いまさら書くのも難儀だけど、「従軍慰安婦は日本軍だけの特異な制度ではなく、どこの国にもあったもの」などとまるで橋下徹のようなことを、十年このかた言い続ける連中がいます。

それに対しては、いかに無知な見方であるかを、橋下徹のようではない人達がやはり十年このかた言い続けてきたわけで、ともあれ資料的な根拠を示せという人にはこちらのサイトの閲覧を勧めます。
http://fightforjustice.info/?page_id=166

さて、ここまでは前座。
ぼくからは、誰にでもわかるような広い観点から、慰安婦問題の本質的な状況を指摘してみたいと思います。

ぶっちゃけて言えば。
この問題の勘所は、「慰安婦制度を非難され抗弁する側が、西側の国民ではない」の一語に尽きるでしょう。そこが最大の特異性であり、橋下徹のような人々が何を言っても海外では受け入れられない由です。

そう、日本は「西側」の国ではないのです。中国、韓国とおなじで、文化的に体質的に北東アジアに属する国だし、人権意識の点でも欧米とはかなりの隔たりがありますが、わかっていない人が多い。

いえ、「西側に属さない国の人間が言うことだから信用されない」わけではありません。
(現に、慰安婦制度の犠牲になったアジアの女性達の証言は国連でも米国議会でも受け入れられています)
ぼくが言いたいのはそうではなく、西側とは異なった人権意識にもとづく発言だと欧米の人々(および欧米流の教育を受け入れた人々)は味方しないということなので。

とにかく、慰安婦制度が問題となったことに対する一部日本人の反論の仕方にはそれ自体で問題とすべき点があり過ぎます。
「なでしこアクション」の海外へのメール攻勢に見るように、この人達は、大日本帝国の名誉を守ろうとするあまり(違うとは言わせない。なんたる異常な動機!)慰安婦のほうを「嘘つき」「金欲しさ」と貶めてはばからないわけですが、そのような言動こそ西側の人々を反発させるのを理解すべきでしょう。
まるで「日本軍のほうが売春婦より立派な存在」だと言わんとするかのようなので。

西側では、大戦中の日本軍は悪役です。良い人もいた悪い人もいた、自発的にやった強制されてやった等の「個」の事情は考慮されるけど、日本軍国主義という「公」での括りとなれば、ナチ・ドイツやファシスト・イタリーのお仲間の暴力的な犯罪集団として認知されます。
それでも先代の過ちを反省し二度と繰り返さないとの意思を示すことで、世界の中に日本の立場は与えられ、良識を持った国として面目が成り立ってきたのです。これこそが戦後の歴史でした。

だから、ネットで流布される与太話を真に受け、「本当は海外の人々は日本軍に感謝している」などと本気で信じ、とんでもない勘違いを西側の人々の前でさらけ出したりすると痛い思いをするわけです。
果たしてフィラデルフィアでもグレンデールでも、日本の「右側」の人々によるメール攻勢は、西側の倫理と歴史認識の上に立った米国人の反発を誘い、慰安婦制度を糾弾する側に利するだけとなりました。

それにしても恐るべきモラルの欠落でしょう。慰安婦も兵隊さんと同様、国のため尽くした存在なのに、海外から非難され都合が悪くなるや、「金めあての売春婦」と貶めたり「他国にもあった」で話を逸らそうとする。
(他国にもあったとして、なぜ日本軍の場合だけこれほど問題になったのでしょう?)

ようするに、一部日本人が「慰安婦」を「売春婦」と蔑むのは、「軍人」を「人殺し」と呼ぶに等しい。まさにそうなのです。ところが、その一部日本人。慰安婦のことは貶めながら皇軍将士の名誉だけは全力で守ろうとする。「侵略者」「虐殺者」扱いはあくまで許さないという。
ここまで無体なエゴイズムの発露は、西側の人々の寛容と理解の度を超えています。

ともあれ今後、日本の「右側」の人々が、慰安婦問題にかぎらず大戦中の日本の立場を正当化する活動でどれだけ悪あがきするにせよ、「西側」の人々に受け入れられないやり方で行くかぎり成功するなど絶対にあり得ないでしょう。
けれども「右側」の人々に「西側」の行き方は不可能なのです。





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