「潘基文(パン・ギムン)国連事務総長が安倍内閣の歴史認識を批判した」件が、日本では大問題となっている。
発端は、潘基文氏の発言を報じた共同通信の思い入れの強い記事題とさらに誤解をあおる報道文にあったと思う。


国連事務総長、日本に異例の注文 「歴史顧みることが必要」
http://www.47news.jp/CN/201308/CN2013082601001484.html
 【ソウル共同】韓国を訪問中の国連の潘基文事務総長は26日、ソウルの韓国外務省で記者会見し、歴史認識問題をめぐり日本と中韓との対立が深刻化していることについて「日本政府と政治指導者は自らを深く顧みて、国際的な未来を見通すビジョンを持つことが必要だ」と述べ、日本政府に注文を付けた。

 具体的な点には言及しなかったが「侵略の定義は定まっていない」とした安倍晋三首相の発言などを念頭に置いているとみられる。国家間が対立する問題で、国連事務総長が一方の態度に問題があるとの認識を強い表現で示すのは異例だ。


これでは、潘基文氏が国連の立場から日本を名指しで非難したと思ってしまうだろう。
しかしながら共同通信による潘発言の伝え方は、実際とかなり乖離したものなのである。
記者会見の場で日本の憲法改正の動きに対する国連の立場を問われた潘事務総長の発言の要旨だが、韓国の新聞によれば以下の通りだ。


「今後、歴史をどのように認識し、正しい歴史が未来志向的な国家関係をどのように維持できるか、こうしたことに対する日本の政治指導者らの深い省察と国際的な未来のビジョンが必要だ」
(朝鮮日報)
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/08/27/2013082700691.html


潘基文氏は、かなり言葉を選びながらものを言ったことがわかるだろう。
だいたい、「日本に注文」も付けなければ、「歴史認識で反省」を迫る真似もしていない。
それが日本では共同通信の大げさな報道により、かなり曲解されて伝えられてしまった。さらにネット右翼があることないこと粉飾をくわえ「反日発言」だと言いふらすから、ますます混乱してくるわけだ。

今の政府とその支持層が海外からの批判で過敏になるのはわかるが、あたかも日本国家全体が一通信社の水増し記事を真に受けて大騒ぎするかのような印象をかもし出すのは、国としてどうかと思われる。

さて、本題。
「潘基文は国連で要職にある人なのだから、国際情勢については中立的な立場で発言すべきだ」ともっともらしく言う者がいる。
注意が必要だ。なぜなら、「中立的な立場でいろ」と要求する者にとっての「中立」とは、「日本のウルトラナショナリストに耳の痛いことを言うな」という意味でしかないのだから。

潘基文氏は国際連合の事務総長である。
国連の起源は第二次大戦で枢軸陣営を阻止するため戦った国々からなる国際的な寄り合いなので、(旧枢軸国の)日本が正しかったなどという史観は断固として受け入れない。潘氏の立場から安倍内閣の歴史認識について語って、批判的なものにならないほうが変だろう。
反対に安倍首相が国連総会に乗り込んで「あの戦争で日本は正しかった」と演説でもしようものなら、バチカンで「悪魔が正義」と言うのと同じ結果を招くことになるのだ。

ようするに国連事務総長の潘基文氏はNHKではないのだから、「敗戦国正当化史観」にとり憑かれ、まさに負のエネルギーが充満する安倍内閣に対しては「中立の立場」をよそおう必要はない。
堂々と批判して結構だし、むしろ堂々と批判しなければならない。

にもかかわらず、潘基文氏は国連の立場から日本を叩くような真似などしていないのだ。
ここに彼の職分にふさわしい良識と、余計な口出しは控えて殊更に波風を立てまいとの思いを見る。
橋下氏や石原氏と比べれば、かなりまともな人物だ。