本屋で一目惚れした本。
図書館に予約したのが、ようやく届く。
(「なぜ買わない」とか突っ込むな)



(文芸春秋社刊/オーナ・ハサウェイ、スコット・シャピーロ共著/野中 香方子訳)
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163909127

この十数年来。
「ニュールンベルグも東京も、事後法での裁きと違い、1828年のパリ不戦条約を法的な足場にしている」と説明しても、「不戦条約って何?」と返されるのがオチだったけど。
これからは説明の手間がはぶけるってもんだ。

さて。
まこと、「わが意を得たり」と言いたくなる労作である。

そうとう込み入った知識が詰め込まれており読みすぎると眠くなってくるのが玉に瑕とはいえ、パリ不戦条約すなわちケロッグ=ブリアン協定なるものが、キリスト紀元にも匹敵するほど、成立以前と以後とを決定的に画するものだったことがよくわかる。

著者は、イェール大学で法学を教えるオーナ・ハサウェイとスコット・シャピーロ。
誰かがネトウヨをやっつけるため作ったお手軽な歴史解説サイトとは格調が違うのだ。
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さて。
amazonの書評にもあるように、この『逆転の大戦争史』は、連合国による勝者の裁きを過去の不戦条約を盾にとって正当化するものではなく、国同士では合法とされた戦争がいかに違法なのか国際的に認めさせようとした人たちの努力をしのぶというのが目的であり、別に、ネトウヨ退治を動機としてはいない。
そもそもから志が違う。

そうはいっても。
内容のかなりの部分、パリ不戦条約が成った1828年を境とする「新世界秩序」の基準から第二次大戦を俯瞰したものであることも確かだ。
したがって。いかに言葉を弄したところで、この国のネット右翼と相容れるものにはなりようはずもなく。
ネトウヨどもの退屈な常套句たる「欧米こそ侵略国家なのに、日本ばかり悪者扱い」「勝てば官軍」等がなぜ通用せず実情とどう食い違うのか、とことん詳しく述べられている。

だから当然というか、ネトウヨ界隈でこの書を話題にする者は少ない。
ネトウヨたちは黙殺というか、避けている様子なのだ。
そりゃ避けたくなるだろう。
テキサス親父やケント・ギルバートのように極右派に都合よいことしか言わないお雇い外国人の腹話術人形と異なり、本物の西側世界の歴史観を突きつけてくるわけだから。自分らの拠って立つ足場を崩されてしまう。
読んだら、ネトウヨをやめるしかないのである。

結局のところ、この本を自分のため書かれたと感じる人は幸せに違いない。
これより先に読んだ『大いなる聖戦』も同様だったが、
ギルバートやトニー・マラノのインチキ本とはわけが違う、まっとう極まりないスタンダードな歴史観に貫かれる快著によって西側世界全体から応援を受け、後押しされるのだから。
そしてこれこそは、自己の認識がそのまま世界と通じ合っているという、極右系の「歴史本」を真に受けてしたり顔をする手合いには得ることすら望めぬという悦びなのである。





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