうちに、とても人懐っこいメロディや、奇妙で可愛らしい音などが、段々心地よくなってきて、アルバムを聴き終わった後、また聴きたくなる、中毒性の高い音楽。
ほとんどの楽器を自身で演奏しているという宅録の人特有の、それぞれの楽器がすごく主張してくるんだけど何故か不思議とまとまっていて気持ちよいアレンジメント。
ずべての音に対する気遣いが感じられる。

アルバムの中の楽曲は、ジャズ、アヴァンギャルド、ヒップ・ホップ、ニュー・ウェイブなど様々な音楽の要素があって、幅広い音楽の知識もあるし、演奏技術も高い。
だから、それなりの曲なんて簡単に作れるのだろうけど、そうしない。いや、「素」で作っているから、そうできない、のかもしれないな(笑)


好き勝手やって、それがたくさんの人に認められるのが一番だが、たいていはそう上手くはいかない。
彼はそれをわかった上で、好き勝手やっているのだろう。それはとても痛快なことだ。
でも、僕はやはり、自分の音楽で、人と繋がっていきたい。
だから自分の内と外で、せめぎあい、悩んでいくのだろう。。






Wilco










○Wilco「Sky Blue Sky」(2007)

『世界的にブレイクを果たしたグラミー賞の名作『ゴースト・イズ・ボーン』以来、3年ぶりのオリジナル・アルバムは、新たなラインアップとなったバンドの充実感を示す、より多彩な音楽性を備えた傑作j!』-CD帯より抜粋-



■直枝

ウィルコはわりと初期の頃からちょこちょこ聴いていて、大好き。共感の連続でね。
根っこが全然違うようでいても、やっぱり同じだったりする。
その気持ち全部が良く分かるなあ、って感じのバンドですね。

世代的にも、大人になる前にあの革命的な60〜70年代を無自覚に過ごしてきた人たちだからね。おそらく、あの時代のロックに対する憧れ方にも独特の距離感があるんだよ。
カタログ的な聴き方じゃなくて、もっとこう子供時代の記憶をほじくるような、無意識を探るようなトリップができる。
ウィルコの人たちはおれと同世代のソニック・ユースやフィッシュより若干若いんだろうけど、その意識の持ち方には独特なこだわりを感じるよ。

このアルバムはここ何作では最高傑作だと思ってる。
音響派のジョン・マッケンタイアーと絡んでやってた頃はちょっとドラッギーすぎちゃって、俺はあんまり好きじゃなかったんだけど。
ようやく、歌が、メロディが戻ってきたなと思って。それと勢いのいいギターのラインも強力。
ありきたりな曲じゃないし、それでいて普遍的な実力も伺えるし。
文句ないよ。


多分神森君は、このリーダーの人にビビッとくると思う。
ギターのタッチとか、ギターの鳴りとか。
ギターを弾いてきた人としての視点が、多分すごく近いと思う。ギター・プレイと歌の関係とか、詩と自分の歌の関係とか。
より密接に楽器と近いところにあったりするから。そこの部分で共鳴するところがまずひとつあると思う。
あとは「ちょっと変だな…」っていう要素ね。
だけど、屈折してるけどアングラに突き進むわけじゃなく、常に世の中に対してメインはってるっていう感じ、そこが堂々としてて素晴らしいところ。

いい音ってこれかなって感じますよ。ウィルコみたいなバンドが理想ですね。


■神森

素晴らしいアルバム!

どの曲も本当に魅力的。
柔らかくて芯の通った歌声、優しくて美しいメロディ、アイデア溢れる確かな演奏技術。

何よりも僕が感動したのは、愛の溢れるアレンジメント。
1曲の中にいろいろな要素が、不思議なほど自然に入っている。
緩やかなギター・ソロから、キメキメのツイン・ギター・リフに突入したり、ビートルズ的なロックン・ロール・フレーズから音響的な優しいギターと歌になったり、唐突なはずの場面展開がまったく嫌味じゃなく、自然で素晴らしい。
不自然を自然に表現できている。
これは頭で考えるだけではできないことだ。
おそらく、バンド・メンバーで何度もリハーサルを重ねて、「これだ」というものに行き着いたのだろう。
音楽の構築美と即興性を兼ね備えた、理想的なロック/ポップス・ミュージックだ。

Wilcoは初期はカントリー調の音楽をやっていたバンドだったらしい。
その後、Jim O'Rourkeに出会い、音響・ポストロック的な音楽を嗜好するバンドに。
そして、それまでに培ってきたいろいろな音楽要素を何一つ捨て去ることなく、それらすべてが融合された、彼らの完成形ともいえるものが、このアルバム。


自分の音楽の可能性を決め付けたくない、可能性のあるものはすべて受け入れたい。
僕はそうやってずっと曲を作り続けてきた。
いろいろな音楽を吸収することによって、人間の複雑な感情を、自分にしかできない方法で表現したい、できる、と。
しかし、そんな気持ちが強すぎると、どうもごちゃごちゃしたトゥーマッチな曲になってしまうことが多い。
そして最近思うのは、やはり「身の丈」なのだと。
無理して何者かになろうとするのではなく、普段の自分を表現できれば、それがその人にしかできない表現なのだ。
その「普段の自分」を充実させていけばよい。
焦らずに、外にも内にも広がっていきたい。

彼らはその見本となるべき存在だ。
しっかり人と向き合い、自分の音楽を作っている。
そこが彼らがグラミー賞を受賞するようなバンドたる所以だと思う。


終わりに------------------------------

インタビューの中で直枝さんは、

『神森君は、自分の音楽が「カウンター」という意識は全然ないでしょ?自分が王道だと思ってるでしょ?
それでいいんだよ。
ある時それが極まってメイン・ストリームになる、そういうつもりでやってればいいんじゃないかな。
俺だって王道のつもりでやってるし。

ただ、今自分がメイン・ストリームだって思ったら面白くなくなっちゃう。
ベスト・テンの1位になる曲だな、とか思った瞬間にそれはそうじゃなくなると思う。
(「自分の王道」と「メイン・ストリーム」は)そういうデリケートな関係性があると思う。

そこを分かってないとバランス崩すな。
ある程度わきまえながら、最上級の自分を出してあげる。
最上級のポップなマナーを見せてあげることで、十分自分の個性ってのは発揮されると思う。
それを敢えて自ら中学生の人にもわかるものに仕上げようと思っちゃ駄目だね。
結果としてそういう風になる時はいつかくる、ということで作っていくのが自然だと思う。』

と、話してくれた。
この言葉に僕はクラクラきてしまった。

最上級の自分、最上級のポップ・マナー。
これは自分を見つめて、人を見つめるということ。
自分がなければ表現なんて虚しい。
自分しかなければただの我がまま・押し付けだ。

「商品を作る」ということは、購買者の購買意欲を満たすもの、つまり人々が買いたくなるモノを1から作るということなわけだが、
「作品を作る」ということは、基本的にはまったくの逆で、製作者の製作意欲を満たすもの、つまり自分が納得するものを1から作るということだ。
だけど、製作者(曲を作る人)だって、もちろん沢山の人に聴いてもらいたいに決まっていて、僕らはいつだって「商品」と「作品」の狭間で苦しむことになる。

「最上級の自分」「最上級のポップ・マナー」、それこそが、この苦しみから抜け出せる答えなのではないか。


今回お薦めしていただいた3枚のアルバム。
この3人(組)の、自分・人との向き合い方はまさに三者三様だった。
ただ愛するものを見つめ、その人に向かって表現する人、
ただ自分を見つめ、自分のためだけに表現する人、
自分も人もきちんと見つめて、表現する人。

良い悪いではなく、僕は音楽を生業にする限りは、自分も人も見つめていきたい。
そうやって人と繋がっていきたい、と切に思う。


直枝さん、どうもありがとうございました


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次回訪問先は‥ ソニック・ユースケ氏 です

みなさんお楽しみに

神森徹也

  

Posted by manekarezarukamimori at 11:57Comments(0)TrackBack(0)第21回〜25回

2008年01月25日

第23回 ゲスト:tatsu

こ‥今回のゲストは、ちゅ‥中学生の頃から憧れていたミュージシャン。
ちょい緊張気味。

以前から、ほんのちょっとだけ顔見知り程度の仲ではあったのだが、今回思い切って出演交渉をしてみたところ、快く引き受けてくれたのだ。嬉しい。
みなさん、生きてる、ってホント、素晴らしいことですよ!


インタビューの場所は、ゲストの自宅のそば、某駅付近の某喫茶店。
と、あれ??この駅、私の実家の隣駅なんですけど。
ということで、軽く地元話に花をさかせつつ、和やかにインタビューを敢行。

素晴らしいひとときであった。

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「3つとも、ちょっとねじれているものを持ってきました(笑)
ご存知のものも、あるかと思われますが…」という今回のゲストは‥


tatsu












tatsu



言わずと知れた、日本を代表するミクスチャー・バンド、「LÄ-PPISCH(レピッシュ)」のベーシスト。
ジャズの影響を感じさせる、独特なロック・ベース・プレイ。
バンド・ブーム全盛であった当時(1989年)、中学1年生だった僕は、レピッシュの「KARAKURI HOUSE(カラクリハウス)」を聴いて衝撃を受けた。
「ズンズンズンズン」とか「ズン、ズ〜ン」とか、誰もが当たり前に8ビートを弾いていた時代、tatsuさんのフレイズは、とても刺激的だった。
「KARAKURI HOUSE」の「Control」って曲のベース、今でもほとんど覚えていて、家で弾いたりします。


活動はその他に、エレクトリックなダブ・バンド「Miimo(ミーモ)」や、
大友良英、中村達也、百々和宏とのジャム・バンド「JOY HEIGHTS」(僕が今、最も気になっているバンドの1つ)、それから「GANGA ZUMBA」(宮沢和史、高野寛、マルコス・スザーノなどを要する、ブラジル音楽を貴重としたダンス・バンド)など。
また、堂島孝平、中孝介、松たか子、土岐麻子などのライブサポートや、レコーディングなどでも活躍中である。


クールでホットな、ミュージシャンなのだ。






そんなtatsu氏のお薦め3枚は‥


Kazmi with Rickies










○Kazmi with Rickies「Who」(1996)



■tatsu

ネロリーズのギターのカズミちゃんのソロなんですけどもね、これは素晴らしいアルバム。

僕はこのアルバムには参加していないんだけど、このアルバムが発売される直前に、ネロリーズのツアーに参加してて。
それで、カズミちゃんから出来上がったものを頂いて聴いたら、「なんですか、これは!」というくらい素晴らしい出来で。

ポップスなんだけど、ちょっとこう、ねじれてる。
神森君の音楽も全然ストレートじゃないから(笑)、非常に互換性があるな、と思って。


カズミちゃんも、(ネロリーズの)ボーカルのジュンちゃんもそうなんだけど、なんか特別な求心力みたいなものがあって、二人とも普通の女の子なんだけど、集まってくるのが変な人ばっかりで(笑)、パーカッションのASA-CHANGとか、菊地成孔さんとも演ってたりとか、大友良英先輩がターンテーブルで参加してたりとか。  

9曲目に、「プリーチ(Preach)」っていう曲があるんだけど、それはもう素晴らしいですよ、3拍子のワルツで。大友さんのターンテーブルのノイズと、菊地成孔氏の複雑なホーン・アレンジとが絡み合って。

当時、僕は大友さんのことを知らなくて、このアルバムを聴いてから、彼のいろいろな作品を聴くようになったんだ。その後、吉祥寺のスタジオでレピッシュがリハーサルをしていたときに、偶然大友さんもそこに来ていたときがあって。僕が「大友さんだ!」って思って興奮していたら、現ちゃんが、「おお、大友君!」とか言って話してて。
「なんだそりゃ!」って(笑)
なんと大友さんて、現ちゃんと同級生で、僕が一瞬だけ入ったジャズ研の先輩だったの。で、その二人はよくバイトとか一緒に行ってたらしくて。現ちゃんは全然、現代音楽とか知らなかったから、大友さんが何やってるか知らなくて。で、現ちゃんに「大友さんていうのはね…」って僕が語って(笑)
その大友さんと、今こうして一緒にバンドをやることになろうとはね。

このアルバムはね、もう絶対評価されるべき。今からでも遅くない。


■神森

懐かしい!Kazmi with Rickies。

僕がデビューしたとき(1995年)、同じレコード会社の隣のセクションにネロリーズがいて、だからKazmi with Rickiesももちろん同じセクションで、当時ちゃんとは聴いたことなかったのだが、「不思議なポップス」という漠然とした印象を持っていた。


今回、10年以上ぶりに改めてきちんと聴いて、驚いた。
ポップスとアヴァンギャルドが見事に融合されている。ほんとに見事に。
ゲスト・ミュージシャンも、ASA-CHANG、菊地成孔、大友良英、とともに加地秀基の名前まで!
この雑多で、それでいてポップな感じ、これは僕が目指している理想の音世界に近い、と思った。

なんとなく「渋谷系」という言葉を思い返すような、甘くて宙に浮いたような歌詞、ボサノヴァの曲(ジョアン・ジルベルトの「3月の水」)をウィスパー・ヴォイスで歌うスタイル、などは時代を感じさせる。が、
ポップで存在感タップリのアヴァンギャルドな音世界はいつ聴いても新鮮な音楽に聴こえると思う。
とくにtatsuさんのお薦めの「Preach」はリアルな「現在(いま)」の視点から聴いても素晴らしい。
この時代に、ノイズやクレズマー的な音楽を、ここまでポップに昇華させていたミュージシャンがいたとは。

コキュコキュいってるリズムとか、プログラミングも素敵。
刺激を受けた。



Brian Blade Fellowship










○Brian Blade Fellowship「Brian Blade Fellowship」(1998)


■tatsu

ブライアン・ブレイド。この人は今、もうジャズ界じゃ非常に人気のあるドラマーで。
これは彼のリーダー・アルバムなんだけど。

カサンドラ・ウィルソンとかね、ウェイン・ショーターのカルテットとかで演ってて。
ニューヨーク方面のちょっと気になるジャズのセッションには必ずいる、っていう。

ブルー・ノートから出てるアルバムだから、ド直球のジャズなのかと思ったら、ちょっと変わってる。
ダニエル・ラノワが参加していて、彼がいつものようにディレイがフワフワかかったペダル・スチールを弾いてたりするのね。だから、かなりアンビエント。
すごい気持ちいい。


