戦争を語るブログ

平和を愛し、いさかい好む

クリストファー・ノーラン

映画『ダンケルク』の戦果


やれアイマックスだ、ノーラン旋風だ、と前評判で賑わったけど、蓋を開けてみれば結局、北米で公開されるイギリス映画の一本として落ち着きそうな『ダンケルク』。

カナダ・アメリカでの週末興行成績5000万ドル。
(『ワンダーウーマン』のまさに半分)
米国興行サイトの見積もり「週末三日で6000万ドル」には若干およばない結果となった。そのサイトでは北アメリカでの最終収益を「2億4000万ドル」としていたが、現状、二億ドルの線も危ぶまれる。

とはいえ大ヒットには間違いない。
専門家の予想より二、三割低い集客になったとしても、なかなかのものだ。






しかし気になるのは、このサイトのページ。
http://www.boxofficemojo.com/movies/?page=main&id=chrisnolan2017.htm
製作費を1億5000万ドルと記してあったのがいつの間にか、1億ドルに変更されている。
理由はわからない。興行成績が思ったほどいかなくて「赤字だ」と噂が立ち、『ヴァレリアン』の製作会社のように株価を落とすのを案じての措置だろうか?

いや、むろん『ダンケルク』が赤字だなどとは誰も思わない。なんといっても『猿の惑星: 聖戦記』に等しい世界的ヒットを実現させている(映画が公表された額よりずっと安く出来るのは業界人はみんな知ってるし)。
おそらく映画作りに疎い証券市場の過敏な反応を警戒してのことに違いあるめぇ。

かたや『猿の惑星: 聖戦記』。
http://www.boxofficemojo.com/movies/?page=main&id=planetoftheapes16.htm
『ダンケルク』と同じペースの稼ぎ高なのに、「製作費1億5000万ドル」のままにしてあるフォックス映画は太っ腹だ。
商品としての『ダンケルク』は、この『猿の惑星: 聖戦記』ともに、1億4000万〜1億7000万ドルくらいの最終益(北米のみ)で収束するだろう。

さて。
『ダンケルク』が、マーペルヒーロー映画のような飛びぬけたヒットにならなかった理由。

英国で初日に観た人のツイートだが、この映画に女性客が集まらないヤバさがすでに暗示されている。
これは由々しい。
女性に敬遠される内容だと(そう思われるだけでも)、家族映画やデート映画の客層が成立しなくなるからだ。『ワンダーウーマン』に大きく水をあけられる結果となるのは早々と見通せることだった。

戦争映画には「男だけのイヴェント」というイメージが根強い。実際、男の集団同士で殺しあうわけで、女性はどうしても作中世界から疎外された気持ちを味わう。
そこがたぶん、いけない。
女性が出てきても、兵士たちに守られるか銃後で男たちを励ます脇役として。まるで男の力で歴史が作られてるかのようだ。

『ダンケルク』に「なんだか時代遅れ」なところがあるとしたら、けっして第二次大戦を扱ったからではない、そういう男の世界の物語として成立させてしまったことだろう。
(『ワンダーウーマン』なんか第一次大戦が背景だぞ)

いまや戦争映画とは、古風な女性からは自分は女だからと引かれ、進歩的な女性からは男ばかり活躍すると忌まれ、彼女らと関わる男や子供も集客できないという非常にリスクの高い売り物なのである。
それにクリストファー・ノーランは挑み、一定の戦果を挙げてみせた。
批判など誰にも出来はしない。




関連リンク

『ダンケルク』は果たして、北米で大受けするか?
(当ブログ)
http://blog.livedoor.jp/manfor/archives/52064883.html






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『ダンケルク』は果たして、北米で大受けするか?


七月に公開が予定される(日本は九月)クリストファー・ノーラン監督の『ダンケルク』は果たして、北米でヒットするか?
考えはじめるとキリがなくなる。
いろいろ検討したかぎり、アメリカ人に受けそうもない内容に思えて仕方ないのだ。

この映画の宣伝、一にノーラン、二にノーランという感じで、やたらクリストファー・ノーラン作品なのを強調したものばかり。逆から言えば、あのヒットメーカーで鬼才の監督作という以外では映画好きにアピールする要素がないのかもしれない。

実際のところ、ドイツ軍に包囲された英軍将兵がフランスから脱出する戦争ものに、どこまでアメリカの男女が惹かれるか?
アイマックスで見世物に仕立てたとはいえ、『バットマン』なみに興行力を発揮できるだろうか。

キャストにしても、知名度ある俳優さんはトム・ハーディー、キリアン・マーフィー、ケネス・ブラナー程度だから、興行的に完璧の布陣とは言いかねるのだ。戦争映画といえば嫌がる人が多くて、やむなくオールスターの魅力で集客するのが相場なのに。

ヘタすりゃ、最近封切られたガイ・リッチーの『キング・アーサー』みたいに大赤字を背負いこむ結果になりかねん。
あぶない、あぶない。
ノーランも大変な大博打に打って出たものだ。





アメリカの映画観客はある意味、世界でもっとも好き嫌いの激しい人々である。
とにかく、アメリカ人好みの味わいでなければ受け付けないのだ。『ダンケルク』のように、アメリカ人がまるっきり関わらない筋立てのものに感情移入するだろうか?
いや、そうは言っても。『英国王のスピーチ』は一億ドル超えの収益を挙げた。ボンド映画も英国諜報員が主役なのに、『ハリポタ』や『トランスフォーマー』と並ぶ稼ぎ頭だし。
微妙ではある。

あ。ぼくが言ってるのは、「『ダンケルク』は北アメリカで大受けするか?」ということで、それ以外の地域についてはあまり気にかけてないから。話題になってる規模では集客するだろう。
そりゃ『ワイルドスピード』や『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のような10億ドル超の爆裂ぶりは期待できまいが(後記。『ギャラクシー2』の10億ドル達成は無理であった。8億5000万ドルくらい)。世界全体で数億ドルはいく。
目算がなくて配給会社が予算をつけるものか。


追記
こちらのサイトによれば、公開最初の週末で6000万ドル、最終的には2億4000万ドルの収益を挙げる(むろん北米だけで)と見積もられている。『スペクター』と『スカイフォール』の中間ぐらいの額である。

近年の北米での戦争映画の興行成績。『フューリー』8500万ドル、『ハクソーリッジ』6700万ドルといった数字と突き合わせると、『ダンケルク』が2億4000万ドルって厳しいんじゃないかと思ってしまうのだが、大ヒットを連発するクリストファー・ノーラン監督作、しかもアイマックスでの上映だから心配は無用らしい。
どうかな。
自分はもっとシビア、2億4000万ドルの三分の二くらいで落着すると見積もるが。






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