どうもこんにちは。チャンピオン大好き書店員ささなみですよ。
twitterではぽちぽちと零してきたことなのですが、一度あらためてまとめてみよう…と思い立ちました、書店におけるコミック入荷量と発注の話。
このブログの性質上チャンピオンコミックスに焦点をあてて説明させていただきますが、チャンピオン・秋田書店に限ったことではありません。
また、書店の規模や首都圏・地方、出版社や取次によって多少異なる部分もあるとは思いますのでご了承いただきたいと思います。
いちおう大規模店と中小規模店を両方経験している身なので偏ってはないと思うのですが…勉強不足は否めませんので何かおかしな点ございましたらご指摘ください。
さて。
まず書店に入荷するコミックや書籍などの量を誰が最終的に決めるかというと「取次」と呼ばれるところが行います。
あまり聞き慣れない単語かと思われますので、詳しくはwikipediaを。 出版取次 - wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%87%BA%E7%89%88%E5%8F%96%E6%AC%A1
つまり平たく言うと「問屋」なのですが。
書店への入荷量に関しての実権はこの取次が握っている状態です。
発売日の初回に取次から入荷する本の量のことは「配本」と呼ばれています。
わたしが担当しているのは文庫ですが、書籍などは出版社によっては事前に「配本指定」をさせてくれるところもあります。
(ちなみに、秋田書店も漫画文庫は配本指定させてくれます)
ただしこの指定した冊数が必ず入荷されるかというと、そうではないのです。
最終的に冊数を決めるのは取次ということに変わりなく、指定した数より大幅な減数を食らうこともままあります。
基本的に、続巻や実績ある作者さんの新作の場合は前の巻や作品の実売数が考慮されているようですがまったくの新作の場合は同傾向の作品などが参考にされているとか(詳しくは把握してません…)。
また、”雑誌扱い”コミックに関しては基本的に指定ができません。
雑誌扱い…というのは、裏表紙に「雑誌コード」が載っているコミックのこと。チャンピオンコミックスも、ジャンプコミックスもそうです。
一般的なコミックの大半は「雑誌扱い」ですのでコミック単行本の配本はほとんど取次まかせ、ということになります。
チャンピオンコミックスの場合、その「配本量」がまず相当少ない、ということになります。
『範馬刃牙』『弱虫ペダル』のような大きなタイトルは安定した量が見込めるほうで、一方「チャンピオン発の新人作家の1巻目」などになると本当に悲惨な数になります。
わたしの勤務先店舗の規模では1か0はあたりまえ。ときどき奇跡的に多く入ってきた、というので5冊くらいが関の山です。
配本量が少ない、ということは「平積みされない」可能性が非常に高くなります。されたとしても、数が少なければ撤去対象となる確率が高いです。
何故ならば日々出版されるコミックの点数は膨大だからです。
むしろ、配本量が書店側で指定できない上、すぐに返品してしまうと後の配本量を減らされてしまうおそれがあるため在庫数がある場合は一か月間の平積みが確約されているようなものなのです。
(書店側としては、少しでも売って返品率を下げたいからです。返品率が上がるとやはり配本量に影響が出ます)
平積みされていない新刊が売れるかといえば、そのタイトルを知って捜しに来たお客様以外にはまず売れないでしょう。
つまり配本量が少ないチャンピオンコミックスはそもそも書店では非常に不利なスタートを強いられているのです…。
初回配本の指定が出来ないとはいえ、当然発売後は追加発注をかけることができます。
しかし、最初から1冊や2冊の入荷、もしくは入荷がなかったチャンピオンコミックを追加発注してドカンと平積みにするかといえば…よっぽどチャンピオンに詳しい店員でもなければまずしないでしょうね。
先述のとおり、日々大量の出版量を抱えていることもあり、発売からしばらく経った本を追加で取って場所を割くというのはかなりのギャンブルでもあります。
さらに秋田書店のコミックはこの「追加発注」すら取りづらい…。新刊の出版社在庫がまずないのです。
以前勤めていた駅ナカ書店時代はわたしがチャンピオン好きと知っていた少年コミック担当さんに「また秋田のコミック品切れだよー!」と文句を言われては謝罪していたものでした(笑)。
ちなみに、1月に発売された『さくらDISCORD』の1巻は2月末現在に至るまでずっと品切れ状態です…。もうすぐ2巻が発売だというのに(涙)。
秋田書店だけに限ったことではありませんが、秋田書店の品切れ率はちょっと高すぎます。
いま勤務している書店では、コミック担当さんと相談してわたしが選んだ秋田書店のオススメコミックスを面出しで展開してもらっているのですが、
せっかくそれによって売れていた『囚人リク』がこれまた全巻在庫なしで追加が取れない状態です。
これだけ「(チャンピオンコミックスに対して)やる気がある」店員がいる店でこの状態ですよ?
