中国で安重根記念館開館 暗殺現場のハルビン駅
http://news.livedoor.com/article/image_detail/8446777/

ネット右翼が火病をおこしそうなニュースである。
「テロリストの安重根め」とか息巻きながら、笑って馬鹿にした真似だけするのが目に見えるようだ。


(聯合=共同)



安重根って何した人? と訊かれれば、遺憾ながら、政治的・軍事的なリーダーとして歴史を作り変えるほどの大人物だったと答えるわけにはいかない。
彼は韓国人の民族主義者で、みずからの祖国が隣国の領土欲にさらされるのに単身で立ち向かった男だ。そして中国ハルビンの駅頭、日本を代表する立場でロシア外相と相対した元老伊藤博文の余命を三発の銃弾で奪う行為によって歴史に名をとどめた。

安重根のしたことは人殺しだし、合法的な行為ではない。
なによりも、祖国を救うため役に立たなかった。
韓国を併合することは同年の夏すでに東京で閣議決定されており、いかに伊藤博文が朝鮮総督時代にそのための下準備をすべて整えた男、いわば韓国植民地化の張本人だったとはいえ、いまさら伊藤を倒したところで復讐以外の目的は達しようがなかったのだ。

しかし今日、韓国では安重根のことを「愛国者」「義士」「英雄」と称えている。

いったいに、歴史上の殺傷事件というのは、被害を与えられた側の国と加害者の出身国とでは評価が食い違うものである。
第一次大戦の引き金となった百年前のオーストリア皇太子暗殺だが、その実行者は地元セルビアではいまなお愛国者として英雄視されるという。

安重根記念館の落成に抗議する菅官房長官は、「安重根は我が国の初代首相を殺害し、死刑判決を受けたテロリスト」だと不快の意を示したが、その「我が国」に限っても、時の権力から切腹を命じられた「暴徒」の赤穂浪士が今日ではお寺で祀られ、「義士」扱いされているではないか。
菅長官の言葉は説得力が欠ける。

はっきり言って、安重根が海外でどう扱われようと日本に関係ないとは言えぬにせよ、今のタイミングで日本政府が干渉すべきことではないだろう。
なによりもまず安重根は、靖国神社で祀られる英霊二百万と異なり、日本によるアジア全域への侵略行為に加担した存在ではなかったのだから。

そもそも伊藤博文のような毀誉褒貶の多かった人物を、単純に「立派な人」「尊敬すべき人」として遇してよいものだろうか?
織田信長に豊臣秀吉、平清盛、足利尊氏、シーザー、クロムウェル、コロンブス、成吉思汗、イワン雷帝、獅子王リチャード、ゴードンやカスター……伊藤もまた、彼らと同じように怨まれる真似もしていたはずで、それがまさに安重根の行動に表れたというわけだが。
その辺の事情を考慮せずに、なぜ「テロリストに殺された偉人」とバイアスをかけねばならないのだろう。

そうしたいというなら日本ではそうすればいいだろう。伊藤博文暗殺は太平洋戦争ではないのだから、二つの国で異なる史観が存在しても問題とはなるまい。
その代わり、彼に報いを受けさせた安重根のほうは韓国や中国で英雄にしておけばいい。
侵略者の親玉である伊藤博文を射殺した彼を、その地元が「正義の人」として扱うのを許しておけばいい。

それをどうして日本政府のほうでは、韓国と中国が共同で「安重根記念館」を伊藤博文殉難の地ハルビンに立ち上げたことを問題にしなければならないのか。
日本帝国主義に敵対した人物がこのように祭り上げられては、伊藤博文が仇を討たれた悪者として相対化されてしまい、美しいものとして国民の記憶にとどめるべき日本の近代史に汚点がつくというからか。

そのように子供じみた日本会議史観の都合には付き合っていられない。
「美しい日本」を海外にまで押し付けるのはやめてもらいたい。





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