■神森

ジャズは、過去の大御所の「名盤」と呼ばれるものくらいしかチェックできていないので、「感想」になってしまうけれど、このアルバム、とても新鮮。気持ちが良い。

フュージョン以降って感じがするコード進行はコンテンポラリー・ジャズだし、それでいてディレイで奥行き感たっぷりのペダル・スチールの存在がすごく音響的。音と音のぶつけ合い、っていうビバップ以降のジャズの本質とは異なる、1つの空間音楽に聴こえた。
特にアルバムの冒頭部なんて、ジャズとは言いがたい。

これはきっとダニエル・ラノワのような、ジャズ・ミュージシャンではない人の起用もさることながら、ボブ・ディランやジョニ・ミッチェル、ノラ・ジョーンズなど様々なタイプのミュージシャンとかかわってきたブライアン・ブレイドの幅広い音楽センスの賜物なのだと思う。

ジャズのルールしか知らなかったら今までのジャズしか作れないし、ロックのルール(ルールなんてあるのか、とも思うけど、やはりあると思う)しか知らなければ今までのロックしか作れない。
自分の範囲の外側に手を伸ばすことによって、内側も変える事ができるのだと思う。

このアルバムは、だから、ジャズのアルバムなのだろう。
それも、新しいジャズのアルバム(とはいえ、1998年発売だけど)。

現代のジャズにも耳を傾けてみたくなった。



a tribe called Quest










○A Tribe Called Quest「Midnight Marauders」(1993)


■tatsu

この人たちも異端児。衝撃的でした。

この頃はわりと、まだヒップ・ホップはハード・コアなイメージがあったんだけど、そこにいきなり、すごい色彩感に溢れたサンプリング音源と適当な感じのラップで(笑)シーンに現れて。

僕がヒップ・ホップの中でもトライブが好きなのは、コード感。昔のレア・グルーヴものの音源とか、もってくるネタのコード感が素晴らしい。
あと、3小節で変わったりとか、割と8小節とか16小節じゃないものが多くて、そういう感じもすごい親近感ていうかフィットしたんだよね。レピッシュもそうだったので。

(神森:tatsuさんて、ヒップ・ホップけっこう聴いてるんですか?)
いや、僕にとってのヒップ・ホップは、トライブくらいで終わっちゃったんだ。
(ヒップ・ホップもふくめて)最近の音楽って、発明というよりは引用が多くて、盛り上がることができないんだよね。
ヒップ・ホップも、サンプラーを使った「引用」なんだけども、その行為自体がすごく発明的だったんだよね。価値観の発明。
「ありもの」を使って新しいものを作るっていう発想が素晴らしかった。


僕はやっぱり、予定調和じゃないもの、ちょっとずれたもの、というものを常に好きなんだよね、現代音楽なんか、まさにそれの一番コアなとこじゃない?
ヒップ・ホップは、そこをポップに軽くいなす感じがね、素敵なんだよね。
(神森:ポストモダン的なんだけど、絶対そんなこと意識していないだろうな、っていう)
うん、なんかいろいろな要素が全部中に入っている、っていう。
真のポップっていうのはそういうものだと思うよ。

結局はその人の「在り様」だから、その人がポップであれば何をやってもポップなんだと思う。
最終的には誰が何をやっているか、っていうのが一番重要なんだと思う。
同じような音を出してても、神森君が演ってるのと僕が演ってるのでは全然違って聴こえるだろうし。


■神森

A Tribe Called Quest。懐かしいな。
それまでのオールド・スクールにはなかった、洗練されたサンプリング・センスや、Q-ティップの柔らかくて滑らかなラップなどもさることながら、
僕が衝撃的だったのはリズム・ループの抜き差し。
普通にラップをしている、適当な小節の2拍裏とかで突然リズムがなくなったかと思ったら、次の小節の4拍目のスネアとともにまた復活する、みたいな。
テクノの叙情的なリズムの抜き差しと違ってヤンチャで、刺激を受けた。

機材の急激な進歩の恩恵をうけている今のヒップ・ホップのカラフルでハイクオリティなサウンドと比べると、かなり時代を感じさせるが、
逆にそのサンプルのビット数の粗い、ザラついたサウンドも好きだ。




終わりに------------------------------

どんな音楽でも、その人の人柄が隅々に表れる。
言葉や、旋律や、音に、その人の歴史や想いが詰め込まれているわけで、それは隠しようがない。(隠すくらいなら表現する必要もないわけで)

知識や技術は、表現をするための些細な要素でしかないわけで、大切なのは自分がどんな人間であるか、ありたいか、を理解して知ってもらうということだろう。

責任を持って自分の音楽をまっとうしたい。



tatsuさん、どうもありがとうございました


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次回(満2周年!)、訪問先は‥ ヒミツ、です(笑)



神森徹也

  
Posted by manekarezarukamimori at 15:15Comments(0)TrackBack(0)第21回〜25回

2007年12月24日

『招かれざる客 第22回 -クリスマス特別編-』 ゲスト:堂島孝平

さて!はて!さて!
みなさん、どんなクリスマスをすごしていますか?

今月の『招かれざる客』は、ちょっと特別!
ゲストと僕のクリスマス会の模様を、対談形式でお届けします。
読みごたえタップリの3部構成。
僕からのささやかなプレゼント。ぜひ楽しんでください!


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---プロローグ

12月某日。ゲストと待ち合わせ。
場所は、初台オペラシティの特大ツリーの前。
このツリー、去年もこうして見あげていた。ゲストを待ちながら…
そう、ここで待ち合わせる人といえば…

堂島孝平












堂島孝平


シンガー・ソング・ライター。
ポップ・ミュージックを愛し、ポップ・ミュージックに挑み続ける男。

盟友でもあり、尊敬するミュージシャンでもあります。
昨年にひきつづき、今年もクリスマスの回に登場してもらいました。

ちなみに昨年の企画の様子はコチラ↓http://blog.livedoor.jp/manekarezarukamimori/archives/cat_50036173.html



さて。
ひとしきりツリーを眺めた後、西新宿のモツ煮込み屋さんへ移動。
モツをグツグツいわせながら、クリスマス会のはじまり〜



●第1部 クリスマス会/前編

〜オススメCDをプレゼント交換するの巻〜


---席に案内され、ひとしきりの注文をすませる---
神森(以下、神):さて。
堂島(以下、堂):さて。
神:もう、本題なんですが(笑)、プレゼント交換を、したいと思います。
堂:オススメのCDをね。
神:はい。
堂:いいでしょう。どちらからいきます?
神:では、僕から…。

---神森、ラブリーに包装されたCDを取りだす---
堂:あれ、そんなにちゃんと?袋を(笑)
神:レジで「プレゼントです」つったらこんなに丁寧に包んでくれて…
堂:ありがとうございます。…ところでさ、男同士のプレゼント交換という行為。多分、
周りの人たち誤解してるよね、場所柄さ。
神:ま、ま(笑)

---堂島、包装をとく---
NE-YO











■ne-yo「In My Own Words」(2006)

堂:お!
神:これ、持ってます?
堂:ネーヨ。
神:ニーヨです。
堂:嘘、知ってる知ってる、ネーヨでしょ?
神:いや、ニーヨですよ。
堂:「ニーヨ」ね。こないだ日本に来てたでしょ?
神:あ、本当に知ってるんですね(笑)。堂島君にはマニアックなCDをお薦めす
る、っていうのは違う気がしていて、ガツンと王道のものを、と思って。全米や日本で
も大ヒットした、このアルバムにしました。

堂:これは神森君、聴いてるの?
神:メチャメチャ聴いてます。ベタなんですけど、すごいいいんですよ。
素晴らしいポップ・センスなんです。20代前半だからこその若さと、
それと間逆の渋さがあるんです。
スティーヴィー・ワンダーのような70年代の美しいメロディや、リック・アストリー
やバナナラマのような80年代特有のキラキラした音、90年代のヒップ・ホップのシン
プルで乾いたリズムの感じなどなど、いろいろな時代のいろいろな要素がゴチャ混ぜ
になっているんだけど、完全に時代のど真ん中にいる、っていう。
R&Bって現在の主流ですよね、この人もその中にいるんだけど、他の人となんか違う。逆を言
えばとっ散らかっていても、センスがあれば、ちょっとしたさじ加減でど真ん中にい
ることができる。

堂:いや、ニーヨまで、俺、聴いてなかったなあ、あ、ネーヨか。
神:いや、ニーヨですってば。1回あってるじゃないですか。
堂:ネーヨね。「いいとも」出てるの見た。
神:ニーヨですけどね…。堂島君も、すごくど真ん中で戦っているので、そうであり
つつ、なんか違う感じの、ということで。前から、こうゆう音楽(R&B、Hip Hop)を
堂島君にお薦めしたくて。面白い人ってたくさんいるんですよ。
堂:うん。
神:…こんなこと、僕がいう筋合ないんですけど、堂島君て、いろんな可能性がすご
くあって、素晴らしいな、って思うんです。だから、気軽にこういう音楽を聴いてほ
しいなって。

堂:しかし…そんなに似てますかね、顔。
神:…顔?
堂:確かにこうゆう帽子最近買って、撮影したりしたんだけど(笑)
神:(笑)。感想、後日くださいね。
堂:了解!



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堂:じゃ次は僕からね。僕は、自分が今度出すアルバムを、
神森君へのクリスマス・プレゼント、ってことにしようって思ってる
んですけどね。で、神森君にレコ評、書いてもらうっていう(笑)。

UNIRVANA












■堂島孝平「UNIRVANA」(2008)

神:「UNIRVANA(ユニルヴァーナ)」ですね。このアルバム、実は、まさにできたて
のホヤホヤの時にいただいたんですよね。もう、何回も聴いてますよ。
堂:ありがとう。まだ本当に限られた何人かのミュージシャンにしか渡していないん
だよね、このアルバムは。
神:おぉ!ありがたき幸せ(笑)。このアルバム、堂島君の「新たな幕開け」だと思い
ますね。
堂島:そうでしょ!神森君には情報をあんまり与えないうちに、音だけで聴いても
らっちゃってるから、ちょっと説明するね。
神:はい。

堂:このアルバムには、「ハンネ君」っていう主人公の物語があるのよ。
神:そうなんだ…。「ハンネ君」って涅槃?
堂:そうそう。スタジオで、「これは涅槃ポップだ!」とかって言っているうちに、
「ハンネ君」っていう名前になったんだけど(笑)
そのハンネ君が、いつも街で「風」と一緒に遊んでるのね。で、ある日、
通りが渦を描きはじめて…冒険が大好きなハンネ君は「風」の友達と
そこに飛び込んでしまう、ってとこから話が始まるんだよね。
神:ふむふむ。
堂:で、行った先が「ユニルバーナ」っていう国で。そこで不思議な
女の子と出会って、そのヘンテコな国で少しずつ成長する、っていう
物語なんでよ。
神:映画みたいですね。
堂:そうなんだよね。前から童話的な話を考えるのが好きだったんだけど、
自分の音楽を上手く使って、そういう、今までと違う、表現方法をしよう、って思ったの。
神:なるほど。
堂:それも、雰囲気の良いサントラを作るっていうんじゃなくて。
コンセプトを持つことで、表現をより過激にやるっていう、攻めだよね。
なんかこう、いつも「発明したいな」と思って音楽をやってるんだけど、
そういう気持ちが今回はより強かったというか。
神:確かにそれは音に表れてますね。

神:ところで、今回って、「話ありき」なんですか?
堂:そう。最初は、その時ひらめくがままに脚本を書いて、それを
メンバーに「バーッ」て配って、「こういうのやるから」つって…。
みんな面白いって言ってくれたんだよ。
進んできたら、曲との相互作用というのもあったんだ。
あるひとつの場面を曲にすると、さらに新しいシーンが浮かんだり、
逆に先に曲だけ浮かんじゃって、その曲用の場面設定を書いたりね。
神:なんか、すごく楽しそうですねえ。
堂:うん。それもね、ただ「楽しければいい」って音楽をやってるわけじゃ
なくてさ。こう、楽しいと感じる美しさっていうのが好きなの。
そのやり方や表現の仕方がいろいろあっていいと思うんだ。
神:なるほど…。帰宅したらもう一度聴いてみよう(笑)




●第2部 クリスマス会/後編

〜ゲストとのクリスマスのよもやま話、および、読者投稿の抽選&当選発表の巻〜


神:さてさてさて。あのですね。先日、この連載を読んでくださっている
みなさんに、クリスマスにまつわるエピソードを募集しまして。
で、たくさん送ってもらったんです。みなさんありがとうございました!

堂:クリスマスかあ…。
  あのさ、小4くらいの時にね、サンタっていないんだな、って分かった。
神:何でですか?
堂:それまではね、毎年、クリスマスの朝には、そのときに欲しいなと
思っていたものが枕元に置いてあったんだ。グローブだったりバットだったり。
神:ふむ。
堂:それが、小4の年に限って、別に欲しいとも思っていないスウェットの上下が
置いてあったんだよね。しかも、その当時全盛を極めていたアシックスとか
プーマとかでもない、あの、スーパーとかで置いてある…的なね(笑)
神:あら。
堂:ね?けっこうショックだったんですよ。で、スウェットを握りしめて
居間にいって。母ちゃんが編み物をしていてさ、
母ちゃん、僕と目が合うなり、「孝平ゴメンやで…」って言ったんだよね。
まあ…ちょっと、家計が苦しかったんだろうね、その年は。
神:「ゴメンやで」って言わなくてもよかったのに…お母さんの完全なミスですよね。。
堂:俺の顔見てとっさに謝っちゃったんだろうね(笑)。
そういうことか、って思ったけどね。
神:そのスウェットはその後。。
堂:着倒しました(笑)


神:僕は…小3のときだったんだけど、テニス・ラケットがほしいなって思ってて。
サンタに手紙書いて、ワクワクして寝たんです。で、次の朝起きてみたら、
足元に袋がある。それも、一方が大きくて、一方が小さい。
堂:おお。。きたじゃん!
神:「これは完全にテニス・ラケットだ!」って思って…開けたら、
アラレちゃんのホッピングだった。
しかもそれ、高島屋の袋に入っていたんだけど、袋に思いっきり
父親の字で「メリークリスマス!徹也君、勉強頑張りなさい」って…
で、「お父さんじゃん!」って(笑)
堂:それってお父さん、サンタの体で書いてるの?ダメじゃん(笑)。

堂:まあ…僕もね、脱サンタ自体はわりと早かったんだけど、
神:はい?
堂:21才くらいのときに、マネージャーと高速道路走っていて、目の前に虹がかかってたんだよね、で、そんときに後部座席から「早く行きましょうよ!くぐりましょうよ!」って言って…
神:あ…
堂:ドン引きされた記憶が。ヤバイでしょ。悪気ないよ。悪気なく「早く行きましょうよ!袂に!」って
神:わははは
堂:こんなチャンスめったにない、くらいな勢いで言っちゃったんだよね、
高速だし早いし行ける!虹の向こうへ!と
神:(絶句)


神:じゃ、みなさんに送っていただいたエピソードの選出にうつりましょう。中から
優秀作を一つ選んで、CDをプレゼントします!