世間一般の書店でチャンピオンコミックスが品薄なのも仕方がないと言うほかありません。
下手すると棚差しの本が売れたときの補充分すらままならないのですから…。
こういったのっぴきならない条件に苦しむ中なので、まんが本について「この本屋やる気がない」とか「なんで入荷してないんだよ!」とかツイッターなどで見かけるとよその書店のことでもちょっと心が痛みます…。
入荷したくても入ってこないんだよ…。こっちでは入荷量は選べないんだよ…!
大型店やコミック専門書店(特に特典がつくようなお店)では大量に仕入れられているようですがそこらの仕組みはどうなっているのか正直わかりません。
刷り部数はおそらく変わらない中でそういった書店に大量に流れているのだろうなあと思うといち書店員としては複雑に思うこともありますね。(特典付き…買いますけど)
そんな中で、チャンピオンコミックスをはじめあまり入荷が多くないコミックをわざわざ書店で買わず通販で済ませたほうが早いと思われてしまうお気持ちは正直痛いほどわかります。
でも、やっぱり書店で買いたい!あわよくば他の人にも読んでもらいたい!と思ってくださるお客様・漫画ファンの皆様には是非ともお願いがございます。
まずは「事前予約」。
発売の2週間ほど前、遅くても1週間ほど前に書店で予約をしていただくと、書店から取次に予約伝票を流すことで予約分の入荷指定をすることができます。
お客様の予約があればその分はほぼ確定で入荷できます!(それでも例外は…あるんですが。ほぼ!)
これで発売日に書店行ったけど入荷ないじゃねーかズコーという事態はまぬがれます(ほぼ!!)。
そしてもうひとつはあの漫画が無い、と思ったら店員に「このコミックはありませんか?」と一声かけていただくことです。
その場では在庫がなくとも、店頭分よりもお客様注文分が優先出荷されるのであまり在庫がないチャンピオンコミックスでも少し待てばちゃんと書店で手に入る可能性がグンとアップ!
その上店員が「この漫画、お客様からお問い合わせがあったから話題になっているのかな?」と気に掛ける可能性もかなり上がります。
普通に1冊入荷して売り切っただけでは発注する予定がなかったコミックでも「だったら置いてみよう。」と店頭分が補充される可能性もあります。
お客様の声は大事なんです!!
ツイッターで「近所の書店はやる気がない」と呟くくらいならたった一声「この本はないの?」と直接お声をいただくほうが書店にとってもいいことなのですよ!
色々と厳しい出版業界、その中でも厳しいリアル書店、マイナー漫画ファン…。
わたし自身はコミック担当ではないので出来ることには限りがありますがやることはだいたい同じです。
より良く、お客様のニーズに応えられる書店にすべくわたしたちも日々精進しておりますので入荷でがっかりすることがあってもまた書店に足を運んでくださるとありがたいです。
そしてとりあえず秋田書店さんは・・・もうちょっと在庫確保させてください(涙)!
ついでに言うと…るるも魔界編もずっと在庫切れなので講談社さんもなんとかしてください(涙)!!
