戦争を語るブログ

平和を愛し、いさかい好む

ハリウッドがつくった韓国映画 『Warriors of the Dawn』


豊臣軍の侵攻に揺れる朝鮮半島を舞台にしたアクション大作。
20世紀フォックス製作ということになっているが。
実際のところは企画も製作も韓国の映画人によるもので、フォックスは資金を提供する代わり世界配給権を獲得したという関わりではないのか。
ともあれフォックスはかなり高額の製作費を出したわけで、出資金に相応の価値が見出されたのを意味しよう。







この映画は世界的に受けるだろうか?
たぶん、フォックス側には欧米市場で集客する気はあるまい。

以前に書いたとおり、日中韓アジア映画に対する北米市場の壁は高い。
韓国最大ヒット『鳴梁』でさえアメリカに出せばああなのだから、これが西洋文化圏で大きく稼動する見込みはないも同然。

いやFOXさん、そんなこと百も承知、はじめから韓国や中華圏など爆発性を秘めたアジア市場限定での企画投資だろう。
メガヒットの場合に韓国が一億ドル市場となり得るのは『鳴梁』他何本かの作品で証明済み。人件費がまだ安く、国から助成金も出る韓国。中程度の予算で質量ともに水準以上のものを製作でき、それが一国でペイするばかりか他のアジア諸国でも稼動が期待できるのなら願ったりだ。

そんな目論見が商売として成り立つほど、アジア映画市場は巨大化を遂げた。

さて、余談。
『Warriors of the Dawn』で日本の軍勢が敵方に設定されたのは偶然かもしれない。
実際、韓国映画が日本を悪く描いたものばかり作ってるわけじゃないのは、歴代興行収益のリストからもあきらかだが。
http://koread.info/

重要なのは、ハリウッドメジャーが日本で嫌われる内容の映画(日本人が悪役で出てくる)を作ってなお莫大収益を目算できるようになっている、すなわち日本市場の顔色を窺わなくなりつつあることだ。
この状況は恐ろしい。
もしかしたらこんな調子に、韓国や中華圏で日本を悪玉にした国際水準の大作を毎年のように作られ、それが世界中のテレビで放送され無数の人に見られるのが日常と化すこともあり得なくはない。
ネトウヨにとっては悪夢の未来図か。

実際われわれ日本人も、ドイツ軍が悪役の戦争映画をテレビで目にするたび、「ああ、ドイツ軍は欧州各地で酷いことやってたんだ。嫌われてたんだ」と思う。
同様に海外の人々も、「日本軍はアジア各地で酷いことやってたんだ。嫌われてたんだ」との印象を深めていくに違いない。

そういう次第だから。
日本の右派映画人もせいぜい、大日本帝国の大義を謳った傑作がハリウッドのメジャーに買い付けられ世界中で見られるよう頑張ってほしいと思う。立派な日本の兵隊さんが欧米の軍隊をこてんぱんにやっつけ、アジアの人から感謝される内容の娯楽大作を何十億円もかけて。
(世界中の人に見てもらえないと意味ないよ。日本の中でネトウヨにだけ受けるようなもの作ってもまるで無意味だから。もっともハリウッドに世界配給されるには、その映画の歴史観が国際的に是認されたものでないと駄目だろうけど)

だいぶ話が飛躍した(笑)
まあ、ようするに。
映画商売に関して、ハリウッドは相変わらず巧みだし、韓国も日本よりうまくやっているということだ。






関連リンク

韓国映画興行成績ランキング
(K-MANIA 映画興行成績)
http://koread.info/






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ファンタジー? 『海難1890』


あー。やっぱり、かみ合ってない。
懸念は事実となって眼前に突きつけられた。

映画『海難1890』での日本の俳優陣とトルコの役者の芝居。
トルコ俳優のほうは、なるべく自然に見えるやり方でリアリティを出そうとしている。
対する日本側出演者。ほら、いつものアレだ。
舞台劇的で生理的な自然さからかけ離れた過剰演技。妙に気張った感じの表情に声音、目の動きや立ち居振る舞い。

こんな日本の俳優とトルコ俳優とでからみ合うと、さながら異種格闘技といった様相だ。おなじ場面で向き合って台詞をやり取りするのだが、まったく自然な打ち解けように見えないのである。

1960年代末、フォックス映画『トラトラトラ!』の撮影時も、日本側の演出があまりに大げさなのにアメリカの製作陣は閉口、俳優をなるべく抑えて演技させるよう指示したというが、出来上がった映画を見てもアメリカ側との違和感はやはり大きい。