---審査員、送られてきたエピソードを熟読中---

堂:この人、いいんじゃないですか、ポッペンさん。
神:コタツ燃えた人。そうですね、僕もそう思ってました。

堂&神:ポッペンさん、おめでとうございます!

(以下、ポッペンさんの投稿を一部略して転載)
> 小学生の時、家で独りでクリスマスケーキを食べなくちゃいけない年がありまし
>た。理由は忘れましたがとても淋しいですよね。。。
> で、ロウソクを何本も立て、火をつけようとマッチを擦りました。
> でもそれは生まれて初めてマッチを擦った瞬間でもありました。
> 親がやっていた仕草を思い出しながら擦ったのですが、火が思った以上に燃え上が
りコタツの上で手を放してしまいました!
>
> なんとコタツが燃えました!!
> コタツカバーが合成樹脂なんかだったせいで運良く燃え広がらなくて座布団でとっ
さに消せました。
> もしコタツカバーが綿だったら家が火事に・・・と想像すると怖いです。
> そんな体験をしたせいか、いまだにマッチを上手く擦れません。
>
> 今はチャッカマンの時代なので苦労はしてませんが、お線香くらいマッチを擦りた
いのです。くやしいです。。。

堂:このネットラジオ聴いてるみんな的には…
神:ラジオではないんですけど。
堂:俺が強く否定したいのは、特にチャッカマンの時代ではない、と。(笑)
もっといってるでしょ、最近(笑)チャッカマンはチャッカマンだけど、チャッカマ
ンの時代、っていうほどチャッカマンじゃないでしょ、こんだけ灯油も高いのに(笑)
神:(笑)

神:さて。
堂:どんなCDをプレゼントしましょうかね。
神:ディープ・パープルのスモーク・オン・ザ・ウォーターとか?
堂&神:クリスマスにスモーク・オン・ザ・ウォーター(笑)
堂:じゃ、これ、今たまたまもってたんですけど、このCDを差し上げればいいんじゃないですか?コレ
(と言って鞄からFeistの2ndアルバム「Reminder」を取り出す)
神:これ最高じゃないですか!いいんですか!?
堂:うん。このアルバム超いいよね。じゃ、これに俺と神森君のサインを入れてプレ
ゼントしよう。ファイストじゃないけど(笑)
神:(笑)。


てことでポッペンさんには堂島君が偶然持参していた、Feistの「Reminder」送りま
す!楽しみにしていてください。(もし余裕があったらスモーク・オン・ザ・ウォー
ターも聴いてみてくださいね…笑)
それと、投稿をくださったみなさん、ありがとうございました!すべて、二人で目を
通しました!



●第3部 クリスマス会/後日編

〜相手からプレゼントしてもらったCDに、感想を寄せるの巻〜


◇堂島筆

NE-YO











■ne-yo「In My Own Words」(2006)


「知ってますか、ニーヨって言うんですよ」
と、神森くんに渡されたので、「え、ネーヨだよね?」とちっちゃくボケてみたら、
「はい、ネーヨです」と言うので、「じゃあ、ネーヨだ」と言うと「いや、ニーヨで
すけど」と彼が言うのであった。
そんなヤリトリを寸劇のように繰り返したせいで、いまだにどっちが正しいのか一瞬
考えてしまうのだが、それより何より、なぜ神森くんが僕にネーヨ、ニーヨ、ネーヨ
?をプレゼントしてくれたのかを、いま聴きながら考えている。

神森くん曰く「天才なんです」。

僕は最近のソウル/R&Bのアーティストには、そこまで詳しくなくて、雑に言ってしま
うと、どれもこれも、とにかく「顔ジャケ」が多くて、大体同じ角度に首を傾けてい
るというぐらいの印象だった。あまりワクワクさせてくれるアーティストに出会って
ないし、近年のアムロちゃんやネリーちゃんの素晴らしさを越える人をあまり知らない。
なので、ニーヨ、ネーヨの、いや、ニーヨのジャケを見たときも、正直「またか」と思った。

しかし、いま「またか」が「まさか」に変わっているのである。

思っていたより、全然楽しい。
このテの音楽を聴いていると、トラックメイキングの手段だけが、どんどん豊富に
なっていて、そこに音楽的な豊かさを感じないことも少なくないのだけど、ニーヨ
は、とても面白い。歌がいいし、曲がいいし、発明している。さすがネーヨだ。
低調なループが、なんとなく流れるような場面はなく、展開がアカデミックである
し、飽きない。
彼の音楽的ルーツはよく知らないけど、アイデアがジャンルに縛られてないところ
が、とても素敵だと思った。
オルタナティブと言ってしまえば何でもありみたいな受け取られ方をされがちだけ
ど、ジャンルやフィールドを飛び越えた感覚を、センス良くポップに持つというの
は、とても大変だし、身に染みて分かるし、そういう意味では、ネーヨと、ニーヨ
と、、ニーヨとなら、音楽性は違えど友達になれそうでなのである。そう、大事なの
は、彼がシンガー・ソングライターだということなのだ。

ニーヨ、ネーヨが、ニーヨが新時代を連れてきたことは間違いないのかもしれない。

聴かせてくれてありがとう、鎌森、いや、神森くん。


--------------------


◇神森筆
UNIRVANA










■堂島孝平「UNIRVANA」(2008)

来年1/23発売の、堂島君のニュー・アルバム「UNIRVANA」。
僕はアルバムができたばかりの12月の始めに、曲間もまだ決まっていない未マスタリ
ング状態の音源をいただき、一足お先に聴かせてもらった。

GO-GO KING RECORDERSやHi Tension Please !、そして堂島孝平楽団と、異常なまで
に貪欲に新しい出会いを求め、そしてどのプロジェクトでも確実に新しくて幸せなサ
ウンドを作り上げてきた堂島孝平。そんな彼の新しいアルバムは、なんと、ほとんど
一人で作り上げたのだという。

堂島君が宅録?
それは、自分がシンガー・ソング・ライターである、ということを強く意識し
た結果だったのだという。

そして彼の、このアルバムの、素晴らしいところは、ほとんど宅録であるというのに
まったく内向的ではない、ということ。
それはストーリーがあるから、とかいう問題ではないだろう。
一人でギターを抱えて戦ってきた男が、その道すじで仲間をみつけ、バンド・サウン
ドを極めていき、ついには楽団まで作ってしまった、そんな孤独なんだけれど孤独で
はない男の包容力に満ちたポップ・ミュージック。


歌を作りはじめた時のような初期衝動と、10年間の活動で築き上げてきた確かな技術
と経験が、きちんと融合されていて、これは常に自分と、そしていろいろなモノと
闘ってきた、「今」の堂島君にしか作れないアルバムだ。

いつもどおりのキラーチューンもあるし、何回も聴くうちにジワジワと染み入る曲も
ある、いかにも堂島君って感じのヤンチャで優しくて遊び心がある物語、可愛らし
かったり摩訶不思議だったりするインストの小曲、、などいつも以上に『堂島孝平』
という一人の男を感じることができて楽しめた。


素敵なアルバムですね!
聴かせてくれてありがとうございます、丼島、いや、堂島君。


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次回の招かれざる客は、通常どおりの連載です。

訪問先は‥ tatsu氏(ベーシスト) です

みなさんお楽しみに!

神森徹也

  
Posted by manekarezarukamimori at 07:48Comments(0)TrackBack(0)第21回〜25回

2007年11月25日

第21回 ゲスト:千ヶ崎学

もう11月も終わりかあ。

今年はそりゃまあ、良いことも悪いこともあったけど、まま、なかなかの年だったのではないでしょうか‥

コタツ宇宙という新しいユニットを組んだし、他のミュージシャンのレコーディンやライブに呼んでもらったりしたし。
来年もいろいろな輪が広がっていけるようにしたいです。

関西でライブが1度もできたなかったことが、1番悔やまれることです。
それから、そろそろ新しいアルバム製作にもとりかかっていきたいです。

‥ってまだ今年はまだ1ヶ月もあるっーの!

引き続き今年も頑張ります。

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「神森君の音楽って、一人で好き勝手やっているから、純粋培養されている感じがしましたよ。
あんな歌詞、誰も書けませんよ普通(笑)」という今回のゲストは‥


千ヶ崎学











千ヶ崎学


ベーシスト。

Nona Reeves・松浦亜弥・青山陽一・ケミストリー・TRF・ヒックスヴィル・ナイス橋本
などなど、数多くのアーティストのライブ・サポートやレコーディングで活躍中。
堅実かつグルーヴ感溢れる演奏を聴かせてくれる。
                                                  
好きなベーシストはDonald "Duck" Dunn、David Hoodなど。

猫と落語をこよなく愛する、素敵な音楽家。


そんな千ヶ崎さんのお薦め3枚は‥


ShuggieOtis











○Shuggie Otis「Inspiration Information」(1973)

『若干15歳にしてAl Kooperの「Kooper Session」(1969)にフューチュアされるなど、若くして「天才ギタリスト」といわれたShuggie Otis(シュギー・オーティス)のサード・ソロ・アルバムに、セカンド・アルバム「Freedom Flight(1971)の4曲を追加した再発盤。
作詞・作曲・編曲・演奏はもとより、ミキシングまで、全編ほぼ一人で行われている』



■千ヶ崎

神森君の「Too Tired」*注1)を聴いたときに、、「シュギー・オーティスじゃん」!とか思って。
曲が似ているという意味じゃなくてね。
自分でいろいろ楽器やってる人って、なんか微妙に音のかみ合わせが緩い、いい意味でね。
その緩さがいいなあと思って。

(神森:「このアルバム、実は以前に青山陽一さんにお薦めしてもらったんですよ」*注2)

ああああ‥
じゃ、かぶっちゃったね。

いや、コレちょっと思い出したんですよ、やっぱり。
青山さんもきっとそうなんじゃない。


*注1)1997年発売のワタクシ神森徹也の3rdアルバム「TooTired」収録の同タイトル曲。
*注2)「招かれざる客 第2回 ゲスト:青山陽一」の回を参照されたし→http://blog.livedoor.jp/manekarezarukamimori/archives/cat_50005497.html


■神森

青山さんにこのアルバムをお薦めしてもらって以来、もう何度も聴いているこの「Inspiration Information」。

宅録(ここでは一人多重録音のことを指す)は各楽器の「演奏技術」ではなく、「組み合わせ・構成能力」が大切だ。
「せ〜の!」で複数の音を鳴らすことが出来ないため、物理的にバンド・サウンドではないわけで、宅録は宅録の良さを生かすべきだ。(もちろん、ある程度の演奏技術は必要だが)
無限の音色を用いて、じっくり自分の世界を作ることができるのだから。


このシュギー・オーティスは、若くして「天才ギタリスト」と言われたほど演奏技術の高いミュージシャン。
そんな彼が自分1人で作り上げたのが、この演奏技術に頼らない、美しく優しくそしてどこか緩いサウンド・スケープだ。
沢山の素敵な音が宝石箱の中でキラキラと光っている。僕は素晴らしい宅録の音楽を聴くといつも、そう思う。

演奏技術からの逃避ではなく、あくまでもこの「世界」を作りたいのだ、という意思が見られてとても頼もしい。
「演奏技術が必要ない」ということは、それはそれで絶対にありえないのだから。

とにかく素晴らしいアルバム。


PhilUpchurch











○Phil Upchurch「Darkness,Darkness」(1971)

『名ギタリスト、フィル・アップチャーチがブルー・サムに残した最高傑作(LP2枚組)。ダニー・ハザウェイ(キーボード)、チャック・レイニー(ベース)、ジョー・サンプル(ピアノ)、ベン・シドラン(キーボード、ピアノ)、ニック・デカロ(管弦アレンジ)、ハーヴィー・メイソン(ドラムス)等参加。トミー・リピューマ・プロデュース。』−CD帯より抜粋−



■千ヶ崎

知ってますコレ?

フィル・アップチャーチっていう、ダニー・ハザウェイのライブとかでギター弾いている人のインスト・アルバム。

ソウルってちょっと演歌臭いところもあるじゃん?
それがこう、凝縮されてしまっているアルバム(笑)

ギタリストとしてはめちゃカッコよくてね、ベースはチャック・レイニーだし、ドラムはハービー・メイソン。
でもなんか演歌に聴こえてしまうんですよ(笑)


曲もほとんどカバーで、「ユー・ガッタ・フレンド」*注)とかインストでやってるわけ。
それってさ、危険じゃない?
商店街で流れている音楽になりがちでしょ。
‥ま、なってるんだよね(笑)

(神森:「『なりがち、でも、ならない』ってところがいいところなんじゃなくて、なっちゃってるんですか(笑)」)

そう(笑)
なってるんだけど、でも、なんか違う。
とにかく面白いんですよ。
笑いと渋さが共存している。

この緩くて力の抜けた感じが、初期・神森君の音楽に通じるものがあって、選んだんですけど。

*注)Carole Kingの大名盤「Tapestry」に収録されている曲。James Taylorがカヴァーしてヒットさせたことでも有名。


■神森

知りませんでした、フィル・アップチャーチ。

この企画は最初にインタビューをしてその後にCDを購入して聴く、という行程のため、「商店街」というキーワードありきで初めて聴くことになり、なんとも言えない気持ちでプレイ・ボタンを「ポチッ」と押したのであったが‥

ううむ‥うむ。
千ヶ崎さんの言うとおりだった。
のっけから「三匹が斬る!」でも始まるんじゃないか、と思ってドキドキしてしまうような(笑)演歌調のタイトル曲「Darkness,Darkness」。
「You've Got A Friend」の自身に満ちた、アドリブを効かせながらもたって弾くスタイルは、まさに商店街風。
‥しかし商店街風とはいえ、どこか違う。
各楽器のフレーズとかが、めちゃくちゃカッコいいのだ。
でも全体として、なんだか、緩い(笑)
(ジェームス・ブラウンのカヴァー曲、「Cold Sweat」だけが、純粋にやたらカッコよい)



カヴァーって、もともと世に出ている曲だから、その曲自体の評価を気にする必要があまりなく、だから気楽に挑めるという側面がある。
このアルバムは当時のヒット曲を集めたもの。
だから尚更、好き勝手にギターを弾きまくっているのだろう。


JacoPastorius











○Jaco Pastorius「Holiday For Pans」(2001)

『スティール・ドラムによるカリビアン物語!
これもジャコという人間の奇蹟だった。
新たにリマスターされたブランニュー・エディション!』−CD帯より抜粋−



■千ヶ崎

ベーシストがジャコ(パストリアス)を薦めてたらつまんないかな、って思ったんだけど‥

フュージョンの匂いとかまったくなくて、もちろんベースも弾いているんだけど、自分で曲を書いてアレンジして、スティール・パンの人と共演しているアルバムなんだよね。
曲もいいし、スティール・パンの音色もいいし、その内容が素晴らしくて、大好きなんですよ。

家で食事する時は常にこれかけてるんですよ、最近。
そのぐらい、すごいリラックスできる。
ほらファーストって緊張感たっぷりで切れ切れじゃないですか(笑)
あんなの作ってたら早死にするよね、人間がおかしくなっちゃう。
最高だけどね。



■神森

素晴らしい!

