北米公開中の『君の名は。』が、世界総収益でマット・ディモン主演作『グレートウォール』を抜き、歴代343位となる(公開前は350位だった)。

ただし『グレートウォール』もまた、今日からの日本公開がヒットすればその収益が上乗せされ『君の名は。』を抜き返すと思われる。しばらくの間、日中のこの二作品で抜きつ抜かれつの勝負が繰り返されるかもしれない。
http://www.boxofficemojo.com/alltime/world/?pagenum=4&p=.htm
(そうするうち猛速度で追い上げてくる『ボス・ベイビー』にどちらも抜かれて落着、という結果が目に見えるのだが)





さて。この中国製の国際大作『グレートウォール』。
物語に登場する二人のヨーロッパ人勇士の設定には、英国でつくられた1950年の映画『黒ばら』を想起させるものがある。

そっくりというんじゃない。
だいいち、『黒ばら』はあくまで欧州視点だ。反逆の罪で祖国を追われた二人のイングランド人が、ジンギスカンみたいな頭目の率いるモンゴル軍のような武装集団と一緒になってはるばる中国へと遠出する。
つまり、『グレートウォール』とは属する陣営が逆で、長城を越えていく側(それも中東経路で。たぶん映画の作り手には長城の地理的位置がよくわかってない)。

『グレートウォール』の関係者、絶対この旧作を知ってると思うけど。
あの作品と比較すると、この三分の二世紀で中国の立ち居地がいかに変わったかの感慨を抱かせてあまりある。
『黒ばら』を作った人たちはまさか中国人にあれを見せて受けようとは思わなかったろうし、実際そういう作り方だ。話の主軸はあくまで、西洋人二人の冒険と友情、さらに道中で行きあった金髪少女とのロマンスがからむ。後半に中国や中国人は出てくるが、あまり良い印象を残さない描かれようだ。





いまや。
『黒ばら』的な設定を逆に中国人から使われて、冒険しにやって来た西洋人を中国の映画で描かれるようになった。それも悪役でもなければシニカルな役どころでもない、堂々たるヒーローとして描かれるのだ。


(中略)


実はこの『グレートウォール』、アメリカではあまり受けていない。
え? あれほど見せ場とアクション満載、スリル満点、迫力満点、おまけにドル箱スターのマット・ディモン主演ときたからには、アメリカでも爆受けしないはずないのに?
そう、自分も不思議でならなかった。
どうしてなのか、今ではわかる。

つまり。
ほんとうにアメリカ人が見たがるのは、マット・ディモンが城壁を怪物どもから守る軍隊に共感しての捨て身の奮闘でなく、むしろ虐げられる怪物どものほうに味方して城壁を守る側に立ち向かうような話ではあるまいか。


(続く)

関連リンク

アメリカ人の自己犠牲について
(当ブログ)
http://blog.livedoor.jp/manfor/archives/51173559.html

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