戦争を語るブログ

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第一次世界大戦

アルメニア虐殺問題から見えてくる日本のこと

さて。ローマ法王が「アルメニア人虐殺は20世紀の三大虐殺のひとつ」と語ったのにトルコが反発、政治問題となってる件を書くべきかもしれないが……。
ちょっと荷が重い。

自分は、トルコ大統領の支持者でもなければカトリック教徒でもない、ましてアルメニア人ではない。まったくの部外者だ。
これでアルメニア人虐殺について、どこまで語れるか。

しかし考えてみればトルコの態度は、過去の軍犯罪に対する安倍政権の反応ぶりとよく似ている。とりあえず、類似点をあげつらってみよう。
つまり、こうだ。




従軍慰安婦問題では

おもに「フェミニスト」勢力とその思想に同調する人権派の人々が、大戦中に多くの「女性」を性奴隷として扱ったことで旧日本軍を非難。
これに「安倍政権」とその支持層がヒステリックに反発。


アルメニア人虐殺問題では

カトリックの総本山バチカンの長たる「ローマ法王」が、百年前にキリスト教徒の「アルメニア人」をオスマン帝国が大量虐殺した件で遺憾の意を表明。
それに「今のトルコ政府」が猛反発。




これで見えてくるのは、トルコと日本の類似点、相違点といった卑近な事柄より、過去の出来事をめぐり加害者側と被害者側、その後援勢力がどんな激しく応酬しあっても周囲の世界は無関心なんだなという悟りのようなものだ。

われわれ日本人は、『アラビアのロレンス』などの映画でトルコ人が残虐に描かれても、特別の親土家をのぞけば、むきにならず「ああ、そういうものか」と思うだけで、つまり映画として割り切って見る。
アルメニア虐殺問題でも、トルコ政府の頑迷な態度を見て心に生じるのは、なぜ百年前のことなのに外交関係をこじらせても否認を決め込むのか、わけわからんという素朴な疑問かもしれない。
「あんなに激しく否定するからには虐殺は嘘だ」と思ってくれる人は少ない。

実際、史家の多くはオスマン・トルコによる大規模なアルメニア人迫害を否定できない事実だとする。
今のトルコ政府も何十万ものアルメニア人が死んだのは認めている。
しかし、第一次大戦では300万のトルコ国民が死んでおり、アルメニア人の場合もそうした戦時の混乱が招いた悲劇という見方だ。さらに虐殺数百万は誇大であり、また計画的な殺戮ではないとしている。
ただし、トルコ政府のこの見解をそのまま受け容れる外国人は多くはない。

実は、日本人が過去に向き合う態度への諸外国の感じ方もおなじなのである。

「我が軍はそれほど酷いことをしたわけではない」との抗弁はいくらでもできようが、大半の史家による評価は安倍政権に都合の悪い方向で確定しており、国際的にはほとんど受け容れられないと思って間違いない。
言えば言うほど見苦しさを印象付けるだけの結果となるだろう。





関連リンク

法王、アルメニア人殺害を「ジェノサイド」と表現 トルコは猛反発
(AFPBB News)
http://www.afpbb.com/articles/-/3045195





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マタ・ハリのこと

第一次大戦中ドイツと通じた諜報活動が発覚、銃殺された美貌の女スパイ、マタ・ハリ。
「その活動のせいで連合軍兵士五万人が死んだ」といわれるが――。






実際は間諜として小物にすぎず、赫々たる勲功を遂げたわけでもない。
死刑にされたのも、ほとんど濡れ衣に等しい罪状によるものだったようだ。
なによりも、マタの写真として紹介されるのは異色のダンサーとして名声を得た三十歳頃のものが多く、この艶やかな姿で暗躍したわけではない。
(あまりにもその手の誤解がまかり通る)







マタ・ハリの素性は簡単に調べられる。
本名は、マルガレータ・ヘールトロイダ・ツェレ(Margaretha Geertruida Zelle)。
ジャワ系の血が混じったオランダ人で、エロチックな東洋スタイルの舞踊により20世紀初頭のパリで喝采を浴び、多くの地位の高い男たちと彼女のやり方で交流した。

第一次大戦が起こるまでは、そうした暮らしぶりである

いよいよ軍事情報横流しのお仕事に関わるのは四十代になりかけた頃。何らかの志をもってのことではなく、割のいい副業の話に飛びついたという感覚らしい。
すでに容色も人気も、かなり衰えていた。
ただ、ダンサーとして名声を博する若い時期に築いた人脈のおかげで男たちの間を有利に動きまわることができ、それが役立ったというわけだ。





マタ・ハリがフランスの官憲に逮捕されたときの写真。
すでに40代、化粧を落とした素顔である。実際のマタ・ハリの活動が「色仕掛け」とは異なるものだったのではとおぼろげにうかがえる。