僕はフュージョンはあまり興味がないけれど、「ジャコ・パストリアスの肖像」には深い感銘を受けた。
高い演奏技術、美しいメロディ、激しいビート、それらが素晴らしい関係で噛み合っている、否定のしようがない完璧なアルバム。

この「Holiday For Pans」はその「ジャコ・パストリアスの肖像」からは想像もつかないほど、穏やかなアルバム。
美しいメロディ、全編にスティール・パンをフューチュアしたキラキラしたアレンジ、本当すごいポップ。
特にタイトル曲でもある「Holiday For Pans」は秀逸。

このアルバムは、製作当時レコード会社に気に入られずに長い間お蔵入りになっていたり、その後日本のSound Hillsというレーベルが権利を買い取って日本でのみで発売された、とか他にもいろいろいわくのあるアルバムらしい。

そういったことは抜きにして、このアルバムは1つの音楽作品として、とても優れている。

あんなものと、こんなものを、作れてしまうジャコ・パストリアスにも脱帽だ。





終わりに------------------------------

何もかしこまってもっともらしいことを歌ったものだけが「いい歌詞」ではない。
アレンジもそうで、完璧な構築や完璧な演奏だけが、「いいアレンジ」の絶対条件ではない。

表現方法が何であれ、その表現したものにその人間のその時の「ムード」が提示されているのが、「いい歌詞」であり「いいアレンジ」の絶対条件なのだ、と思う。
それが沢山の人に評価されるかどうかは、またちょっと違う話だけど、そうでなければ何もかもが空虚だ。


千ヶ崎さん、どうもありがとうございました


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次回訪問先は‥ 堂島孝平氏 です。

次回は「クリスマス特別企画」として、掲載します。
詳細は12/1にこのブログにて発表しますので、お見逃しなく!

読者プレゼントも予定していますので、みなさんお楽しみに!

神森徹也  
Posted by manekarezarukamimori at 20:06Comments(0)TrackBack(0)第21回〜25回

2007年10月25日

第20回 ゲスト:木暮晋也

今回はゲストの最寄駅である「花小金井」近辺の、某ファミレスにてインタビュー。
時間はお昼の1時。
ドアを開けて入って店内を見渡せば、あら別世界!

今回はゲストの最寄駅でもある、花小金井駅の近くの某ファミレスにてインタビュー。
時間はお昼の1時。
ドアを開けて店内を見渡せば、あら別世界!

隣の席はオバちゃん、向かいの席もオバちゃん、あちらもオバちゃん、こちらもオバちゃん。
お昼のファミレスは、まさにオバちゃんたちの「オアシス・オブ・井戸端会議」と化していたのであった(笑)

そんな中で完璧に浮きまくっている我々30を過ぎた男2人‥
しかしそんな重圧にもめげずに音楽談義に花を咲かせてきました!

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「本当に親しい人としか真面目に、まあ真面目になるかどうかは分かんないけど(笑)、音楽についての話ってしないから、(この企画を)楽しみにしていました。」という今回のゲストは‥


木暮晋也








木暮晋也


ギタリスト/ソングライター/アレンジャー/プロデューサー。

92年、ロッテンハッツのギタリストとしてメジャー・デビュー。

同バンド解散後の94年、ヒックスヴィル結成。
96年にファースト・シングル『バイバイブルース』(名曲!)でメジャー・デビュー。
現在までに3枚のアルバムを発表している。

またギタリストとして、
オリジナル・ラヴ、小沢健二、フィッシュマンズ、アン・サリーなど多くのアーティストのレコーディングやライヴに参加している。

そのポップで瑞々いカッティング・ギター、あんなギターを僕も弾けたらなあ、と思っているのだが‥
(小沢健二「ラブリー」やフィッシュマンズ「ナイトクルージング」のギターは本当、気持ちいい!)


現在、ヒックスヴィルの他に、かせきさいだぁとのユニット「トーテムロック」やソロとしても活動中。





そんな木暮氏のお薦め3枚は‥


JuanaMolina









○「Segundo」(2003)

『<アルゼンチン・ポスト・ロック/音響派>の歌姫、フアナ・モリーナの世界デビュー盤にして名盤!!彼女自身のセカンド・アルバムに当たる本作は、アコースティックとエレクトロニックの絶妙な融合。儚げなハスキー・ヴォイスが幻想的な世界へと誘う。日本の音響/ノイズ系のミュージシャンたちを初め、ネオ・アコ好きにも注目されている!
』−@TOWER.JPより抜粋−



■木暮

じゃあ、これから!
ファナ・モリーナっていう、アルゼンチンの人。
いわゆる「アルゼンチン音響派」って言われている一派のアーティスト。

どのアルバムもだいたい同じ感じなんだけど、電子音がプワーンと鳴っていて、アコースティック・ギターを弾きながら、軽ーく歌ってるんだけど、それが妙に心地いいんだよね。
僕が静かな衝撃を得たアルバム。


友達に聞いたんだけど、ライブでは1人で演奏してるんだって。
アコギを弾きながら、足元にはディレイが置いてある、それで本人右手側にはシンセが置いてあって、その上にはミキサーが置いてある、で声とかアコギとか全部の音がそのミキサーに繋がっていて、ミキサーのオグジュアリーで個別にディレイだの他のエフェクトをかけられるような仕組みになってて、足や手を駆使して「音の空間」を作りながら歌う、それはもう神業のように素晴らしかったらしくて。

歌とギターだけでも相当気持ちいいのに、それをこの女の人が音響とかも上手いこと操りながら、手品のようにすごい空間を作っちゃう、すごい人なんだよね。



■神森

アコギの優しいフレーズ、それがミニマルに繰り返され、そこに優しいシンセやエフェクト音が絡まり、そしてまったく重たくない軽快なエレクトリックだったりアコースティックだったりするドラムス/パーカッションが曲を静かに盛り上げる。
それらの音空間の中を、ファナ・モリーナの声が優しく、美しくたゆたう。
心地よい。


この「アルゼンチン音響派」と言われるファナ・モリーナの音楽世界は、アメリカ・西ヨーロッパのエレクトロニカ勢のものと比べて、独特。
リズムの音色などはいわゆるエレクトロニカっぽい音色だが、アコースティック・ギターや歌のメロディなどは、西洋主体のポップス感覚が薄い。
そこがすごく新鮮。(とはいえもう4年も前のアルバムだが)
自分の育ってきた環境や、聴いてきた音楽が素直に曲の中に投影されているところに、好感が持てる。
僕もそうでありたい。


YouTubeでライブ映像を見てみた。
こ‥これはスゴイ?!魔術師みたい(笑)
こんだけせわしなくいろいろやって、鳴っている音楽がとっても優しい音楽、というアンバランスな感じがちょっと不自然に思ったり、演奏しているミュージシャンがせわしなくしていると、見て・聴いているこちらも何か落ち着かないなあ、と思ったりもするのだが、しかし見ごたえは十分!

宅録家的なイメージもエンターテインメントとしてちゃんと見せることができているし、彼女のミニマルな楽曲がこのライブ形態にはすごく合っている。
僕もループ・マシーンを使って一人でライブをしたりするので、参考になった。

ライブ、ぜひ生で見たい。




Cannibalism









○「Cannibalism 1&2」(1997)

『60、70年代のドイツから届けられたストレンジ・ポップ/ロックの源流。
レア・トラック、スペシャル・エディットも多数含む究極のベスト盤。』−CD帯より抜粋−



■木暮

カンのベストですね。
カンはもう大ファンで、憧れのバンド。
めちゃめちゃカッコいいバンドですよ。
本当、音楽ってもっと自由でいいんじゃないだろうか、っていうことをね、再確認させてくれるグループ。


初めて聴いたのは高校生の時だったんだけど、ジャーマン・ニューウェイブが流行ってて。ノイバウテンとかデア・プランとかいろいろいたのよ、クラフトワーク以外にもね。
それでそのニュー・ウェイブの人たちに、カンがすごいリスペクトされてて、アルバムがいろいろ再発されたのね。
で、まあ自分が好きだったバンドの人たちがリスペクトしているバンドだったから「これはなんかすごいんだろう」って聴いてみたら、やっぱすごかったっていう(笑)


ノイズだったりコラージュだったり、いろいろすごいポップじゃないことをやってるんだけど、全体的にはすごくポップで洗練されたことをやってると思う。
それを成し遂げているのっていうのが、世界でもこのバンドしかいないんだよね。

もう70年代にポストロックみたいなことをやっているし、ダブみたいなこともやっている。彼らは誰も気付いていないことをとっくの昔からやってるの。
バンドのアンサンブルも完璧。
ドラム、ベース、ギター、キーボードの絡みっていうのがまったく無駄がないわけ。でも、かといってポップス的に構築されたものではない。
インプロ(即興)なのに何でそんなに洗練されてるの?って。

「どうやってもこんな演奏できねえな」って思うようなことをサラリとやってるんだよね。

*注1)Einstürzende Neubauten。
ドイツの実験的な音楽バンド。バンド名は日本語で「崩れ落ちる新しき建築物」という意味。
*注2)Der Plan。
ドイツのテクノポップグループ。"


■神森

毎度毎度のことながら、この企画では以前から「聴きたいな」と思っているミュージシャンのアルバムを勧めてもらうことが多くて本当に嬉しい。
このCAN(カン)もそうだ。

30年以上前の音源もあったりして、歌のある楽曲・技術的な音処理(音圧やモジュレーション・エフェクトのクオリティ)に多少の古さを感じるが、いやはやそんなことはなんのその。
カッコいい。

特に彼らの3rdアルバム「Tago Mago」の収録曲、「Aumgn」が気に入った。
これはまったく時代を感じさせない、コラージュ・ノイズ・ミュージック。
刺激的で心地よい。

他にもジャズ、レゲエ、プログレ、サイケデリック、ドラム・アンド・ベース、など曲調がものすごく多彩。
メンバーの広い知識、高い技術を感じる。
ベーシストのホルガー・シューカイは、カン結成前にカールハインツ・シュトックハウゼン*注)に師事していたらしい。
ううむ、なるほど。


*注)ドイツの現代音楽家。


Feist









○「Let It Die」(2004)

『カナダ版グラミー賞、JUNO AWARD 2005 2部門受賞( ”ニュー・アーティスト・オブ・ジ・イヤー”、"オルタナティヴ・アルバム・オブ・ジ・イヤー”)。
既にヨーロッパでも高い評価を得ており、“バート・バカラック並みのメロディを奏でる、ケミカル世代のカレン・カーペンター”(MIXMAG)等と称されている。アメリカでも、2005年3月20日にテキサスでの「サウス・バイ・サウス・ウェスト」に出演、大好評を博した。アメリカではインタースコープから2005年4月26日にリリースされた。』−ユニバーサルミュージックによる公式サイトより抜粋−



■木暮

ファイストっていうカナダのシンガー・ソング・ライター。
ブロークン・ソーシャル・シーンっていう大所帯のバンドに参加していて、何年か前にソロ・デビューしたのかな。
最近のシンガーソングライターで「良いな」って思うのはこの人かも。


すごくね、うーん、何て言ったらいいのかなあ、すごい、この人、綺麗な人なんだけど、それでジャゲ買いしたんです(笑)
まあ、ロンセクスミスの「シークレット・ハート」という曲をカヴァーしている、ということもあって買ったんだけどね‥

声が良い。
「歌」って、1発目に「声の質」で気に入る気に入らないかが決まると思う。
例えばビーチ・ボーイズが好きな理由っていろいろな要素があるけど、やっぱりブライアン(ウィルソン)の声をずっと聴いていたいなっていうのが1番だと思う。ジョン・レノンもしかりで。

それから声とサウンドの感じもすごく心地よくてね。
パッと聴いて奇抜には聴こえないんだけど、よく聴くとメロディだったり和音の動き方だったり、すごい凝ってる。なんか聴き方が職人的で嫌なんだけど‥すごくソフィスティケイトされた大人な感じ、その辺の人には絶対出来ないような凄くいいアレンジ。



■神森

まず、何よりも歌がいい。
メロディと声。
お互いがお互いを引き立てあっていて、まさにシンガー・ソングライターのあるべき姿だと思う。

「歌」に関しては基本的に良くも悪くも時代を感じさせない作りなのだが、ところどころで出てくるハーモニーやシンセやリズムなど、ちょっとしたアレンジメントのセンスがものすごく洗練されていて、やはり今を生きる「生」のミュージシャンの音楽なのだと実感できる。
夢見心地で、心が躍る。

彼女はカナダの人なのだが、このアルバムは最初にユニバーサル・フランスから発売したらしい。
Daft PunkやTahiti80やPhoenixという素晴らしいポップ・ミュージックを排出したフランスから出てきた音楽、ということで妙に納得してしまった。
すごくよいです。
かなり気に入った。


アルバムではアコースティック・ギターが割とフューチャーされていて大人な感じなんだけど、ライブの映像をインターネットで見てみたら彼女はエレキをかき鳴らしたりしていて、それも悪くなかった。




終わりに------------------------------

とにかくJuana MolinaとFeistを聴いて、同じ今を生きるシンガー・ソングライターとして刺激を受けた。(CANにも刺激は受けたが)
先進的なサウンドを取り入れつつも、一番大切にしているのはやはりメロディであり、それを奏でている声、なのだ。

ライブのやり方も2人とも面白くて、こちらも刺激を受けた。
むむ、俺も頑張ろう!