それで、日本映画界。『トラトラトラ!』の経験からいかに邦画の人物描写が国際水準から隔たってるか思い知ったかといえば……。
ぜんぜん学んでいなかった。
それどころか今になっても、日本の俳優たちは、日本人ならこうあるべきと思い込んだ芝居しかできない、したがらないのをまざまざと見せられるとは。

欧米流儀での「演じる」とはある状況での心の動きの肉体的表現だが、日本人は芝居というものを、普通と違うように振る舞って現実ではあり得ない状況を造型すること、すなわち現実に対する特権的な行為と思い込んでるのではなかろうか。





この『海難1890』は日本とトルコとの友好を祝する合作映画だ。
明治時代、和歌山沖で台風のため難破したトルコ軍艦の乗員を漁村の住民らが救助し手厚く介護した実話にもとづいている。
美談としてトルコの学校でも教えられるというが、たとえば日本の道徳の教科書にも載っていた「クヌッセン機関長」とおなじ感じ、国境を超えたヒューマニズムを謳いあげる意図によるのだろう。

一部日本人の思い入れもわからなくないが、エルトゥールル号事件を世界にもまれな二国間の歴史的友好の起因のように捉えるのは無理がありすぎる。
(そもそも日本とトルコはそこまで密接な間柄ではない。民族も文化も言語も宗教も違う。同盟を組んで戦ったこともなければ、たがいに移住者の受け入れもせず大勢の訪問客による行き来もない。本物の友好国同士ならもっと活発な交流がネット上で見られてよさそうだが、ネトウヨどもはトルコの親日ぶりを吹聴するばかり、自分らがトルコ人と交わろうとは夢にも思わずいるのが実情だ)

しかし明治時代の善意を描くだけなら、まだよかった。
映画の後半部、テヘラン空港での顛末となるともはや実情から明白に乖離しており、ぶちこわした感が半端ない。

映画では、トルコの大使館員が空港のロビーに集った同胞を前に演説、不自然にも百年も前のトルコ軍艦遭難事件を持ちだし、返礼として戦火の中で脱出できずにいる日本の避難民にトルコ航空のチャーター便を譲ってやろうと訴えかけ、一同から熱気のこもった賛同を得るのだが。
あれが全部フィクションだと言われたら、信じられるだろうか。


トルコ航空が日本人を乗せたのは空席があったから
https://togetter.com/li/822784


むろん、映画は歴史の論文とは違うものだ。
物語のテーマを強調できるのなら実話の枠に縛られる必要はなく、いくら手を加えても罪は問われまい。

本当の話、現実にあったことをそのままに描く実録映画は存在しない。
『アラビアのロレンス』『ガンジー』『ラスト・エンペラー』『シンドラーのリスト』『英国王のスピーチ』『アルゴ』……これら諸作はみごとなドラマに仕立てるには事実をいかに脚色するのが効果的かを教えてくれるものばかり。
逆から言えば、大半の実話は劇的に加工しなければ使い物にならないといっていい。どれほど小説より奇なる事件もそのままでは価値ある原石でしかないのだから。

『海難1890』の内容が嘘なのか否かはある意味、どうでもいい。
重要なのは、せっかくの原鉱を研磨するのにしくじり夜店の売り物と変わらなくしてしまったということだ。

それにしても、このエピソード。
イランから出国できず地獄に置き去りになったように怯えきり、脱出しなければこの世の終わりみたいな様子でいる日本人の描き方。
イラク軍の爆撃にさらされながら自分の国にとどまり続けた数千万のイランの人々が見たら、なんと思うだろう?
こんなところにも日本的な無神経がよく出ている。


ええ、ええ。
日本人に生まれてよかったですとも。
心からそう思います。
自分が外国人で日本を見たままに書いたら侮辱になる。
でも同胞の身で落ち度をあげつらうなら、
日本人として自省する潔い態度だ。
「日本のネットにも謙虚な奴がいた」
外国人からそう見てもらえるのですよ。







ところで合作映画といえば。
1970年代。東宝とモスフィルムによる日ソ共同制作で『モスクワわが愛』というのがあった。
出演は栗原小巻とオレグ・ヴィドフ(『ワーテルロー』の兵卒トムリンソン役)。
試写会場から出てきた批評家の一人が、「くだらんね」と吐き捨てるように評したという。
つまり、そういう内容だったのだ。友好第一、作品の出来は二の次といった感じの。