ともあれマタ・ハリにまつわる風説は、小説や映画などさまざまな創作を派生させていくことになる。「女スパイ」なるものに一種、劇的で妖艶なイメージが付与されたのは彼女の存在に負うところが大きいといえるだろう。





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混血の英雄えがいたドラマの主役に白人俳優



Billy Sing
第一次大戦の混血勇士が主役の映画
演じるのは白人俳優。アジア系市民が猛反発



(AFPBB News)

実物のビリー・シン。中国とインドの混血だった



実在した英雄ビリー・シン。
母親がインド人で父親は中国人というオーストラリア兵。
Wikipediaで調べて、驚きました。
それはもう、ジュード・ロウ主演の「スターリングラード」みたいに、ドラマチックな展開なのです。

連合軍惨敗のガリポリの戦いで個人的に奮闘。
優秀な射撃の腕で何百というトルコ兵を仕留めたという、米軍のヨーク軍曹にも比肩する国民的ヒーロー。
彼の射殺を命じられたトルコ兵との狙撃手同士の対決。
凱旋後に故国で受けた盛大な栄誉。
そして、孤独で悲惨な晩年。

こういう人物なら、いつか主役にした映像作品ができるのは当たり前というわけで。

でも、これを演じたのがまったく欧州系血筋の俳優で、しかも映画を撮った監督さんの息子だった。
オーストラリアの中華系市民はもう大反発です。

ちなみに、AFP日本版の記事では中国系市民の反応しか報じられませんが、インド系市民のほうはどうなのでしょう?
母親役は実際どおりにインド人の設定だったのでしょうか。
(インド人の役なら白人女優がメークを変えて演じられる)

ともあれ、そっちのけにされた人種グループから猛烈な抗議が起こるのは当然すぎること。
たとえれば、二世部隊の勇士を白人の役者が演じるほどのナンセンス。
アジア人全体への侮辱として捉えるべき仕打ちと思います。

これに対して映画の監督は、「ビリー・シンの父親の中国人役の俳優が見つからなかったから」と反論したそうですが、ぜんぜん理由になってませんよね。
それでも、主人公ビリー・シンを演じる俳優を自分の息子の中から見つけたのだから、才能を見分ける目はたしかなんでしょう。



豪英雄「ビリー・シン」に白人俳優、
中国系市民が猛反発


【5月11日 AFP】第1次世界大戦(World War I)で活躍したオーストラリアの英雄的狙撃兵、ビリー・シン(Billy Sing)を描いたテレビ映画で、英国人と中国人との間に生まれたビリー・シンを白人俳優が演じたことをめぐり、「オーストラリアの歴史を白く塗りつぶすものだ」として、中国系オーストラリア人らから怒りの声が上がっている。

 ビリー・シンは、中国人の父親と英国人の母親のもとに生まれ、第1次大戦のガリポリ(Gallipoli)戦線で活躍した狙撃兵。敵兵200人以上を殺害した功績により「暗殺者(The Assassin)」との異名を持ち、1943年にオーストラリアで死去した。

 ところが、放映が予定されているテレビ映画「The Legend of Billy Sing(ビリー・シンの伝説)」で、ビリー・シンを白人の俳優が演じたことが明らかになった。

 これに対し、オーストラリアの政治団体「Chinese Australian Forum(中国豪州フォーラム)」のトニー・パン(Tony Pang)理事長はAFPに対し、「何者かが中国系オーストラリア人の顔を、白人の顔で塗りつぶそうとしていることを知り、非常に残念だ。これは恥辱であり、史実が歪曲されるのを見るのは悲しい」と語った。

 パン氏は、オーストラリアの中国人コミュニティーは長年こういったひどい扱いを受けがちだったが現在は変わったと述べ、「ジョン・ハワード(John Howard)前首相の役をパキスタン人俳優が演じていたらどう思うか?全くばかげている。完全に不適切だ」と批判した。

 自分の息子をビリー・シン役に抜擢(ばってき)したジョフ・デイビス(Geoff Davis)監督は前週、同国紙オーストラリアン(Australian)対し、ビリー・シンの父親の中国人役の俳優が見つからなかったことが理由だと反論している。

 一方、国民党(National Party)の中国系元上院議員も「ビリー・シンを白人だと勘違いして育つ人が出ることになる」として「深い失望」を表明。また、別の中国系オーストラリア人団体の幹部は「中国系オーストラリア人の英雄を真っ白に消す行為だ」と非難している。(c)AFP


(AFPBB News/2010年05月11日)
http://www.afpbb.com/article/entertainment/movie/2724998/5733382




関連リンク

ビリー・シン
(Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/ビリー・シン




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