コメント
コメント一覧 (18)
発売の一ヶ月前から予約していても、
当日になってから当たり前のように「入荷出来ませんでした」となるのがほとんどだったので……。
木曜日のフルットなんていつも以上に不安だから複数の本屋に予約していたのにどのお店からも手に入りませんでした。
だから、今回の記事は読んでいて目からウロコでした。
自分は大変な難題を本屋さんに押し付けていたんですね……。
これで気持ちがすっきりしました。
発売日には読めないから避けていたのですが、ネット書店を利用するしか方法はないということなんですね。
寂しいですが――。
社員としてさすがにまずいと思います。
>社員としては不適切、行ってはいけないことのはずですよ。
そうなんですか? それほど秘密にするような話でも
ないような・・・
ネット通販が無い頃、書店で注文したら、しばらくたってから「版元品切れ」という説明を受けたことがあります。
客が注文した商品が版元品切れ重版未定などの
理由で書店に届かない場合、「商品はお取り寄せでき
ませんでした、理由は教えられません」だなんて対応を
するお店に出会ったことは無いですね。
今回の記事は大変参考になりました。
e-honの場合、指定した書店で受け取る形式ですが、書店に利益は入るのでしょうか。
「近所の書店はやる気がない」と呟いてましたが
ここを読んだら少し申し訳ない気持ちに成りました。
代わりにこの記事のことを呟かせてもらいますよ。
書店によっては、客が自由に使える検索機器に流通状況まで表示される(絶版・在庫なし等も)仕様ですので、まったく問題ないと思われます。
http://www.e-hon.ne.jp/bec/EB/Top
あまり本屋さんがアピールしてないし
意味ないのかしら?
あと本屋さんの「店の前に」
ホワイトボードやらで
本日発売の新刊とか発売予定の物とか
もっとアピールして!
ただ予約や通販だと配送時や立ち読み防止カバーでの傷みといった状態を選べないのが気になってつい避けてしまいます
うちもクソ小さい店だったけど、
あなたの努力が足りない。
木曜日のフルットの時は非常に困った。
他誌で人気作家なのに出版社のマーケティングが足りなかったのだと勝手に決め付けてたよ
たぶん取次によるのと、書店の力の問題もあると思います。
そう言えば、ドラマ化で発注しても全然来なかったのに、店長が新しくやり手の店長に代わったので相談したら、出版社の知り合いに直に電話してくれて既刊50部ずつ三日後に届くことになって、店長によってもこんなに違うのかと目から鱗でした・・w(^_^;)
大変だと思いますががんばってくださいね☆
感慨深いです。
集英社も初版発効日から2ヶ月は直接注文を受けてもらえません
幸い力のある出版社だから即重版配本してくれるけど、青年誌でマイナーだと判定された本だと・・・
でも取次にはモノがあるわけですから直接乗り込んでゲットしてましたよ。
コミックに限らず雑誌でもハードカバーでも。
入荷しないのも問題ですが、大量に送りつけられるのも問題でして。
過去に100冊200冊売った雑誌とか、売れ行きが1/4以下に落ち込んでも昔の数字で入ってくる。返品めんどくせぇw
廃業して10年経ちますが、いまだに改善されていないのですね。
会話が嫌、
店員に探してもらう時間が無駄、
通販で買えることがほぼ確実な特典のない通常のコミックをわざわざ予約するのが面倒
みたいな客は少なくないと思う
そんな客のニーズはどうやって汲み取ろうとしてるのかが疑問
「予約使わない客が悪いんだー」って言ってても改善はされんでしょう
近所に何店か書店ありますが、こういう裏事情はもちろん、予約、声掛けを促すような努力は見られませんね。
欲しかったのに無かったよノートでも置いておいてくれたら書いとくのに。
いくつかの書店でコミック担当を経験した者です。
私が勤務していたのは数年前ですがあまり状況は変わっていないようですね
あの頃は一番売れるワンピースですら集英社に全巻の在庫は無く、毎月一部の巻だけを再販するしまつでした
例外的に某取次店から毎月ほぼ希望の冊数を入荷してもらえた事があります
店長の人脈とチェーン店の名前のごり押しのおかげでしたが見事に売り上げは伸びました
ただし毎月出る全てのコミックの希望冊数を考えるという時間がかかる仕事が待っていましたが・・・
実売数で勝負が無理であれば装飾とかのランキングもあったかと。
追加に関しては秋田に限らず版元の営業さんが来てくれているかどうかでもぜんぜん変わるでしょうね
品切れといっても完全に品切れではなく僅少の場合が多いので優先的に出してくれる場合もあります
クレームだけもらって印象も悪くなるなら予約なんて積極的には取れない。
消費者の正しい行動はこの店で買いたいから卸せやと出版社に脅しをかけることじゃないかな。
このブログにコメントするにはログインが必要です。
さんログアウト
この記事には許可ユーザしかコメントができません。