自分は『海難1890』について、「くだらんね」とまでは言わない。
国と国とで仲良くするのはいいことだし、日本の映画人が合作を推し進めるのもいいことだ。
しかし検索すればわかるが、ネット上でこの映画を恥もなく絶賛するのは特定の政治傾向をもった人に多い。その事実こそが作品の出来以前、作品をあらしめた状況を浮かび上がらせていると思う。

これは日本トルコ合作というより、両国をそれぞれに強権で支配せんとする安倍首相とエルドゥアン大統領との合作と呼ぶほうがふさわしい。
安倍自身、「『海難1890』を成功させる会」なる組織の最高顧問。安倍の依頼にこたえ、トルコ政府も製作費の半分を拠出した。
私企業が儲けのため仕組んだ企画と異って、そもそもの動機から不純なのである。大衆の出す入場料をめあてに大衆を楽しませようと作られたものではないのだから。

かかる次第で、当初十億円はかたいと見積もられた興行収入だが、果たして八億そこそこしかいかなかった(大衆の本音だろう)。あの出来栄えではトルコでもたいして集客できないから、商業的には赤字に違いない。
しかし誰も損をしない。関係者は使った金なんて政治活動費のようなものと割り切っているのだろう。

ああ、しかし。
こんな無理だらけの友好宣伝映画などより、百年前のアルメニア人虐殺でトルコを非難しながらドイツにも同盟国としての責任があると認めたガウク独大統領の誠実な態度のほうこそ百年たっても語り草となるように思えてならない。




なかよく映画を宣伝する二人の強権主義者、
安倍晋三とトルコのエルドアン大統領。








関連リンク


「映画『海難1890』(VFX制作:東映アニメーションほか)」
https://cgworld.jp/regular/201512-vfxanatomy-cgw209.html


「この映画は事実に基づいています」って
実際どれだけ基づいてるのか教えてくれるウェブサイト
(ギズモード・ジャパン)
http://www.gizmodo.jp/2016/02/post_664151.html






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『ダンケルク』は果たして、北米で大受けするか?


七月に公開が予定される(日本は九月)クリストファー・ノーラン監督の『ダンケルク』は果たして、北米でヒットするか?
考えはじめるとキリがなくなる。
いろいろ検討したかぎり、アメリカ人に受けそうもない内容に思えて仕方ないのだ。

この映画の宣伝、一にノーラン、二にノーランという感じで、やたらクリストファー・ノーラン作品なのを強調したものばかり。逆から言えば、あのヒットメーカーで鬼才の監督作という以外では映画好きにアピールする要素がないのかもしれない。

実際のところ、ドイツ軍に包囲された英軍将兵がフランスから脱出する戦争ものに、どこまでアメリカの男女が惹かれるか?
アイマックスで見世物に仕立てたとはいえ、『バットマン』なみに興行力を発揮できるだろうか。

キャストにしても、知名度ある俳優さんはトム・ハーディー、キリアン・マーフィー、ケネス・ブラナー程度だから、興行的に完璧の布陣とは言いかねるのだ。戦争映画といえば嫌がる人が多くて、やむなくオールスターの魅力で集客するのが相場なのに。

ヘタすりゃ、最近封切られたガイ・リッチーの『キング・アーサー』みたいに大赤字を背負いこむ結果になりかねん。
あぶない、あぶない。
ノーランも大変な大博打に打って出たものだ。





アメリカの映画観客はある意味、世界でもっとも好き嫌いの激しい人々である。
とにかく、アメリカ人好みの味わいでなければ受け付けないのだ。『ダンケルク』のように、アメリカ人がまるっきり関わらない筋立てのものに感情移入するだろうか?
いや、そうは言っても。『英国王のスピーチ』は一億ドル超えの収益を挙げた。ボンド映画も英国諜報員が主役なのに、『ハリポタ』や『トランスフォーマー』と並ぶ稼ぎ頭だし。
微妙ではある。

あ。ぼくが言ってるのは、「『ダンケルク』は北アメリカで大受けするか?」ということで、それ以外の地域についてはあまり気にかけてないから。話題になってる規模では集客するだろう。
そりゃ『ワイルドスピード』や『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のような10億ドル超の爆裂ぶりは期待できまいが。世界全体で数億ドルはいく。
目算がなくて配給会社が予算をつけるものか。