木暮さん、どうもありがとうございました


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次回訪問先は‥ 千ヶ崎学氏(ベーシスト) です

みなさんお楽しみに

神森徹也  
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2007年09月29日

第19回 ゲスト:中森泰弘

今年の3月に大奮発して30万円もするエレキ・ギターを購入した。
それまで使っていた7万円のエレキと比べて、音はもちろんのこと弾き心地なども素晴らしくて、それ以来エレキ・ギターを弾くのが楽しくてしょうがない。

と同時に今まであまり注目していなかった「ギタリスト」という存在が最近気になりだしてきた。
どんな演奏をしているのか、どんな音色をしているのか、などなど。


というわけで今回のゲストはギタリスト。

ギターの話を根掘り葉掘り聞いちゃおう!と意気込んで行ったのであったが、インタビューの時間があまりなくてちょっとしかギターの話ができなかったのが悔やまれる。
しかしながら企画本編の話はとても面白く、またすごくいい話を沢山してもらって、大満足。

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「神森君の音楽ってちょっとふざけた歌詞や音があったりして、なんかストレートじゃないじゃん?ふふ。ゴメン(笑)
遠回りして言いたい核心のとこに行く、みたいな。多分照れ屋さんなんだな、って思って聴いてたんですけど。
だからなんかストレートじゃなくて、ちょっとこうひねくれたっていうか、そういうアルバムjを選んできました。
そういうのをさらに追求しろってわけじゃないんだけど(笑)」という今回のゲストは‥


中森泰弘












中森泰弘



ヒックスヴィルのギター&ヴォーカル担当。

歌心を心得た、控えめでいて存在感のある氏のギター・スタイルは
カーネーション、キリンジ、堂島孝平、青山陽一など数多くのアーティストのライブやレコーディングでも聴くことができる。

優しくて、ユーモアの溢れる人柄が素敵だ。
ちなみに冒頭にも書いた30万円のエレキ・ギターは、中森さんが紹介して付き添ってくれた店で購入したもの。



そんな中森氏のお薦め3枚は‥


NRBQ










○NRBQ「ChristmasWish」(1995)



■中森

NRBQはね、ストレートすぎて逆に曲がって見えちゃうとこが面白いかなって。
本人達も会ったことがあるんだけど、物凄くピュアな人たちでさ。

日常とかもそうじゃん、超えると「超日常」になっちゃう。なんでもそうだけど。
NRBQの場合もそういうとこで突き抜けててちょっとおかしくなっちゃってる、見え方が(笑)

神森君の場合は「バーン!」って確信に行かないで、ちょっと回りから行きつつ、ってっいう感じだから、NRBQとは少し違うかもしれないけど、なんか見え方っていうのは近いのかなって。


普通のロックなんだけど、ただなんかそれぞれがおかしい。音楽の解釈を間違っているような(笑)
ただのビートルズ好きと、ただのジャズ好きと、ただのリズム・アンド・ブルース好きと、ただのお馬鹿さん、みたいな(笑)
だからすごい微妙な音楽なんだよね。


ニュー・ウェイブな感じ、そういうところも神森君に似ているのかな、って。
神森君てちょっとエイティーズ入っているじゃない。

(神森:数あるNRBQのアルバムの中で、何故このアルバムをお薦めしてくれたんですか?)

ま、これはジャケットがいいし(笑)
他のアルバムもお薦め。


■神森

NRBQ。*注1)
名前は知っていたんだけど聴いたことはなかった。
名前からしてヘタウマ・インディ・ロック・バンド、みたいなイメージがあって、あまり興味を持てなかったのだ。

ああ、しかし全然違った!
単純でいて美しいメロディ、チャーミングなアレンジメント。
(ちなみにエルビス・コステロに「全米最高のバー・バンド」と絶賛されたらしい)


全体的にほんわかした感じのポップ・ロックなのだが、所々に見せる演奏やアレンジのクオリティの高さが、やりすぎず・やらなすぎず、って感じで好感が持てる。
そこがきちんとしている上でオフザケをするので、安心して心を許せるのだと思う。
中森さんの言うように、とても微妙で、とても絶妙なバランスだ。


このアルバムは1986年に発売されたクリスマス・ソング集。*注2)

定番曲の「ジングル・ベル」「赤鼻のトナカイ」はわざとスケール・アウトしたヘロヘロなアレンジメントなのに対して、
オリジナル曲の「クリスマス・ウィッシュ」のドリーミーで素敵なことったらない!
この曲はマジで大名曲。

しかしパジャマ姿で微笑むオッサン4人‥
この妙なジャケのせいで損をしているような気がするのだが‥?!

まともかく、このアルバム、いい!
「At Yankee Stadium」というアルバムも聴いてみたが、こちらもいい!
名曲いっぱい!
オッサン4人の奏でる音楽に胸がキュンキュンします(笑)

好き!NRBQ。


*注1)New Rhythm & Blues Quartetの略
*注2)CD再発は2000年


GilesGilesFripp










○Giles,Giles & Fripp「The Cheerful Insanity Of Giles,Giles & Fripp」(1968)



■中森

これはね、ちょっとキ○ガイ(笑)

キング・クリムゾン前のロバート・フィリップがいたバンド。
で、あとの二人は兄弟で本物の牧師、ジャズの人。

これもまあ微妙なところで、演奏はめちゃめちゃ上手くてね。でも意外とね、イギリス的ないいメロディが入っていたりして。
トータル・アルバムになっているんだけど、真面目なんだかふざけているんだか、ちょっと気が変になっているんだか分からないような、なかなか奥深い音楽(笑)

いい曲はね、ホロっとくるんだよ。
高校生の時これ聴いてホロッときてましたね。
泣ける。歌詞もいいし。


この話とは関係ないけど、もっとこのアルバムは評価されてもいいと思うんだけど。


■神森

なんだ、この違和感は(笑)

メロディだけを取り出すと、AssociationやMilleniumのような、いわゆる「ソフト・ロック」と言われる美しいメロディなのだが(どちらのバンドも大好きだ)、
そこにロバート・フィリップ氏の鋭いジャズ的なギター・ソロ、ヴォリューム奏法、12音技法のようなフレーズ、ディレイのフィード・バックをフルにしたノイズ、などが入ってきて、まあともかく弾きまくっている。

これはギタリスト以外の人は多少、聴きづらいかも、とか思いつつ。
バンドはこの1枚を残して解散することになるのだが、なんとなく分かるような気がする。

しかし、美メロだな。
しかし、変なバランスだな(笑)

この後このバンドが発展してキング・クリムゾンになった、ってなんか分かるような分からないような‥


HirthMartinez










○Hirth Martinez「Hirth From Earth」(1975)

『桃源郷(シャングリラ)の香り、ここに極まる―
フリーソウルの盛り上がりの中で、さらに評価の高まる、アメリカ音楽の隠れた逸材、
ハース・マルティネスが75年に発表した幻の傑作。』-CD帯より抜粋-



■中森

これはご存知?

神森君の音楽を聴いてイメージしたのは、やっぱ「一人でやっている人」だなって。

一人でやる感じ、っていうのが神森君と合ってていいな、と思って持ってきたの。
我が道を行く、みたいな。

「一人でやる感」ってすごく羨ましいんだけど。
僕も堂島(孝平)君に誘ってもらって一人でやったことがあるんだけど、迷惑をかけて「もう二度とやらない!」って思った(笑)


あとはギターの音の使い方とかさ、シンセの音とか、神森君モジュレーション系の音をよく使うじゃない?「ヒュ〜ウ」って、そういうところも通じるところがあるし、メロディがよくて歌詞もちょっとホロッとくるようなところとかもね。



ライブでさ、いい意味でもっと一人感が出るといいよね、せっかくだから。
一人で出来るんだったら一人でやったほうがいいかな、って思うけどね。

神森君の音楽を聴いても、人となりを見ても、ライブを見ても、「急にステージに上がるとキレてしまう」ような感じ、っていうのが出来る人なんじゃないかなって思ったりもしつつ。
だから一人のほうが逆に説得力があったりすると思う。


ハースはね、一人で座ってガット・ギターの弾き語りをするんだけど、すっごいマイ・ペースなステージ。
でね、「お!スゲェ」って思ったのはソロを弾き出すのよ、途中で。
それも単音のソロ(笑)
それを聴いて「あ、いいんじゃんこれで」って思ったのね。
流暢にコード入れながらソロ弾いて、とか「一人でやる時はそういう風にやらなきゃいけないよな」って思ってるのは俺らだけか?って。
お客さんが、それでも「ああいいな」って見てるわけだから全然いいんだよね。




■神森

「ハース・フロム・アース」、このアルバムは持っていた。
いつ買ったのかは覚えていないが、誰かに勧めてもらって買ったように思う。

このアルバムの1曲目「Altogether Alone」っていうのがとんでもない名曲で、今までに何回聴いたことか。
とにかく聴いてるだけで気持ちが上がってくるような、極上のメロディ。
ボッサ的な曲調、艶やかなギター・ソロ、たまに出てくる変なシンセ音、それに低くて怪しいハース氏の声などが組み合わさったサウンドが実に絶妙で、独特のオリジナリティを生み出している。

「Altogether Alone」と10曲目の「I Don't Know Why The Hell」以外は、なんとなくパッとしないなとかも思ったりもするのだが、この2曲だけでも十分アルバムを買う価値はあるだろう。


僕は何故、バンドじゃなくて一人で曲を作って歌っているのだろう?

協調性の著しい欠如や、音楽的なコンプレックスなど、答えはいくつかあるが、
一番の大きな理由は「自分の言葉・メロディ・サウンド」をそのまま形にしたい、そしてそれを誰かに聴いて欲しいからだ。
画家が一人で絵を書き上げるように、僕も一人で「歌」を作り上げたい。

個人的な事柄を歌うときに、音色のひとつひとつまでに気を使うのはシンガー・ソング・ライターとして自然な考え方だと思う。
(最近はシンガー・ソング・ライター以外の活動も活発化していて、それはそれで超楽しいのだが)


今年から僕はバンド編成(vocal&guitar、bass、Drums)でライブをやっている。
これがまた、とても楽しい。
生まれたてのバンドなので課題も多いが、お客さんもメンバーも楽しんでくれていると思う。
もっと、バンドで各々が主張しあっている、というのではなく、あくまでも「歌」をバンドで演奏する、という形になっていければいいな、と思っている。(ま、ハシャぐべきところでは目いっぱいハシャがなければいけないが)

そして、その他にも自分一人で成立できるような、弾き語り+α、なステージも模索したい。
やはりシンガー・ソング・ライターとしての「核」を一人のステージでも表現できなければいけない。




終わりに------------------------------

最近ちょうど「ライブでの表現をもっと広げたい」と思っていたりしたところに、それを見透かされたかのような話をしてくれた。

僕の歌作りの本質である、ストレートではない「いびつ」な感覚をもっと大切にして曲を作っていこうと思う。
ピカソは芸術家としての活動について「ひとつの傑作をつくるよりも、どんな人であるかのほうが重要である」と言ったらしい。
自分が芸術家だなんて思ってはいないが、ライブやアルバムを通して「自分」というものを伝えていきたい。
「音楽力」ではなくて「人間力」を磨きたい。

ともかく、ライブ頑張りまっす!

中森さん、どうもありがとうございました


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次回訪問先は‥ 木暮晋也(ヒックスヴィル)氏 です

みなさんお楽しみに

神森徹也

  
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2007年08月25日

第18回 ゲスト:イトケン

いあやあ、この夏の異常な暑さったらないですね!
「冬眠」ならぬ「夏眠」がしたい、そんな残暑厳しい日々が続きますが(ここ数日は厚さも少々和らぎましたが‥)夏も残り後わずかだし、悔いの残らぬように楽しみましょう。


ということで昼間の暑さを避けるために夕方4時に吉祥寺でゲストと待ち合わせ。
しかしながら、いやはや、4時だというのに尋常じゃなく暑い。どうしたんだ!地球。
心配だぞ。

そしてゲスト曰く「いつ来ても絶対に座れる喫茶店」にてインタビューを敢行(笑)
本当に、空いているなあ‥

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「神森君の音楽はパッと聴くとCMっぽいよね、ドラマチックなコード進行とかあるから」という今回のゲストは‥


イトケン












イトケン



ドラマー、マルチ楽器演奏家、CM・ゲーム音楽作家、プロデューサー、エンジニア。
本人も「訳がわからない(笑)」というほど、その活動は多岐に渡る。

d.v.d、Harpyなどの自身のリーダー・バンドの他にも、栗コーダーカルテット・湯川潮音・Otomo Yoshihide's ANODEなどなど、たくさんのミュージシャンのレコーディングやライブに参加している。

そんな中でも僕は、いろいろな玩具楽器を次々にサンプリングして即興でポップでアヴァンギャルドな曲を作っていく「イトケンソロ」のファンだ。
永遠と続く夢のような音楽。

コタツ宇宙(僕と渡辺シュンスケ君とのユニット)でのサンプラーを使用した僕の即興演奏は彼の影響も。



そんなイトケン氏のお薦め3枚は‥


RaymondScott










○Raymond Scott「soothing sounds for baby volume1 1 to 6 months」(1963)



■イトケン

レイモンド・スコット「スージング・サウンズ・フォー・ベイビー」ですかね。
一番若いやつが好きなんですけどね。*注)

ミニマルなのにファニーっていう。
音色がいいよね。
レイモンド・スコットは音色的とかにはすごい影響を受けてますな。
自作なんだよね、あの人のシンセ。


あの人もCM音楽の人だよね。

*注)「赤ちゃんのための心安まる(soothing)音楽」というタイトルで、1963年に<1〜6ヶ月向け><6〜12ヶ月向け><12〜18ヶ月向け>と1枚ずつ発表した3部作の1枚目(1〜6ヶ月向け)のアルバム。


■神森

このアルバムは持っています!
つうか超好きなアルバムです。
このコロコロした音色やシンプルでいて奥深い音空間など、すごく影響されてます。
(レイモンド・スコットに影響されて作った小曲があるくらいなんです。興味のある方はココで「childhood memories」という曲を聴いてみてください。試聴できまっす。)


もともとはジャズ・ミュージシャンだったレイモンド・スコット。(CM音楽家やカートゥーン音楽の作曲者でもある)
そんな彼がたどり着いた音楽がこんなにもミニマルな音楽、というのもとても興味深い。

「CLAVIVOX(クラヴィボックス)」「CIRCLE MACHINE(サークル・マシーン)」「ELECTRONIUM(エレクトロニウム)」などといった自作のシンセサイザー/シーケンサーを自分で開発してしまうといのは、既存の音色に満足しない彼の異常なまでのこだわりがそうさせたのであろう。(もちろん技術や知識がなければできないことではあるが)


なにはともあれ、最初にこれを聴いたときは衝撃だった。
こんなに愛らしくて可愛い電子音楽はない、と思う。





ど根性ガエル










○「ど根性ガエル ミュージック ファイル」(1993)

『ひろし、ピョン吉、そして梅さん、京子ちゃん、ゴリライモ…
懐かしいキャラクターたちが甦える、下町人情アニメの決定版。
主題歌5曲(TVサイズ)を含む情感あふれるBGMがついにCD化』-CD帯より抜粋-



■イトケン

「ど根性ガエル」のサントラ。
このアルバムは素晴らしいですね。

え?神森君はリアル・タイムではないんですね‥


広瀬健次郎さんっていう作曲家が音楽を担当していて、劇中で流れていたBGMがほとんど入っているんだよね。
ちょうど俺がめちゃめちゃ見てたアニメなんでそれが聴けるってだけで嬉しいは嬉しいんだけど、収録されている曲が「悲しい曲」「嬉しい曲」とヴァリエイションが豊富で素晴らしくて、これは勉強になるなっていう。

ギターにワウがかかりまくっていたり。
しかも歪ませないクリーン・トーンでワウがかかっていて素晴らしいんですよ。

でね、カエルがキャラクターだから口琴(こうきん)の音がいっぱい入っていて。
しかもちゃんとキーが変えてあるの、曲によって。

で、口琴とワウっていうのが合うんですよ、これが(笑)



■神森

うはは!(笑)

しょっぱなから
「ボヨヨ〜ン」
「ビヨヨヨ〜ン」
と口琴が炸裂。
あの有名なアニメの主題歌のイントロが口琴ソロだったなんて!シビるなあ(笑)

このアルバムで使われているのはおそらくインド系の鉄でできた口琴だ。
僕は北海道のアイヌ民族の口琴「ムックリ」の愛奏者なのだが(笑)、ムックリは竹でできていて音がソフト。それに対して鉄の口琴は音がハード。
このアルバムを聴いて、鉄のほうが音の輪郭ガハッキリしていてレコーディング向きだなあ、と思った。
‥のだがしかし、ううむ、鉄の口琴は長く演奏してると脳が振動しまくって頭が痛くななり、車酔いしたみたいに気分が悪くなるんだよなあ‥


それはともかく、アレンジがとてもよく出来ている。
このクオリティ・このヴァリエイション、これは相当な知識と技術がいる。


アニメの性格上なのだと思うが、全体的に口琴/ワウ・ギター/ミュート・トランペットなど「ワウッ」とした間の抜けた音色が多くて(僕好み)、そしてそれらの音色の使い方がとても見事で、勉強になった。
 


FredFrith










○Fred Frith「Gravity」(2002)*注)

『「にせ民族音楽(フェイクフォーク)」とダンス・ミュージックを取り入れた、ややこしくも陽気なポップ・チューン集。
実験性とユーモアを兼ね備えたアヴァンポップの歴史的名盤。80年。重力に打ち勝つための音楽。』-CD帯より抜粋-

*注)オリジナルは1980年発売



■イトケン

フレッド・フリスの「グラヴィティー」っていうファースト・ソロ・アルバム。
これは一番ワタシが好きなCDアルバム。
今まで聴いたアルバムの中でいちばん「ポップさ」においても「変さ」においても突出したアルバムかな、と。

サムラ・ママス・マンナっていうスウェーデンのバンドと、あとマフィンズっていうアメリカのバンドが、それぞれバックをA面B面で演ってるという。
サムラ・ママス・マンナもマフィンズも俺すごい好きなんだよね。

「即興と作曲の中間」みたいな曲もいっぱい入っていて。
なんか知らないけどすごいポップなんだよね。
とにかく曲がすごくいい。
変拍子なんだけど全然変拍子に感じなかったり。
そういうリズムのとりかたとかもすごいし、コード進行とかも素晴らしい。


「グラヴィティー」はね、素晴らしいですよ、ぜひ聴いてみてください。
多分好きだと思う、神森君は。


■神森

フレッド・フリスの名は、音楽理論の師である菊地成孔氏が何度か口にしていて、とても気になっていたのだ。
だからこの度アルバムを購入することができて嬉しい(毎度のことながら…)

で、「グラヴィティー」。
めちゃくちゃカッコいいです!
素晴らしい!
無国籍でアヴァンギャルドでダンサブル、そしてポップ。
この「ポップ」は、記憶の中にある要素を組み合わせてできたような聴く人を安心させるだけの「ポップ」ではなく、自分の記憶に新たな情報を与えてくれる「ポップ」。

前半の陽気な感じも好きだけど、後半のノイジーでアヴァンギャルドなロックの感じが、これまたカッコいい。

これはだいぶ影響されてしまいそうだ。



終わりに------------------------------

今回の3枚を聴いて、玄人の技術とセンスについて思った。

「技術不足(=下手くそ)」な音楽や演奏というのは、聴取者としてそう長く付き合えるものではない。(自分の恋人や子供のものならまだしも‥)
ただ技術が高くても、音楽や演奏が面白くないと感じる場合もある。それは「センス不足(=ダサい)」ということだ。

技術/センスの両方を、きちんと身につけている者こそが本当の「玄人」なのだと思う。

勉強もいいけど、たまには外に出てハメを外さないとネ!
つうことなのだ。


イトケンさん、どうもありがとうございました。


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次回訪問先は‥ 中森泰宏氏(ヒックスヴィル) です

みなさんお楽しみに

神森徹也

  
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2007年07月25日

第17回 ゲスト:中村ケンゴ

今回のゲストは現代美術家の方です。

恥ずかしながら僕は音楽以外の芸術、とくに美術についてはほとんど知識がないのです。
最近やっと興味が出てきたって感じで‥

そんな僕が共通の友人を通じて知り合いになった今回のゲスト。
お話を伺って彼の「物作り」に対する冷静かつ真摯な態度に心を打たれました。

この企画も読んでくれていて、
「ミュージシャンが音楽の事を話す場って実は少ないよね。だから読んでてすごい面白い」って言ってくれて、あいや〜嬉しい!


音楽も美術も「物を作る」という意味ではかなり似ているなと思いました。
もっと「美術」に触れてみたいです。

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今回の出演にあたって「僕のおすすめの音楽、というより、音楽(というかポップミュージック)そのものの聴き方、みたいな話になってしまいそうですが」というメールをくれた今回のゲストは‥


中村ケンゴ












中村ケンゴ



美術作家。

漫画の吹き出しの「枠」だけを使った「SPEECH BALLOON」。
東京のワンルーム・マンションの間取り図を使った「COMPOSITION TOKYO」。
携帯メールでお馴染みの「Re:」という文字を使ったその名もズバリ「Re:」。
などなど
我々が生活している中でよく見慣れたものを(しかし誰もが注目もしないものを)音楽の製作にもよく使われる「サンプリング」という手法を使ったりして、ポップでかつメッセージ性のある作品を生み出している。

また、彼自身の綴るブログも興味深い。
・「わからない」とはどういうことか
・「つくる」こと、「見る」こと
などの文章は、「アート」というものに対する認識をより深めさせてくれるし、なおかつ、同じ「作り手」として共感する部分もたくさん。


そんな中村氏のお薦め3枚は‥


A Wizard A True Star










○Todd Rundgren「A Wizard / A True Star」(1973)

『前半の実験的な組曲と後半のR&Bカヴァー・メドレー、アヴァンギャルドとポップが混在するトッド・ワールド全開の4thアルバム』-CD帯より抜粋-



■中村

まずコレです。
はい、トッド・ラングレン。

「サムシング/エニシング?」*注1)は普通に持ってると思って。
持ってるよねえ?
(神森:「はい」)
やっぱり(笑)わざわざ持ってくるほどのことではないだろうって思って、ソレは。(笑)


今日のキーワードは「多幸感」て言葉なんですけど。
聴いてて異様に幸せになる。
「この多幸感は何でしょう?」っていう。(笑)

メロディーを作ったり音をこねくり回したりすることの「幸せ」みたいなものが異様に伝わってくるっていうか。
もう、危ないくらい。(笑)
そういう「楽しさ」みたいなものが聴いてて自分に乗り移っちゃうっていうか、えも言われぬ幸せになるわけよ、その馬鹿さ加減も含めて(笑)

とにかくこのアルバム、電子楽器をすごく多用してたりして、めちゃくちゃ変なのよ。
'73年の時点でここまでレコーディングっていうものを自覚的にやってるアーティストって多分、先人にはビートルズやビーチボーイズとかフランク・ザッパぐらいじゃないのかなあ。


このアルバム多分、トッドが全部自分でやっているから、いわゆる神森君的なミュージシャンの「走り」の人だよね。
楽器も全部弾けるし、なおかつコンピューターにも精通していて、たくさん技術があるから逆にすごい自由な感じがする。
僕は絵は描けるんだけど版画とかは出来ないのよ。やったことがないから、技術がない。
もし版画とか彫刻とか、プラスチックの扱い方とか、墨の扱い方を知っていれば、もっとより自由だと思うんだ、創作が。
その「自由さ」をトッドは存分に発揮している感じがするんだよね、このアルバムは特に。

高野寛さんがトッドにプロデュースしてもらってるじゃない?*注2)
当時彼が「トッド・ラングレンは科学者っぽいんだけど科学者っていっても『平賀源内』的だ」ってインタビューで言っていて「あっなるほど言いえて妙」と思って(笑)


そして、メロディの楽しさ。
ポピュラー・ミュージックって本当に幸福な音楽じゃない?
プログレッシブ・ロックは、クラシックの楽曲構成とかロマン主義とかベートーベンみたく重い人間の内面世界とかに影響されて、どんどん重たい重厚な音楽になってっちゃうけど、本来ポピュラー・ミュージックって楽しいものでしょ?大衆の音楽じゃない?
そういう「楽しさ」みたいなものとトッドの「変態性」みたいなのが存分にマッチしているっていうか。


*注1)1972年発売の名盤。圧倒的にポップ。2枚組。
*注2)1990年発売の3rdアルバム「CUE」と1991年発売の4thアルバム「AWAKENING」をトッド・ラングレンがプロデュースしている)


■神森

トッド・ラングレンのアルバムは「Something/Anything? 」をはじめ「Runt - The Ballad Of Todd Rundgren」「Todd 」「A Cappella」(←これはこの企画で青山陽一さんに薦めてもらった)などけっこう持っているのだが、この「A Wizard / A True Star」は持っていなかった。

存在はもちろん知っていたし「いつか買いたい」って思っていてなかなか踏み切れなかった1枚なので、薦めてもらって嬉しい。(って毎回こんな事言っているような気がするな‥笑)


それにしてもこのアルバム、素晴らしい。
このめくるめく世界。
美しいメロディと奇妙奇天烈な音がこうも簡単に共存しているのは、どちらも同じ人間の手によるものだからだろう。
まったく違うジャンルの音楽や突然現れるノイズ音などが「心地よい混沌」と感じるのもそうだ。
ここまで変なことをたくさんやっているのに全体的にポップに聴こえる、というこのバランス感覚は複数人ではなかなか共有することができないと思う。
まさにトッド・ラングレンの頭の中を覗いているような、そんなアルバム。



しかしながらこのめくるめく世界を作り上げるためには音楽に対する高い技術や深い知識が必要不可欠だ。
ルールを知った上での破壊だからこそ美しく感じるのであって、そうでないものはただの獣だ。


自分の作った音世界の中で自由に飛んだり泳いだりする。
僕が作詞・作曲・編曲・演奏・録音など、何から何までやろうとするのはそういう理由からだ。
トッド・ラングレンはまさに僕の歩んでいる道のずっと前の方を歩いているな、と改めて思った。



月面軟着陸










○Pizzicato Five「月面軟着陸」(2004)

『人類の偉大なる1歩。
90年発表のピチカート・ファイヴの4thアルバム。
ニュー・マスタリング、ニュー・エディションによる再発売。』-CD帯より抜粋-



■中村

次!