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『キング・アーサー』、特大ヒットを逸す


金曜に全米公開されたガイ・リッチー監督の『キング・アーサー 聖剣無双』。
3700館もの超拡大興行で期待されたものの初日の売り上げ530万ドル、パッとしない出足となった。
(10億ドルの総収益が確実視される『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』は集客の落ちた8日目の稼ぎだけでなお1600万ドルだから、『キング・アーサー』の不振ぶりが推しはかれよう)
http://www.boxofficemojo.com/movies/?page=daily&id=kingarthur2016.htm





『キング・アーサー』の集客規模は『グレートウォール』に等しく、二日目以降も同様ならば北米での収益は4000万〜5000万ドル程度で落着するだろう。
剣戟ものファンタジーは飽きられてるのかな。






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れっ? ドドーン!(『レッド・ドーン』)


北の将軍さまがミサイルを打ち上げ、いつも通り日本海に命中させた。
お祝いというわけじゃないが。
その軍隊がアメリカに攻めよせる映画『レッド・ドーン』(2012)を、YouTubeで視聴。これで二度目だ。





そう、太平洋を越えてきた北朝鮮軍がアメリカの半分を制圧、占領下の若者たちがゲリラ戦士として抗戦する物語。

え? え? ええ!?
人口二千万の北朝鮮にアメリカを積極攻撃する国力なんてある?
むろん、キューバ軍がアメリカに侵攻するくらい無理が多い。

しかしどうやら。
聞いたところでは、アメリカに来る前に韓国を併呑したり日本を隷属させたり、さらに中国を無力化し米軍にアジアから兵を引かせたり、あらかじめ勢力圏を拡大していたようで、そのうえ極右化したロシアによる支援まで受けられて。
ようするに軍事バランスが現状からそうとう隔たった近未来のことらしい。

小国が力を付けていき、大国を呑みくだすのは歴史上にも都度見られる。
大ペルシャをくだしたアレキサンダー。ユーラシア大陸の大部を制したモンゴル遊牧民。無敵艦隊を打ち破り、スペインから覇権を奪った島国イングランド。
だから、北朝鮮も……いや。やはり、あり得ない。
(北朝鮮をそこまで恐れて騒ぐのは世界中で安倍政権と日本のネトウヨだけではなかろうか)

つまり、だ。
これは、もっともらしく理屈をつけて設定を擁護せねばならんほどのトンデモ映画なのである。

もとからが80年代冷戦期につくられた『若き勇者たち』のリメイク。
しかも当初、攻め込んでくるのは中共・北朝鮮の連合軍のはずだった。
それを、中途から製作にかかわった中華資本が脚本をいじり、北朝鮮の単独犯行に変えさせた経緯があったらしい。

たしかに過去、ホーマー・リーの荒唐無稽な予言本を大筋において的中させ、アメリカに戦争を仕掛けたアジアの国が存在するのだが。
しかし中国となると、国土を欧米列強と日本の軍隊に蹂躙こそされ、中国のほうから米国にまで攻め入ってなどいないのだ。この期に及び、自分たちがアメリカを占領してのける仮想映画を作られるとは遺憾きわまりないことだろう。

いきおい、悪者の役は北朝鮮が一身に請け負うこととなる。
ただし偏見まるだしで極悪非道に描いているわけでもない。むしろ東洋人の軍隊なのをあまり意識させないよう気を使っていると見た。

ゲリラのメンバーも、『若き勇者たち』では白人の少年少女ばかりだったのが、リメイク版では当然のようにアフリカ系の若者もくわわった。
ただし、それで価値が増したとも思えない。




ジョン・ミリアスの『若き勇者たち』(1984)。
「ジュネーブ協定? なんだ、そりゃ?」 捕虜でも内通者でも容赦なく射殺。
孤立したティーンエージャーの武装集団がこうなっていくのはむしろ当然か。




ジョン・ミリアスの『若き勇者たち』は、タカ派の内容でありながらアメリカを誇るだけではない、自分たち自身のヤバさというものをよくわきまえ率直に描こうとした映画だった。
自分の国に対するミリアス流のリアリズム、いわゆるミリアリズムが反映されていた。
その毒だらけなところに価値のあった『若き勇者たち』とくらべ、こちらのリメイクは毒にも薬にもならないありきたりな失敗作に堕している。
あじけないのである。ミリアリズムの棘を抜いた分、歯応えがなくなったかのように。

『若き勇者たち』で貫かれたのが内向きにこもったアメリカ的視点ならば、『レッド・ドーン』が意識したのは世界的な視野だ。
どちらが良い悪いとは言えないが。ただ『レッド・ドーン』のほうは面白く感じられなかった。






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