ピチカート・ファイヴの「月面軟着陸」。
持ってますか?
(神森:「持ってないです」)
よかった(笑)

ピチカート・ファイヴのこのアルバムとしりあがり寿さんの漫画は、僕にとってのポスト・モダン。

「個人が作って個人が終わらすっていうのが作品」っていう思い込みが僕はずっと嫌だったの。
子供の頃から絵を描くことは好きだったんだけど、同時に「編集」って作業もすごい好きだったから。
「編集する」ってさ、自分の内面じゃなくて外にあるものをプロデューシングするっていう作業でしょ。
学級新聞に自分の絵も載せるけど「学級新聞」っていうメディアも作りたいっていう。


バート・バカラックとか、当時みんなもうダサいと思って忘れていたような音楽を小西康陽っていう人が積極的にパクりなおしてアレンジしなおして曲を作っているわけで、このアルバム自体はそういうサンプリング/カットアップ/リミックスみたいなことだけで作られてるっていってもいいぐらい。オリジナリティなんてほとんどないわけよ。

インターミッションがあったりとか雑誌のプロモーションの時のインタビューの音がそのまんま入っていたりとか、そういう手法が、自分たちの内面で作るというよりは外にあるものを編集して作っている。
個人の内面で作らなくてもいいっていうことを音楽として見せてくれたアルバムだと思う。

吹けば飛ぶようなこの軽さっていうかさ、この"存在の耐えられない軽さ"がたまらなくカッコよかった。
ある種の東京のリアリティがあると思うんだよね。

このアルバムも異常な多幸感を感じたっていうか。
編集の手腕の素晴らしさに感動したというか。
「こんなのアリなんだ」っていう。



「人間の内面から芸術は作られている」という風に僕たちは今思い込んでいるけど、それは実は日本人がそう思っているだけでヨーロッパの人はそう思っていないかもしれない。
何で僕たちがそういう風に思い込んでいるかというと、明治になって日本が開国したときに入ってきた美術がちょうど後期印象派だったから。
後期印象派っていうとゴッホとかゴーギャンとかでしょ?ということはつまり「売れなくて」「苦しくて」「自殺したり」「最後耳切ったり」するようなものが芸術家のひとつのイメージとしてそこで定着しちゃったわけ。

韓国は軍事政権が終わって今みたいな自由な国になるのは80年代の中盤くらいなのね。そうすると彼等のデフォルトの美術はアメリカの現代美術なの。
僕らのお母さんは「ルノワールが好き」とか言うでしょ?
でも韓国ではアンディ・ウォーホールとかジャスパー・ジョーンズが普通の人が一番好きな美術なの。

卵がパカッと割れてヒヨコが生まれて1番最初に見たものを親と思うじゃない?多分そういうのがあるんじゃないかなと。
これ僕の仮説なんだけど。(笑)


■神森

ピチカート・ファイヴ‥

初めて聴いた時は衝撃的だった。
高校3年生の時だったと思う。
メジャー・ナインスとかいった「テンション・コード」なんてまったく分からずに、ひたすら自分の知っている5・6個のコードだけでなんとか曲を作っていた頃。
ピチカート・ファイブのあまりにも洗練された音楽に目眩がしたものだ。

しかしその音楽性は衝撃的だったものの、当時の僕は、自分の内面から湧き出てくる言葉やメロディがなければ素晴らしい曲ではない、と思っていたので、ピチカートの"存在の耐えられない軽さ"の歌詞に違和感を覚えた。
(今、改めて歌詞を読んでみると「新ベリッシマ」とか「リップ・サーヴィス」とか、素敵な歌詞が多くて驚いた。「大人」として洗練されている歌詞なので高校生には理解不能だったのだろう)


当時の僕は自分を納得させるためだけに曲を作っていたように思う。(つうか割と最近まで‥?!)
言葉やメロディや音のいたるところに過剰なまでの「自分マーク」を付けることによって、この曲は自分が作った作品だ!と誇示して安心したかったのではないか。

小西氏が雑誌のインタビューで「『音楽のために自分が一歩下がってみる』というのも大切なことだと思う」と言っていたのを読んだことがある。
これは、「創造」したいという自我は二の次にして、まず今あるメロディやサウンドをどうすればより面白くすることができるのか、を「想像」するべきだ、という意味なのではないだろうか。
そしてそれが「編集」という作業なのだと思う。
「音楽」を「音楽」として聴く、当たり前のことなんだけど、これはなかなか難しい。


僕はやはり「人間の内面から歌は作られている」と思っている。
哲学や思想ってその人の生きた時代や環境と深く関わっていると思うのだが(女性の好みなどもそうだ)、僕は、ベタベタなサウンドに乗せて「何のため〜に生きてるのか分からなくなるよ〜」と絶叫する尾崎豊に心を打たれてしまったし、まるでスイッチを押したかのように突然爆発するヘヴィ・メタルやグランジに熱狂してしまった中学生だったのだ。
卵がパカッと割れた時代がそんなだったのが運のツキか(笑)

まあしかし1つの表現方法にのみ固執するのは嫌だな、とも思う。
いろいろな表現方法を模索していきたい。



天国と地獄










○カーネーション「天国と地獄」(1998)



■中村

次ですね、はい、カーネーションです。

92年にWAX RECERDS(ワックス・レコード)ってところから出てて廃盤になってたのよ、ずっと。
それが98年に再発したんだよね。

この頃のカーネーションっていうのはちょうど今のアーシーな感じのカーネーションと、もともとメトロトロン・レーベルの頃のニュー・ウェイブなカーネーションのちょうど入れ替わる直前ぐらいだよね。
すごくこう、異常な集中力があるの、このアルバムって。
その集中力が伝わってきてとてもいい。
ある種の悲壮感を感じるぐらいの集中力。
寝る暇を惜しんで作りたいことがある、ってすごい幸せなことだなって思うんだけど、このアルバムはそれが伝わってくる。

1曲目から素晴らしくいい。


さっきお勧めした2枚はこの2人のクリエイターの仕事が純粋に面白い、っていう、割と客観的な批評が出来るのね。
でもこのアルバムについては僕は普通の「1人の音楽ファン」としてのイメージが強いっていうか。
後々僕が絵描きになるための素養は多分こっち(Todd Rundgren「A Wizard / A True Star」Pizzicato Five「月面軟着陸」)にあるんだけど、そうじゃなくて1人の若い男の子としてさ、恋愛もするし挫折もあるわけじゃない(笑)
要するに青春のアルバム。(笑)


ポップ・ミュージックってハイ・ティーンの音楽でしょ?
多分神森君も同じだと思うんだけど、やっぱり17・8歳ぐらいから20代前半に聞いた音楽って自分のデフォルトになってない?
それはさっき、日本が開国したときに何の美術・文学が入ってきたのか、と同じ話で、人間が自我に目覚めた時にそこに何の音楽があったか、ってことがその人のデフォルトになると思うの。
神森君のお父さんくらいだとビートルズがデフォルトかもしれないし、それはもうさ、分かちがたいものじゃない?自分と切り離せないものでしょ。


だから結局ポップ・ミュージックっていうのは、「ハイ・ティーンの音楽」だと思うのね。
っていうか自分にとっての「音楽」っていうのがハイ・ティーンの時に聞いた音楽だと思うんだ。
でね、それ自体は悪いとは全然思わないし、当たり前のことだと思うんだけど。
ただね、けっこうそれに規定されちゃうところが多くて、それから離れられなくなっちゃうというか。

「聴く音楽を規定されている」ということは、結局その音楽を聴く技術しかない、っていうことになっちゃう。
今あるたくさんの音楽…ヒップ・ホップもあれば音響派もあれば‥っていうのがもうまったく聴けなくなっちゃってるっていう。
その文法がわからないっていうかさ。

「聴く能力」ってあると思う。
「読む能力」もあると思うし「見る能力」もあると思うし。
今はそれがみんな著しく低いから、たかだかハリウッド映画でも始まって30分くらいでもう「意味が分かんない」とか言う人がいっぱいいるわけよ。
「人間関係の意味が分かんない」とかさ。
だからさやたら分かりやすくなってるでしょ、映画とかバラエティー番組とかさ。
ちょっとなんか高度なことをやるともう誰もついてこない、みたいな。
神森君がちょっと変なアレンジをするともう誰もついてこない、みたいな。(笑)

多くの人にとってのポップ・ミュージックって音楽として聴くもんじゃないんだよね。
音楽を利用しているだけなんだよ。
自分の人生のBGMとしてね。
だからなんか80年代のベストとかが出て、それを買って聞くこととか俺すごい嫌いなの。音楽聴いてねえじゃんオマエラ、みたいな。


自分のブログでも書こうと思ってるんだけど、ポップ・ミュージックとセンチメントってのはすごく分かちがたく結びつきやすい。
(ポップ・ミュージックが)センチメントを何回も何回もやり直す装置になるわけ。
で、このアルバム(「天国と地獄」)は僕にとってはまさにそうなんだよね。だから冷静に聴ける音楽じゃないのよ。
こっち(Pizzicato Five「月面軟着陸」)は音楽として聴けるわけ。



話がそれたけど(笑)このアルバムで言いたいのは、「青春と音楽は分かちがたく張り付いてしまう」っていうね。



■神森

このアルバムもまた持っていなかった‥
まだまだ甘いなあ、俺ってば(笑)

それにしてもカーネーションてすごいバンドだ。
どのアルバムにも必ず名曲が存在するのだから。
1曲目の「オートバイ」って曲、これは明らかに名曲だ。Dr. Buzzard's Original Savannah Bandのような異国情緒溢れる緩くて甘いソウルフルなポップス。たまらないデス(笑)
音や構成などアルバムの隅々まで感じられる実験精神も素晴らしい。


僕のハイ・ティーンの音楽‥

僕は中学3年間を父親の仕事の都合でベルギーで過ごした。
日本人学校に通っていたので、結局最後まで現地語であるフランス語を話せるようにはならなかった。
日本人学校には同じ学年に男子が5人しかいなかったので圧倒的に友達が少なく、仲の良かった兄も寮のある高校に進学し家を出てしまったため、僕はやたらテレビでMTVのような音楽チャンネルを見るようになっていった。
友人とのコミュニケイションのひとつとしての「音楽」というものが存在しなかったために、自分だけの感性でヘヴィメタからヒップ・ホップ、ハウス、ブルースとか、流れてくる音楽を受け止めていた。

そんなだったので僕は「聴く音楽を規定されている」という感覚が普通の人よりは少ない、と思う。
これはとても幸せなことだ。



ただそうは言っても「挫折した」とか「女の子に振られた」とかそういったハイ・ティーンの時の一大事(笑)に、ちょうどよく聴いていた音楽をフと聴いたりすると、バーッと当時のことがフラッシュ・バックしてしまい、音楽を聴くどころではなくなってしまうこともある。

ハイ・ティーンばかりかロー・ティーン、もしくはそれ以下の時に聞いていた音楽だってそうだ。(松田聖子や南野陽子や光ゲンジや‥)
子供の頃を思い出し、過ぎ去った日々を懐かしんだりして‥
その音楽を本当に好きか嫌いか、さえも分からないくらいの年頃に刷り込まれたものだからよけいたちが悪かったりする。


ポップ・ミュージックはそういうことが多々あるから難しい。
僕は音楽家として、「ポップ・ミュージックはセンチメントと深く結びついている」ということをきちんとと自覚しつつ、前へ進んで行きたいと思う。
誰かのセンチメントを呼び覚ます装置(=曲)になるのは喜ばしいことだが、それだけでは音楽家として生きてはいけないだろう。



僕の音楽は「何回も聴いているうちにハマってしまった」と言われることが多い。
僕は誉め言葉だと受け止めたいのだが、意外と否定的な意味で言っている人が多いように感じる。
「分かりやすい」「単純」なものこそが優れている、ということは絶対にないと思う。(もちろん分かりやすい、単純なものが悪いとも思わない)

それは恋愛でいう「一目惚れ」のようなものなのではないか。
例えその場でビビッときて2人が運良く付き合ったとしても、その後よい関係を築いていくためにはもっと違う多くのことが必要なのだ。(愛情だとか優しさだとか妥協だとか‥)

音楽もパッと聴いただけでなんとなく好きか嫌いかぐらいは分かるけれど、その音楽を深く知るためにはもっと何度も聴くことが大切だし、そうすることで「聴く能力」を高めることができるのだと思う。
ひとつのことを深く掘り下げて理解する、ということはとっても素晴らしいし幸せなことだと思う。

人が掘り下げてくれるような、そんな深い音楽を作っていきたい、と僕は思う。





終わりに------------------------------

今回お薦めしてくれた3枚のアルバムは確かに「多幸感」を強く感じる。
それは「自意識」の強さでもあると思う。

その自意識をゴチャ混ぜにして表現する人もいれば、一歩引いて客観的な自分を表現する人もいたりして、興味深い。

表現したいと思う気持ちを根っこに、もっと「考えて」曲を作っていきたい、と思う。


中村ケンゴさん、どうもありがとうございました


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次回訪問先は‥ イトケン氏(ミュージシャン) です

みなさんお楽しみに

神森徹也
  
Posted by manekarezarukamimori at 20:02Comments(0)TrackBack(0)第16回〜20回

2007年06月25日

第16回 ゲスト:小松シゲル

今回のインタビューは、以前登場していただいた真城めぐみさんや堂島孝平君をインタビューしたときと同じ新宿3丁目のとある喫茶店で行われた。
この喫茶店は以前にプライベートで真城さん堂島君それから今回のゲストと4人で来たこともあったりして、静かで雰囲気もよく新宿で一息つきたくなったら訪れたくなる、そんな素敵な店なのだ。お気に入り。

インタビュー中の雑談で以前から興味があったDJの話を聞けたりしてとても楽しいひと時を過ごすことができた。
なんせ俺ってば「ヒップホップDJセミナー」に通ってしまうくらいDJに興味があるんだから!(笑)


そのセミナーは僕を入れて参加者が3人しかいなかったという。
で僕以外の参加者はBボーイになりたての高校生2人だったという。
で3回目にして「一向にターンテーブルを買おうとしない姿勢」のせいでセミナーDJに疎まれ、「初心者Bボーイ2人との音楽的・人間的・年齢的・ファッション的・髪型的・ハイタッチで挨拶的などなど数々の相異」によりセミナーの中で完全に孤立してしまったため、参加を断念したという。
今となっては甘酸っぱい経験だ。

ま、最初から「なんでコイツが『ヒップホップ』を?!」的な視線をビンビンに感じてはいたのだが。。(笑)
「ヨ。。ヨオ。。シャカシャカ」とかスクラッチとかさせてもらって、けっこう楽しかったなあ。(笑)

ま、それはホント、どうでもいいとして。。(笑)

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「神森君の音楽ってすごい『笑い』がある気がするのよ。そこがスゲェいいなと思って。なんか『クスッ』ていう感じが。」という(多分)お褒めのお言葉をくださった(笑)今回のゲストは‥


小松シゲル












小松シゲル



美メロでダンサブルなポップ・バンド「NONA REEVES(ノーナ・リーヴス)」のドラマー。
80年代のポップ・ミュージックの派手でメロディアスな音楽を「今」の感覚で再構築した、センスのよい音楽が素敵だ。

その他にも佐野元春、堂島孝平、キリンジ、メロウヘッド、などさまざまなライブ、セッションに参加している。
正確で力強い演奏が素敵だ。

またDJとしても活動している。(かける音楽は主にブラック・ミュージックだそうだ)



そんな小松氏のお薦め3枚は‥


DanielLanois









○Daniel Lanois「Shine」(2003)

『ブライアン・イーノに見いだされ、ピーター・ゲイブリエル「So」、U2の「ヨシュア・トゥリー」、ロビー・ロバートソンの「ロビー・ロバートソン」、ボブ・ディランの「オー・マーシー」、ネヴィル・ブラザーズの「イエロー・ムーン」などのプロデューサーとしてあまりにも有名な、ダニエル・ラノワ。
エピタフ傘下レーベル”アンタイ”へ移籍後初となる、なんと10年ぶりの3rdソロ・アルバム。』-CD帯より抜粋-



■小松

これは持ってるような気がするんだけど、神森君。
U2とかネヴィル・ブラザーズとか、いろいろプロデュースしてたりエンジニアしてたりする人の作品。
何曲かボノ(U2)が歌ってたりもするんだけど。

空気感がすごい好き。メロディも音響的なアレンジもすごい良くてね。

なんか不思議なハイ・ファイ感があって。病みつきになる感じ。
あと低音の感じがすごい独特。
ヘッドフォンで聴いて欲しいな。


■神森

ダニエル・ラノワ、持ってなかったっス。。

このアルバム、すごいカッコいいス!
控えめで、しかしとことん美しい楽曲群。

ギターのエコーの響きを聴いていたら「音が水の上に浮かんでいる」、そんな風に感じた。
すごく気持ちいい。

メロディやアレンジメントなどの、オーソドックスな感じとアヴァンギャルドな感じのバランスがとてもよい。

プロフェッショナルがリラックスして音楽と向き合った、そんなアルバムだと思う。

ラノワは51年生まれ。と、いうことは今年で56歳!
僕も彼のようにずっと音楽と向き合っていきたい。
愛と努力で頑張ろうっと。



Gainsbourg









○「Les Classiques De Gainsbourg」(1996)



■小松

(セルジュ)ゲンズブールがインスパイアされたクラシックの音楽集。
影響受けたって言うよりもほとんどカヴァーじゃん、みたいな(笑)

パクりなんだけど、でもパクりこそその人のセンスを問われるなっていう気がする。
納得させる使い方すればいいだけっていうか。
違った世界観がそこにあればいいような気がする。

これ聴いてクラシックって面白いなって聴きだして。
ドビュッシーとかラヴェルとか。
クラシックの中にもポップなものってあるんだなって。

神森君、多分好きなんじゃないかなって。


■神森

おお!変なコンピ(笑)
父親がピアニストで、幼少の頃からクラシック音楽に親しんできたゲンスブールの元ネタ集(笑)

僕は「パクり」というのは己の創作活動に対する「侮辱」だと思っている。
たまに「誰かの曲そっくりそのまま」っていう音楽を耳にすることがあるが、やはり僕はそれらを愛せない。
ただし「模倣」という行為があって、これは音楽の創造にあってしかるべきだと思う。。(「模倣」は「創造」の反対語なのだが。。)
小松君の言うととおり「或る音楽」から「違った世界」を創りだすわけだから、それは別の曲になっている(ハズだ)からだ。

どこまでを「模倣」でどこからが「パクり」かの線引きは個人的な感覚だから難しいが、僕は自分で曲を作るときにはハッキリと線引きをしていきたいし、しているつもりだ。



ゲンスブールといえばまず自身のスキャンダラスな生活や卑猥な歌詞を思い出すわけだが(笑)、個人活動の他にフランス・ギャルやジェーン・バーキンなど数々の歌手に沢山の楽曲を提供したりしていて(最初は作家活動のほうが活動の主だった)、音楽だけでも相当素敵なアーティスト。

しかしながら僕はゲンスブールもクラシックも少ししかカジっていないので「ああ、この曲かあ!」ってスッキリした曲があまりなかったのが残念。。



Curly Giraffe









○Curly Giraffe「Curly Giraffe」(2006)

『カーリー・ジラフの音楽は、一切の無駄がないポップ・ミュージックである。音楽の才能がある人が、何の縛りもなく音楽だけと向き合い、音楽の中に人生や生活を素直に投入した、最も健全なポップ・ミュージックである』-CD解説より抜粋-




■小松

これね、すっごいイイ!

これ聴いてやっぱ「ああ、やっぱ(高桑)圭さんてすげえメロディ・メイカーだなあ」って思って。

俺が音楽聞き始めた頃のいわゆるエイティーズ感のあるメロディを今っぽい雰囲気でやってて。
宅録っぽい音響的なことも面白いんだけどとにかくね、メロディがすごいよくて。
エイティーズってメロディがすごい際立っている時代じゃん?なんかその感じがすごい出てて大好きなんだよね。


あとね、音がとにかくよくて。
多分マスタリングなんだと思うんだよね。マイケル・ジャクソンとかやってるバーニーグランドマンって人に圭さん一人で音を持ってって。
で「ベッドサイド・ミュージックにしたい」って頼んだんだって。

「ここまでのクオリティになるんだ!」と思って。
多分スタジオで録ってもここまでいかないと思うんだよね。



■神森

カーリー・ジラフはGreat3やHonestyのベーシストである高桑圭氏のソロ・ユニット。

去年渋谷のタワレコの視聴機で聴いて以来、気になっていたのだが今回薦めてもらってついに購入。嬉しい。

1曲目の「Water On」という曲が特にお気に入りだ。
サーフ・ミュージックのような音響音楽のようなシンプルで味わい深いフォーク・ソング。
字余り的なふんわりしたメロディも素朴でいて美しい。
センスがいいなあ、と思う。

全体的には5年という期間に書き溜められた曲の集合体、ということもあってソウルフルな楽曲やジャジーな曲など曲調がいろいろ。
でも不思議に統一感があるのはやはり全楽曲の作曲・演奏・歌・録音を一人で行っているからだと思われ。(ジャケット・ワークもしているらしい)
この点は自分も全部一人でやっているので多いに励みになるところだ。

メロディがホント、優しくて綺麗。



終わりに------------------------------

今回の3枚を聴いて、僕はもっと音楽で「冒険」したくなった。
僕はメロディに対するこだわりが強く、自分で作った美しいメロディに対して過保護になってしまうことがある。

今回の3アーティスト(セルジュ・ゲンスブールを含む)はオーソドックスさとアヴァンギャルドさの「バランス」がすごくよいミュージシャンだと思う。
どちらかに偏りすぎていたら「つまらない」または「閉鎖的」に感じてしまいがちだ。
このバランス感覚こそが、その人の人間力なんだと思う。

自分らしい良い音楽を作るために、勇気を出して一歩踏み込みたい。

小松君、どうもありがとうございました


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次回訪問先は‥ 中村ケンゴ氏(美術作家) です

みなさんお楽しみに

神森徹也

  
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2007年05月25日

第15回 ゲスト:渡辺シュンスケ

いやはや。
先月は結局掲載日に間に合わず猛省しきりの私でありましたが。

今月もギリギリでやっている、そんな自分が嫌いです‥
でも『「そんな自分」以外の自分』は大好きな自分です‥
‥なんのこっちゃ。

ま、それはさておいて。

今月のゲストは、友人でもあり同士でもあり尊敬する人でもあります。
インタビューはそんな彼の自宅でゆる〜く行われました。

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毎回、携帯電話の写メールでゲストを撮影させてもらっているのだが、
今回はインタビューした時間が夜遅くて暗すぎるということもあり
ゲストが自分で保存している写メールを使わせてもらうことに。

で。だ。。誰ですか?この人(笑)

と、言うわけで、(いつもは髪をおろしたオシャレ・ヘア−である)今回のゲストは‥

渡辺シュンスケ












渡辺シュンスケ

鍵盤奏者、作詞家、作曲家、編曲家、プロデューサー。

鍵盤奏者として、CHEMISTRY・堂島孝平・カーネーション・PUFFY・Gabby & Lopesなどなど、数々のアーティストのライブやレコーディングで活躍中。

豊富な知識と高度な技術に裏打ちされたポップでヤンチャな演奏は、いつ見ても爽快。
どの引き出しを開けてもちょっぴりイビツで、とてつもなくポップ。
素晴らしいプレイヤーであることと同じくらい、素晴らしいエンターテイナーだ。


僕とシュンスケ君とは「何となく顔見知り」程度の関係だったのだが、
去年の10月、堂島孝平君の主催で行われたライブ・イベント「サモ・タノシゲーナ」の楽屋にて2人で話す機会があり、『電子音楽 in Japan』や「Sachiko M」などについて語り合い意気投合(笑)
その勢いで、今年の2月から「コタツ宇宙」というユニットを結成したのであった。

コタツ宇宙のコンセプトは、
「音響・エレクトロニカ・現代音楽・即興音楽などをベースに、世田谷区四畳半的ミニマムな世界に潜む広大な宇宙を奏でる」こと。
ここでのシュンスケ君は、アコースティック・ピアノの他にシンセサイザーやサンプラーを駆使していて、ポップでヤンチャな上にホットでクールでアヴァンギャルド。
本当カッコいいのです。
ぜひライブをご堪能頂きタシ!(ちなみに6/2に下北沢mona recordsにてコタツ宇宙ライブありまっす!ヨロシク!)


そんなシュンスケ君のお薦め3枚は‥


Oh!Penelope











○Oh! Penelope「Milk&Cookies」(1997)



■渡辺

元「詩人の血」*注)の渡辺善太郎さんと辻睦詞さんのユニット。

歌とかアレンジとか、センスとかのバランスが良くって好きなんだよね。
メジャーでこんなことやっててすごいと思う。
まあ売れなかったんだけど‥

「WEEKENDER」って曲があるんだけど、歌詞が面白くてすごい好き。
「月曜日から木曜日までは何もすることないんだけど、週末だけ君とデートする」みたいな。(笑)


*注)1989デビューした辻睦詞・渡辺善太郎・中武敬文からなる3ピース・ロック・バンド。1994年解散。

■神森

ううむ。
ステレオラブやハイラマス、ミッチェル・フルームなんかを思わず思い出す、なんか懐かしい感じ。
音の質感やプログラミングなど、相当高い技術力。

渋谷系と言われた音楽にありがちな「元ネタありき」の曲づくりが根底にあると思われるが(そして僕はそういった作り方に好感を持てない)、ところどころに日本の歌謡曲のようなエッセンスがあったりして、おそらく意図していないところで自分達が幼少の頃に聞いて育ったバックボーンがあらわになる感じがいい。

ただ異国に憧れているだけの音楽には愛着がわかないものだ。



Gabby&Lopez











○ GABBY & LOPEZ「NICKYS DREAM 」(2006)



■渡辺

ギャビロペ(GABBY & LOPEZ)はまあ、手前ミソになっちゃうんスけど‥*注1)

(石井)マサユキさんは耳で聴ける人。
ただ「バッキング」をするだけじゃなくて「空間」をつくるっていうのかな。
バンドをやっていると「どれだけ演奏できるか」みたいな筋肉的なとこに行きがちだけど、そうはしないんだよね。
ここはもうガーッと弾くほうがいいとか、ここは全然弾かないほうがいいとか、「ギャップ」を分かっているんだよね。

初めて音をあわせた時は衝撃的だったなあ。

楠さんっていう、「くじら」ってバンドのドラムの人も素晴らしいんだよね。*注2)


*注1)渡辺シュンスケ氏はGABBY & LOPEZのアルバムやライブに参加しているサポート・メンバー。
*注2)楠均氏もまたGABBY & LOPEZのアルバムやライブに参加しているサポート・メンバーである。

■神森

つい先日、代官山のUNITでGABBY & LOPEZのライブを見た。
本当に心地よい音空間で僕はすっかりファンになってしまったのであった。


森俊二氏と石井マサユキ氏のユニットである「GABBY & LOPEZ」であるが、主にライブでは渡辺シュンスケ・楠均・K.U.D.Oといったサポート・メンバーを入れた総勢5人のジャム・バンドのようだった。
楽器同士のバトルというわけではないのだが緊張感があって、お互いの音に耳を済ましてひとつの塊のような音のうねりを生み出していた。
ゆっくりと変化していく美しい音空間を5人で作り上げていて本当に素敵。


アルバムでは、エレクトロニカ的なプログラミングを多用した曲もあったりしてライブとはまた違った音空間。
しかし違うとはいえライブでもアルバムでも彼らが表現したいことはきっと同じ事なのだと思う。
それは「言葉」のような具体的なイメージではなく、「色」とか「味」といったような抽象的なイメージ。


だからライブとアルバムで鳴っている音が違くても、持つ印象が同じなのだと思う。

ライブもアルバムもそれぞれ別物でどちらも素晴らしいアーティスト、ううむ貴重な存在だ。


RichardSwift











○Richard Swift「The Novelist/Walking Without Effort」(2005)




■渡辺

僕らと同じくらいの歳だと思う。
アナログ機材おたく。

まあなんか神森君の音楽を聴いてコレお薦め!って感じでもないんだけどね(笑)
オーソドックスなんだけど変なとこが凝ってる、みたいな
‥なのかなあ?(笑)

■神森

いいなあ、コレ、好きデス。

このアルバムは「The Novelist」と「Walking Without Effort」という2枚のアルバムを1枚のアルバムにしたもの(2枚組だが)。
それでいて2099円という値段がまず素晴らしい。(笑)

「The Novelist」の方はなんと4トラックのMTRで制作されたものらしい。
確かに高域が削れてモコモコした音像だ。
それに比べて「Walking Without Effort」の方は音像が非常に綺麗だし、ストリングスや厚いコーラスなど音のヴァリエイションも多彩で聴きやすい。

しかしながら2つのアルバムのイメージはほとんど変わらない。
とにかく「歌」がいいのだ。
歌声とメロディだけで聴く者を納得させてしまえる表現力。

これこそシンガー・ソング・ライターの真骨頂だと思う。

新しいアルバムが発売されたらしいが、ぜひ聴いてみたい。





終わりに------------------------------

歌詞やメロディがその人でしかありえない「心」や「顔」だとしたら、サウンドは「ファッション」のようなものではないか。
性格がいい人はどんな服を着ていたって友達になりたいし、顔のいい人はちょっと妙な服を着ていたって恋人にしたい若しくは一戦交えたい(下品で失礼!)ものである。

僕はお洒落にはさほど執着しないケドやはり自分で選んだ服を着たいし、また自分に合ったお洒落をしている人を見ると素敵だなあと思う。


「歌」の主役は間違いなく「歌詞」と「メロディ」だ。
でもサウンドでその人のセンスや人間性を垣間見ることができて、さらにその人・曲に対する愛着が深まったりする。
お金をかければいいサウンドができるわけではないし、その逆もしかり。

作り手・聴き手が人間同士のコミュニケイションである限り、サウンドで自己主張するのは当然のことだと思う。

‥なんて今回薦めてもらった3枚のアルバムを聴きながら思ったのであった。

僕も心の底から沸き出してくる素晴らしい曲をつくり、その上でお洒落をしたいのデス!

シュンスケ君、どうもありがとうございました


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次回訪問先は‥ 小松シゲル(NONA REEVES)氏 です

みなさんお楽しみに

神森徹也
  
Posted by manekarezarukamimori at 23:23Comments(0)TrackBack(0)第11回〜15回